チートなお家と精霊とスローライフ!

青空鰹

そんなことあるわけないやろっ!!

 〜〜〜 イズナ side 〜〜〜




 「お願いです! 離してくださいイズナ様っ!!」


 「勤務中に抜け出すのはアカンでっ!」


 家に帰ろうとジタバタ暴れているスティアをイズナは必死に抑え込んでいる。


 「きっとメディーラとリーザが私の可愛いリィンちゃんに変なことをしているに違いありませんっ! 早く・・・・・・早く行って助けないとっ!!」


 「アホかっ!! 変なことをするのはあんさん以外いるかっ!! それになぁ、あの子たちはよく出来た妹たちじゃないんか?」


 昔は二人の面倒をよく見て、仲ようやってたやないか。


 「なにぃ? よく出来た妹だとぉ!?」


 「・・・・・・違うんか?」


 「たしかに小さいときころは優秀な妹たちですよ! ですがね、大きくなっていくにつれて お姉ちゃんウザい。 とか キモいから来ないで。 とか言ってくるんですよ」


 「・・・・・・まぁ、そうなるのは普通のことやな」


 姉への対抗心とかで子離れのように自然と離れ行くやろな。


 「昔はよかった。あの子たちは私を見ると、 お姉ちゃぁーん! って駆けよって来るんですよ。そして、三人で仲良くギュー! って抱きしめあって家族愛をたしかめてたわ」


 「・・・・・・そうかぁ」


 「いまとなっては私が食事に誘っても断ってくるし、抱きつこうとすれば 止めて。 って言ってくるし、一緒にお風呂入ろうとすると断ってくるのよぉぉぉおおおおおおっっっ!!?」


 「そりゃぁ、まぁ・・・・・・うん」


 あの二人から聞いた話しやと、誘って来るのはありがたいけど顔が犯罪者。 とか いつもベットに侵入しようとするから困る。まぁ最近はやらなくなったからいいけど。 って言うってはったなぁ。


 「だから私は思い至ったのよ! そうだ、私に必要なのはこういう嫌そうな顔をする妹じゃなく、私を慕ってくれる子供のような純粋無垢なあの頃の小さな妹が必要なんだって! だから私は、私は・・・・・・」


 「ホムンクルスに手を出したちゅう訳やな」


 こんな形でホムンクルスを作った理由を聞けるとは・・・・・・なんというか、理由がくだらない。


「アァッ!! リィンちゃんはきっとメディーラに、 グヘヘッ!! お嬢ちゃん良い身体してるわねぇ〜。お姉ちゃんがよぉ〜く洗ってあげるよぉ〜。 って言われながらえっちぃ手つきで身体の隅々まで洗ったり! リーザなんて、 とぉ〜〜〜・・・・・・っても可愛い服を着せてあげるからねぇ〜! って言いながらやらしい眼つきでリィンちゃんをお着替えさせたりしているわ。きっとぉっ!!」


 「いや・・・・・・そんなことすんのは、スティアはんだけやと思うで」


 「ハッ!? リィンちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえる! 行かなきゃっ!!」


 スパァァァアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!?


 「そんなことあるわけないやろっ!!」


 袖口からハリセンを瞬時に出してスティアの頭を叩いたのだ。


 「イタッ!? ・・・・・・痛くはないけどハリセンで叩かれると言っちゃうわ。ていうか、それどこから出したのですか?」


 「ウチの袖口はドラ◯もんの四◯元◯ケットみたくなってるんやで。それよりも、早う自分の仕事を片付けいっ!!」


 「うぅ〜・・・・・・でもあの量はさすがにちょっとぉ〜」


 机の上に山のように積み上げられている書類を見つめる。


 チッ!? めんどくさいヤツや・・・・・・しゃあない。


 「これを終わらせないとお家に帰れへんで」


 「え“っ!?」


 「逆に言うたらぁ・・・・・・早く仕事を終わらせれば、早く帰れるってことやで」


 「なっ!?」


 スティアはまるで身体に電流を流されたのように身体を硬直させた後に、ギギギギッ!? と錆びついたロボットのように身体を動かしてイズナに顔を向けると話し始める。


 「・・・・・・ホント?」


 「え?」


 「ホントウニ、コノ ショルイノ ヤマ ガ カタヅイタラ、カエッテ イインデスネ?」


 「せっ、せや・・・・・・片付いたら帰ってええで」


 「ウヒョォォォオオオオオオォォォォォォオオオオオオイっっっっっっ!!!!?」


 変な奇声を上げながら席に着くと、ヤラシイ顔で仕事に取り掛かり出した。


 「待っててね私の可愛い、カァ〜〜〜ワイイ、リィンちゃああああああぁぁぁぁぁああああああ〜〜〜〜〜〜んっ!! お姉ちゃんがパパッとお仕事を終わらせるからねぇ〜〜〜っ!! そしたらいっぱい、いぃ〜〜〜〜っぱい一緒に遊びましょうねぇぇぇええええええっっっ!!? ・・・・・・グヒヒヒッ!! イーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!!!?」


 なんや、頭おかしゅうなったけどぉ・・・・・・まぁ、やる気になってくれおったから良しとしましょうかぁ。あとリィンはんたちの様子も気になるさかい、それに向こうの様子も気になるさかい、一応見とこうかぁ。


 自身が作ってリィンに預けた霊獣のイットウに精神同調して様子を窺う。


 「は? ・・・・・・なにしとんねんアイツは?」




 〜〜〜  リィン side  〜〜〜


 「「「我ら天に誓う。
 我ら生まれた日は違えども
 死す時は同じ日同じ時を願わん」」」


 セラたちはそう言うと掲げていた杯を口元に持っていき中に入っていたお酒を飲み始める。


 えぇ〜〜〜・・・・・・なんで三国志の桃園の誓いをしているの? 誰が劉備? 張飛? 関羽なの?


 「キュ〜ン・・・・・・」


 「あっ! ご飯欲しいんだったね。ちょっと食べちゃったけど、これ食べていいよ」


 「コンッ!」


 ありがとう! ってさっきの鳴き声は言っていたのか、わからないけれどもムシャムシャと美味しそうに食べている途中にこっち顔を向けてきた。


 「美味い?」


 「コンッ!」


 うん、美味しい! って感じの表情をしているから癒されるねぇ〜。


 「フ〜〜〜〜〜〜ン・・・・・・なるほど」


 「どうしたのよ。リーザ」


 「リィンは・・・・・・その子とちょっとだけだけど・・・・・・会話出来てるみたい」


 会話? そんなことしてないんだけどな。


 「ちょっと確認させてもらうわ。いい?」


 「う、うん」


 メディーラさんがリィンとイットウくんの頭に手をかざすと淡い光を出す。


 「うん・・・・・・なるほど、リーザの言う通り少しだけ会話してるわね」


 「え? 会話って言われても身に覚えがないよ。イットウくんの顔を見てなんかこう言いたそうだなぁ。ってぐらいしか・・・・・・」


 「それよ!」


 「え?」


 「そのなんとなくこう言いたそうだなぁ。ってのがね、会話している証拠よ」


 「そ、そうなの?」


 「ええそうよ。普通の人のは動物の表情をよく見て気持ちを理解するものなの。犬なら、お散歩に行きたそう。とか、持っているボールを投げて早く投げて欲しそう。とか感情をね」


 「ええ〜、違うと思いますよ」


 リィンだって・・・・・・ん?


 「そう言えばそうかも・・・・・・昨日の夜だって 一緒に寝たい。 ってお願いをなんとなくだけど理解していた気がする・・・・・・それにさっきもご飯をくれたお礼を言ってた気がしたし・・・・・いや、でも・・・・・・気のせいな気がしなくもないよ」


 「言っているのかわからないね。じゃあイットウくんに聞いてみましょう。イットウくん」


 「キューン?」


 イットウくんが なぁに? と言う感じをしながらメディーラさんに顔を向ける。


 「さっきリィンちゃんからご飯もらったの?」


 「コンッ!」


 うん! って言ってそうな感じで首を縦に振った。


 「へー、そうなの。イットウくん、リィンちゃんに ありがとう。 ってお礼を言いました?」


 「コンッ!」


 もちろん、ちゃんとお礼を言ったよ! って言ってそうな感じで首を縦に振った。


 「・・・・・・やっぱりね。リィンちゃん、アナタならイットウくんが言いたいことがなんとなく理解出来たはずよ」


 「え? でもメディーラさんだって理解していましたよね?」


 「私はこの子の首の動きを見て理解しただけ、コンッ! って鳴き声を聞いてもなにを言ってるのか、さっぱりわからないわ。私自身が作り出した霊獣ならともかく霊獣になった動物、ましてや他人が作り出した霊獣じゃあ言葉を理解するなんて私やリーザじゃ出来ないことよ」


 そうなんだ・・・・・・女神様だから話せると思ってた。


 「ん・・・・・・イズナ様ぐらいの高い地位の女神様なら会話が出来る・・・・・・その子はまだ幼いから会話は出来そうにないかなぁ。って思ってたけど・・・・・・出来たんだ」


 「でも、一言ぐらいしか話してないみたいね。まぁ成長すれば誰とでも会話のキャッチボールが出来るようになるわ」


 「そうなんですかぁ。それはそれで楽しみです・・・・・・でも」


 「でも?」


 「どうしてリィンはイットウくんと会話出来るのですか?」


 イットウくんは霊獣だけど精霊じゃない。それにリィンとだけ話せるのはおかしいよ。


 「恐らく、リィン様の副職の 精霊使い とイットウ様が精霊の力を有しているのが原因でしょう」


 「精霊使い? イットウくんが精霊の力を有している? ・・・・・・んん?」


 イマイチ理解出来ないよ。


 「イマイチ理解出来てないようですね。順を追って話しましょう」


 「先ずは精霊使いについてお話しします」


 「はいっ!」


 「精霊使いは契約交渉するために話し合いをすることが多いです」


 「ふーん・・・・・・でもセラは精霊なのにお話出来るよね?」


 「私ほどの上位の精霊なら会話出来ますが、下級の精霊は精霊語しか話しません。なので、 精霊使い使い の職業を取っていれば自然と話せるようになりますよ」


 「ん、ぶっちゃけ言うと・・・・・・私たちが話し合って定めた仕様」


 えっ!? も、もしかしてスキル作るのめんどくさいから最初っからあることにしよう。って感じで決めたの?


 「そうしないと無理ゲー状態から始まるから」


 ・・・・・ああ、そう言うことね。 精霊使い の職を取得しても精霊と話が出来ないから交渉出来ませぇ〜ん。じゃ詰みゲーも同然だもんね。


 「リィン様、 むりげー とはなんですか?」


 「えっと・・・・・・難し過ぎて、 もうやってられないっ!! 遊びのことを言います」


 正確にはゲームのことなんだけど、追求されそうだから遊びってことにしておこう。ある意味同じ言葉だし。


 「・・・・・・そうですか。それともう一つの理由、イットウ様に精霊の力ついてです」


 「うんうん!」


 「先ほどリィン様に少しだけ話した霊獣の説明を覚えてますか?」


 「うん、覚えてるよ」


 「先ほど説明をちゃんとしますと、霊獣は本来動物や魔物が自然が作り出す濃いマナを長年に渡って身体に受け続けることによって、精霊になるものが霊獣です。ですが、イットウ様の場合ですと恐らく動物が霊獣になったのではなく・・・・・・」


 「ではなく?」


 「イズナ様が作り出した霊獣だと思います」


 イズナさんがイットウくんを作り出した。だってぇ!?


 「どういうこと?」


 「はい、イズナ様ほどの女神様になりますと霊獣の一匹や二匹ぐらいなら、簡単に作ってしまわれると思います。そしてなによりも私が気になっていたことがあります」


 「それは・・・・・・なに?」


 「なぜリィン様に成獣ではなく幼体の霊獣を渡したのか? です。恐らく、イズナ様はなにか目的があってその子を渡したんだと思います」


 「へー、そうなんだ。でも、なんで霊獣をリィンに渡したのかな?」


 そこが疑問である。


 「イズナ様のことですから、スティアお姉様が変なことしてないか監視するために渡したんじゃないかしら」


 「私も・・・・・・そう思う」


 「あ、なるほど! だから朝イズナ様が迎えに来たのですね。納得しました」


 イットウくんをリィンに渡した理由がお姉ちゃんの監視って、お姉ちゃんどんだけ信用されてないんだろう?


 「あ、ちなみに私の場合は人として生きていた頃の功績が女神様に認められたから精霊になれたのです。人の場合は英霊とも称えられます」


 「ほへー・・・・・・ん?」


 セラは生きていた頃の功績が女神様に認めらて精霊になったんだよね。なら人だった頃にどんなことをして女神様に認められて精霊になれたんだろう?


 「・・・・・・リィン」


 「ん? な、にょわぁっ!?」


 セラが笑顔を作りながらリィンの目の前に迫ってきた。


 か、顔が近いっ!? しかも怖いよっ!!


 「いいですか、決して・・・・・・決っっっっっっっして!!!! あの駄女神に認められたから精霊になれたのではないですよ。別の女神様、アルテナ様に認められたから精霊になれたのですからね・・・・・・ご理解出来ましたか?」


 「う、うん・・・・・・理解したよ」


 だからその怖い顔をしないでよぉ〜〜〜。リィン怖くて泣いちゃうよぉ〜〜〜〜〜〜!!


 「ご理解いただけてなによりです・・・・・・さぁ、食事の続きをしましょう」


 セラはそう言うと何事もなかったかのようにお皿に乗っているサラダを食べ始めた。


 さ、さっきのセラ怖かったぁ・・・・・・絶対セラを怒らせないようにしよう。


 リィンは決意を改めた瞬間だった。

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