高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。
避難先での話し合い
 襲撃現場から離れてセリアの邸宅に着いた俺達は、敵が隠れていないか周囲を確認する。
 「こっちには怪しい人物は見当たらない。そっちは?」
 「こっちにも見当たりません!」
 「同じく見当たりません!」
 安全の確認をすると、リタに近付いて話し掛ける。
 「それじゃあリタ。イレイラ王女にバリアを張ってくれ」
 「アイサ〜! 水よ、我が身を守りたまえ【ウォーターベール】」
 リタの魔法でイレイラ王女を水のベールが包むのを確認したら、セリアの邸宅へ向かう。
 「お父様、お母様。ただ今戻りました!」
 「お帰りセリア。って、どうしてイレイラ様がこちらにいらしているのですか? 護衛の方も、何かあったのですか?」
 「中に入ったら説明します!」
 「・・・・・・そうですね。何かよからぬ事態に巻き込まれていそうですね。どうぞ、上がって下さい」
 理解力があるのか、マーガレットさんは俺達を家に入れるとメイドに何かを命じた。
 「お久しぶりです、イレイラ王女様」
 「お久しぶりです、オルコス婦人。アナタと会うのは王族のパーティー以来ですね」
 「失礼なのですが、どうして我が屋敷の方へ参ったのですか? 何かあったとしか思えませんよ」
 「はい、実は帰りの途中で襲撃にあってしまったのです」
 マーガレットさんはイレイラ王女の言葉に心当たりがあったのか、一瞬だけ目を険しくさせた。
 「たまたま通り掛かったミヤマ殿に助けられて、ここに来たのです。連絡もなしに屋敷に上がってしまい、申し訳ない」
 「いえいえ、イレイラ王女様がご無事で何よりですし、事情が事情なので仕方がありませんよ。コウヤさん」
 「あ、はい。何でしょうか?」
 「コウヤさんのお家に美味しいお菓子がありましたよね。持って来て貰えませんか?
 今私の邸宅には客人を持て成す為のお菓子を置いてないのですよ」
 「え、それはいいんですけどぉ〜・・・・・・」
 こんなところで転移なんて使えねぇよ。
 そんなことを思っていたら、セリアが俺に近付いて耳打ちをして来た。
 「玄関近くのお部屋を使っていいから、持って来て」
 「ああ、うん・・・・・・わかった」
 何か歩に落ちない気がしてならないがマーガレットさんの言われた通りにしないと話が進まない気がしたので、素直に隣の部屋へ行き、【転移】を使って自室へと戻って来た。
 「・・・・・・って、家にそんな来客用のお菓子なんて置いてあったっけ?」
 「洸夜、棚の中にある缶を渡せばいいと思うよ」
 「棚の中にある缶? ああ! 父さんが貰って来たクッキーのことか」
 熊本に行って来た同僚から貰ったとか言うやつか。てか、ゆるキャラのクッキーって・・・・・・どう思う
 「あんまり食べてないから、それを渡してもいいかもな」
 そう言ってから、リビングへと向かう。
 「ただいまぁ」
 「お帰り洸夜ぁ! ってどうしたの、棚を開いたりして?」
 「マーガレットさんに、このお菓子を食べて貰おうかと思ってさ。持って行っていい?」
 「マーガレットさんだったら、持って行っていいわよぉ〜!」
 よかった。母さんから許可が下りて。
 「それじゃあこれを持って行く。あ、そうそう。向こうで話もするから、帰りが遅くなるかも」
 「あらそうなの? もしかしてぇ〜、セリアちゃんと2人っきりでぇ〜・・・・・・」
 「いや、そういうことじゃないから」
 つーか、そもそもセリアと付き合っていないし。
 「そうなのぉ。残念」
 「そうそう、一緒にいる私も何だかモヤモヤするんだよねぇ〜」
 つまらなそうな顔をさせる母さん。てか、何でモヤモヤするんだよ。
 「向こうに待たせる訳にはいかないから、もう行くぞ」
 「マーガレットさんとセリアちゃんに、よろしくって伝えてね!」
 「ああ、わかった。伝えておく」
 「行って来るねぇ〜!」
 母さんにそう言うと自室に戻り、【転移】を使用してセリアの家へ戻って来る。
 「ただいま戻りました」
 「可愛い熊の形をしたクッキーだよ!」
 く◯モンだけどな。
 「そうですか。こちらでお預かり致します」
 「はい」
 メイドにクッキーの入った缶を渡すと、空いている席に座る。
 「それで、話し合いは何処まで進んだんですか?」
 「襲撃されるのに心当たりがあるか聞いたのですが、全く心当たりがないと仰っているのです」
 「ああ、そうなんですか」
 心当たりがないかぁ〜・・・・・・。
 「あの、ミヤマ殿。先程助けて頂き、礼を申す」
 「いや、気にしないで下さい。それよりも、襲撃される理由に心当たりがないと仰っていたようですが、本当なのですか?」
 「事実だ。全く心当たりはない」
 口ではそうは言っているけど、瞳はそうは語っていない。
 「心当たりがないとすると、戦争を吹っ掛けたい他国の人間か、あるいは陛下に反感のある貴族か」
 「その線が有力かと思われます」
 護衛はそう言うが、イレイラ王女に反応がない。これはハズレ臭いな。
 「そうか? 失礼かもしれないが、もしかしたらイレイラ王女の兄弟の誰かが仕向けたと言う可能性もある」
 「それは、ない」
 「と、言うと?」
 「私の姉や兄、ましてや弟が私の命を狙いに来る筈がない。だって私は後継者候補から外されているから」
 「・・・・・・え?」
 どういうことなんだ? 後継者候補から外されているって?
 俺がそう思っていると、マーガレットさんが気不味そうな顔をさせながら説明を始めた。
 「陛下は2人の女性を側近に迎え、それぞれに子を生し得ました。しかしイレイラ王女はその2人の側近の子ではないのです」
 「え!? じゃあつまり、イレイラ王女は・・・・・・」
 「隠し子ってこと?」
 本人の前で言うなよリタ。
 「いいや違う。正確には第二王妃の世話係が、私の母親なんだ」
 「「えっ!?」」
 世話係。つまり、第二王妃の側近との子。
 「二人の王妃が身篭っているときに、お父様が第二王妃の側近である私の母と関係を持ってしまったんだ」
 「でも、例え男女の関係になっていたとしても、イレイラ様が国王様との間に産まれた子だという証明にはなりませんよ」
 でも待てよ。俺の世界ならDNA鑑定があるから親子関係を証明出来るけど、こっちの世界ではDNA鑑定はないよなぁ。
 「いいや、私がお父様との間に産まれた間違いないんだ。現に私のお腹には皇帝の紋章が刻まれているんだ」
 「あ、ああ〜・・・・・・そうなんですかぁ」
 後でセリアに聞いてみるとしようか。だからリタ、ジト目で俺を見つめないでくれ。
 「私が産まれて来たときに、お父様は私をお母様と共に別荘の方へ隔離したんだ」
 「イレイラ様、それは・・・・・・」
 「わかっている。お父様は私とお母様を守る為にそうさせたんだろう。それで話の続きなのだが、私はその別荘で育ち、10歳のときに初めて王都へ行きお父様と会ったんだ。
 お父様は私と会えたことを心から喜んでいたが、そうじゃない人物がいた」
 その人物を口に出すのが恐いのか、紅茶を手にして飲むので俺が代わりに答えた。
 「母親がお使えしていた第二王妃ですか」
 「あ、ああ・・・・・・あの人だけは私を睨んでいたからな」
 そうだよなぁ。自分のお世話係だった人が自分と同じ立場の人間になったら、怒りを感じる筈だよなぁ。
 「やはり、今回の件は第二王妃の差し金でしょうか?」
 「可能性はあると思う。でも、証拠となるものがないから白黒の判断が難しい」
 俺の言葉に、全員が反応する。
 「どうして? 襲撃犯は捕まえているから、自白をさせればすぐにわかるんじゃないの?」
 「証言はあくまで言葉だから、“アナタ達がそう言わせたんでしょ?”の一言で終わると思うし、言い掛かりと言われてしまう可能性がある。だから決定的な証拠が必要なんだ」
 動かぬ証拠ってヤツをね。でもその前に・・・・・・。
 「イレイラ王女は今何処に住んでいらしてるのですか?」
 「王宮の一室に住んでいる」
 なるほど、王宮か。
 「それはそれでマズイかもしれない」
 「どうしてだ?」
 「もしかしたら王宮内に内通者がいて、イレイラ王女の命を狙っている可能性があるかもしれない」
 「どうしてそんなことを言えるんだ?」
 「イレイラ様の味方と、第二王妃の味方。どっちの方が数が多いと思いますか?」
 そう聞いたら、彼女は俯いてしまった。
 「私から提案がありますよぉ〜」
 ティアラ様が何処からともなく現れたのであった。
 「こっちには怪しい人物は見当たらない。そっちは?」
 「こっちにも見当たりません!」
 「同じく見当たりません!」
 安全の確認をすると、リタに近付いて話し掛ける。
 「それじゃあリタ。イレイラ王女にバリアを張ってくれ」
 「アイサ〜! 水よ、我が身を守りたまえ【ウォーターベール】」
 リタの魔法でイレイラ王女を水のベールが包むのを確認したら、セリアの邸宅へ向かう。
 「お父様、お母様。ただ今戻りました!」
 「お帰りセリア。って、どうしてイレイラ様がこちらにいらしているのですか? 護衛の方も、何かあったのですか?」
 「中に入ったら説明します!」
 「・・・・・・そうですね。何かよからぬ事態に巻き込まれていそうですね。どうぞ、上がって下さい」
 理解力があるのか、マーガレットさんは俺達を家に入れるとメイドに何かを命じた。
 「お久しぶりです、イレイラ王女様」
 「お久しぶりです、オルコス婦人。アナタと会うのは王族のパーティー以来ですね」
 「失礼なのですが、どうして我が屋敷の方へ参ったのですか? 何かあったとしか思えませんよ」
 「はい、実は帰りの途中で襲撃にあってしまったのです」
 マーガレットさんはイレイラ王女の言葉に心当たりがあったのか、一瞬だけ目を険しくさせた。
 「たまたま通り掛かったミヤマ殿に助けられて、ここに来たのです。連絡もなしに屋敷に上がってしまい、申し訳ない」
 「いえいえ、イレイラ王女様がご無事で何よりですし、事情が事情なので仕方がありませんよ。コウヤさん」
 「あ、はい。何でしょうか?」
 「コウヤさんのお家に美味しいお菓子がありましたよね。持って来て貰えませんか?
 今私の邸宅には客人を持て成す為のお菓子を置いてないのですよ」
 「え、それはいいんですけどぉ〜・・・・・・」
 こんなところで転移なんて使えねぇよ。
 そんなことを思っていたら、セリアが俺に近付いて耳打ちをして来た。
 「玄関近くのお部屋を使っていいから、持って来て」
 「ああ、うん・・・・・・わかった」
 何か歩に落ちない気がしてならないがマーガレットさんの言われた通りにしないと話が進まない気がしたので、素直に隣の部屋へ行き、【転移】を使って自室へと戻って来た。
 「・・・・・・って、家にそんな来客用のお菓子なんて置いてあったっけ?」
 「洸夜、棚の中にある缶を渡せばいいと思うよ」
 「棚の中にある缶? ああ! 父さんが貰って来たクッキーのことか」
 熊本に行って来た同僚から貰ったとか言うやつか。てか、ゆるキャラのクッキーって・・・・・・どう思う
 「あんまり食べてないから、それを渡してもいいかもな」
 そう言ってから、リビングへと向かう。
 「ただいまぁ」
 「お帰り洸夜ぁ! ってどうしたの、棚を開いたりして?」
 「マーガレットさんに、このお菓子を食べて貰おうかと思ってさ。持って行っていい?」
 「マーガレットさんだったら、持って行っていいわよぉ〜!」
 よかった。母さんから許可が下りて。
 「それじゃあこれを持って行く。あ、そうそう。向こうで話もするから、帰りが遅くなるかも」
 「あらそうなの? もしかしてぇ〜、セリアちゃんと2人っきりでぇ〜・・・・・・」
 「いや、そういうことじゃないから」
 つーか、そもそもセリアと付き合っていないし。
 「そうなのぉ。残念」
 「そうそう、一緒にいる私も何だかモヤモヤするんだよねぇ〜」
 つまらなそうな顔をさせる母さん。てか、何でモヤモヤするんだよ。
 「向こうに待たせる訳にはいかないから、もう行くぞ」
 「マーガレットさんとセリアちゃんに、よろしくって伝えてね!」
 「ああ、わかった。伝えておく」
 「行って来るねぇ〜!」
 母さんにそう言うと自室に戻り、【転移】を使用してセリアの家へ戻って来る。
 「ただいま戻りました」
 「可愛い熊の形をしたクッキーだよ!」
 く◯モンだけどな。
 「そうですか。こちらでお預かり致します」
 「はい」
 メイドにクッキーの入った缶を渡すと、空いている席に座る。
 「それで、話し合いは何処まで進んだんですか?」
 「襲撃されるのに心当たりがあるか聞いたのですが、全く心当たりがないと仰っているのです」
 「ああ、そうなんですか」
 心当たりがないかぁ〜・・・・・・。
 「あの、ミヤマ殿。先程助けて頂き、礼を申す」
 「いや、気にしないで下さい。それよりも、襲撃される理由に心当たりがないと仰っていたようですが、本当なのですか?」
 「事実だ。全く心当たりはない」
 口ではそうは言っているけど、瞳はそうは語っていない。
 「心当たりがないとすると、戦争を吹っ掛けたい他国の人間か、あるいは陛下に反感のある貴族か」
 「その線が有力かと思われます」
 護衛はそう言うが、イレイラ王女に反応がない。これはハズレ臭いな。
 「そうか? 失礼かもしれないが、もしかしたらイレイラ王女の兄弟の誰かが仕向けたと言う可能性もある」
 「それは、ない」
 「と、言うと?」
 「私の姉や兄、ましてや弟が私の命を狙いに来る筈がない。だって私は後継者候補から外されているから」
 「・・・・・・え?」
 どういうことなんだ? 後継者候補から外されているって?
 俺がそう思っていると、マーガレットさんが気不味そうな顔をさせながら説明を始めた。
 「陛下は2人の女性を側近に迎え、それぞれに子を生し得ました。しかしイレイラ王女はその2人の側近の子ではないのです」
 「え!? じゃあつまり、イレイラ王女は・・・・・・」
 「隠し子ってこと?」
 本人の前で言うなよリタ。
 「いいや違う。正確には第二王妃の世話係が、私の母親なんだ」
 「「えっ!?」」
 世話係。つまり、第二王妃の側近との子。
 「二人の王妃が身篭っているときに、お父様が第二王妃の側近である私の母と関係を持ってしまったんだ」
 「でも、例え男女の関係になっていたとしても、イレイラ様が国王様との間に産まれた子だという証明にはなりませんよ」
 でも待てよ。俺の世界ならDNA鑑定があるから親子関係を証明出来るけど、こっちの世界ではDNA鑑定はないよなぁ。
 「いいや、私がお父様との間に産まれた間違いないんだ。現に私のお腹には皇帝の紋章が刻まれているんだ」
 「あ、ああ〜・・・・・・そうなんですかぁ」
 後でセリアに聞いてみるとしようか。だからリタ、ジト目で俺を見つめないでくれ。
 「私が産まれて来たときに、お父様は私をお母様と共に別荘の方へ隔離したんだ」
 「イレイラ様、それは・・・・・・」
 「わかっている。お父様は私とお母様を守る為にそうさせたんだろう。それで話の続きなのだが、私はその別荘で育ち、10歳のときに初めて王都へ行きお父様と会ったんだ。
 お父様は私と会えたことを心から喜んでいたが、そうじゃない人物がいた」
 その人物を口に出すのが恐いのか、紅茶を手にして飲むので俺が代わりに答えた。
 「母親がお使えしていた第二王妃ですか」
 「あ、ああ・・・・・・あの人だけは私を睨んでいたからな」
 そうだよなぁ。自分のお世話係だった人が自分と同じ立場の人間になったら、怒りを感じる筈だよなぁ。
 「やはり、今回の件は第二王妃の差し金でしょうか?」
 「可能性はあると思う。でも、証拠となるものがないから白黒の判断が難しい」
 俺の言葉に、全員が反応する。
 「どうして? 襲撃犯は捕まえているから、自白をさせればすぐにわかるんじゃないの?」
 「証言はあくまで言葉だから、“アナタ達がそう言わせたんでしょ?”の一言で終わると思うし、言い掛かりと言われてしまう可能性がある。だから決定的な証拠が必要なんだ」
 動かぬ証拠ってヤツをね。でもその前に・・・・・・。
 「イレイラ王女は今何処に住んでいらしてるのですか?」
 「王宮の一室に住んでいる」
 なるほど、王宮か。
 「それはそれでマズイかもしれない」
 「どうしてだ?」
 「もしかしたら王宮内に内通者がいて、イレイラ王女の命を狙っている可能性があるかもしれない」
 「どうしてそんなことを言えるんだ?」
 「イレイラ様の味方と、第二王妃の味方。どっちの方が数が多いと思いますか?」
 そう聞いたら、彼女は俯いてしまった。
 「私から提案がありますよぉ〜」
 ティアラ様が何処からともなく現れたのであった。
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