テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!
第17話 樹ー俺に見えているもの
ゴブリンの頭が刎ねられ、気分を悪くしたクラスメイト達には申し訳ないが
「油断するな、ゴブリンは1匹見たら10匹いると思え!」
世のゴブリンはゴキブリンともいわれるほど繁殖力の高い魔物だ。
団長の声に、俺は首の刎ねられたゴブリンに突き刺さる簡易手裏剣を抜いて構える。
この簡易手裏剣、簡易という割には性能は十分。
こんなもの、殺傷能力自体は少な目だが、注意をそらすのには十分な働きをする。
一度投げてみて、結び目の方に若干曲がってしまう癖があるが、使い捨ての武器にそこまでの性能はもともと求めていない。
「出たぞ!」
との団長の声に、バシュ! と何かを射出する音。
ドサッ、と何かが倒れる音。
「拙者の狙いに狂いはないでござる。忍忍。」
輪ゴマー忍者の服部ゴンゾウが石かなにかを射出したらしい。
ゴンゾウのアビリティは<輪ゴム忍者> 輪ゴムの勇者
いやだから名前。しかもこいつ、忍者の勇者じゃなくて輪ゴムの勇者だし。
………語呂が悪かったのかな。
輪ゴムの忍者でもいいかもしれないけど、そしたら勇者じゃなくなるし。
マジでなんなんだこいつ。
<輪ゴム忍者>の効果は、スキルによる輪ゴムの無限生産。
そして、忍者っぽいスキルを取得できることらしい。
なんで輪ゴムなの?
「ゴンゾウ、何をやった?」
「人差し指と親指に通るよう輪ゴムを複数作り、石を飛ばしたまでのこと」
パチンコね。石さえあればほぼ無限に攻撃可能ってすげえな。マジでぶっ壊れ能力の一つじゃん。
レベルが上がってステータスが伸びれば、引けるゴムの数も増えて威力もその分増す。
パチンコって本気出せばマジで人死ぬからな。レベル制でパワーが上がるのなら、銃よりも威力が強くなるかもしれない。
現在のぶっ壊れ能力は
俺の夢現回廊、由依の夢幻牢獄、田中の転身願望。稔の暴飲暴食、消吾の次元収納
この五つの能力はSSランクと言えよう。
ゴンゾウの輪ゴム忍者、白石響子の歌詞限界、荒川優子の感染症候群、赤城雄大の博徒雀士
このあたりはSランクかな。
Aランクに光彦の聖剣使いやケモナーの魔獣調教師、縁子の精霊使いなどが入るってね。
番外だけど、俊平の自爆は攻撃力だけで言えばどのアビリティよりも優れているだろう。確実に死ぬだろうが。
「一二三筒!」
チンピラ信号機、赤城雄大は武器は使わず、拳のみ。あとはガントレットと脛当てが武器で、ゴブリン相手にガガガッ! と三連打を食らわせていた。
「一二三筒!」
ガガガッ! と、もう一度同じ攻撃を繰り返しゴブリンの顔がはれてみてらんない。
「役がそろったぜ………。【一盃口】!!」
バチュッ!! 触れてもいないのに、ゴブリンの頭が弾け飛んだ。
チンピラ赤信号、赤城雄大のアビリティ<博徒雀士>は、特定の条件を満たすことで、相手に追加の大ダメージを与える。
ピーキーではあるが、ハマればマジで強い。
麻雀牌には、萬子、索子、筒子という数字の書かれた牌の種類がある。
雄大はそれぞれ萬子、索子、筒子と使い分けてそれぞれの1~9の型を組み合わせて役を作り、手役が完成すると相手に追加ダメージを与えるらしい。
俺は麻雀は詳しくないんだけど………、本人に聞いたらどういうスキルなのか教えてくれた。
拳で巻き藁相手にスキルぶっ放しているのを見たことあるんだけど、『【大車輪】!!』って叫びながら大型の車輪を二つ召喚して巻き藁をすりつぶして粉にしていたのを見たとき、マジでやべー能力だと思ったね。
あれが役満ってやつだと思う。
「タツル、後ろ」
「おけー。」
俺の背後から現れたゴブリンに向かって簡易手裏剣を投げ、悲鳴を上げたゴブリンは腹に刺さったそれを抜こうとしている。
ほほう、なるほど。簡易手裏剣だと思っていたけれど、これに「返し」を付ければかなり凶悪な武器になるのでは?
肉をえぐりぬくのに苦労する形。
甲殻持ちの昆虫、うろこ持ち、ゴーレム系、ゴースト系、スケルトン系には効かないだろうが、獣タイプや亜人タイプの魔物にはかなりの嫌がらせになりそう。
あとでさくらと相談しよう。
「ワンツー! そいや!」
「ギィィ! ギュガアア!!!?」
手首のスナップ目つぶしで視界を奪った左手を手刀に変えてゴブリンの右腕を折り、右の回し蹴りでゴブリンの左腕をへし折りながら吹っ飛ばす。
肋骨もおれただろうな。
………しかし俺も加減がうまくなったもんだな。
とはいえ、蹴った衝撃で簡易手裏剣も抜け、ツタが破れて壊れてしまった。鉄串だけ回収しとこっと。
木にぶつかり、内臓を損傷したのか、血を吐くゴブリン。
「俊平! ………トドメを刺せ。」
そして俺は過保護だけど、俊平にトドメを譲る。
「おええ………ゲホッ! ゴホッ!! で、できないよ!」
みんな朝食を食っていない為、出てくるのは胃液のみ。
とはいえ、気分のいいものではないはずだ。
「やれ!」
「んぐぅっ………!」
やってくる吐き気の波と闘いながら、こちらに歩み寄る俊平
俺はその間に鉄串を強引にU字に捻じ曲げて、ゴブリンの右足を拘束する様に地面に突き刺し、万が一かみつかれないように、もう一つをゴブリン首を拘束する為に木に打った。
トンカチねえし、蹴りで固定したよ。
「ほら、これでもうこいつは一生逃げられない。放っておいても死ぬだろうがいつかはやらないといけない事だ。殺し童貞を捨てるのに、こんなにお膳立てされる状況はそうそうないぞ。心の準備なんか、有事にできるわけがない。」
「でも………っ!」
「やるかやらないかでもない。できるできないでもない。やるしかないんだよ。お前がやらないんだったら、俺はお前の手に短剣を握らせて、ナイフごとお前の手を握って、そのままゴブリンを殺す。」
「な、なんで樹くんは僕にそこまで………」
「俊平には強くなってもらいたいからだよ。これから来るであろう受難に耐えてもらうために、な」
俺は、短剣を俊平に握らせた。
武器もなく森に来るわけないじゃん。背中に剣くらい背負ってるし、腰には短剣がついているよ。
「受難………? 樹くんには何が見えているの………?」
その質問に、俺は俊平の持つ短剣ごと俊平の小さな手を握ると
「テンプレだよ。」
ズッ……… と、ゴブリンの心臓に短剣を突き刺した。
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