チートなお家と精霊とスローライフ!
セラの心が揺らいでいる。効果は抜群だ!!
 〜〜〜 一方その頃 〜〜〜
 仕事用の机に一人の女性が座って書類の紙をボールペンで書いているが、なぜか表情は沈んでいて重い空気を醸し出していた。
 カリカリカリカリッ!?
 「私のせいじゃないのに・・・・・・」
 カリカリカリカリカリカリカリカリカリッ!!?
 「私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに・・・・・・」
 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリッ!!!?
 「私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」
 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッ!!!!?
 「あぁ〜〜〜もうっ!! なんで私が始末書と反省文を書かなきゃいけないのよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!!?」
 「それはスティア様に監督責任があるからですよ。まだ書き終わってないのですか?」
 「さっき起きて始めたばっかなんだから出来てるわけないわよっ!!」
 この部下私が起きるのを、わざと待ってたわよね! だって起きたときコイツの顔がニヤニヤしてたもん!!
 「そうですか。この件も明日までに終わらせておいてくださいね」
 「この件? ・・・・・・え“っ!?」
 渡された書類を読んだ瞬間になぜか青ざめた顔をしながら身体を硬直させる。
 「こ、これ私の仕事じゃないわっ!!」
 「はい、存じてます。ですが訳あってスティア様に回って来たのです」
 「訳あって回って来たぁ? どういうこと?」
 私にこのめんどくさい仕事が回って理由をちゃんと語って欲しいわね。
 「えぇっと・・・・・・この新しい世界を作る仕事は上の人たちが企画して作る話しだったのはご存知ですよね?」
 「ええ、世界が一つ消えちゃったから新しく作ろうって話してるのを聞いたわ。プロジェクトチームを結成させてるから私はいらないでしょう?」
 「実はそのプロジェクトメンバーたちの意見会で喧嘩が起きてしまって、プロジェクトが滞ってる状態みたいなんです」
 「はぁ?」
 なにそれ? あんなに意気投合してたのに喧嘩したの?
 「それで進み具合からして、あの人たちには任せられないと言うことで急遽他の人に任せることになりました。みんなの話し合いの結果でスティア様、アナタに白羽の矢が立ったのです! おめでとうございますっ!!」
 なにそれ、意味わからない!? てか拍手しないでよっ! 全然嬉しくないからぁっ!!
 「私やるって言ってないわよっ!!」
 「えぇ〜、僕を含めた色んな人たちがアナタを推奨してましたよ。アナタは実際に世界作りに関わったことがありますし」
 「そ、それはもう千年ぐらい前のことだから大半のやり方は忘れちゃったわよっ!!」
 「アナタの姉妹たちが特に推奨していましたよ。 この仕事が出来るのはお姉様しかいないです! って」
 あの二人ぃ〜、私に仕事を押し付ける為に・・・・・・押し付ける為に?
 「ま、まさか・・・・・・気絶している私を起こさなかった理由って新しい世界を作る企画を押し付ける為に?」
 「違いますよ。我々はアナタが適任だと理解してるから・・・・・・ね?」
 いや顔はそう言ってないっ! めんどくさい仕事を押し付けれて良かったぁ! って顔をしてるって!!
 「それにもう上の人たちに話しを通しましたからね。断れると思いますか?」
 「・・・・・・ウソ?」
 「ウソじゃないですよ」
 「・・・・・・マジ?」
 「マジですよ」
 「・・・・・・本当」
 「事実ですから、いい加減現実逃避は止めてください」
 コイツらは本当に、本当に上の連中に話しを通したんだ・・・・・・。
 「イヤァァァアアアアアアッ!? やりたくないっ! 世界を作る仕事なんてもうやりたくないわああああああぁぁぁぁぁぁっ!!?」
 「そんなこと言わないでくださいよスティア様、上の方たちもこう言ってましたよ」
 「え? な、なんて言ってたの?」
 「”期待しているよ“ と」
 うっわぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・プレッシャー、しかも逃げ道がねぇー。
 「それでは今日はもう定時なので私は帰りますね」
 「ちょ、ちょっと待って! アナタも手伝っt」
 「私は合コンの約束があるのでぇ、さようならぁ〜!」
 彼女はそう言うと足早に部屋を出てってしまった。
 「あっ! ・・・・・・ぁぁ、ぁ」
 スティアは机に肘を付きながら頭を抱える。まるで絶望のどん底にいるかのように。
 「あああああああぁぁぁぁぁぁっ!? 裏切り者共めぇぇぇええええええ!!? ぜっっっっっったい許さないだからぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!?」
 そんなことを言いつつも、ちゃんと仕事に取り掛かっているのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 「ムゥ~・・・・・・」
背の小さな女の子が自分自身で作ったポーションを見つめるが、どこか不満そうにしていた。
 「リィン様、そう拗ねないでください」
 「だってセラ、錬成を二十回やったのにたったの八個しか出来てないんだもん」
 「それは仕方ありませんよ。先程もお伝えした通り、リィン様はまだ錬金術を始めたばかりなんですからね」
 「半分の十個は出来ると思ってたのに」
 「アナタ様なら上手くなっていきますよ。今日の錬成はこれぐらいにしましょう」
 セラがそう言いながら頭を撫でてくると、なぜかムカムカした感情が気持ちが和らいでいく。
 「ふにゅ〜・・・・・・うん」
 これも精霊の力なのかな? 気持ちよくなって来て、眠たくなってきたよぉ・・・・・・。
 「そろそろ私はご飯の用意をしますね。リィン様は、ってあら?」
 「うぅ〜・・・・・・」
 眠い、まだ、寝たら・・・・・ダメ。
 「クスッ・・・・・・ぅかぁーーーのy・・・・・・・」
 スゴ、く・・・・・・ねむ、くてよく、聞、き・・・・・・取れ、ない。
 「セェラ、なん・・・・・・て」
 あれ? 足が、抱っこ?・・・・・セラ、にされ、た、の?
 自分の眼を両手で擦りながら、なんとか眠気を払おうとするが睡魔が増すばかりでなんの意味もない。
 「むぅ、りをなさぁらず・・・・・・【スリープ】」
 「んにゅぅ・・・・・・スゥー、スゥー」
 彼女は腕の中で眠る主人の寝顔を見つめながら微笑む。
 「とても可愛らしい寝顔。私はこの寝顔を“性根の腐ったあの悪魔”から守ればなりませんね」
 彼女はそう言うと晩御飯の献立を考えながらリビングに向う。
「このソファーに寝かせてお来ましょう」
 リビングに着くと、私のリィン様をソファーに優しく下ろしたあとに、風邪を引かないように身体にタオルケットを被せて差し上げる。
 たしか レイゾウコ って名前でしたっけ? まぁ呼び名はどうでもいいんですけど、あの中に食材がたくさん入ってましたね。
 冷蔵庫を開いて食材を確認し始める。
 「ふむふむ、ある程度食材は揃ってますね。これなら大抵の料理が作れそうですね」
 ひき肉とパン粉と牛乳と野菜と調味料を取り出すとキッチンに置いて行く。
「お子様に人気のハンバーグでも作りましょうかね」
 何せ精霊になってからは飲食は不要だったので、料理どころか食事をするのは久しぶりですね。腕が落ちてなければいいんですけど。
 「先ずは玉ねぎをみじん切りにしてから、フライパンで炒めるんでしたね」
 トントントントンッ!
 「うっ! 目が・・・・・・沁みる」
 しかしこれもリィン様と私が楽しく食事をする為、この苦痛に耐えてみせましょう!!
 トントンサクッ!?
 「イタッ!?」
 手元が狂って切ってしまった指を咥えながら、ソファーに目を向けてリィン様の様子を確認する。
 ・・・・・・フゥ、よかった。いまの失態を見られてたらリィン様に失望されていたかもしれません。
 「癒しの加護を与え給え【ヒール】」
 自分の失態の隠ぺ、指の治療をしてからハンバーグ作りを再開する。
 玉ねぎを軽く炒めると皿に移して冷ましている間に、パン粉を牛乳で湿らせる。
 ・・・・・・玉ねぎも冷えたのでタネ作りでもしましょうか。
 ボウルの中にひき肉を入れたあとに、みじん切りの玉ねぎと湿らせたパン粉にニンニクに調味料を入れてから、コネてなじませたあとにタネを作る。
 たしか加熱する前に真ん中を少し凹ませないとダメなんでしたよね。
「・・・・・・これでよし」
 お皿にハンバーグのタネが三つ並んでいるが、“一つだけ不自然なほど小さなハンバーグ”が置いてあった。
 あのお馬鹿さんの分も作ってあげないとリィン様が泣いてしまいますからね。
 「リィン様に感謝するんですね。馬鹿女神様」
 そう言いつつ油を敷いたフライパンの上にハンバーグを乗せてじっくりと両面を焼いていく。
 ・・・・・・うむ、料理が楽しくなってきました。久々だから?
 セラは爪楊枝を取り出すと、ハンバーグに刺してちゃんと焼けてるか確認する。
 よかった、焼けている。一つだけ焦げているのがあるけれども、あの人分だから大丈夫でしょう。
 そのまま蓋をしてからスイッチをOFFにしてハンバーグを燻してる間にサラダとマッシュポテトを作り、もう一つのコンロでセラ特製ハンバーグソースを作る。
 そして最後にハンバーグをお皿に乗せて、盛り付けをしてからソースをかけて完成。
 よし、完成! 久しぶりの料理が上手く出来て良かった。ただ、リィン様のお口合えばいいのですが・・・・・・。
 「おっと、このままではハンバーグが冷めてしまいますね」
 夕食には早いですがリィン様を起こして食べましょうか。リィン様が食事されたあとに、うっかり作ってしまった自分の分のハンバーグを食べればいいですし。
 出来た料理をテーブルに並べ終えると、リィン様に近づいて可愛らしい寝顔を覗きながら肩を優しく揺さぶって声をかける。
 「起きてください。リィン様」
 「う、うにゅぅ〜・・・・・・」
 あれ? もしかしてリィン寝てたの?
 「おはよう、セラ」
 「お目覚めになったところ申し訳ありませんが、夕食のご用意が出来たのでテーブルに行きましょう」
 「夕食? もしかしてリィンが寝てる間に作ってくれたの?」
 「はい」
 「ありがとう、セラ」
 セラのお手伝いをしたかったなぁ。って、おぉ!?
 「ハンバーグだぁっ!?」
 嬉しさのあまり、ついつい子供らしくソファーから飛び起きてしまう。こ、子供の姿だから許されるよね?
 「もしかしてリィン様はハンバーグが好きなのですか?」
 「うん、大好き! よいしょっと」
 イスの上に座り、笑顔でフォークとナイフを持とうとするが手を止める。
 「あれ?」
 テーブルにハンバーグが一つしかないのはどうしてなんだろう?
 「どうしました。リィン様?」
 「セラの分はどうしたの?」
 「リィン様、私はあとで頂くので気にせず食べてください」
 うーん、多分セラは自分の立場を気にしてるからリィンと一緒に食べようとしないのかな?
 「・・・・・・お腹空いたけど、セラが一緒に食べないならリィン食べない」
 「リィン様。私は精霊なので食事は不要なので食べなくても大丈夫です」
 「セラの分を作ってないの?」
 「ありますよ。うっかり自分の分をうっかり作ってしまっただけです」
 「じゃあ一緒に食べようよ」
 「いいんですか? 私のような者と食事なんて、つまらないだけですよ」
 「あのねセラ、誰かと一緒に食事をする方が美味しく感じるんだよ。だから一緒に食べようよ!」
 「ですが、私はリィン様の契約精霊。上下関係が」
 頑固だなぁ〜。こうなったら奥の手を使うしかない!
 「セラはリィンと一緒に食べるのがイヤ・・・・・・なの?」
 必殺、潤んだ瞳で語りかけるっ!!
 「・・・・・・うぅ」
 「セラ、お願い・・・・・・一緒に食べよう」
 セラの心が揺らいでいる。効果は抜群だ!!
 「わかりました。そこまで言うのでしたら、リィン様と共に食事しましょう」
 「やったぁ!!」
 作戦成功! セラと仲良く食事が出来るよ!
 リィンがそんなことを思っている間に、セラはキッチンから自分のハンバーグと持ってくると向かい側のイスに座る。
 「準備が出来ました」
 「うん、それじゃあ」
 目を閉じて両手を合わせる。そして。
 「「いただきます」」
 あれ? この世界にも いただきます の文化があるの? 食べたあとでセラに聞いてみよう。
 仕事用の机に一人の女性が座って書類の紙をボールペンで書いているが、なぜか表情は沈んでいて重い空気を醸し出していた。
 カリカリカリカリッ!?
 「私のせいじゃないのに・・・・・・」
 カリカリカリカリカリカリカリカリカリッ!!?
 「私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに・・・・・・」
 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリッ!!!?
 「私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのに私のせいじゃないのにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」
 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッ!!!!?
 「あぁ〜〜〜もうっ!! なんで私が始末書と反省文を書かなきゃいけないのよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!!?」
 「それはスティア様に監督責任があるからですよ。まだ書き終わってないのですか?」
 「さっき起きて始めたばっかなんだから出来てるわけないわよっ!!」
 この部下私が起きるのを、わざと待ってたわよね! だって起きたときコイツの顔がニヤニヤしてたもん!!
 「そうですか。この件も明日までに終わらせておいてくださいね」
 「この件? ・・・・・・え“っ!?」
 渡された書類を読んだ瞬間になぜか青ざめた顔をしながら身体を硬直させる。
 「こ、これ私の仕事じゃないわっ!!」
 「はい、存じてます。ですが訳あってスティア様に回って来たのです」
 「訳あって回って来たぁ? どういうこと?」
 私にこのめんどくさい仕事が回って理由をちゃんと語って欲しいわね。
 「えぇっと・・・・・・この新しい世界を作る仕事は上の人たちが企画して作る話しだったのはご存知ですよね?」
 「ええ、世界が一つ消えちゃったから新しく作ろうって話してるのを聞いたわ。プロジェクトチームを結成させてるから私はいらないでしょう?」
 「実はそのプロジェクトメンバーたちの意見会で喧嘩が起きてしまって、プロジェクトが滞ってる状態みたいなんです」
 「はぁ?」
 なにそれ? あんなに意気投合してたのに喧嘩したの?
 「それで進み具合からして、あの人たちには任せられないと言うことで急遽他の人に任せることになりました。みんなの話し合いの結果でスティア様、アナタに白羽の矢が立ったのです! おめでとうございますっ!!」
 なにそれ、意味わからない!? てか拍手しないでよっ! 全然嬉しくないからぁっ!!
 「私やるって言ってないわよっ!!」
 「えぇ〜、僕を含めた色んな人たちがアナタを推奨してましたよ。アナタは実際に世界作りに関わったことがありますし」
 「そ、それはもう千年ぐらい前のことだから大半のやり方は忘れちゃったわよっ!!」
 「アナタの姉妹たちが特に推奨していましたよ。 この仕事が出来るのはお姉様しかいないです! って」
 あの二人ぃ〜、私に仕事を押し付ける為に・・・・・・押し付ける為に?
 「ま、まさか・・・・・・気絶している私を起こさなかった理由って新しい世界を作る企画を押し付ける為に?」
 「違いますよ。我々はアナタが適任だと理解してるから・・・・・・ね?」
 いや顔はそう言ってないっ! めんどくさい仕事を押し付けれて良かったぁ! って顔をしてるって!!
 「それにもう上の人たちに話しを通しましたからね。断れると思いますか?」
 「・・・・・・ウソ?」
 「ウソじゃないですよ」
 「・・・・・・マジ?」
 「マジですよ」
 「・・・・・・本当」
 「事実ですから、いい加減現実逃避は止めてください」
 コイツらは本当に、本当に上の連中に話しを通したんだ・・・・・・。
 「イヤァァァアアアアアアッ!? やりたくないっ! 世界を作る仕事なんてもうやりたくないわああああああぁぁぁぁぁぁっ!!?」
 「そんなこと言わないでくださいよスティア様、上の方たちもこう言ってましたよ」
 「え? な、なんて言ってたの?」
 「”期待しているよ“ と」
 うっわぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・プレッシャー、しかも逃げ道がねぇー。
 「それでは今日はもう定時なので私は帰りますね」
 「ちょ、ちょっと待って! アナタも手伝っt」
 「私は合コンの約束があるのでぇ、さようならぁ〜!」
 彼女はそう言うと足早に部屋を出てってしまった。
 「あっ! ・・・・・・ぁぁ、ぁ」
 スティアは机に肘を付きながら頭を抱える。まるで絶望のどん底にいるかのように。
 「あああああああぁぁぁぁぁぁっ!? 裏切り者共めぇぇぇええええええ!!? ぜっっっっっったい許さないだからぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!?」
 そんなことを言いつつも、ちゃんと仕事に取り掛かっているのであった。
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 「ムゥ~・・・・・・」
背の小さな女の子が自分自身で作ったポーションを見つめるが、どこか不満そうにしていた。
 「リィン様、そう拗ねないでください」
 「だってセラ、錬成を二十回やったのにたったの八個しか出来てないんだもん」
 「それは仕方ありませんよ。先程もお伝えした通り、リィン様はまだ錬金術を始めたばかりなんですからね」
 「半分の十個は出来ると思ってたのに」
 「アナタ様なら上手くなっていきますよ。今日の錬成はこれぐらいにしましょう」
 セラがそう言いながら頭を撫でてくると、なぜかムカムカした感情が気持ちが和らいでいく。
 「ふにゅ〜・・・・・・うん」
 これも精霊の力なのかな? 気持ちよくなって来て、眠たくなってきたよぉ・・・・・・。
 「そろそろ私はご飯の用意をしますね。リィン様は、ってあら?」
 「うぅ〜・・・・・・」
 眠い、まだ、寝たら・・・・・ダメ。
 「クスッ・・・・・・ぅかぁーーーのy・・・・・・・」
 スゴ、く・・・・・・ねむ、くてよく、聞、き・・・・・・取れ、ない。
 「セェラ、なん・・・・・・て」
 あれ? 足が、抱っこ?・・・・・セラ、にされ、た、の?
 自分の眼を両手で擦りながら、なんとか眠気を払おうとするが睡魔が増すばかりでなんの意味もない。
 「むぅ、りをなさぁらず・・・・・・【スリープ】」
 「んにゅぅ・・・・・・スゥー、スゥー」
 彼女は腕の中で眠る主人の寝顔を見つめながら微笑む。
 「とても可愛らしい寝顔。私はこの寝顔を“性根の腐ったあの悪魔”から守ればなりませんね」
 彼女はそう言うと晩御飯の献立を考えながらリビングに向う。
「このソファーに寝かせてお来ましょう」
 リビングに着くと、私のリィン様をソファーに優しく下ろしたあとに、風邪を引かないように身体にタオルケットを被せて差し上げる。
 たしか レイゾウコ って名前でしたっけ? まぁ呼び名はどうでもいいんですけど、あの中に食材がたくさん入ってましたね。
 冷蔵庫を開いて食材を確認し始める。
 「ふむふむ、ある程度食材は揃ってますね。これなら大抵の料理が作れそうですね」
 ひき肉とパン粉と牛乳と野菜と調味料を取り出すとキッチンに置いて行く。
「お子様に人気のハンバーグでも作りましょうかね」
 何せ精霊になってからは飲食は不要だったので、料理どころか食事をするのは久しぶりですね。腕が落ちてなければいいんですけど。
 「先ずは玉ねぎをみじん切りにしてから、フライパンで炒めるんでしたね」
 トントントントンッ!
 「うっ! 目が・・・・・・沁みる」
 しかしこれもリィン様と私が楽しく食事をする為、この苦痛に耐えてみせましょう!!
 トントンサクッ!?
 「イタッ!?」
 手元が狂って切ってしまった指を咥えながら、ソファーに目を向けてリィン様の様子を確認する。
 ・・・・・・フゥ、よかった。いまの失態を見られてたらリィン様に失望されていたかもしれません。
 「癒しの加護を与え給え【ヒール】」
 自分の失態の隠ぺ、指の治療をしてからハンバーグ作りを再開する。
 玉ねぎを軽く炒めると皿に移して冷ましている間に、パン粉を牛乳で湿らせる。
 ・・・・・・玉ねぎも冷えたのでタネ作りでもしましょうか。
 ボウルの中にひき肉を入れたあとに、みじん切りの玉ねぎと湿らせたパン粉にニンニクに調味料を入れてから、コネてなじませたあとにタネを作る。
 たしか加熱する前に真ん中を少し凹ませないとダメなんでしたよね。
「・・・・・・これでよし」
 お皿にハンバーグのタネが三つ並んでいるが、“一つだけ不自然なほど小さなハンバーグ”が置いてあった。
 あのお馬鹿さんの分も作ってあげないとリィン様が泣いてしまいますからね。
 「リィン様に感謝するんですね。馬鹿女神様」
 そう言いつつ油を敷いたフライパンの上にハンバーグを乗せてじっくりと両面を焼いていく。
 ・・・・・・うむ、料理が楽しくなってきました。久々だから?
 セラは爪楊枝を取り出すと、ハンバーグに刺してちゃんと焼けてるか確認する。
 よかった、焼けている。一つだけ焦げているのがあるけれども、あの人分だから大丈夫でしょう。
 そのまま蓋をしてからスイッチをOFFにしてハンバーグを燻してる間にサラダとマッシュポテトを作り、もう一つのコンロでセラ特製ハンバーグソースを作る。
 そして最後にハンバーグをお皿に乗せて、盛り付けをしてからソースをかけて完成。
 よし、完成! 久しぶりの料理が上手く出来て良かった。ただ、リィン様のお口合えばいいのですが・・・・・・。
 「おっと、このままではハンバーグが冷めてしまいますね」
 夕食には早いですがリィン様を起こして食べましょうか。リィン様が食事されたあとに、うっかり作ってしまった自分の分のハンバーグを食べればいいですし。
 出来た料理をテーブルに並べ終えると、リィン様に近づいて可愛らしい寝顔を覗きながら肩を優しく揺さぶって声をかける。
 「起きてください。リィン様」
 「う、うにゅぅ〜・・・・・・」
 あれ? もしかしてリィン寝てたの?
 「おはよう、セラ」
 「お目覚めになったところ申し訳ありませんが、夕食のご用意が出来たのでテーブルに行きましょう」
 「夕食? もしかしてリィンが寝てる間に作ってくれたの?」
 「はい」
 「ありがとう、セラ」
 セラのお手伝いをしたかったなぁ。って、おぉ!?
 「ハンバーグだぁっ!?」
 嬉しさのあまり、ついつい子供らしくソファーから飛び起きてしまう。こ、子供の姿だから許されるよね?
 「もしかしてリィン様はハンバーグが好きなのですか?」
 「うん、大好き! よいしょっと」
 イスの上に座り、笑顔でフォークとナイフを持とうとするが手を止める。
 「あれ?」
 テーブルにハンバーグが一つしかないのはどうしてなんだろう?
 「どうしました。リィン様?」
 「セラの分はどうしたの?」
 「リィン様、私はあとで頂くので気にせず食べてください」
 うーん、多分セラは自分の立場を気にしてるからリィンと一緒に食べようとしないのかな?
 「・・・・・・お腹空いたけど、セラが一緒に食べないならリィン食べない」
 「リィン様。私は精霊なので食事は不要なので食べなくても大丈夫です」
 「セラの分を作ってないの?」
 「ありますよ。うっかり自分の分をうっかり作ってしまっただけです」
 「じゃあ一緒に食べようよ」
 「いいんですか? 私のような者と食事なんて、つまらないだけですよ」
 「あのねセラ、誰かと一緒に食事をする方が美味しく感じるんだよ。だから一緒に食べようよ!」
 「ですが、私はリィン様の契約精霊。上下関係が」
 頑固だなぁ〜。こうなったら奥の手を使うしかない!
 「セラはリィンと一緒に食べるのがイヤ・・・・・・なの?」
 必殺、潤んだ瞳で語りかけるっ!!
 「・・・・・・うぅ」
 「セラ、お願い・・・・・・一緒に食べよう」
 セラの心が揺らいでいる。効果は抜群だ!!
 「わかりました。そこまで言うのでしたら、リィン様と共に食事しましょう」
 「やったぁ!!」
 作戦成功! セラと仲良く食事が出来るよ!
 リィンがそんなことを思っている間に、セラはキッチンから自分のハンバーグと持ってくると向かい側のイスに座る。
 「準備が出来ました」
 「うん、それじゃあ」
 目を閉じて両手を合わせる。そして。
 「「いただきます」」
 あれ? この世界にも いただきます の文化があるの? 食べたあとでセラに聞いてみよう。
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