高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

セリアとアンリネットの嫉妬混じりな攻防戦

 あの事件が起こってから数日間で色々変わったところがあった。1つ目は、帝国の領地が増えたこと。それは何故かって?
 簡単な理由であのダサイアイアンゴーレムを作った国に抗議したら、全力で謝られて賠償金を払ったみたいだが、お金で補えない部分は土地で計算したみたいだ。
 2つ目は俺の知名度が上がったこと。向こうの世界に行ったら英雄みたいな扱いを受けて、まともに歩けない状態が続いた。
 なので、用があるときだけ向こうの世界に行くってことになった。まぁ今はだいぶ落ち着いて来ているんだけどな。
 3つ目は、やっとハゲ校長が中国に国外逃亡を謀ったのがニュースで出て来たのだが、一文無しになっているのは知らないだろうな。後はその息子の無乃に関してもニュースもわからずじまいらしい。
 そして4つ目は、何と師匠がルノアとセリアに稽古を付けてくれる事になった! ダメ元で頼んでみたら、あっさりとOKが貰えた。何か企んでいなければいいんだけどなぁ。う〜ん・・・・・・。


 「コウヤ、そんなに悩んでどうしたの?」


 「ん? あ、いやぁ。ちょっと考え事をしてた」


 「まさかとは思うけど、コウヤがアイアンゴーレムに使ったクリスタルブレードのことを、考えていたんじょないよねぇ?」


 「まぁ、そうだな」


 「使っちゃダメだよ! アニスだって言っているんだから」


 「それはわかっているから安心してくれ」


 つーか使う度にいちいち倒れていたら、実用性もへったくれもねぇよ。


 「それに、リタが心配しているようなことで悩んでいるんじゃないんだ」


 「え、そうなの?」


 「ああ。そうだよ」


 「じゃあ、あの剣の何について悩んでいるの?」


 「名称について悩んでいた」


 「名称?」


 何を言っているんだ? と言いたそうな顔をしているリタに対して、俺は真面目な顔で話し掛ける。


 「ああ、あの技を使ってアニス学園長の話を聞いて思ったんだ。いつも作るクリスタルブレードよりも強力で、明らかに別物になっているってな。って」


 アイアンゴーレムの残骸を見て、俺オリジナル魔法の威力がどれぐらいのものなのか知ったし、何よりも自分自身で恐ろしいとも思った。


 『もしかして、名前を付けようとしているの?』


 「その通り!」


 表情はわからないけど、悩んだようすを見せる父さん。


 『僕自身は洸夜くんのワザを見てないから、名称しようにも出来ないんだ』


 「確かに」


 『でも、アニスさんだったら洸夜くんのワザを見ているから、名前を付けられるかも』


 「あ、確かにそうかもしれない」


 『今日学校に行ったら聞いてみるといいよ』


 「わかった。そうする」


 あの人ならいい名前を付けてくれると思うし。


 「洸夜ぁ〜、そろそろ時間になるよ」


 母さんがそう言うので、部屋に飾ってある時計を見つめる。


 「あ、本当だ。そろそろ行こうか、リタ」


 「うん!」


 椅子から立ち上がると、母さんが微笑みながらお弁当を持って来た。


 「念の為に聞いておくけど、その中身キャラ弁じゃないよな?」


 「大丈夫大丈夫! お母さんの愛情たっぷりの普通のお弁当だから、安心して持って行ってね!」


 「わかった。その言葉を信じる」


 半信半疑のまま、お弁当を受け取って鞄の中へ入れると靴を持って自室へち向かう。


 「リタ、準備の方は出来たか?」


 「 OKなのよさぁ!」


 コイツ、また変な言葉を覚えたな。


 「そんじゃ、【転移】」


 アニス学園長が用意してくれた家にやって来たら外へと出る。


 「お、おはようコウヤくん!」


 セリアが外で待ってましたと言わんばかりに、明るい表情であいさつをする。


 「おはよう、セリア。今日から学校だな」


 「そ、そうだね!」


 ちょっと挙動不審なセリアを気にしつつ、鍵が掛かっているのか確認をする。


 「そう言えば、ルノアは?」


 「先に行ったみたい・・・・・・なんだ」


 何故かわからないが、語尾の方が弱々しくなっている。


 「ねぇねぇ2人共、学園に向かわないとマズイんじゃない?」


 「あ!」


 そうだよ、その通りだよ。


 「リタの言う通り、学園へ向かおうか」


 「う、うん。そうだね!」


 「学園へぇ〜、レッツゴー!」


 ルンルン気分のリタと、ちょっと頬を赤く染めているセリアと共に学園へ向けて歩き出した。


 「そう言えば久々の学園になるけど、学園の方は大丈夫か?」


 「大丈夫って、どう大丈夫なの?」


 「教室の方はともかく校庭の方はあのゴーレムが大暴れしていたから、とんでもない状態になっているんじゃないのか?」


 俺が覚えている限りでは、ゴーレムのパンチのせいで地面ところどころに凹みが出来ていた筈だ。


 「それなら魔法で直しているみたいだから、大丈夫じゃないかな?」


 「そうだね。大穴ならまだしも、凹みぐらいだったら魔法ならパパッと直せるよ」


 はぁ〜、やっぱり魔法は俺の世界とは違って、便利なところがあるなぁ〜。


 「あ! コウヤ、あれ!」


 「ん? えっ!?」


 「あ、あれ?」


 学園の校門の目の前でアンリネットさんとカーシャさんが立たずんでいて、俺を見付けるなり駆け寄って来た。


 「おはようコウヤ」


 「お、おはようアンリネットさん。それとカーシャさん」


 「おはようございます、ミヤマ様」


 何で校門の前で待っていたんだ?


 そんな事を思っていたら、アンリネットさんが俺の服の裾を引っ張って来たのだ。


 「教室、行こう」


 「あ、ああ・・・・・・わかった」


 「手」


 「ん?」


 「手を繋ぐ」


 アンリネットはそう言うが俺の手ではなく、俺の腕にしがみ付いて来た。


 「・・・・・・何か間違えてないか?」


 「ん、これで合ってる」


 「な・・・・・・なぁ!?」


 その姿を見たセリアは、驚愕の顔に変わる。


 「・・・・・・フッ」


 鼻で笑う姿を見たセリアは、怒ったのか余った方の腕にしがみ付いて来た。


 「セリア積極的ぃ〜!」


 リタのその言葉を聞いたセリアは顔が真っ赤にさせるのと同時に、俺に身体を預けるように肩に顔の側面を付けて来た。


 「ス、スイゾクカンに行ったときは・・・・・・こ、こここんな風にして歩いてたよ!」


 「ムゥ〜・・・・・・」


 対抗心を燃やしたのか、アンリネットさんも同じようにするが、背が低いせいで二の腕に当たって形になってない。


 「・・・・・・フッ」


 今度はセリアがアンリネットを見下ろしながら鼻で笑った。


 「あのさ2人共、ここでこんな事をしていたら遅刻になるぞ」


 「ん、じゃあ行こう」


 俺のことを睨むなよ。何にも悪いことをしてないんだからさ。


 「コウヤくん、エスコートをお願いね」


 爽やかな笑みなのに怖いと感じてしまうのは何でだろう?


 「お嬢様・・・・・・成長しましたね」


 「モテモテだね、コウヤ」


 この状態をモテモテだと言えるのか?


 そんなことを思いながら、校舎の中へ入って行く。


 「ウフフ・・・・・・私、洸夜くんと手を繋げて幸せ」


 「そ、そうか」


 幸せオーラよりも、対抗心オーラがダダ漏れな気がする。


 「コウヤ」


 「ん? な、何?」


 「スリスリ〜・・・・・・」


 アンリネットはそう言いながら頬を擦り付けて来た。そのようすを見ていたセリアは何といきなり俺の身体に抱き付いて来たので、周りで見ていた人達もビックリした様子で見ていた。


 「デートに行ったときに、こここっ、こんなこともしたもん!」


 「コウヤ?」


 本当なの? と言いたそうな瞳を向けて来た。


 「あ、ああ。セリアが転びそうになってな。成り行きでそう言う風になったんだ」


 「・・・・・・コウヤ」


 アンリネットさんはそう言うと、俺から離れて両手を広げた。


 「ギュゥ〜をして」


 「それはちょっとぉ〜・・・・・・」


 抵抗感があるから無理。


 「セリアだけズルイ」


 「いや、そう言われてもなぁ」


 不満そうに頬を膨らませているアンリネットの側に、カーシャさんが近く。


 「お嬢様、アナタ様の教室は向こうなので行きましょうか」


 「話終わってない」


 「いいから、行きますよ」


 カーシャさんのその言葉を聞いたアンリネットさんは、肩をくすみ上がらせる。


 「・・・・・・わかった。カーシャの言う通りにする」


 「素直でよろしいです。お嬢様」


 アンリネットさんは先を歩くカーシャさんの後を付いて行くのだが、チラチラと名残惜しそうにこっちを見つめて来るのであった。

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