受難の魔王 -転生しても忌子だった件-
第116話 ☆洗脳の邪眼
心の中は静かに燃える。
青い炎が揺らめく。
夕暮れにたたずむ一つの孤児院を見据え、僕は決意を胸に刻んだ。
「リールゥ。ここの孤児院長のところまで案内してもらってもいいかい?」
「………え」
「怖いかもしれない。でも、これはリールゥが乗り越えなければいけない。そうしないと、僕たちはキミとサナを助けることすらできないんだ」
しゃがんでリールゥに視線を合わせる。
子供に視線を合わせるのは、『ちゃんと自分のことを見ているよ』とアピールができるからだ。
安心感を与えることができる。
僕の言葉を噛みしめて、リールゥはコクリと頷いた
「いい子だ」
ポンとリールゥの金色の頭に手を乗せる。
ぐしぐしとリールゥは涙をぬぐい、孤児院の中へと入る。
「ごめんくださーい」
イズミさんがドアをノックしてから後に続いた
もちろん、僕たちも一緒に孤児院に入る。
許可? 知らんね。大事な弟に暴力振るって大事なものを取ろうとする孤児院に常識を持ち込むなってんだ
「ラピス君、サナって子の場所はさすがにわからないよね?」
「わかるよ」
「わかるんかい」
ダメもとでラピス君に聞いてみたら即答が戻ってきた
「ボクの眼は一度視た人ならいつでも視ることができるよ」
ウインクしながらペロッと舌を出して言ってるけどさ
「でもサナを見たこと無いんでしょ」
「うん。でもね、過去視で見たことあるから顔はわかるし、透視したら一発だった。だから居場所もわかるよ。孤児院長室にいる。どこにでもいる太った貴族の人と一緒だね」
なんという千里眼。
隠し事は無意味って思ってたけど、その魔眼の利便性はすごすぎる
「その貴族の人にサナを売る交渉中ってところかな?」
「そんなところだろうね」
あー………めんどうなことになってるなぁ
貴族が絡むとややこしいんだよね。
ここでバーンと登場して『その交渉、ちょっと待ったー!!』なんて神経の太いことができるわけでもないしさ。
貴族が単身で孤児院なんかに来るわけもないし、きっと護衛の騎士なんかも一緒だろうね。
あー、もー!!
貴族ってのは権力持ってるし面倒くさいし………貴族、絶滅しないかなぁ
「なんだ、おまえたち」
「ん?」
「ひっ!」
玄関で待っていると、男の子に声を掛けられた
くすんだ緑色の髪の10歳くらいの少年だ。
リールゥの怯えた声から察するに昨日、リールゥを蹴りつけていた少年と、同一人物とみていいだろう。
ルスカに目配せすれば、コクリと頷いてリールゥの手を握ってあげた。
さすが、わかってるね。マイシスター。
「あたらしい入居者か?」
「違いますよ。わたしたちはここの院の子供を買い取りに来たのです」
不審げにこちらを見る少年に、イズミさんが説明してあげる
「あんた、冒険者か!? ならおれを買ってくれよ! こう見えても腕には自身があるんだ!」
そしたら、ここぞとばかりに自己アピールを開始する。
ま、当然だよね。『孤児』なんてレッテルは本人だって望んでいない。買ってもらえるチャンスがあるのなら、ソレに賭けたいと思うのも当然だ。
奴隷でないだけまし、という程度の差なのだから。
「いろいろ見て回ってから決めますね」
「なーんだ。この孤児院で一番腕っぷしが強いのは俺だかんな、ジュヴィってんだ。覚えておいてよ、おねーさん」
「ええ、覚えとくわ」
イズミさんは適当に流しつつ笑みを浮かべて頷いてあげると、ジュヴィ少年は「よっしゃ!」と拳を握りしめた。
ごめんね、端から眼中になしだよ。
次にジュヴィ少年が拳を下ろすと、僕らの後ろに控えていたリールゥに目を向けた
「で、なんでリールゥがここにいるんだよ。外に出てろって言われただろ」
「ううー………」
体格が倍近く違うのだ。10歳の子供に睨まれて委縮してしまうリールゥ
「あ、へへっ! そのペンダント、よーやく渡す気になったんだな! もらってくぜ!」
「あ! ダメ!」
そんなリールゥが大事に抱えていた水魔晶石のペンダントを、バッと力任せに奪いとるジュヴィ少年
孤児院の力関係は、腕力の力関係だ。
弱肉強食の世界では、弱者が煮え湯を飲まされ、強者が弱者から搾り取ったもので私腹を肥やす。
まかり通ってしまうんだよ、この狭い世界ではね。
勝ち誇った顔で僕の横を通り過ぎようとするが
「それはいかんよ、少年」
―――パンッ!
僕は右手の裏拳をジュヴィの鼻っ柱に食らわせた。
「ブまッ!?」
容赦? するわけない。相手が子供? だからなに。こっちも子供だ。
7歳児以下の体型で僕自身が運動音痴だとしても、僕は一応リョク流格闘武術の使い手だ。
素人の肥大した鼻っ柱をへし折るくらいはお茶の子さいさいだよ。
あ、本当に折ってはいないからね。
「返してもらうよ」
怯んだジュヴィの手元からペンダントを回収し、ジュヴィの首を左手で掴み、押すと同時に右足でジュヴィの足を払ってみると
「だっ!!?」
面白いように転んでくれた。
「バッファローを相手にしたときとは違うね。3年も経ってたら成長もするか」
「あのときのリオは手首が折れたの」
「ボクも格闘術ならおうかな」
倒れた子供の心配をするような子は、僕らの中には居なかった。
「なにしやが――」
「わきまえろよ、孤児のクソガキが」
身体を起こしたジュヴィが小柄な僕を睨みつけてくるが、僕は怒っている。
リールゥを傷つけたこのクソガキが憎い。今すぐに殺してやりたいくらいだ。
ジュヴィを見下ろして言い放つ。
見ていて腹立つね。生き残るための処世術だとわかっていても、弱者から搾取するこの少年を好きになれそうにない
もちろん、僕だって弱肉強食を理解して、喰われる前に喰っちまわないと生き残れないことはよくわかっている。
だけどさ、このガキはどこか弱者をいたぶる趣向が目に見える。
ダメだ。銀介を思い出す。
僕を殺した、クラスメイトを
「院長のところに案内してもらってもいいかな」
ダブって見えるこのクソガキに優しくしてやる理由など皆無。
僕だって前世も現世も孤児に等しいけれど、一人でだって生き抜く術は一応持っている。
ご飯を“恵んでもらう”それか“奪う”ようなこいつらとは違うのだ。
恵んでもらうような環境は、1歳の時にあきらめたさ。
だからといって、搾取する人間に成り下がるつもりはない。
僕は、妹や子供には甘いという自覚はある。
だけどね、僕は聖人君子じゃないんだ。魔王の子なんだ。
優しいだけのつもりはないよ。殺らねば殺られるのなら、殺るだけだ。
正直なところ、この子供が死んでも特に何も感じないのだから。
「っ―――!」
びくんと肩を震わせるジュヴィ
そんなジュヴィに威圧感を放つと同時に、闇魔法の視えない重力ですこーしずつ圧迫していくのも忘れない
「虚無の視線を耐えられる人はいないよね」
「あんなおめめ、リオは絶対にルーたちには向けないの」
「リオルって、わたしよりも容赦のない性格なのでは?」
言いたい放題だねこら。
「返事は?」
「………わかった、案内、する」
「ありがと♪ 助かるよ」
ポンとジュヴィの肩を叩いて闇魔法を解除する
「―――っはぁ! はぁ、はぁ………」
途端に息を荒くするジュヴィ。
ちょっと子供には刺激が強すぎたかな?
「お、おにいちゃん………」
「ん? ほら。ペンダントはポケットに入れといて。むき出しにしてたらまた取られるよ」
「………ありがとう」
ぽそりと礼を言うリールゥの頭を撫でる
礼はいらないんだけど、感謝の気持ちを言いたい人言葉はうれしい。
気持ちだけで人の心を豊かにできるのだから。
僕の様子を気にしながら、前を歩くジュヴィ少年。
だいぶ苦手認定されちゃったかな。ま、それもしょうがないか。自業自得さ。
「こ、ここが院長の部屋だ、です」
「案内してくれてありがとう」
「じゃあ、俺はこれで―――」
踵を返そうとするジュヴィの肩をグワシと掴む
「うひっ!」
喉の奥がひっくり返ったような声を出すな。こっちがびっくりするってば
「まだ勝手にどっかに言ったらダメだよ。ちゃあんと院長先生に僕たちのことを紹介してくれないと、ね」
ゴクリと唾をのむジュヴィ少年。
「………ふふっ、僕みたいな年下程度におびえているのに冒険者になりたいなんて、片腹大激痛もいいところだね。弱者をいたぶって強者になったつもりでいるなんて。お山の大将は井の中の蛙ってわけだ。冒険者なんて早いところ諦めたら? 僕よりも強い子供なんて、知ってる限り5人はいるよ?」
「っ………!」
そんな彼を鼻息一つで笑い飛ばしながら挑発してやる
だって、事実、僕はこの少年に、魔法を一切使っていないのだ。
つまり、唯一シゲ爺に『才能なし』の烙印を押されたへっぽこ格闘家の僕に打ちのめされて縮こまっているのだから。
僕なんて、『やつは魔王の中でも最弱』ってやつだね。え、僕最初に死んじゃう?
「リールゥは扉の前で待っててね」
「う、うん………」
リールゥに待っているように告げ、ジュヴィ少年に再び視線を向ける。
ジュヴィ少年は勝てないとわかっていても悔しそうに顔をゆがめて僕を睨みつけた後、院長室の扉を二回、ノックしてくれた
『なんだ。いま大事な接客中だ。後にしなさい』
と、中から返事が返ってきた
ジュヴィは僕をちらっと見たけれど、僕は静かに首を振る。
すなわち、『開けろ』と。
ジュヴィは眉を寄せて不安そうにしながらも、扉を開ける
「こら、勝手に開けるじゃない。接客中だと言っただろう」
「その、お客さんが」
「そんなもん待ってもらえ!」
中から怒鳴る声が聞こえてくるが、特権発動。『子供は空気を読まない!』
ラピス君、イズミさんと視線を合わせてコクリと頷く。
「わぁー! ここが孤児院の院長室かー。すっごーい、ひろーい!」
「本当だ、ボクんちよりもこの部屋の方が広いよ!」
全力でアホの子を演じろ。ここで空気を呼んでいてはダメだ。
リールゥはサナを探していた。つまり、孤児院の中にサナの姿は見当たらなかったということ。
ラピス君は見つけた。サナは孤児院長室にいると。貴族と一緒にいると。
院長は言った。商談中だと。
つまり、サナを売るための商談だ。商談が終わるまで待つなんて、愚策だ。
「こら、勝手に入ってはダメでしょう!」
そんな僕らをしかりつけるイズミさん。
僕らのその豹変ぶりを見て胡散臭そうな顔で僕を見るジュヴィ少年。
「ごめんなさーい」
と表面だけ取り繕って謝る。
よし、院長室に入ることができた。
「チッ、なんですかな。この躾けのなっていない子供は。まったく、気分が悪い………」
と、ご機嫌斜めな貴族様。
そんなん知ってて特権発動したんだ。いちいち言うな。
「あ、向こうに小さい子供がいるよ!」
「本当だ! りーくん。見にいこ?」
相手方が気分を悪くしても言動を改めるな。 突っ走れ!
さりげなくいつもと呼び方を変えるラピス君。身元の特定を防ぐことを心得ているようだ。
しかしながら、貴族を前にここまで自由にしていると、不敬罪になりかねない。
それでもやらねばリールゥの妹が売られる。
それは、リールゥを救うためには確実にこちらが取らねばならない必須条件。
「わあ、かわいい。ね、おなまえはなんていうの?」
「………」
突然の来訪者に戸惑う女の子。まだ2歳だというから語彙力もないだろう。
母親に似て金色よりの、薄い黄色の髪が特徴だね。間違いない。この子がサナだ。
「おい、触るな。なんなのだ、この子供は! おい、そこの女。なんでここにいるのかは知らんが、ちゃんと説明してくれるんだろうな」
貴族の男がイズミさんを睨みつけて青筋を額に浮かべる
「………ん?」
「あれ?」
だが、その貴族に、僕らはどこか見覚えがあった
(リオルくん、この人、アントン・ブリッツ先生だ)
(教鞭をとるときの服装じゃなかったから気付かなかったよ)
そう、ここにいる貴族の男、とは魔法学園の中等科クラスの先生でもある、アントン・ブリッツ先生。
僕たちが学園に入学するにあたって、ファンちゃんの火傷に対して気味悪げな視線をよこし、闇属性を持つことに嫌悪感を隠しもせずに舌打ちを売った挙句、ファンちゃんがリョクリュウ伯爵の養女であるとわかるやすぐに手のひらを返した、あの先生だ。
僕が魔力を図る水晶を触ったときにも、水晶を全く光らせなかったときに侮蔑の視線をよこしていたし、典型的な嫌味な貴族だね。
その後にピカーッと光らせたら、もうクルンクルンと手のひらを裏表に返していたよ。
なんでこの先生がここにいるんだ?
いや、理由なんてどうでもいい。僕がすべきことは、サナをいかなる手段を用いても買い取ることだ。
「それは、サナという女の子を買い取りに来たのです。詳しく話を聞けば、わたしの知人の娘だったということが最近になってようやく知ったので、リールゥともども引き取ろうと思ってこちらに参ったのですが………」
「ふざけるな!!! このガキは今から俺が契約するのだ、この年でこんな魔力をもったガキはなかなかに珍しい、勝手に入ってきて横取りなんてすんじゃねえよ!!」
ごもっとも。
でもね、こっちも引けないんだよ。
「ん? お前ら、魔法学園の制服………ああ、よく見たらお前ら、初等科の獣とインチキ小僧じゃねえか」
チッ、せっかく他人のふりをしたかったのに、気付かれたのか。
良くも悪くも、ラピス君は学園では有名だ。中等科まで噂は届いているだろうし、僕らのバンダナも学園の中では浮いている。
先生たちだって、僕らのことを知らないなんてことはないはずだ。
まさかここにいる貴族ってのが学校の先生だとは思わなかった………。
あとインチキ小僧ってなんだ。僕、先生たちの間ではそんなふうに呼ばれてるの?
せめて名も知らないどこかの貴族だったら、アホの子を演じ続けてサナを買い取るつもりだったけど………
「こんなことして、ただで済むと思ってんじゃないだろうな!!」
作戦変更
「ラピス君、なんとかできる?」
「なんとかするのがボクの魔眼さ」
怒鳴るアントン・ブリッツ先生を無視しながらそういって、ラピス君は薄桃色の前髪をかき上げた
「ラピス君、それって………」
「一番手っ取り早い方法。この後ボクは倒れるから、後で魔力譲渡してくれるとうれしいな」
髪をかき上げられたラピス君の額に注目すると、そこには
ラピス君の額に浮かぶ、瞳の形をした魔法陣。
僕がデコピンをしようとしたときも、決して正面からは触らせようとはしなかった。
正真正銘、ラピス君の隠し玉
「第三の眼………。ボクのとっておき」
「………。」
「この眼は絶対に視ないでね………!」
その額の第三の眼に魔力を集中しているのか、一瞬にして顔中に脂汗を浮かべるラピス君
「おい、貴様、獣の分際でなにをする気―――」
「………【洗脳の邪眼】」
カッ! と強い光が孤児院長室を包んだ
「わっ!」
「なんだ!?」
「うっ………!」
あまりの光量に目を覆う
強力な魔眼は発動までに必要な魔力を溜めるために時間がかかる。
魔眼とは違う、異質のそれは禍々しい光を放って、アントン・ブリッツ先生を包み込んだ
「邪眼はリスキーだけど、相応の見返りがもらえるんだ。今回は浅く催眠をかけたよ。今のうちに………」
ふわりと桃色の前髪が下がり、浮かび上がっていた魔法陣を隠すラピス君
邪眼光に包まれたアントン・ブリッツ先生は、自我を失ったかのように虚ろな瞳でこちらを見ていた
恐ろしい魔眼だ。
光を浴びた人間を、強制的に洗脳して支配下に置く、禁忌的な邪眼。
精神支配はご法度の世の中で、この禁忌の力を宿した少年が、僕のためだけにその力をいかんなく振るう
「う、うん………! アントン・ブリッツ先生。サナは僕たちが買う。それでいいよね」
「………ああ、問題ない………」
先ほどまでの怒りも、威勢も、獣人に対する憎悪も、侮蔑も、すべてが抜け落ちた表情で、返事だけを返す。アントン・ブリッツ先生はそれだけの人形だった。
「院長先生、サナをこっちに」
「は、はいいい!!」
「サナの値段がいくらになるかは知らないけど、アントン・ブリッツ先生が提示していた金額の二倍で買い取るよ」
そういって、アントン・ブリッツの契約書を破棄し、新たな契約書にサインをする。
もちろん、サインをするのはイズミさんだ。
孤児院長が怯えているが、そんなものよりもサナだ。
巾着袋に金貨を5枚入れて、ドンと手渡す
「口止め料も込みです。今回のことは、決して口外しないように」
イズミさんにそう言われて、コクコクと頷く孤児院長。
後ろで見ていたジュヴィ少年も、青ざめた顔で、化け物を見るような瞳でこちらを見ていた
この二人は、リールゥを辛い目に合わせていた張本人なので、まぁ怯えられたところでこちらに不都合はない。
それどころか、心がスッと軽くなるような感覚があふれる。
「ふぅ………」
「おっと、大丈夫?」
フラリとよろけるラピス君を支える。
魔力枯渇を起こしているのか、指の先が冷たくなっていた。
邪眼は魔力も体力も、気力も消耗するらしい
メデューサとしての能力の影響なのか、腕には無数の蛇の鱗が浮き上がってはポロポロと剥がれ落ちてくる
痛ましい姿の彼に魔力譲渡で魔力を渡しながら心配して声をかけると
「平気だよ。しばらくすれば、収まるから………」
「そっか………。」
そういってラピス君は無理をするから少し心配だ。
でも、本当に限界になったらきっと何ふりかまわず僕に助けを求めてくれるはず。
今はこの言葉を信じて、サナを手元に置いておきたい
「サナちゃん、今からお兄ちゃんたちと一緒に来てほしいんだ」
まだ2歳のサナは状況を理解していない。
不安がる幼女に視線を合わせてから頭を撫でる
「………?」
「君のお兄ちゃんの、リールゥも一緒に、来てほしい場所があるの。お兄ちゃんたちについてきてくれる?」
「おにいちゃんもいっしょ?」
チラリと僕らの後ろに隠れていたリールゥに視線を向けるサナ。
サナの頭を撫でてから
「うん、一緒だよ」
「………いく」
サナは活力のある瞳で、頷いた。
「おにいちゃんがつらいめにあわないなら、いく」
ああもう………2歳にして、兄妹4人とも、似すぎだっての………。
こうして、若干目立つ真似はしたものの、無事にサナを買い取ることができたのだった。
あとはこの子たちをアリス先生が居るあの孤児院に引き渡すだけだ。
あそこなら雰囲気もいいし、明るく活発なククリちゃんが居る。
それに、吸血鬼のユーコだって居るのだ。きっと仲良くしてくれる。
僕たちが面倒を見れるわけではないのが歯がゆいけれど、こんな劣悪な環境にいるよりは万倍マシのはずだ。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
23252
-
-
0
-
-
755
-
-
149
-
-
140
-
-
3
-
-
439
-
-
2
-
-
52
コメント