テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!

たっさそ

第19話 由依ークソ野郎の反対語は素敵乙女



「うわあああ!」
「お、お、お、おちちちち!!!」
「俺は誰だぁぁぁぁあ!?」
「若干浮いてりゅぅう!!」




 突然裂けた地面に飲み込まれる私たち。


 落ちる寸前に、タツルが私たちに魔法をかけてくれたのがわかった。
 落下の速度を遅くしてくれる魔法。


 瓦礫を蹴って亀裂から逃れたタツルを見て、私の役目はクラスメイトたちのお守りだと悟る。


「ふむ………………。」


ふと周囲を見ると、空中だというのにあぐらをかいて顎に指を当てるタエコちゃん。


「タエコちゃんは落ちながらも冷静だね。何考えてるの?」
「なに、ワシにキンタマでもついていれば、このような魔法などなくとも滑空して降りられたのじゃが、と思っておっただけじゃ」
「わりとしょーもなかった」


 そういや、狸が化ける時、よく、その………あれを何かに変化させたり伸ばしたりするっぽいよね


「妙子にゃん、実際のところ、タヌキのちんちんって大きいのかにゃ?」


 涙目の俊平ちゃんの首根っこを掴みながら宙をすいすいと泳いでやってきたタナカちゃんが聞き耳を立てていたらしく、落下中の会話に参戦。
 発言に恥じらいすらないあたり、タナカちゃんは田中なんだなぁとしみじみ思う。


「銀杏程度じゃよ」
「にゃははー! ちいさいにゃ!」




 無駄な知識が一つ追加された。


「女子トーク………いつもこんな話してるの………?」




 タナカちゃんに首根っこ掴まれた俊平ちゃんの声は、クラスメイトたちの絶叫に溶けて消えた。










          ☆










地面についた。


「さっきの謎の台詞の人の話が本当だとするならば、ここは迷宮の中ってことになるね」
「そうにゃ。多分魔族にゃ。本当に敵か味方かは分からないけど、ここまでされちゃー、流石の田中もぷっつんにゃ。戦闘装備に着替えるにゃ。」


近くに男子がいてもしのごのいってられない。


タナカちゃんは遠征用に支給された兵隊服(アビリティの効果で兵隊さんが使える技能を使えるよ。剣とかサバイバル術とか)を脱ぎ捨て、決戦衣装、マジカル☆タナカへと変身する。


黒くてゴスロリなのに背中がメチャクチャ開いている。とんがり帽を被った女の子。完全にミスマッチだ。


ニチアサではなく、ラノベ発の学園魔法少女コスなので、エグい能力を拵えているらしい。


キャラクターはマジカル☆アカデミーのラスボスであるマジカル☆エイミー。
魔王と称される彼女は、邪眼を使い、マジカルステッキに跨って空を飛び、記憶を操作して、指先一つで存在を消し去る。


まさにチートオブチートのコスプレだ。


指パッチンで的の巻藁が消えた時、それを私に打たれたら、私でも間違いなく死ぬ。


安心感が半端ねぇ。


ちなみに、原作でも倒すには至らず、説得によって眠りにつくことになった。


そんな存在だ。


タナカちゃんはコスプレ状態だとその能力を発揮することが可能になる。


ただし、まだタナカちゃん本人のレベルが低いため強い能力を数は打てない。




「集合!! 整列!」




全員が着地をして落ち着いた後
団長のダンさんの宣言に生徒達は決まった並び順で即座に整列。


「樹くんが居ません!」


と宣言したのは、インテリメガネのカラスくん。
集合整列は叩き込まれた集団行動の基礎。
居なくなった人物がいればすぐに把握できるのだ。


「タツルは巻き込まれなかったか、上手く避けたのだろう。アイツは勘と反射能力が高い。もしかしたら、落ちる速度を遅くしたのも、タツルかもしれんな」


団長は勘がいいなぁ。


「タツルが瓦礫を蹴って亀裂から抜けたのを見ました。多分敵と対峙してます。」


と、私が見たことを告げれば


「………ならば急いで戻らねばなるまい。」


神妙な顔で頷いた。
その瞬間である。


『それはバツね。私がさせないもの』




 突如聞こえた声。
 音源に目を向ければ、瓦礫に腰をかける、歪曲したツノの生えた少女。


 赤い瞳に浅黒い肌はYPユイポイントは高得点だ。
3YPね。
 ちなみに、10YPユイポイント集めると、なんと1000TPタツルポイントと交換することができるよ。


 ふむ、タツルがこの女に気づかないわけがない。
 魔族は二人いたんだ。




「お前は! 五戒魔帝、邪淫のリビディア!!」




おっと、敵の幹部だったらしい。




「あら、私を知っているのね? そこの騎士さまにはハナマルあげちゃう!」


 団長さんは相手の名前を知っていたのか、驚愕の表情を浮かべるものの、リビディアは手でハートを作り、団長にウインクで返した。


「おい、タツルはどうした?」


 だが、そんなことはお構いなしに、団長はタツルの安否の心配をする。
 怒気を孕んだ声でリビディアを威圧する声に、ブルリと肩が震えるタナカちゃん。




「ああ、この亀裂から抜けられた子? さーね。情報漏らすのはバツだもの。答えてあげないわ。もう死んじゃってたりして」


「クソ野郎………!」


「バツバツバツ! 野郎じゃないわ。乙女だもの。それに、汚い言葉遣いはバッテンよ。そうね、私のことは素敵乙女、とでも言ってもらおうかしら。」


何言ってんだこいつ。




「それにね………貴方達こそ、無事で帰れると思わないで頂ける?」






ーーーピィイイイーーーーーーー!!!


と、指笛を吹くリビディア。
私の目には音に乗せて魔力が散布されるのが見えたので、魔力を全身に纏って相手の魔力を弾く。




「さて、何時間耐えられるかしら。見ものだわ。」




 瓦礫に座るリビディアは、愉快そうに嗤う。


 次いで聞こえてきたのは、ドドドド、と、地面を伝う振動




「ジラトールの大迷宮。第一層に住まうはリザードマン。さあ、勇者の力、見せてご覧なさい!」


 百を超えるリザードマンの大群が、此方に迫ってきていた。







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