魔法学園のFPSプレイヤー

青空鰹

第5話

 「・・・・もうそろそろ仕舞うか」


 闘技場の通路でそう言うと、SIG MCXとSIG GSRなど装備一式を歩きながら仕舞う。


 「本当、不完全燃焼で終わった感じがするな。冒険者ギルドでクエストを受けていた時の方がまだ増しだよ」


 「あらぁ~、そうですかぁ~? まぁ、お姉さまと訓練ばぁ~、そうなりますよねぇ~」


 闘技場の入り口まで差し掛かるとセレス先生に話し掛けられる。


 「セレス先生、こんな所に来てどうしたんですか?」


 「アナタを待っていたんですよぉ~」


 待っていた、何か用があるのか?


 「先ずはそうですねぇ~、決闘を見てましたよぉ~、勝利おめでとうですぅ~!」


 「はぁ・・・・ありがとうございます」


 「おやぁ~? 嬉しそうではないですねぇ~」


 「さっきも言いましたが不完全燃焼で終わった。と言う感じしかないですね」


 頬に手を当てて首を傾げてながら言うセレス先生に対して、俺は呆れた顔をしながら答える。


 「アッサリ勝ってしまいましたからねぇ~、それに彼はアリスお姉さまと比べ者になりませんからぁ~」


 「それとですねぇ~・・・・これで~す!」


 セレス先生はポケットから折り畳んだ2枚の紙を取り出して、俺の目の前で広げて見せつけてくる。


 「・・・・ん? これ指名手配書じゃないですか。これがどうしたんですか?」


 「実はですねぇ~、この紙に書いている指名手配犯が、ここ帝都に来ているみたいなんですよぉ~」


 「へぇ~、手配書に書いているヤツらを探して捕まえて来い。って言いに来たんですか?」


 あのアリスの妹だから、これぐらいは言いそうだ。


 「違いますよぉ~、アナタに注意した方が良いと思いましてぇ~」


 「注意、この二人に?」


 「はい、そうですぅ~。詳しく説明しますと、このお二人は一緒に行動をしていてぇ~、3年前に無くなった【ガルジニオ教団】の信者で、教団が無くなる前から色んな人を殺して回っているみたいなんですよぉ~。そして、アナタも標的にされるかもしれないので気を付けて下さいねぇ~」


 殺して回っているって。殺人鬼にしか思えないな。しかし、俺が標的になるのは気になるな。


 「俺が標的になるって・・・・何か理由があるんですか?」


 「アナタと言う存在は、ガルジニオ信教の教えに背く存在ですからねぇ~」


 俺の存在事態を否定されるって、酷い宗教だな。


 「セレス先生、その宗教の事を教えてくれませんか? その宗教は始めて知りましたし、何より自分が狙われるような理由も分からないので」


 「はい~、分かりましたぁ~。順序追って説明しますと、ガルジニオ信教はガルジニオ王国の王族と貴族の間で創設された教団なんですよぉ~」


 王族と貴族の間で創設・・・・ロクな話が出て来なさそうだな。


 「そしてですねぇ~、その教団の思想は常に過激な物があったので、各国と他の宗教が協力して国ごと潰しにしたのですよぉ~。その理由の一つは、ガルジニオ教団の教えですねぇ~。内容はぁ~・・・・え~っと?」


 セレス先生、もしかして忘れてるのか?


 「われらがあがめし神こそ全ての頂点であり、われらの神は我々聖なる力なき者の為に、魔を司る者の魂を神の祭壇で裁いて下さる。これを信者に教えていたみたいだよ」


 声のする方向に顔を向けると、リッシュがレイラを連れて俺に向かって歩いて来ていた。


 「リッシュ、来ていたのか」


 「やあ、シュンくん。勝利おめでとう」


 「ああ、見ていたのか。先に言っておくが、アイツは俺達に対して一生関わる事はないから安心して過ごせるぞ」


 「そうなんだ。僕は別に構わなかったけど・・・・彼女は安心出来るね。良かったねレイラさん」


 「あっ・・・うん」


 「ん、どうかしたの?」


 「な、なんでもないです」


 歯切れの悪い返事をするレイラが少し気になるが、それよりもさっきの話だ。


 「それよりもリッシュ、ガルジニオ教団についての説明の続きをしてくれるか? セレス先生は忘れているみたいだからな」


 「良いよ。そのガルジニオ教団がやってた事は非道と言える所が多かったんだ。自分達の教団に教えにわない魔物使いや精霊使い、特殊スキルを持つ人を奴隷にして一生働かせるのは優しい方で、大半は非道な殺し方をしていたみたいだよ。魔を司る者としてね」


 えげつない連中の集まりで、その上外道かよ。


 「クズ教団だな」


 「色んな所からそう言われていたみたいだよ。それで、その教団は創設当時は自国だけでやってたんだけど、自国に魔物使いとか・・・・まぁ彼らの言葉で言えば、魔を司る者が自国で見かけないぐらいに減り始めた時に、何を思ったのか分からないけど周辺国にも手を出し始めたんだ」


 他国の人にまでやると言う事は、それだけ組織が大きくなったからなのか?


 「いくら宗教と言え自国にしか通用しない事を、他国にまでやるだなんてひどくないか? それを止めるヤツは居なかったのか?」


 「うーん、どうだろう? 僕が聞いた話では、組織が全く機能してないと言うほど酷い状態だった。の一言だけだよ」


 「公開された情報はそうでしたねぇ~。私は実際教団と王国内部を調査した方から話を聞きましたよぉ~。お城と教団の本拠地では、世間一般には公表出来ないような事が起きていたみたいですよぉ~」


 さっきまでセレス先生が話に割って入ってくる。


 「世間一般で公表出来ない事? セレス先生はどんな事をしていたか知ってるんですか?」


 「はい~、知ってますよぉ~。内容を簡単に説明しますと、彼らはある研究をしていたのですよぉ~」


 「ある研究・・・・それはどんな研究だったんですか?」


 「魔物や精霊を支配して自由自在に操る研究をしていたそうですよ」


 「魔物や精霊を支配して自由自在に操る・・・・ん?」


 「魔物使いや精霊を否定しているのに、支配してコントロールって・・・・普通に矛盾している話じゃ、いや待てよ」


 ナチスドイツは収容所に入れた人達を毒ガスの実験台にしていたよな?


 「研究材料を集める為に、わざとガルジニオ教団を設立させて国に広めたのか? そして、その力を手に入れたら戦争とかで使おうと企んでいた。セレス先生、違いますか?」


 「正解でぇ~す! シュンくんの言う通り、彼らは魔物や精霊を操る力を手に入れる研究と、特殊スキルを保持している人の能力を無理矢理引き出す研究をしていましたぁ~」


 なるほど、最初は研究材料集めの為だったけど民間の間でどんどん過剰な思想へと変わって行ってしまい、最終的にはコントロールが出来なくなっていたんだろうな。


 「色々あって最終的に国王と教団の責任者達は捕まってぇ~、裁判の判決でその人達全員は処刑決まり執行されましたぁ~。しかしですねぇ~、処刑した後に問題が出てきたのですよぉ~」


 問題?・・・・あ!?


 「もしかして、この手配書の二人に繋がるんですか?」


 「はい~、その二人は教団の本拠地で、しっかり教え込まれた。と言うより洗脳された人達なのですよぉ~。人を殺した時も、しっかり空に向かって声を出しながらお祈りですよぉ~、本当に怖いですねぇ~」


 つまり、ガルジニオ教団で育てられた狂信者って訳ね。


 「なるほど、これで狙われる訳が分かりました。相手は俺の事を知らないので襲われる危険性はないと思うんですが、念のために注意して過ごします」


 「はい~、理解して貰えて何よりですぅ~」


 この人は常にニコニコしているから、感情を読み取る事が出来ない。しかし今は何となくだけど、喜んでいるような気がする。


 「他に何か話がありますか? 無ければ、夕食の食材買い出しに行きたいんですけど」


 「はい~、この二人の事に関しては、もう話は無いんですけれどもぉ~、夕食は学生寮で用意して貰えるので、わざわざ食事を作らなくても良いのではないのではぁ~?」


 なるほどね。確かにあそこでは金を払えば料理を出してくれるが、カタログで料理の料金を見てみて高くて食費が掛かると思った。


 「ああ~、自分で作った方が安上がりと感じました」


 「そうなんですかぁ~、なら私の分も作って下さいねぇ~!」


 「え! 何でですか?」


 「お姉さまが、手紙でシュンくんの料理は美味しい。と書いていたので、食べて見たいのですよぉ~」


 アリス、手紙でそんな事まで書いていたのか。


 「はぁ~、分かりました。セレス先生の分も作っておきます」


 断っても無駄だと分かっている。


 「僕達の分は?」


 「リッシュ達の分は無いからな」


 「ええ~! ひどいなぁ~、レイラさんもそう思わない?」


 「え? それは・・・・」


 レイラが何か言う前に俺が話す。


 「お前らは卒業するまで学食を払えるんだから、俺に料理を作って貰う必要は無いだろ!」


 「仕方ないな、今回は諦めよう」


 「・・・・うん」


 「それじゃあ、買い出し行って来る」


 「はい~、行ってらっしゃ~い」


 「じゃあね!」


 「・・・・あ! じゃあ、ね」


 三人の声を聞いた後に街へ行き食材を買って帰り、その日の夕食にからあげを作って、セレス先生に出したら絶賛していた。

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