猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第16話 ★分析。復活。そして戦いの終局

 冷静に今までのことを分析すると


 平和夫は半径5m以内の軽い物を操れる。


 5m圏外では飛ばすことは出来るが操れない。


 メスの具現化の場合は素手で持って投げる。切れ味はこっちの方がありそうだ。


 5m圏内でも威力としてはやや弱い。


 おっちゃんが全身刺されてもまだ死に切れてなかったのが証拠だ。
 さすがに動脈をやられ、その前にも無数のメスにやられていたため、出血多量であえなくおっちゃんは死んだけど。


 充分な収穫だ。


 致命傷さえ避ければ圏内であっても恐るることはない。


「‥‥‥タマ。運動は出来るよね。」


「んー。クロちゃんほどじゃあないけどね~? どうしたのー?」


「‥‥‥こぼれ弾の処理。」


「まかせてー。その程度だったらー、私にも出来るよ~。むしろ私が特攻しようかー?」


「‥‥‥。」


 僕は無言でドラムさんに抱かれてすすり泣くクロをアゴで指す。


「‥‥‥わかったよー。でも澄海くんも死んじゃやだよ~? 多分クロちゃんも悲しむからねー。」


 タマは自分のポーチから数珠と護符を取り出すと、左手首に護符を巻くように貼り付け、右手に数珠を持った。


「‥‥‥。死なないよ。」


 僕は自分に当たる最小限の飛来物のみを数珠で弾きながら地面を蹴った。


 結界でいちいち止めるより楽だから。


 タマは―――どこがクロほど運動は出来ないだ。ダボついた上着のみの格好で、踊るように僕が後ろに逃がしたメスやハサミを右の数珠で弾き、左手で掴んでいた。


 あの護符‥‥‥平和夫が具現化したメスも触れられるようになるのか‥‥‥。


 誰からもらった物なのか、興味があるな。




 広範囲で浮いていたメスやハサミだが、僕の特攻に気付いた平和夫が慌て、集中的に僕を狙い始めた。


 僕は霊媒師ではないけど、霊を狩る者だ。平和夫にはそれが理解できているんだろう。




 僕はポケットから塩を取り出してすかさず投擲。


『くっ‥‥‥!』


 しかし、かわされた。ゴーストにとって塩は天敵だ。当然だろう。


 そして今度は僕が四方八方からメスで囲まれる。無傷で回避できそうなポイントを探してあたりを見回すと、………ああ、もういいや。


 僕は立ち止まり、ふう、と息をつく。


 諦めたのではない。終わったから。






『アタシを忘れんなクソボケやぶ医者ぶっ殺すぞコラァァアゲン!』


 自身の結界を解いてドロップキックをかますママ。


 当然。幽体離脱中なので幽体だ。


 最後の一言が余計なんだよ。コラーゲンってなんだよ




 僕の役割はあくまでディフェンダー。 点取り屋はフォワードの仕事だ。


 僕の周り漂うメスが力無く床に落ち、ほとんどが粒子となって溶けた。


 カラカラと音を立てて落ちるメスには、血が付いている。おそらく、一度おっちゃんに刺したメスを引っこ抜いたものだ。


「おぅおぅ。テメェよくもアタシの一番弟子を殺してくれたなぁ。どう落とし前つけてくれんだぁ? ぁあん!?」


 生身に戻ったママが護符を平和夫の額に貼っ付け、胸ぐらを掴む。


 ゴーストを実体化―――とまではいかないが、生身でさわれるようになる特殊な護符だ。護符に自身のチカラを相当込めるらしいが、数十秒しか保たないらしい。


『俺の病院に入るからだ。』




 たしかに。勝手にテリトリーに入って怒りを買ってる。
 こちらの自業自得だ。
 しかも平和夫はこの病院に縛られている自縛霊。
 そうとう思い入れがあるんだろう。この病院に。




 だけど。そんなゴーストの事情やタワゴトなんかどうだっていい。
 僕たちはただ、ゴーストを殺す。それだけだ。


 僕が塩と数珠を取り出すと


「なぜ、修ちゃんを狙った。お前の後ろに、いったい、何がいるんだ。」


 ママがそんなことを平和夫に聞いた。


 どういうことだ?




『ハンッ、なんのことだ? サッパリだね』


 邪悪に笑う平和夫。


「ママ、離れて。」




 ブオッとメスを握った平和夫がママの手を切断せんと襲いかかる。


「おっと。」


 ママが華麗にバックステップでよける。


 平和夫は額に貼り付いた護符をひっぺがし、放り捨てた。


『あのガキみたいに串刺しにして解体してやるよ』


 狂気に満ちた目でママを睨みつける。












「あのガキって俺のこと?」












『あぁ、そうだ。さっきのテメェのように‥‥‥‥‥‥‥へ?』


「あれ? 『悪ぃけど死ぬことにゃ慣れてんだよ』って聞こえんかった? 流石に死ぬ直前だったし、俺も激痛だったし意識朦朧としてたから本当に言えてたのか覚えてないんやけど‥‥‥。」


 おっちゃんが、死んだ場所に立っていた。
 背や頬などに刺さっていたメスなどは、どこにも見当たらない。いや、いくつか辺りに落ちているのが見えた


『貴様‥‥‥な、んで‥‥‥生き』


「死んだよ? ほら。」




おっちゃんは藁人形を前に出す。
そこには、無数のメスやガラス片が突き刺さり、赤黒い液体をしたたらせる藁人形があった。


出血量がさっきの比ではない


「あーあ。コレ仕組んだのも全部フユルギだろ。くそっ、なら死んでもしゃーないや。」


 ガシガシと『左手』で頭を掻いてそんなことを呟くおっちゃん。


 さっき僕が踏んでしまった手は----在った場所を確認しても存在しない


 それどころか、あんなに血まみれだった手術室から、血の色が無くなっている。
 僕の顔に付着していた血も‥‥‥いつのまに。


 おっちゃんの言葉に平和夫はなぜか身体を硬直させる


 フユルギ? 誰だろう。


「どっかで笑いながら見てそうな気がする‥‥‥。が、まぁ今はだ。とりあえずあんた、死んでくれない? おっちゃんを殺した二回分。きっちり死んでもらうよ」


 ビニール袋から取り出したもう一体の血まみれの潰れた藁人形。


 と、木槌と五寸釘。


『来るな! ――――ムグゥ!!』


メスを放とうとするが


「修ちゃん。何する気か知らないけど、とりあえず押さえとくよ。」


「師匠、ありがとう」


 ママが腕のみを幽体離脱させて平和夫を押さえ込んだ


「ぼんやりとしか見えないけど、この辺にいるんだよね‥‥‥えい」


 平和夫の身体の上に二体の藁人形を重ね、その上から五寸釘をハンマーで叩く


 コン‥‥‥と軽い音がした








『あ‥‥‥?』








 すると、平和夫さんの左腕がもげた。


 さらに


『な‥‥‥まっ‥‥‥!!』


 押さえつけられるように床に崩れる平和夫。


 そして、その全身に無数のメスが突き刺さった




「ん‥‥‥『反転痛覚ダメージリバーサル』‥‥‥? ダメだ。おっちゃんネーミングセンスが無いね。」




 平和夫は、死んだ。粒子となって、現世から完全に消えた。




 藁人形から五寸釘を引き抜くと、藁人形は元の姿に戻っている。


 おっちゃんは「んーっ。エコエコ!」などと言っているが、本当に訳がわからない人だ。










――――――――――――――――――――――




あとがき




岡田家と上段家のイラストを描いていただけました


デフォルメされたラフがです


<a href="//7866.mitemin.net/i67049/" target="_blank"><img src="//7866.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i67049/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>




 書いた人曰く
『クロのキャラはパッツンで定まったんだけど、ティモ坊がブレる。タマ子はお嬢様って感じだからすぐ定まった』


らしいです。ティモ坊が男の娘ってわけでもないので、申し訳ない注文ですみません


しかし感謝感謝ですぅ!

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