受難の魔王 -転生しても忌子だった件-
第66話 ★再会
6歳になった。
「おーい! お前らの武器が完成したぞ!」
そして、時間はかかったけど僕らみんなの武器が完成した!!
なんてったって僕らの武器は鉄鉱石竜や他の色竜の素材で作られているからね!!
それに、ジンの作る武器は魔剣の類になることもあるようで、国宝級の値段が付くこともあるとかないとか
おそらくさすがにそれはない。
でも、ただの木刀を鉄鉱石竜と渡り合える魔剣に変える程の腕前を持っているジンだ。
それが本物の武器となれば、どんな敵でも問答無用でバッタバッタコオロギカマキリと薙ぎ払っていくだろう
「まずはマイケル。大剣だ。この大剣にはお前の牙が入っている。
それを核にして闇水晶で覆い、刃の部分は紅熱石で作ってある。
少々接合に苦労したが、どえらい耐久力が高いし、魔力を通すと紅熱石が発熱して対象を焼き切ることができる。
そして、切った対象もしくはぶつかった対象に1.1倍の重力が加算される。
魔王ジャックハルトが持っている剣と同等の効果がある。作ったオレもびっくりだ。」
「ふおおおおお! ありがとう、師匠!!」
マイケルはその身の丈に合わない大剣を受け取った。
現在のマイケルの容姿は10歳程度。135cmくらいかな。僕より頭1.5個分くらい大きくなってる。
僕なんかまだ110cmにもうチョイで届くかなって程度なのにね。
「どうだ兄ちゃん、ルスカお姉ちゃん。かっちょいいだろ!」
「すっごく大きいの!」
「めっちゃかっこいい! でもマイケル、ちゃんとそれ振り回せるの?」
「へへっ ちょっと振ってみる」
自分の身長を軽く超える大剣だ。
僕は持ち上げられる自信が無い。
でもマイケルは片手でヒョイと上げ下げ。さらに両手でしっかりと柄を握りしめて、縦に一閃。
ブンッ と乱暴に風を切る音が聞こえる
「うん、いい感じだ。」
「よかったね、マイケル」
「うん!」
僕を見下ろして二カッと笑った。うおっ、イケメンスマイル!
だけど、その身長差にどこか置いて行かれたかのような寂しさを感じる。
しかし、マイケルは身長も見た目年齢も僕よりも上なのに、やっぱり僕らを下に視ることはなく、いい子に育ったなぁと感心する
悪の化身と呼ばれたはずの黒竜がいい子。ぷぷっ。言い伝えってのは当てになんないね。
400年前から魔王をしているジャックにそこん所を聞いてみると、『俺がまだ魔王の子の時代に黒竜を連れて町とか国とか破壊して回ったからなぁ。だからじゃねぇか?』とおっしゃった。
あんた何してんのさ。
ダゴナン教の教えも、400年前の人魔戦争をもとに作られているようだ。
人魔戦争の影響で人口が減って、大多数の人間が黒竜は魔王の子と共に町を滅ぼす悪の化身だと400年前から根づいてしまっては、実際は竜にも個体差があるというのに先入観で黒竜は悪だとすべて決めつけてしまうということだろうか。
マイケルは何度も素振りをし、ジンに向き直った
「しっくりくる。おれ、コレ気に入ったよ、師匠!」
「そうか、気に入ってくれたならオレもうれしいぞ! わはははは!」
すこし大人になってきたと思われるマイケルも、やはりジンにとってはまだ子供なわけで。
ジンはマイケルの頭を荒っぽく撫でつけた
「ま、それを本格的に使うなら、もうちょっと身長がでかくなってからだな」
さすがに10歳児体系での大剣の使用は厳しいようで、今は僕の道具袋に封印。
ちなみに、大剣の柄にマイケルの幼き頃の竜鱗を使用して滑り止めにしてあるそうだ。
ほう、結局竜鱗も牙も無駄にはならなかったようだ
鱗は攻撃力に加算されないポジションだろうけど、柄に使用したことによって、黒竜のマイケルにはこれ以上ないフィット感を体験させてくれるようだ
「大剣の名を―――【黒剣・グラムリッツェ】という。大事にしろよ」
ピクリと僕の中の何かが反応した。
グラムリッツェ。はて、どこかで………。
「うん! 任せてよ師匠!」
ぐっと拳を握るマイケルが目に映った。
ふむ。どうでもいいか。
「そんで、つぎはキラだな。キラの武器は―――こいつらだ。大奮発。売るとしたらオリハルコン貨の買い物をする代物だ。」
キラの目の前に二振りの剣が置かれる
「キラには双剣がいいだろうと思ってな。」
「わかったのです。ありがたく受け取るのです! これでマイクを殺すのですー!」
「ん。ほどほどにしておくのだぞ」
大きく頷いてキラの頭を撫でる
キラはセミロングの髪をサイドから後ろにかけて編みこんだ髪型。
イズミさんに教えてもらって僕が編みこんだ。キラはこの髪型が一番似合う。
体の起伏は未だに乏しいが、少々色気を感じなくもない程度には大人になってきている
これは僕がまだ6歳だから感じている事だろうか。
元中学生としての目線で見たら、キラもまだまだ子供っぽいや。
マイケルと同じ10歳程度で、この頃の男女の身長比率で言えば、女子の方が成長が早いらしいし、身長で言えば、140センチくらいかな。
そろそろキラも女性らしいところが成長していく頃合いだろうか。
どこって? そりゃもちろん、おっぱいとか。
ジンの屋敷でお風呂に入るときは、みんなで一緒に入るから成長具合がよくわかるってもんだよ。
時々戦士長のイズミさんも風呂場に乱入してくるけど、肉体が6歳程度だからか、それほど興奮したりしないのだ。
イズミさんにしても、相手が転生者であるとしても、見た目6歳児だから特に恥ずかしくもなんともないそうだ。
日本人はやっぱり毎日お風呂だね。ジャパニーズSENTOU 万歳
「キラの双剣はカートリッジ式になっていて、核が取り外し可能だ。キラの双剣の作成が一番手間取ったな。」
スポッと刃から丸いモノが抜けた。
なんだあれ。
「赤竜の竜核。橙竜の竜核。黄竜の竜核。緑竜の竜核。青竜の竜核。藍竜の竜核。紫竜の竜核。これらの欠片を刃に埋め込まむことができる。言うなれば属性剣だ。名付けて―――【属性剣・レインボウ】」
「まんまや」
赤竜の剣は炎を纏う
炎の剣、ロマンだ。
橙竜の剣は砂鉄を纏う。
砂鉄?切った相手の傷口に砂を練りこむの?うわぁ
黄竜の剣は雷を纏う
雷属性の剣! すごい!
緑竜の剣は眠りを誘う。
攻撃的な効果は無かったが、戦闘中にコレはズルい
青竜の剣は水や氷を纏う。
氷結剣。火剣に負けず劣らずロマンだ。
藍竜の剣は毒を纏う。
毒の剣は絶対にヤバい。ダメ、絶対。
紫竜の剣は風を纏う。
言うなれば飛ぶ斬撃だ。
聞けばこれらの効果は竜のブレスの特徴と全く同じだそうだ。
鉄鉱石竜の竜核は加工したら石化能力が付く剣ができるのかしら
聞いたら鉄鉱石竜の竜核は見た目はただの石だったそうだ
うわ、あんなに苦労して倒したのに………鱗や鉱石は高価なものになったのに
一番金になりそうな部分がクズ石ってどういうことだよ
とことん人をイラつかせる竜だったな。
そのクズ石はクズ石であるのは見た目だけらしく、耐久力はオリハルコン級だと言ってたから無駄ではなさそうだったし、何の属性も付与していない状態のただの無属性双剣状態の時の核になった。
すると、剣の切れ味と耐久力が恐ろしいほどになったそうな。
まぁ、よかったんじゃないですか? 僕には鍛冶については全くわかりませんです
石化の効果が付かないのはアレでしたが切れ味上がったならええんとちゃう?
「ねーちゃんにはもったいないくらいの獲物だな」
「なにおう! マイクにはインドアを渡してやるのです! 覚悟するのです!」
「インドアじゃなくて引導ね。インドアを渡してどうすんのさ。喧嘩するなら外でしろ」
僕がツッコミを入れると互いのほっぺたを引っ張りながら屋敷の外に飛び出していつもの喧嘩に発展した。
なかよしこよし。
キラの身体は成長したけど、アホの子はそのままらしい。
見た目6歳児に注意される10歳児ってどうよ。
ありゃりゃ、いつのまにか僕の道具袋に封印した【黒剣・グラムリッツェ】と【属性剣・レインボウ】の模擬戦に発展しやがった
死なない程度の怪我ならルスカに直してもらえるから放っておこう。
なんか『ガガガギギギガガッギィン!』と、捕らえきれない音が響いているけど、放っておくしかないのだ。
下手に手を出したら僕はミンチになる。
「うむ。元気で何よりだな」
ジンもこういっているし、いざとなったらジンが止めるだろう。
二人とも、大人の眼の届く範囲で喧嘩をしてくれる。偉いよ。
「次に、ルスカ嬢だが、悩んだ末、こうなった。」
そういって、奇妙な形の杖をルスカに手渡した
「これ、ルーの?」
「ああ。受け取ってくれるか?」
「うん♪ ありがとー!」
その杖は、トの字になった杖………いわゆるトンファーだった。
はわわ、なんて物騒なものをルスカに持たせるんだ!
「これは、鞘になっていてな。ここの留め具を外してスポッとやると………」
「あ♪ できたの♪」
さらにトンファーから刃物が! これはアレだね。トンファーブレードだね!
侍刃の持ってるゲームに時々出てきたよ!
蛇腹剣にも負けず劣らずのファンタジーのロマン武器!
さすがにルスカに扱わせるトンファーブレードということで、刃は日本刀と同じくらい薄いし幅も短い。
刃になっている部分も、先端だけだ。
「鞘に刃をしまっているときは、こう縦に持ってみろ。」
「うにゅ………こう?」
さらに、今度はトンファーの柄ではなく、鞘を掴んだルスカ。
鞘をしていると、本当に全体的に丸いフォルムのトンファーにしか見えないや
お?
鞘を掴んでいると、もっと別のものに見えてくる。
形状は変だけど普通に杖っぽく見える
それもそのはず、トンファーの取っ手に近い方の先端には丸い珠が付いていた
「これも、竜核を加工したものだ。紫竜の魔石と青竜の魔石。風魔法と水魔法の威力を高めてくれるはずだ。普段はこうして、杖に擬態させておけばいい。」
打撃斬撃だけでなく、魔法にも使えるオールラウンドな武器。
そんなものをルスカに持たせたら、ルスカが最恐になっちゃうじゃないですか!!
ひええ!
いや、でもよく考えてみよう。
他の族長の武器の資料はどうだった?
赤 大槌斧
橙 死神の鎌
黄 棍棒
緑 拳骨当
青 蛇腹剣
藍 鍵爪
紫 斧槍
うむ。誰一人素直な武器じゃないや。
大剣をチョイスしたマイケルの方がレアケースじゃん。
「名付けて【警杖刃】だ。」
名前はそのままだけど、むしろそれがいい。
ルスカは身体能力も高いし、体術を生かせるトンファーはうってつけだったかも。
ジンはそれぞれの人の特性に合った武器を作ってくれる。
自分専用の武器だ。
なんかそういうのってすごくれしいよね
「次にミミロだが………」
うん? なんか僕をすっ飛ばされたような気がする
「ついにわちき専用の武器の登場でありますか! テンションが上がってまいりましたよ!」
ゴゴゴゴゴ と目に見えない紫色のオーラを幻視するするほどのテンションの上がりようだ
はっ! まさかあれは………魔闘気!! なんちゃって。
「とくに特殊なものは無い。簡単に言ったら簡易罠設置キットだ。」
ジンがミミロに手渡したのは、ちょっとした工具箱。
その中には毒針とか眠り薬とか、癇癪珠とか、平坦な壁にロープを設置できるフックだとか、そういう罠を張るうえで便利そうなグッズが並んでいた
「罠を張るならスピードが命。ということで、実際に必要な武器としては手斧と投石機だ。」
続いてミミロに手渡したのは、手斧。これは雑草や邪魔な木の枝なんかを素早く刈り取るためか。
そして、パチンコ。実際に戦わせてもミミロは竜。もともと強いはずだが、基本的にミミロはシーフだ。
遠距離から牽制できるアイテムがちょうどいい
「むーん。なんかみんなのと違って地味ですね」
「だが、弓なんかよりよっぽどお前に合っているはずだ。矢をつがえるよりも、石を拾って即射出。判っているだろうと思うが、人に向けて撃つなよ。遊び道具じゃないのだから」
「はい、心得ておりますゆえ、そこら辺の心配は不要であります!」
大きく頷いたミミロは、やや育ってきた薄い胸をトンと叩く。
ミミロはまだ胸部装甲は必要としないみたいだが、あと1カ月もすれば必要になってくるかも。
竜の成長は早いみたいだし。
イズミさんの話しによれば、中学生くらいの見た目で、一旦成長が落ち着くそうだ。
落ち着くタイミングは個人差があって正確じゃないみたい。
一度成長が落ち着いたら、ゆっくりと成長していくんだって。
藍竜族長のアドミラはイズミさんより年上だけど、16歳くらいの見た目だってジンに聞いたよ。
でも、人型に変身するときは大体見た目の年齢をいじれるらしいけどね。
一番行動しやすい年齢に化けるのが一番魔力の効率がいいそうだ。
「最後にリオルだが………」
「………ごくりんこ」
生唾を飲み込む。
はたして僕にはどんな武器が………!
「………藍竜族長の髪の毛だ」
「おなじやないかーい!」
ばんざーい!
僕はオチ担当だった。
ちくしょう、だから最後にしたんだな!
項垂れた
そりゃそうだよ。僕はみんなの中で一番身体能力が低いし、武器なんか持ってても器用に扱うことなんかできるわけない
「そう落ち込むな。お前は身体能力はヘッポコだが、魔法があるではないか。それに、この髪の毛だってすごいのだぞ。鉄鉱石竜の息の根を止めた毒針じゃねぇか。効果はお前が自身の眼で見ているはずだ!」
「………そういやそうだね。普通の人なんか竜の毒針なんて持っているわけもないし、そんな強力な毒に解毒の術はほとんどなさそうだ」
「な? ただ、強力すぎるから、使いどころを見誤るなよ。
こいつは武器じゃなくて髪の毛だ。コレが武器だなんて、誰も気づかねーよ。
お前専用の籠手を作ってあるから、仕込んでおけ」
「そっちが僕の装備でいいじゃん!」
「わはははは! その反応を見たかったのだ!」
どちくしょう! 僕がこのパーティメンバーで唯一のツッコミ要因だからといって僕を酷使していたら喉が潰れちゃうんだぞ!
ま、僕はちょっとした武器くらいならその辺で売っている物よりもよっぽど強いものを土魔法でちょちょいと作ることも可能だから、ジンはそこらへんも考慮して藍竜族長の髪の毛を僕に渡してくれたんだろう。
結構僕たちのことを本気で考えてくれている。
ありがとう、ジン。
☆
「それと………最後に一つ。」
んん? まだなんかあるのかな
そう思っていたら、黄色い棍棒を取り出した
もしかしてそれも僕の武器?
と思ったら違った。
見覚えのある棍棒だ。
「おいニルド。その辺に隠れていることはわかっているのだ。姿を現したらどうだ?」
棍棒を肩にトントンと叩きながらジンの屋敷の玄関を見る
「にゃっはっはー! いつから気づいていたんだYo!」
そこには黄色い髪の毛をツンツンと逆立て、前髪だけはイナズマ型に整えられている人がいた
見覚えのある顔だ。
黄竜族長。ニルドが居た。
「初めからに決まっているだろうが。正面から堂々と来い、たわけが」
そう言って棍棒をニルドに投げつけるジン。時速130km 一瞬見失った。
「サンキュ。やっぱり抜け目ねぇや。族長会議の日程が決まったから顔見せに来てやったZe ジンのおっさん」
それを片手でキャッチするニルド。
「そもそも、どうして棍棒がこんなになるのだ。何かと戦っておったのか?」
「うん? まーな。西大陸で蛇鶏王が大量発生してたから、アシュリーちゃんとこの手伝いとかで酷使してたら壊れちまった。やっぱこれがあった方がしっくりくるわ」
くるくると棍棒を回して背中に固定すると、今度は僕たちに目を向けた
「お? ガキンチョ共。久しぶりだNa! 元気にしてたか?」
そして僕たちに目を向けるとうれしそうに口元をωにしてニッと笑う
キラッと光る牙が見えた。
「うん! 元気も元気。久しぶりだね、ニルド!」
「二年ぶりくらいか? リオルはちょっと身長伸びたな、外で白竜と黒竜見たぜ。あいつらいっつもあんな喧嘩してんのか? 子供にしちゃレベル高すぎだZe!」
しゃがんで目線を合わせてからポンポンと僕の頭を撫でる
見た目はチャラくて言動もチャラいのに。やっぱりなんだかんだで優しい所がある。
「よいしょっとこらぁ!」
「きゃー! 高いの! すごいのー!」
子供が好きなんだろう。ルスカを肩車して喜ばせている
ルスカはニルドのことを覚えているだろうか。
一度だけあったことがあるんだぞ。
「あ! ルー殿ズルいであります! ニルド殿! 次はわちきも肩車してください!」
「よしきた! Fu~~~~! 」
「わーい! 高いであります!」
ルスカを優しく地面に降ろすと、今度はミミロを肩車
竜の族長って子供に甘いんだろうか。
人格者だからこそ、族長になったのだろうか。
「あ、そういやな。あいつらも一緒にきたんだZe☆」
棍棒にルスカをぶら下げ、その反対側に僕をぶら下げ、肩の上にミミロを乗せたニルドはさらに玄関を指差す
なになに?
あいつら? どなただろう。
玄関に顔を向けると
「やほー! リオル。ルスカ。ミミロちゃん。久しぶりだね!」
「うむ。以前より体も太くなってきておるのではないか?」
そこに居たのは
「おー! ゼニスとフィアルなの!」
「族長殿とフィアル殿! こちらにいらしていたのでありますか! 気づくのが遅れてしまい申し訳ありません………」
ゼニスとフィアルだった
フィアルはちょっと大人っぽくなってる。
もう20歳くらいだろうか。
人懐っこそうな笑みが魅力的だ。
僕とルスカはシンクロしてニルドの棍棒から飛び降り、ルスカはゼニスへ僕はフィアル先生に抱き着いた
この辺のシンクロ具合が双子だ。
「よい、気にするな。私たちも急に来たからな。」
「二人とも、なんでここに!?」
僕がそう聞くと
「うむ。フィアルには赤竜の里をゲートに登録してもらっていたからな。すぐに来れたのだ。」
僕が聞きたいのはそう言うことじゃない。
でも、なつかしいな。二人と別れたのは一年半くらい前だったし
「ゼニスさんってば時間にルーズでしょ? ニルドさんがゼニスさんを連れだして来たんだよ。ここは私のゲートを登録してあるから行き来は一瞬だし、いくら時間にルーズなゼニスさんでも、さすがに一瞬で来れるんじゃ時間を気にする必要もないしね」
フィアル先生が補足してくれた。なるほど。
だがやはり僕の知りたい答えではなかった
どうやって来たかじゃなくて、何をしに来たのか。
その目的が知りたいのです。
まぁ、黄竜族長のニルドが来た時点で、ある程度の予測はついているけどね。
族長会議の日程が決まったんだ
「それで、会議はいつなのだ」
僕の心を読んだかのようなタイミングでジンがニルドに日程を聞いた
すると、ニルドはミミロを肩から降ろすと、バチコン☆ と☆が付くほど晴れやかなウインクで
「明日だZe☆」
「あしたぁ!!?」
ニルドがウインクしながら指をパチンと鳴らして手のひらを上に向けてジンを指差す
ジンがいかにもびっくり仰天という風に驚きを顔に表す
その様子をみたニルドがケラケラと笑う
「なぜもっと早くに来ないのだ!!」
「なぜ………? にゃははは! その反応が見たかったのSa☆」
人、それをブーメランと言う。
二秒後、ニルドがジンの手によって絞め落とされたことは言うまでもない
ニルドは人をおちょくり、ジンはその冗談が通用しないため、ニルドはジンのことを苦手としているようだ。
ただ、族長会議が明日って言うのは、本当らしい。
「おーい! お前らの武器が完成したぞ!」
そして、時間はかかったけど僕らみんなの武器が完成した!!
なんてったって僕らの武器は鉄鉱石竜や他の色竜の素材で作られているからね!!
それに、ジンの作る武器は魔剣の類になることもあるようで、国宝級の値段が付くこともあるとかないとか
おそらくさすがにそれはない。
でも、ただの木刀を鉄鉱石竜と渡り合える魔剣に変える程の腕前を持っているジンだ。
それが本物の武器となれば、どんな敵でも問答無用でバッタバッタコオロギカマキリと薙ぎ払っていくだろう
「まずはマイケル。大剣だ。この大剣にはお前の牙が入っている。
それを核にして闇水晶で覆い、刃の部分は紅熱石で作ってある。
少々接合に苦労したが、どえらい耐久力が高いし、魔力を通すと紅熱石が発熱して対象を焼き切ることができる。
そして、切った対象もしくはぶつかった対象に1.1倍の重力が加算される。
魔王ジャックハルトが持っている剣と同等の効果がある。作ったオレもびっくりだ。」
「ふおおおおお! ありがとう、師匠!!」
マイケルはその身の丈に合わない大剣を受け取った。
現在のマイケルの容姿は10歳程度。135cmくらいかな。僕より頭1.5個分くらい大きくなってる。
僕なんかまだ110cmにもうチョイで届くかなって程度なのにね。
「どうだ兄ちゃん、ルスカお姉ちゃん。かっちょいいだろ!」
「すっごく大きいの!」
「めっちゃかっこいい! でもマイケル、ちゃんとそれ振り回せるの?」
「へへっ ちょっと振ってみる」
自分の身長を軽く超える大剣だ。
僕は持ち上げられる自信が無い。
でもマイケルは片手でヒョイと上げ下げ。さらに両手でしっかりと柄を握りしめて、縦に一閃。
ブンッ と乱暴に風を切る音が聞こえる
「うん、いい感じだ。」
「よかったね、マイケル」
「うん!」
僕を見下ろして二カッと笑った。うおっ、イケメンスマイル!
だけど、その身長差にどこか置いて行かれたかのような寂しさを感じる。
しかし、マイケルは身長も見た目年齢も僕よりも上なのに、やっぱり僕らを下に視ることはなく、いい子に育ったなぁと感心する
悪の化身と呼ばれたはずの黒竜がいい子。ぷぷっ。言い伝えってのは当てになんないね。
400年前から魔王をしているジャックにそこん所を聞いてみると、『俺がまだ魔王の子の時代に黒竜を連れて町とか国とか破壊して回ったからなぁ。だからじゃねぇか?』とおっしゃった。
あんた何してんのさ。
ダゴナン教の教えも、400年前の人魔戦争をもとに作られているようだ。
人魔戦争の影響で人口が減って、大多数の人間が黒竜は魔王の子と共に町を滅ぼす悪の化身だと400年前から根づいてしまっては、実際は竜にも個体差があるというのに先入観で黒竜は悪だとすべて決めつけてしまうということだろうか。
マイケルは何度も素振りをし、ジンに向き直った
「しっくりくる。おれ、コレ気に入ったよ、師匠!」
「そうか、気に入ってくれたならオレもうれしいぞ! わはははは!」
すこし大人になってきたと思われるマイケルも、やはりジンにとってはまだ子供なわけで。
ジンはマイケルの頭を荒っぽく撫でつけた
「ま、それを本格的に使うなら、もうちょっと身長がでかくなってからだな」
さすがに10歳児体系での大剣の使用は厳しいようで、今は僕の道具袋に封印。
ちなみに、大剣の柄にマイケルの幼き頃の竜鱗を使用して滑り止めにしてあるそうだ。
ほう、結局竜鱗も牙も無駄にはならなかったようだ
鱗は攻撃力に加算されないポジションだろうけど、柄に使用したことによって、黒竜のマイケルにはこれ以上ないフィット感を体験させてくれるようだ
「大剣の名を―――【黒剣・グラムリッツェ】という。大事にしろよ」
ピクリと僕の中の何かが反応した。
グラムリッツェ。はて、どこかで………。
「うん! 任せてよ師匠!」
ぐっと拳を握るマイケルが目に映った。
ふむ。どうでもいいか。
「そんで、つぎはキラだな。キラの武器は―――こいつらだ。大奮発。売るとしたらオリハルコン貨の買い物をする代物だ。」
キラの目の前に二振りの剣が置かれる
「キラには双剣がいいだろうと思ってな。」
「わかったのです。ありがたく受け取るのです! これでマイクを殺すのですー!」
「ん。ほどほどにしておくのだぞ」
大きく頷いてキラの頭を撫でる
キラはセミロングの髪をサイドから後ろにかけて編みこんだ髪型。
イズミさんに教えてもらって僕が編みこんだ。キラはこの髪型が一番似合う。
体の起伏は未だに乏しいが、少々色気を感じなくもない程度には大人になってきている
これは僕がまだ6歳だから感じている事だろうか。
元中学生としての目線で見たら、キラもまだまだ子供っぽいや。
マイケルと同じ10歳程度で、この頃の男女の身長比率で言えば、女子の方が成長が早いらしいし、身長で言えば、140センチくらいかな。
そろそろキラも女性らしいところが成長していく頃合いだろうか。
どこって? そりゃもちろん、おっぱいとか。
ジンの屋敷でお風呂に入るときは、みんなで一緒に入るから成長具合がよくわかるってもんだよ。
時々戦士長のイズミさんも風呂場に乱入してくるけど、肉体が6歳程度だからか、それほど興奮したりしないのだ。
イズミさんにしても、相手が転生者であるとしても、見た目6歳児だから特に恥ずかしくもなんともないそうだ。
日本人はやっぱり毎日お風呂だね。ジャパニーズSENTOU 万歳
「キラの双剣はカートリッジ式になっていて、核が取り外し可能だ。キラの双剣の作成が一番手間取ったな。」
スポッと刃から丸いモノが抜けた。
なんだあれ。
「赤竜の竜核。橙竜の竜核。黄竜の竜核。緑竜の竜核。青竜の竜核。藍竜の竜核。紫竜の竜核。これらの欠片を刃に埋め込まむことができる。言うなれば属性剣だ。名付けて―――【属性剣・レインボウ】」
「まんまや」
赤竜の剣は炎を纏う
炎の剣、ロマンだ。
橙竜の剣は砂鉄を纏う。
砂鉄?切った相手の傷口に砂を練りこむの?うわぁ
黄竜の剣は雷を纏う
雷属性の剣! すごい!
緑竜の剣は眠りを誘う。
攻撃的な効果は無かったが、戦闘中にコレはズルい
青竜の剣は水や氷を纏う。
氷結剣。火剣に負けず劣らずロマンだ。
藍竜の剣は毒を纏う。
毒の剣は絶対にヤバい。ダメ、絶対。
紫竜の剣は風を纏う。
言うなれば飛ぶ斬撃だ。
聞けばこれらの効果は竜のブレスの特徴と全く同じだそうだ。
鉄鉱石竜の竜核は加工したら石化能力が付く剣ができるのかしら
聞いたら鉄鉱石竜の竜核は見た目はただの石だったそうだ
うわ、あんなに苦労して倒したのに………鱗や鉱石は高価なものになったのに
一番金になりそうな部分がクズ石ってどういうことだよ
とことん人をイラつかせる竜だったな。
そのクズ石はクズ石であるのは見た目だけらしく、耐久力はオリハルコン級だと言ってたから無駄ではなさそうだったし、何の属性も付与していない状態のただの無属性双剣状態の時の核になった。
すると、剣の切れ味と耐久力が恐ろしいほどになったそうな。
まぁ、よかったんじゃないですか? 僕には鍛冶については全くわかりませんです
石化の効果が付かないのはアレでしたが切れ味上がったならええんとちゃう?
「ねーちゃんにはもったいないくらいの獲物だな」
「なにおう! マイクにはインドアを渡してやるのです! 覚悟するのです!」
「インドアじゃなくて引導ね。インドアを渡してどうすんのさ。喧嘩するなら外でしろ」
僕がツッコミを入れると互いのほっぺたを引っ張りながら屋敷の外に飛び出していつもの喧嘩に発展した。
なかよしこよし。
キラの身体は成長したけど、アホの子はそのままらしい。
見た目6歳児に注意される10歳児ってどうよ。
ありゃりゃ、いつのまにか僕の道具袋に封印した【黒剣・グラムリッツェ】と【属性剣・レインボウ】の模擬戦に発展しやがった
死なない程度の怪我ならルスカに直してもらえるから放っておこう。
なんか『ガガガギギギガガッギィン!』と、捕らえきれない音が響いているけど、放っておくしかないのだ。
下手に手を出したら僕はミンチになる。
「うむ。元気で何よりだな」
ジンもこういっているし、いざとなったらジンが止めるだろう。
二人とも、大人の眼の届く範囲で喧嘩をしてくれる。偉いよ。
「次に、ルスカ嬢だが、悩んだ末、こうなった。」
そういって、奇妙な形の杖をルスカに手渡した
「これ、ルーの?」
「ああ。受け取ってくれるか?」
「うん♪ ありがとー!」
その杖は、トの字になった杖………いわゆるトンファーだった。
はわわ、なんて物騒なものをルスカに持たせるんだ!
「これは、鞘になっていてな。ここの留め具を外してスポッとやると………」
「あ♪ できたの♪」
さらにトンファーから刃物が! これはアレだね。トンファーブレードだね!
侍刃の持ってるゲームに時々出てきたよ!
蛇腹剣にも負けず劣らずのファンタジーのロマン武器!
さすがにルスカに扱わせるトンファーブレードということで、刃は日本刀と同じくらい薄いし幅も短い。
刃になっている部分も、先端だけだ。
「鞘に刃をしまっているときは、こう縦に持ってみろ。」
「うにゅ………こう?」
さらに、今度はトンファーの柄ではなく、鞘を掴んだルスカ。
鞘をしていると、本当に全体的に丸いフォルムのトンファーにしか見えないや
お?
鞘を掴んでいると、もっと別のものに見えてくる。
形状は変だけど普通に杖っぽく見える
それもそのはず、トンファーの取っ手に近い方の先端には丸い珠が付いていた
「これも、竜核を加工したものだ。紫竜の魔石と青竜の魔石。風魔法と水魔法の威力を高めてくれるはずだ。普段はこうして、杖に擬態させておけばいい。」
打撃斬撃だけでなく、魔法にも使えるオールラウンドな武器。
そんなものをルスカに持たせたら、ルスカが最恐になっちゃうじゃないですか!!
ひええ!
いや、でもよく考えてみよう。
他の族長の武器の資料はどうだった?
赤 大槌斧
橙 死神の鎌
黄 棍棒
緑 拳骨当
青 蛇腹剣
藍 鍵爪
紫 斧槍
うむ。誰一人素直な武器じゃないや。
大剣をチョイスしたマイケルの方がレアケースじゃん。
「名付けて【警杖刃】だ。」
名前はそのままだけど、むしろそれがいい。
ルスカは身体能力も高いし、体術を生かせるトンファーはうってつけだったかも。
ジンはそれぞれの人の特性に合った武器を作ってくれる。
自分専用の武器だ。
なんかそういうのってすごくれしいよね
「次にミミロだが………」
うん? なんか僕をすっ飛ばされたような気がする
「ついにわちき専用の武器の登場でありますか! テンションが上がってまいりましたよ!」
ゴゴゴゴゴ と目に見えない紫色のオーラを幻視するするほどのテンションの上がりようだ
はっ! まさかあれは………魔闘気!! なんちゃって。
「とくに特殊なものは無い。簡単に言ったら簡易罠設置キットだ。」
ジンがミミロに手渡したのは、ちょっとした工具箱。
その中には毒針とか眠り薬とか、癇癪珠とか、平坦な壁にロープを設置できるフックだとか、そういう罠を張るうえで便利そうなグッズが並んでいた
「罠を張るならスピードが命。ということで、実際に必要な武器としては手斧と投石機だ。」
続いてミミロに手渡したのは、手斧。これは雑草や邪魔な木の枝なんかを素早く刈り取るためか。
そして、パチンコ。実際に戦わせてもミミロは竜。もともと強いはずだが、基本的にミミロはシーフだ。
遠距離から牽制できるアイテムがちょうどいい
「むーん。なんかみんなのと違って地味ですね」
「だが、弓なんかよりよっぽどお前に合っているはずだ。矢をつがえるよりも、石を拾って即射出。判っているだろうと思うが、人に向けて撃つなよ。遊び道具じゃないのだから」
「はい、心得ておりますゆえ、そこら辺の心配は不要であります!」
大きく頷いたミミロは、やや育ってきた薄い胸をトンと叩く。
ミミロはまだ胸部装甲は必要としないみたいだが、あと1カ月もすれば必要になってくるかも。
竜の成長は早いみたいだし。
イズミさんの話しによれば、中学生くらいの見た目で、一旦成長が落ち着くそうだ。
落ち着くタイミングは個人差があって正確じゃないみたい。
一度成長が落ち着いたら、ゆっくりと成長していくんだって。
藍竜族長のアドミラはイズミさんより年上だけど、16歳くらいの見た目だってジンに聞いたよ。
でも、人型に変身するときは大体見た目の年齢をいじれるらしいけどね。
一番行動しやすい年齢に化けるのが一番魔力の効率がいいそうだ。
「最後にリオルだが………」
「………ごくりんこ」
生唾を飲み込む。
はたして僕にはどんな武器が………!
「………藍竜族長の髪の毛だ」
「おなじやないかーい!」
ばんざーい!
僕はオチ担当だった。
ちくしょう、だから最後にしたんだな!
項垂れた
そりゃそうだよ。僕はみんなの中で一番身体能力が低いし、武器なんか持ってても器用に扱うことなんかできるわけない
「そう落ち込むな。お前は身体能力はヘッポコだが、魔法があるではないか。それに、この髪の毛だってすごいのだぞ。鉄鉱石竜の息の根を止めた毒針じゃねぇか。効果はお前が自身の眼で見ているはずだ!」
「………そういやそうだね。普通の人なんか竜の毒針なんて持っているわけもないし、そんな強力な毒に解毒の術はほとんどなさそうだ」
「な? ただ、強力すぎるから、使いどころを見誤るなよ。
こいつは武器じゃなくて髪の毛だ。コレが武器だなんて、誰も気づかねーよ。
お前専用の籠手を作ってあるから、仕込んでおけ」
「そっちが僕の装備でいいじゃん!」
「わはははは! その反応を見たかったのだ!」
どちくしょう! 僕がこのパーティメンバーで唯一のツッコミ要因だからといって僕を酷使していたら喉が潰れちゃうんだぞ!
ま、僕はちょっとした武器くらいならその辺で売っている物よりもよっぽど強いものを土魔法でちょちょいと作ることも可能だから、ジンはそこらへんも考慮して藍竜族長の髪の毛を僕に渡してくれたんだろう。
結構僕たちのことを本気で考えてくれている。
ありがとう、ジン。
☆
「それと………最後に一つ。」
んん? まだなんかあるのかな
そう思っていたら、黄色い棍棒を取り出した
もしかしてそれも僕の武器?
と思ったら違った。
見覚えのある棍棒だ。
「おいニルド。その辺に隠れていることはわかっているのだ。姿を現したらどうだ?」
棍棒を肩にトントンと叩きながらジンの屋敷の玄関を見る
「にゃっはっはー! いつから気づいていたんだYo!」
そこには黄色い髪の毛をツンツンと逆立て、前髪だけはイナズマ型に整えられている人がいた
見覚えのある顔だ。
黄竜族長。ニルドが居た。
「初めからに決まっているだろうが。正面から堂々と来い、たわけが」
そう言って棍棒をニルドに投げつけるジン。時速130km 一瞬見失った。
「サンキュ。やっぱり抜け目ねぇや。族長会議の日程が決まったから顔見せに来てやったZe ジンのおっさん」
それを片手でキャッチするニルド。
「そもそも、どうして棍棒がこんなになるのだ。何かと戦っておったのか?」
「うん? まーな。西大陸で蛇鶏王が大量発生してたから、アシュリーちゃんとこの手伝いとかで酷使してたら壊れちまった。やっぱこれがあった方がしっくりくるわ」
くるくると棍棒を回して背中に固定すると、今度は僕たちに目を向けた
「お? ガキンチョ共。久しぶりだNa! 元気にしてたか?」
そして僕たちに目を向けるとうれしそうに口元をωにしてニッと笑う
キラッと光る牙が見えた。
「うん! 元気も元気。久しぶりだね、ニルド!」
「二年ぶりくらいか? リオルはちょっと身長伸びたな、外で白竜と黒竜見たぜ。あいつらいっつもあんな喧嘩してんのか? 子供にしちゃレベル高すぎだZe!」
しゃがんで目線を合わせてからポンポンと僕の頭を撫でる
見た目はチャラくて言動もチャラいのに。やっぱりなんだかんだで優しい所がある。
「よいしょっとこらぁ!」
「きゃー! 高いの! すごいのー!」
子供が好きなんだろう。ルスカを肩車して喜ばせている
ルスカはニルドのことを覚えているだろうか。
一度だけあったことがあるんだぞ。
「あ! ルー殿ズルいであります! ニルド殿! 次はわちきも肩車してください!」
「よしきた! Fu~~~~! 」
「わーい! 高いであります!」
ルスカを優しく地面に降ろすと、今度はミミロを肩車
竜の族長って子供に甘いんだろうか。
人格者だからこそ、族長になったのだろうか。
「あ、そういやな。あいつらも一緒にきたんだZe☆」
棍棒にルスカをぶら下げ、その反対側に僕をぶら下げ、肩の上にミミロを乗せたニルドはさらに玄関を指差す
なになに?
あいつら? どなただろう。
玄関に顔を向けると
「やほー! リオル。ルスカ。ミミロちゃん。久しぶりだね!」
「うむ。以前より体も太くなってきておるのではないか?」
そこに居たのは
「おー! ゼニスとフィアルなの!」
「族長殿とフィアル殿! こちらにいらしていたのでありますか! 気づくのが遅れてしまい申し訳ありません………」
ゼニスとフィアルだった
フィアルはちょっと大人っぽくなってる。
もう20歳くらいだろうか。
人懐っこそうな笑みが魅力的だ。
僕とルスカはシンクロしてニルドの棍棒から飛び降り、ルスカはゼニスへ僕はフィアル先生に抱き着いた
この辺のシンクロ具合が双子だ。
「よい、気にするな。私たちも急に来たからな。」
「二人とも、なんでここに!?」
僕がそう聞くと
「うむ。フィアルには赤竜の里をゲートに登録してもらっていたからな。すぐに来れたのだ。」
僕が聞きたいのはそう言うことじゃない。
でも、なつかしいな。二人と別れたのは一年半くらい前だったし
「ゼニスさんってば時間にルーズでしょ? ニルドさんがゼニスさんを連れだして来たんだよ。ここは私のゲートを登録してあるから行き来は一瞬だし、いくら時間にルーズなゼニスさんでも、さすがに一瞬で来れるんじゃ時間を気にする必要もないしね」
フィアル先生が補足してくれた。なるほど。
だがやはり僕の知りたい答えではなかった
どうやって来たかじゃなくて、何をしに来たのか。
その目的が知りたいのです。
まぁ、黄竜族長のニルドが来た時点で、ある程度の予測はついているけどね。
族長会議の日程が決まったんだ
「それで、会議はいつなのだ」
僕の心を読んだかのようなタイミングでジンがニルドに日程を聞いた
すると、ニルドはミミロを肩から降ろすと、バチコン☆ と☆が付くほど晴れやかなウインクで
「明日だZe☆」
「あしたぁ!!?」
ニルドがウインクしながら指をパチンと鳴らして手のひらを上に向けてジンを指差す
ジンがいかにもびっくり仰天という風に驚きを顔に表す
その様子をみたニルドがケラケラと笑う
「なぜもっと早くに来ないのだ!!」
「なぜ………? にゃははは! その反応が見たかったのSa☆」
人、それをブーメランと言う。
二秒後、ニルドがジンの手によって絞め落とされたことは言うまでもない
ニルドは人をおちょくり、ジンはその冗談が通用しないため、ニルドはジンのことを苦手としているようだ。
ただ、族長会議が明日って言うのは、本当らしい。
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