テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!

たっさそ

第22話☆由依ーふーん、なんだかえっちにゃ



 瓦礫の上でチェケらするヒップホッパーの佐久間太郎


 彼の尽力により、腹に風穴の開いたリビディアだが、このくらいでくたばるならば魔王んとこの幹部になんかなれるわけがない。


「やってくれたわね………予想外の強さ。マルよ。勇者たち」


 腹に散弾食らったのに生きている。
 そのタフネスが、魔人族たる由縁なのかもしれない。


 リザードマンの死体で溢れるこの吹雪の戦場で、地に降りたリビディアは


 リビディアは息を吸い、指を咥えた。
 また指笛で魔物を呼ぶつもりか! 私が魔力弾をぶん投げてやろうと左足を上げセットポジションで構えた瞬間


「させないにゃ! 田中がやっつけてやるにゃ!!」


 魔法少女マジカル☆タナカちゃんが魔法のステッキに跨がり、リビディアに接近。
 指をパチンと鳴らしてリビディアの存在自体を消滅させようとするものの


「あら、抵抗くらいするわよ。」


 足元のリザードマンの死体をタナカちゃんに投げつける。


「にゃ!? 」


 タナカちゃんが消滅させたのは、リザードマンの死体。
 パチンと鳴った瞬間には、タナカちゃん視界にはリザードマンしか映らず、マジカル☆タナカの邪眼で消したのはそのリザードマンが対象となってしまった。


「もう一度………!」


 ピィーーー!!!




 タナカちゃんがもう一度リビディアの存在を消そうとするも、リビディアの指笛の方が早く響いてしまった。


 吹雪で動けなくなっていたリザードマンたちが興奮して動き出す。


「もう一度やってもいいけど、この子たちがすぐに盾になってくれるわ」


「ぐぬぬにゃ!」


 と、タナカちゃんがぐぬぬ顔をしていると、私たちが落ちてきた迷宮の亀裂の方から


ーードォオオオオン!!


 と爆音が聞こえてきた。


「タツル………………!」


「向こうもそろそろ終わったかしら。」


「あなたの仲間がやられた音かもしれないよ。タツルは強いからね」


 爆発の衝撃か何かで降ってきた魔物たち。
 ゴブリン、オーク、オーガやウルフ。タツルもこれだけの相手を一人で対峙していたってこと?
 無茶するよ!


 降ってきた魔物たちは、落下の衝撃に耐えきれずに息絶えている者がほとんどだが、オーガの息が残っていた。
 キョーコの歌のバフも消え、吹雪いていた景色も元に戻る。
 言霊系の弱点としては、歌が終わってしまえば、そう長く効果が残る物でもないのだ。
 吹雪もリザードマンに意味をなさなくなった現在、私たちの動きにも支障が出るであろう


「勇者数人がかりで私にかかってきているくせに、若い子一人でジョンに勝てるとでも?」


「樹にゃんは負けないにゃ。確定事項にゃ。心配はこれっぽっちもしていないにゃ」


「その信頼、ハナマルね。それがいつまで持つか! 試してあげるわ! あなたたちの命で!」


 リビディアは、腹に空いた風穴から流れる血を掴み、空気中に散布する


「私のアビリティは<女王様の興奮作用リビドー>………人間も魔物も、私の放つ音、香り、視覚情報から興奮を得る。魔物なんかは、元気に働いてくれるわよ」


 血の香り、指笛の音に誘われて興奮した魔物が大行進する。
 理性を失った魔物はそれだけで厄介だ。
 血の香りを浴びたオーガが、ギギギ! と震えながら立ち上がる。
 頭に浮いた血管が、今にもはち切れそうだ。


「ふーん、なんだかえっちにゃ」
「ええ。そんなえっちに大興奮した魔物たちに、あなたたちは蹂躙されるの」


 グォオオオオオ!!!


 興奮したオーガが一匹、雄叫びをあげた。


「私を倒さないとこの興奮は消えないわ。そして、私自身に戦闘能力はほとんどない。でもね、私は五戒魔帝、邪淫のリビディア。伊達で幹部になっているわけではないわ!!」


 ピィイイイイ!!!


 さらなる指笛で軍勢を呼ぶ。


「迷宮第二層はジュエルタランチュラ。魔法耐性。物理も当然、ハナマルよ。」


 カサカサカサカサ!!!
 それは、直径1ミリから50cmまで様々な大きさの、クモの群れ。


「いやあああ!! ムシ! ムシィーーーー!!!」
「ああ、死ぬのよ、死ぬの、私。やってられないわ本当………」


 巨乳水泳部の岡野マスミちゃんは大の虫嫌い。
 というか、女の子は大体虫が嫌いだし、男の子だって虫が嫌いな人は嫌いだ。
 雨女の池田ミカちゃんはもう諦念してどんよりと頭上に雲が浮かんでいる。


「うぉおおおあああ!!? す、すまん雄大! 俺、足が8本以上ある生き物全部無理なんだ!」


 そんで、一番情けない声をあげているのが、チンピラ青信号。青葉徹。


「俺はカニもムカデも、ましてやクモなんて、直視さえできないんだよおお!!」


 ひぃいいい! と情けない声をあげながら赤信号の背に飛び乗る青信号


「邪魔だ! んなもん踏みつぶせばいいだろタコ!」
「タコなんていうなよ! 8本足の代表じゃないか! あんなの踏み潰した感触が残るなんて俺、耐えられねえよ!」
「くっそ面倒臭え!」


 情けない。私を含め、女子たちが冷めた目で青信号を見たが、まぁ、確かに好き好んで踏み潰したいとは思わないし、見たいとも思わないから、気持ちはわからんでもない。




「このジュエルタランチュラは、小さい隙間を通って、一層にも現れちゃうの。どこかにこの子たちにしか知らない隠し通路でもあるのかしら?」


「ひぃいいい!!!」


 なんか女子よりも怖がってるチンピラがいたけど、リビディアはそれを気にせず、身体中にクモを這わせていた。


「うふふ、傷を縫ってくれるの? やさしいわね。ハナマルあげちゃうわ。」




 それどころか、腹に空いた傷口に進入して、体内に残る散弾の摘出。及び傷口の縫合を行っていた。
 身体中を蹂躙される激痛のはずだが、眉を寄せて、それでも笑顔でクモをねぎらうリビディア。


 よくよく考えたらクモの糸って、タンパク性だから体内で分解されるのかな。
 だとしたらよくできたクモだ。ちょっと研究してみたいかも。




「魔獣の使役っていうのは、こうするのよ。そこのさんかくテイマーさん」


「なにおう! 私のもふもふ、二郎三郎ジロウサブロウちゃんだって負けてないんだから!! やっちゃって! 二郎三郎ちゃん!」


「ガオォオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 カナのリトルフェンリルが咆哮すると、その正面にいたクモたちがまさにクモの子を散らすように散開する。
 巻き込まれた小型中型のクモはその咆哮に巻き込まれて消め………ちょっとまって、そのリトルフェンリルの名前って二郎三郎なの!?


 ネーミングセンスすごいなそれ!!




 













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