チートなお家と精霊とスローライフ!

青空鰹

キュピーンッ!?

 「ここが・・・・・・お風呂ですか」


 「・・・・・・うん、お風呂だね」


 リビングから出て探してみたらすぐに見つかったのは、それはそれでいいんだけどぉ・・・・・・。


 「リィン様の世界のお風呂は家族と共に入るのが普通なのですか?」


 「ううん、普通のお家にあるお風呂は大人が一人で入れるぐらいの大きさだからぁ・・・・・・ね」


 「この広さはおかしいってことですか」


 4〜5人も入れそうなぐらいのお風呂はさすがに広ろすぎるよっ! しかも全面檜使用だから絶対値段高いでしょっ!!


 「広いお風呂が欲しいって気持ちはわかるけどさ、いくらなんでもこれはやり過ぎだよ」


 ホント、このお風呂を日本で作ってもらったら、いくらにぐらいになるんだろう?


 「そうですね。ところでリィン様」


 「ん、なぁに?」


 「こちらの壁についている物はなんですか? それになぜ低いところに蛇口がついているのですか?」


 「えっ!? ああ! それはさ、このバスチェアーだったっけ? とにかくこれに腰掛けて使えるように蛇口を低くしてるんだよ! それでね。この蛇口の取っては右に回せば水が出て左に回せばお湯が出るんだよ。だからちょうどいい暖かさに調整して使うのが基本だよ」


 「なるほど、蛇口から管で繋がっているここから水が出るんですね」


 「うん、その通り」


 「あの・・・・・・掃除用具はどちらにあるんですかね?」


 「掃除用具?」


 「はい、軽く掃除をしてからお湯を張ろうと思っているので」


 ああ〜、なるほど。


 「ちょっと待って、多分ここにあるかなぁ?」


 お風呂場の方に用具入れっぽいのがなかったから、多分こっちの部屋あると思う。て言うか、この部屋も広いね洗面所と言うよりも脱衣所って言った方があってる。だってここも広いもん!


 「えっと・・・・・・あった! セラ、こっちに来て!」


 「はい、わかりました。これは!」


 ロッカーの中にある道具を興味深そうに見つめている。


 「えっと・・・・・・ここのトビラの中に掃除用具が入ってるから、ここから取り出してね」


 「かしこまりました」


 とりあえず、ロッカーの中からブラシと洗剤を取り出してからセラの方を向く。


 「はい、ブラシと洗剤。あ、そうだ! 洗剤を使うときは気をつけてね」


 「どうしてですか?」


 「二種類の洗剤が混ざっちゃうと毒を含んだ成分になるから、違う種類の洗剤を同時に使おうとしないでね。気分が悪いって感じたら、窓を開けてスイッチを押して換気扇を回して換気してね」


 「わかりました。厳重に注意します」


 厳重に注意って、そこまでしなくてもいいんじゃないかな? ってブラシだけ持ってっちゃったよ!


 「洗剤使わないとキレイにならないんじゃない?」


 セラはブラシをお風呂場の床に置いくと振り返って見つめてくる。


 「生活魔法も活用するのでブラシ一本で大丈夫ですよ」


 「生活魔法?」


 「はい、カマドに火を点けるための【ミニファイヤ】や泡を出すための【バブルウォッシュ】などですね」


 「その魔法って誰でも使えるの?」


 「初級魔法よりも簡単なので覚えようと思えば覚えられるんですけど、やはり生活魔法も魔法の一種なので属性相性がありますね。私の場合は火と風と水と光の魔法が使えますが、闇と土の魔法が使えないので地面を整地させる魔法や部屋を薄暗くする魔法は使えません」


 「へぇー、そうなんだ。って部屋を薄暗くする魔法って便利なの?」




 「子供を寝かしつけるときとか、日差しが眩しいと感じたときに【シャドウ ブラインド】を使えば便利ですよ」


 その魔法って帽子とかカーテンの代わりなのかな?


 「しかも明るさの調整が出来るみたいなので、生活魔法の中では便利な方って言ってましたよ」


 「へ、へぇー」


 生活魔法にも色々あるんだね。ってあれ?


 「ねぇセラ」


 「はい、なんでしょうか?」


 「なんで洗剤使ってないのにブラシが泡立ってるの?」


 「呪文を先程唱えましたよ」


 ウソッ!? 気づかなかったっ!!


 「呪文って詠唱するものじゃないの? も、もしかしてセラは詠唱を省略するスキルを持ってるの?」


 てかもう掃除始めちゃってるよ!


 ブラシでゴシゴシと床を洗いながらセラが話しかけてくる。


 「生活魔法の場合、強力な魔法じゃないので名前だけ言えば使えるのですよ」


 「へぇー、そうなんだ。便利そうだから覚えてみようかな?」


 ん? セラの手がピタリと止まったぞ。しかも顔が青い。なにかマズいことを言っちゃったかな?


 「あの、リィン様は魔法を使えないと思いますよ」


 「え! なんで?」


 まさかお姉ちゃんのせいだから。って言わないよね?


 「リィン様のメインクラスとサブクラスの問題です」


 「メインクラスとサブクラスの問題? んんん?」


 「理由を簡単に説明しますと、メインの錬金術師は生産職なので魔法を習得することが出来ませんが、サブの方で 魔法使い などの職を取っていれば魔法が覚えることも使えることも出来ます。わかりやすく例えるのでしたら・・・・・・メインを剣士にしてサブをハンターにする。そうすれば近接戦闘では剣を扱い遠距離では弓を使うといった戦い方が出来ます」


 「うんうん、つまりメインで出来ないことをセブで補正を掛けるような職の取り方が普通なんだね」


 「はい、その通りです。察しがいいですね」


 「エヘヘ〜」


 リィンにゲーム知識があってよかったぁ〜。


 「そしてリィン様のサブクラスの精霊使い。これが一番のネックですね」


 「精霊使いが原因なの?」


 「はい、精霊使いの職業は魔法が使えなくなる代わりに精霊魔法を使えるようになります」


 「ならリィンが精霊魔法を覚えて使えばいいんだね」


 「そこです」


 「え?」


 そ、そこ?


 「精霊魔法と言うのは契約した精霊の力を借りて使用する魔法です」


 契約した精霊の力を借りて使用する魔法。


 「うん、ならさセラの力を借りて魔法にすればいいんだよね?」


 単純な答えだよね・・・・・・うん。


 「私の精霊魔法は上位しかないので・・・・・・その、申し訳ないのですが、リィン様には・・・・・・」


 「精霊魔法を使えないってことなんだね」


 複雑そうな顔をしないでよ、セラ。


 「・・・・・・はい」


 「なら、他の精霊とも契約して練習すれば」


 「そちらの方も難しそうです」


 「なんで!?」


 「他の精霊たちは私に畏怖と敬意を感じているみたいなので、その・・・・・・ですね」


 畏れ多いです! と言って断る可能性が高いってわけですね。


 「はい。で、でも探せばいると思いますよっ! あっ! 契約出来そうな精霊に心当たりもありますから、今度連れてきましょうか?」


 「多分、その精霊さんも上位のしか使えないって言うと思うけど・・・・・・大丈夫? 信じていいんだよね?」


 「・・・・・・おそらく私と同じことを言うと思います。浅はかな考えしてしまって、すみませんリィン様」


 ああ、表情には出てないけど落ち込んでるのがわかる。


 「ま、まぁここに住んでれば魔法はほぼ無用だから気に病む必要はないよ」


 「し、しかし」


 「それよりもほら! お掃除終わったの?」


 「あ、あとは水を流して浴槽にお湯を張れば終わりです」


 話しをそらすのに成功! でも魔法使ってみたかったな。 


「なら、シャワーヘッドを持って」


 「シャワー、ヘッド?」


 「あっ!これ」


 セラに手渡すとセラはまじまじと見つめる。


 「もしかして、この小さな穴から水が出るのですか?」


 「うん、だからそこを下か関係ない方向に向けて」


 「あ、はい」


 セラがシャワーヘッドを浴槽の方に向けるとこっちを向く。


 「どうぞリィン様」


 「水出るよ!」


 レバーを引き上げるとセラが手にしているシャワーヘッドから水が勢いよく出て、浴槽に当たり水しぶきを上げる。


 「これは便利ですね」


 「水量はこっちのレバーで調整出来るよ」


 「わかりました。しかし」


 「しかし?」


 「これだけ勢いよく水を出してしまうと枯渇した魔法のように水が枯れませんか?」


 「そこら辺はお姉ちゃんがなんとかしてくれてると思うから大丈夫だと思うよ」


 前世の日本のお家はそうだったから大丈夫だと思う。お姉ちゃんが作ったお家だから大丈夫だと思うけれども、水が枯れて終わないか水道料金が料金が課からないか? とかをあとでお姉ちゃんに聞いておこう!! 念のためにねっ!!


 「そうですか。では汚れを洗い流すので下がっていてください」


 「うん、わかった」


 ペチペチと足音を立てながら脱衣所に向かい歩き出したのだが、右足の裏に檜とは違う感触を感じた瞬間。


 「ふぁっ!?」


 ズテンッ!?


 「ウ、ウゥ〜〜〜・・・・・・いたぁい〜〜〜、グスッ!?」


 泣き叫びたい気持ちを抑えながら辺りを見回すと転んだ原因の物がそこにあった。


 これは、石鹸? なんでこんなところに石鹸が転がってるの?


 「リィン様! 大丈あっ!?」


 「に”ゃぁ“ぁ”ぁ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“っ!!?」


 水がっ! 冷たい水がリィンに掛かってくるよぉぉぉおおおおおおっ!!?


 「セ、セラ! むこう向けてっ!! むこう向けてって!!」


 「あ、ああああ、はいっ!!」


 セラが関係ない方向にシャワーヘッド向けると、そのまま素早く蛇口に駆け寄り水を止める。


 「大丈夫ですかリィン様!!」


 「う・・・・・・」


 「う?」


 「うぇぇぇ〜〜〜〜んっ!? お水が冷たかったよぉぉぉおおおおおおっ!!?」


 「ああぁぁあああああ!? 申し訳ありません! リィン様!! 本当に申し訳ありませんっ!!?」


 泣きじゃくり続ける少女と土下座して謝り続ける上位精霊がそこにいたのであった。




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 キュピーンッ!?


 「ハッ!? い、いま私はなにかを見逃してしまった気がする!!」


 なんだろう・・・・・どこかの探偵アニメの『そうか、犯人が分かったぞ!』と言ったあとの話を見ずに終わってしまったようなこの感覚は・・・・・・。


  「モドカシイような悔しいようなぁ・・・・・・いますぐ帰るべきな気が」


 まだ仕事が残っているのよね。


 「ウゥ〜〜〜〜〜〜、なんでしょう。気になるんですが・・・・・・気になるんですがぁ〜〜〜〜〜」


 今日中に仕事を終わらせないといけない。


 そう自分に言い聞かせながら仕事に戻るのであった。

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