チートなお家と精霊とスローライフ!
プロローグ
 「リィン様、お食事が出来ましたよー! こちらの部屋に来てくださーい!」
 「ハーイ!」
 元気な返事とともに階段を駆け降りる音がした後に、小さな少女がリビングに入ってくる。
 「いつもありがとう。セラ!」
 「いいえ、私はリィン様の側近であり守護精霊なので、これぐらい当たり前です。あら?」
 セラと呼ばれた女性は少女がたくさん抱えているビンに気がつく。
 「またポーションを作ったのですね。しかも、こんなに多く作れる様に」
 「うん、リィンがんばったんだよ!」
 「日頃の成果が出ていますね。そのポーションは明日売ってきますね」
 「リィンも街に行きたいよ」
 「ダメですよ。街は危ないので連れて行けませんよ」
 「ムゥー、セラはいつもそればっか言う」
 「リィン様はまだ子供なのですから、ポーションを売ろうとしても相手されないどころか、奪い取ろうとする可能性があります」
 「だったらリィンがセラと一緒にいれば良いと思う」
 「リィン様のお側にいられるのは嬉しい限りなのですが、私と共に街にいると些か問題が起きるかと」
 「なんで問題が起きるの?」
 「私のような高位精霊と契約している者が小さな少女だと知られると、貴族の方がリィン様を養子にしようとするか、もしくはリィン様を攫い悪用しようする輩が出てくる可能性があります」
 「ウゥ〜、わかった。セラの言う通り、お家で大人しくしてる」
 「ご理解して頂いてありがとうございます。リィン様」
 「でも、いつかリィンを街に連れて行ってね。セラ」
 「はい、リィン様。さぁご飯を食べましょう」
 「ハーイ!」
 リィンはイスに座るとテーブルに置かれている料理をニコニコしながら見る。
 「美味しそ〜う!」
 「ふふっ、リィン様にそう言って頂けると光栄です」
 「「いただきます!」」
 二人はそう言うと食事を始める。この楽しい生活を始めた理由を説明するには少し時間を遡らなければならない。
 「ん、んん? ・・・・・・あれ?」
  ここは何処だろう? 確か学校の帰り道の途中に空が急に明るくなったから、何かな? と思って見上げたところまで覚えてる。
 「やっと起きましたね」
 「んん?」
 うわぁ、スゴく綺麗な人がいる。これってあれかな。ラノベみたいな展開かな?
「すみません。我々のせいでアナタ死なせてしまいました」
 「・・・・・・はぁ、そうですか」
 「あれ? 怒らないんですね」
 「えっと怒るよりも・・・・・・どうしてこうなったのかって言う方が気になるので話して頂けますか?」
 「そうですね。詳しく話しますと、実はあそこにいる二人が喧嘩を始めてしまいまして、互いに思いっきりぶつけ合った魔法の余波が地球の下界に落ちてしまったんですよ。それで、アナタはその余波で身体を吹き飛ばされて死んでしまったんですよ」
 「あそこにいる二人がですか」
 目の前にいる女神様の後ろで、二人の女神が正座していた。恐らくあの正座している二人が喧嘩をしていた女神たちだろう。
 でもなんであの人たちは、正座しながら震えてるんだろう。しかも傷だらけだし。
 「うん、理由は分かりました。それで、俺はこの後どうなるんですか? ラノベの展開では別世界に転生する形になるんですが・・・・どうなんですか?」
 「ええ、その通りですよ。話しが早く済みそうですね。私たちが責任を持ってアナタを剣と魔法の世界に転生させます。勿論、身体の方は私がご用意しているので安心してください」
 「やったー。転生出来るぞー」
 「ですが、アナタにはメインクラスとサブクラスを決めて頂きたい。それとアナタのお願いを二つ聞きますよ」
 二つもお願い出来るなんでお得だね。
 「分かりました。先ずはクラスを決めますかね」
 「このクラスの種類が書かれた紙を見て決めてくださいね」
 「はい、えーっと」
 戦士、騎士、格闘家、狩人、魔法使い、魔物使い、精霊使い、僧侶、聖女、勇者、その他もろもろ。
  「う〜ん、戦闘はしないで、ほのぼのと暮らしたいな」
 「あら、そうですか。でしたら生産系のクラスを選んだ方が良いと思いますよ」
 「ん〜・・・・・・じゃあ錬金術師メインにして、サブクラスを精霊使いします」
 「それで良いんですね」
 「はい、構いません」
 「クラスの方は教会で変えられるので、変えたいと感じたらそちらの方に足を運んでください」
 「分かりました」
 「後二つのお願いを決めちゃいましょう」
 「はい」
 「私になにをお願いしたいのか言ってみてください」
 「そうですねー・・・・・・家が欲しいです」
 「家ですか・・・・・・分かりました。こちらでご用意させて頂きます。もう一つの願いは何ですか?」
 「もう一つの願いは、元いた世界の友人とか家族の記憶に俺がいなかったことにしてくれませんか?」
 「つまりそれは、アナタが元いた世界に存在していたと言う事実の抹消。って理解で良いのですね」
「まぁそうなりますね。お願いします」
 女神様は少し驚いた顔をした。しかも正座している二人の女神も呆然とした顔をしてこっちを見てくる。
 「本当に良いんですか? そんなことをしてしまっても」
 「良いんです。どうせ家族や友人もう会うことは出来ませんし、なによりも俺がいなくなったことを悲しみながら生きていってほしくないので、だからお願いします」
 そう言いながら頭を下げると、目の前にいる女神様から「うーん」と言う声が聞こえる。
「・・・・・・分かりました。そのお願い承ります」
 「ありがとうございます!」
 「それでは我々は転生の準備をするので、少々眠って頂きます」
「え! 眠るんですか?」
 「ええ、眠って頂いた方が魂を身体に定着させる作業が楽なので」
 苦労をかける訳にはいかないしね。大人しく言う通りにしよう。
 「分かりました」
 「ご理解を頂き、ありがとうございます。それでは早速、催眠魔法を掛けさせて頂きますね」
 女神は手を俺の頭にかざすと、自分の身体が暖かく気持ちよく感じる。
 暖かくて心地いい。あ、なんか眠くなってっきた・・・・・・・。
 彼はそのまま深い眠りへと落ちて行った。その様子を見ていた女神は、彼が深い眠りについたのを確認すると用意していた身体に魂を定着させた。
 「・・・・・・・拒絶反応なし、身体に互換性緩和させて・・・・・・よし! これで大丈夫そうね。後はこのまま自動で検査させておきましょうか。さて」
 そう言いながら振り返り、自分の妹たちを見下ろすと眉間にシワを作り始める。その顔見た二人は恐ろしいのか、互いの身体を抱き合い震えるのだった。
 「アナタたち、本当に反省してるんでしょうね?」
 「反省しています。スティア姉様」
 「・・・・・・ゴメンなさい」
 「全くアナタたち、どうやったら口喧嘩から魔法の撃ち込み合いに発展するのかしらね〜?」
 そう聞かれた二人は互いを抱きしめ合いながら目を左右に泳がせると、喧嘩を始めた理由を話し始めた。
 「リーザの笑い声がうるさくて」
 「メディーラが私の読んでるマンガを捨てるから」
 「あ?」
 「・・・・・・ん?」
 女神メディーラと女神リーザはさっきとは打って変わり、抱き合うのをやめて正面を向き合いながら睨み合う。
「リーザ、やる気?」
 「アンタがやりたいなら、やってやるわよ」
 「二人とも止めなさい!」
 「「へブッ!?」」
 睨み合う二人の頭にチョップを下ろす女神スティアだが、振り下ろすチョップの力が強かったのか二人は悶絶しながら床を転げ回る。
「向こうの世界の建物とか道路とかは、なんとか直せたけれども人は何とか出来なかったわ。幸い、って言ったら死んでしまった彼には失礼だけども、アナタたちが放った魔法の被害者が一人で良かったわ! もっと人が多かったらどうなっていたことか。想像するだけでゾッとするわ」
 顔を青くしながら頭を抱える女神スティアに、女神メディーラと女神リーザは自分の頭を撫でながら話し始める。
 「確かにアタシたちは、やりすぎたと思ってるわよ」
 「ん・・・・・・本当に反省してる」
 「反省してるのなら、二人で協力して彼が欲しいと言ってた。家を作って下さい!」
 女神スティアはペンとメモを取り出すと、なにかを紙に書くと千切り二人に渡す。
 「これの通りにお家を作って下さい!」
 「なになに、1.周囲に結界を常時張っていて通常の家よりも頑丈な上に、戸締りがしっかりしている家を作る」
 「2、タブレットなどでの操作で家の改造が出来るようにする?」
 「3.何らかの方法で家を消すことが出来て、設置したい場所があったら、その場所に家を設置出来るようにする」
 「・・・・・・それだけ?」
 女神メディーラと女神リーザが同時に女神スティアの顔を見つけめる。
 「それだけで十分。これ以上やったら逆に迷惑だと思います! 私は記憶の改ざんするのでお願いしますよ。二人で、な・か・よ・く・ね!!」
 「「ハ、ハイ!!」」
 「素直でよろしい」
 そう言うと女神スティアはどこかに行ってしまう。
「メディーラ、始めようか」
 「そうねリーザ、終わってなかったら今度はどうなるか分からないわ」
 「うんうん」
 「先ず家は、私たちの世界に違和感ないのが良いから、ロッジみたいなのが良さそうね」
 「うんうん・・・・・・タブレットは魔力充電式にすればOK。そのタブレットでネットショッピングで生活必需品や家具を買えるようにしといてっと」
 「うんうん、ネットショッピングで色んな物を買えれば便利で良いわよね」
 「後は家の拡張や家を消したり設置したりするのをタブレット操作しよう。タブレットは持ち主の意思で取り出したり消したりしておいて」
 「紛失しても大丈夫そうね。壊れないようにタブレットの強度を上げときましょう」
 「そうだね。それに地震対策に老朽化防止をかけて、結界を張って完成っと」
 「ん? それじゃあ薄いじゃない?」
 「ん、メディーラが張る結界より堅い」
 ビシッ!!
 メディーラは平然な顔を装いながら額に青筋を立つ。誰が見ても感に触ったと言うのが分かる。
 「ほんの少し、いえ本当にちょびっとだけ結界の強度が劣るのは分るけど、えい!」
 メディーラはそう言うと、家の周囲雑草が枯れ始め、代わりに草が生い茂る。
 「こんな風に薬草を生やすことは出来ないでしょう?」
 ムカッ!!
 「ムカつく・・・・・・うりゃっ!?」
 今度はリーザが手をかざしてながら言うが、家や周囲どこを見回しても変わった様子がない。
 「プッ! うりゃ! とか言っといて何も変わってないじゃない」
 「メディーラは分からないの? 私は水道を作った。そしてその水道に流れる水を常に綺麗状態に保てるように魔法を掛けた。蛇口から出た水をそのまま飲めるよ。」
 「ほーう、たったそれだけ? たったの・そ・れ・だ・け・で・なんの意味があるのかしら?」
 「フッ、メディーラはお馬鹿さんだね」
 「なんだって?」
 余裕そうな顔をする女神リーザに対して、女神メディーラは堪忍袋の尾が切れたのか恐い顔をしながら女神リーザの顔を見る。
 「井戸から水を組んで、飲めるようにする為に沸騰殺菌とかしなくて済む」
 「ッ!?」
 「さらにお風呂に魔法で動く湯沸かし器を取り付けた。私気が効く」
 Vサインを作りながら女神メディーラを見つめるが、予想とは裏腹に余裕の表情で『フッ』と鼻で笑いながら手をかざしていた。
 「ウフフ、ねぇリーザ」
 「な、なに?」
 「各所の部屋を見て御覧なさい」
 「え? ・・・・・・へぇ!?」
 ダイニングから各所の部屋までモデルハウスみたいにお洒落になっている。しかもキレイ。
 「私の力ならこれぐらい楽に出来るわ。まぁセンスの無いリーザには真似出来ないでしょうけどね」
 『オーッホッホッホッホッ』と笑う女神メディーラに対してニッコリと微笑む女神リーザだが、彼女も手をかざして何かをし始める。
 「メディーラ、この部屋見て」
 「なにかしら? あ!」
 部屋が一つ増えていて、そこにはなんと錬金術に必要な錬金釜とそれに必要な道具が置いてあった。
 「あの人は錬金術師を取ったから、この部屋は必要だよ。しかも私の加護付き」
 上から目線で見る女神リーザに対して、女神メディーラは歯を食いしばりながら睨んでいた。
 「・・・・・・アナタは私に喧嘩を売ってるのかしら」
 「それ、そっちが売ってるんじゃないの?」
 「フフッ・・・・・・フフフフフッ」
 「・・・・・・やりたいなら良いよ」
 お互いに睨み合いながら、立ち上がり拳を握り魔力を身に纏う。
 「それじゃあ、どっちが優秀な加護をあの家に与えられるか勝負しましょうか?」
 「うん、受けて立つ」
 「フッ! それじゃあ私から、土の加護!!」
 「ん、光の加護」
 「侵入者の強制退去!!」
 「甘い、結界に雨避けの加護!!」
 「なんの! お家の強度アップ!!」
 「・・・・まだまだ!」
 「こんなんじゃ甘いわよ!!」
 こうして二人の仁義なき闘いが始まったのであった。
 「ハーイ!」
 元気な返事とともに階段を駆け降りる音がした後に、小さな少女がリビングに入ってくる。
 「いつもありがとう。セラ!」
 「いいえ、私はリィン様の側近であり守護精霊なので、これぐらい当たり前です。あら?」
 セラと呼ばれた女性は少女がたくさん抱えているビンに気がつく。
 「またポーションを作ったのですね。しかも、こんなに多く作れる様に」
 「うん、リィンがんばったんだよ!」
 「日頃の成果が出ていますね。そのポーションは明日売ってきますね」
 「リィンも街に行きたいよ」
 「ダメですよ。街は危ないので連れて行けませんよ」
 「ムゥー、セラはいつもそればっか言う」
 「リィン様はまだ子供なのですから、ポーションを売ろうとしても相手されないどころか、奪い取ろうとする可能性があります」
 「だったらリィンがセラと一緒にいれば良いと思う」
 「リィン様のお側にいられるのは嬉しい限りなのですが、私と共に街にいると些か問題が起きるかと」
 「なんで問題が起きるの?」
 「私のような高位精霊と契約している者が小さな少女だと知られると、貴族の方がリィン様を養子にしようとするか、もしくはリィン様を攫い悪用しようする輩が出てくる可能性があります」
 「ウゥ〜、わかった。セラの言う通り、お家で大人しくしてる」
 「ご理解して頂いてありがとうございます。リィン様」
 「でも、いつかリィンを街に連れて行ってね。セラ」
 「はい、リィン様。さぁご飯を食べましょう」
 「ハーイ!」
 リィンはイスに座るとテーブルに置かれている料理をニコニコしながら見る。
 「美味しそ〜う!」
 「ふふっ、リィン様にそう言って頂けると光栄です」
 「「いただきます!」」
 二人はそう言うと食事を始める。この楽しい生活を始めた理由を説明するには少し時間を遡らなければならない。
 「ん、んん? ・・・・・・あれ?」
  ここは何処だろう? 確か学校の帰り道の途中に空が急に明るくなったから、何かな? と思って見上げたところまで覚えてる。
 「やっと起きましたね」
 「んん?」
 うわぁ、スゴく綺麗な人がいる。これってあれかな。ラノベみたいな展開かな?
「すみません。我々のせいでアナタ死なせてしまいました」
 「・・・・・・はぁ、そうですか」
 「あれ? 怒らないんですね」
 「えっと怒るよりも・・・・・・どうしてこうなったのかって言う方が気になるので話して頂けますか?」
 「そうですね。詳しく話しますと、実はあそこにいる二人が喧嘩を始めてしまいまして、互いに思いっきりぶつけ合った魔法の余波が地球の下界に落ちてしまったんですよ。それで、アナタはその余波で身体を吹き飛ばされて死んでしまったんですよ」
 「あそこにいる二人がですか」
 目の前にいる女神様の後ろで、二人の女神が正座していた。恐らくあの正座している二人が喧嘩をしていた女神たちだろう。
 でもなんであの人たちは、正座しながら震えてるんだろう。しかも傷だらけだし。
 「うん、理由は分かりました。それで、俺はこの後どうなるんですか? ラノベの展開では別世界に転生する形になるんですが・・・・どうなんですか?」
 「ええ、その通りですよ。話しが早く済みそうですね。私たちが責任を持ってアナタを剣と魔法の世界に転生させます。勿論、身体の方は私がご用意しているので安心してください」
 「やったー。転生出来るぞー」
 「ですが、アナタにはメインクラスとサブクラスを決めて頂きたい。それとアナタのお願いを二つ聞きますよ」
 二つもお願い出来るなんでお得だね。
 「分かりました。先ずはクラスを決めますかね」
 「このクラスの種類が書かれた紙を見て決めてくださいね」
 「はい、えーっと」
 戦士、騎士、格闘家、狩人、魔法使い、魔物使い、精霊使い、僧侶、聖女、勇者、その他もろもろ。
  「う〜ん、戦闘はしないで、ほのぼのと暮らしたいな」
 「あら、そうですか。でしたら生産系のクラスを選んだ方が良いと思いますよ」
 「ん〜・・・・・・じゃあ錬金術師メインにして、サブクラスを精霊使いします」
 「それで良いんですね」
 「はい、構いません」
 「クラスの方は教会で変えられるので、変えたいと感じたらそちらの方に足を運んでください」
 「分かりました」
 「後二つのお願いを決めちゃいましょう」
 「はい」
 「私になにをお願いしたいのか言ってみてください」
 「そうですねー・・・・・・家が欲しいです」
 「家ですか・・・・・・分かりました。こちらでご用意させて頂きます。もう一つの願いは何ですか?」
 「もう一つの願いは、元いた世界の友人とか家族の記憶に俺がいなかったことにしてくれませんか?」
 「つまりそれは、アナタが元いた世界に存在していたと言う事実の抹消。って理解で良いのですね」
「まぁそうなりますね。お願いします」
 女神様は少し驚いた顔をした。しかも正座している二人の女神も呆然とした顔をしてこっちを見てくる。
 「本当に良いんですか? そんなことをしてしまっても」
 「良いんです。どうせ家族や友人もう会うことは出来ませんし、なによりも俺がいなくなったことを悲しみながら生きていってほしくないので、だからお願いします」
 そう言いながら頭を下げると、目の前にいる女神様から「うーん」と言う声が聞こえる。
「・・・・・・分かりました。そのお願い承ります」
 「ありがとうございます!」
 「それでは我々は転生の準備をするので、少々眠って頂きます」
「え! 眠るんですか?」
 「ええ、眠って頂いた方が魂を身体に定着させる作業が楽なので」
 苦労をかける訳にはいかないしね。大人しく言う通りにしよう。
 「分かりました」
 「ご理解を頂き、ありがとうございます。それでは早速、催眠魔法を掛けさせて頂きますね」
 女神は手を俺の頭にかざすと、自分の身体が暖かく気持ちよく感じる。
 暖かくて心地いい。あ、なんか眠くなってっきた・・・・・・・。
 彼はそのまま深い眠りへと落ちて行った。その様子を見ていた女神は、彼が深い眠りについたのを確認すると用意していた身体に魂を定着させた。
 「・・・・・・・拒絶反応なし、身体に互換性緩和させて・・・・・・よし! これで大丈夫そうね。後はこのまま自動で検査させておきましょうか。さて」
 そう言いながら振り返り、自分の妹たちを見下ろすと眉間にシワを作り始める。その顔見た二人は恐ろしいのか、互いの身体を抱き合い震えるのだった。
 「アナタたち、本当に反省してるんでしょうね?」
 「反省しています。スティア姉様」
 「・・・・・・ゴメンなさい」
 「全くアナタたち、どうやったら口喧嘩から魔法の撃ち込み合いに発展するのかしらね〜?」
 そう聞かれた二人は互いを抱きしめ合いながら目を左右に泳がせると、喧嘩を始めた理由を話し始めた。
 「リーザの笑い声がうるさくて」
 「メディーラが私の読んでるマンガを捨てるから」
 「あ?」
 「・・・・・・ん?」
 女神メディーラと女神リーザはさっきとは打って変わり、抱き合うのをやめて正面を向き合いながら睨み合う。
「リーザ、やる気?」
 「アンタがやりたいなら、やってやるわよ」
 「二人とも止めなさい!」
 「「へブッ!?」」
 睨み合う二人の頭にチョップを下ろす女神スティアだが、振り下ろすチョップの力が強かったのか二人は悶絶しながら床を転げ回る。
「向こうの世界の建物とか道路とかは、なんとか直せたけれども人は何とか出来なかったわ。幸い、って言ったら死んでしまった彼には失礼だけども、アナタたちが放った魔法の被害者が一人で良かったわ! もっと人が多かったらどうなっていたことか。想像するだけでゾッとするわ」
 顔を青くしながら頭を抱える女神スティアに、女神メディーラと女神リーザは自分の頭を撫でながら話し始める。
 「確かにアタシたちは、やりすぎたと思ってるわよ」
 「ん・・・・・・本当に反省してる」
 「反省してるのなら、二人で協力して彼が欲しいと言ってた。家を作って下さい!」
 女神スティアはペンとメモを取り出すと、なにかを紙に書くと千切り二人に渡す。
 「これの通りにお家を作って下さい!」
 「なになに、1.周囲に結界を常時張っていて通常の家よりも頑丈な上に、戸締りがしっかりしている家を作る」
 「2、タブレットなどでの操作で家の改造が出来るようにする?」
 「3.何らかの方法で家を消すことが出来て、設置したい場所があったら、その場所に家を設置出来るようにする」
 「・・・・・・それだけ?」
 女神メディーラと女神リーザが同時に女神スティアの顔を見つけめる。
 「それだけで十分。これ以上やったら逆に迷惑だと思います! 私は記憶の改ざんするのでお願いしますよ。二人で、な・か・よ・く・ね!!」
 「「ハ、ハイ!!」」
 「素直でよろしい」
 そう言うと女神スティアはどこかに行ってしまう。
「メディーラ、始めようか」
 「そうねリーザ、終わってなかったら今度はどうなるか分からないわ」
 「うんうん」
 「先ず家は、私たちの世界に違和感ないのが良いから、ロッジみたいなのが良さそうね」
 「うんうん・・・・・・タブレットは魔力充電式にすればOK。そのタブレットでネットショッピングで生活必需品や家具を買えるようにしといてっと」
 「うんうん、ネットショッピングで色んな物を買えれば便利で良いわよね」
 「後は家の拡張や家を消したり設置したりするのをタブレット操作しよう。タブレットは持ち主の意思で取り出したり消したりしておいて」
 「紛失しても大丈夫そうね。壊れないようにタブレットの強度を上げときましょう」
 「そうだね。それに地震対策に老朽化防止をかけて、結界を張って完成っと」
 「ん? それじゃあ薄いじゃない?」
 「ん、メディーラが張る結界より堅い」
 ビシッ!!
 メディーラは平然な顔を装いながら額に青筋を立つ。誰が見ても感に触ったと言うのが分かる。
 「ほんの少し、いえ本当にちょびっとだけ結界の強度が劣るのは分るけど、えい!」
 メディーラはそう言うと、家の周囲雑草が枯れ始め、代わりに草が生い茂る。
 「こんな風に薬草を生やすことは出来ないでしょう?」
 ムカッ!!
 「ムカつく・・・・・・うりゃっ!?」
 今度はリーザが手をかざしてながら言うが、家や周囲どこを見回しても変わった様子がない。
 「プッ! うりゃ! とか言っといて何も変わってないじゃない」
 「メディーラは分からないの? 私は水道を作った。そしてその水道に流れる水を常に綺麗状態に保てるように魔法を掛けた。蛇口から出た水をそのまま飲めるよ。」
 「ほーう、たったそれだけ? たったの・そ・れ・だ・け・で・なんの意味があるのかしら?」
 「フッ、メディーラはお馬鹿さんだね」
 「なんだって?」
 余裕そうな顔をする女神リーザに対して、女神メディーラは堪忍袋の尾が切れたのか恐い顔をしながら女神リーザの顔を見る。
 「井戸から水を組んで、飲めるようにする為に沸騰殺菌とかしなくて済む」
 「ッ!?」
 「さらにお風呂に魔法で動く湯沸かし器を取り付けた。私気が効く」
 Vサインを作りながら女神メディーラを見つめるが、予想とは裏腹に余裕の表情で『フッ』と鼻で笑いながら手をかざしていた。
 「ウフフ、ねぇリーザ」
 「な、なに?」
 「各所の部屋を見て御覧なさい」
 「え? ・・・・・・へぇ!?」
 ダイニングから各所の部屋までモデルハウスみたいにお洒落になっている。しかもキレイ。
 「私の力ならこれぐらい楽に出来るわ。まぁセンスの無いリーザには真似出来ないでしょうけどね」
 『オーッホッホッホッホッ』と笑う女神メディーラに対してニッコリと微笑む女神リーザだが、彼女も手をかざして何かをし始める。
 「メディーラ、この部屋見て」
 「なにかしら? あ!」
 部屋が一つ増えていて、そこにはなんと錬金術に必要な錬金釜とそれに必要な道具が置いてあった。
 「あの人は錬金術師を取ったから、この部屋は必要だよ。しかも私の加護付き」
 上から目線で見る女神リーザに対して、女神メディーラは歯を食いしばりながら睨んでいた。
 「・・・・・・アナタは私に喧嘩を売ってるのかしら」
 「それ、そっちが売ってるんじゃないの?」
 「フフッ・・・・・・フフフフフッ」
 「・・・・・・やりたいなら良いよ」
 お互いに睨み合いながら、立ち上がり拳を握り魔力を身に纏う。
 「それじゃあ、どっちが優秀な加護をあの家に与えられるか勝負しましょうか?」
 「うん、受けて立つ」
 「フッ! それじゃあ私から、土の加護!!」
 「ん、光の加護」
 「侵入者の強制退去!!」
 「甘い、結界に雨避けの加護!!」
 「なんの! お家の強度アップ!!」
 「・・・・まだまだ!」
 「こんなんじゃ甘いわよ!!」
 こうして二人の仁義なき闘いが始まったのであった。
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