高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第33話 ゼウス様の意地

 兵士達は王都で窃盗(?)をした犯人に何故か優しく語り掛けた後に優しく立ち上がらせる。因みに足の拘束を取るように言われたので取ってあげた。


 「ほら、歩けるか?」


 「ナンバー4の俺が、こんな身も知らなねぇガキにワンパン・・・・・・」


 「あ、ああ・・・・・・そうだな」


 「あの時に退職届けを出していればよかった」


 「えっ!? 窃盗が職業なのか?」


 「ちぃがぁうぅんだぁああああああああああああっ!!?」


 うわっ!? また泣き出したよ、この人。


 「もうお前黙っていろっ!!」


 「あ、はい!」


 俺が押し黙ると、兵士は窃盗犯に 気にしなくていいから。 とか声を掛けて慰めているので解せん!


 「無自覚って本当に恐いねぇ〜」


 「私もコウヤくんにどう言えばいいのか、わからないよ」


 え? 何これ? 何か知らないけど、確実に俺が悪いって流れになって来ていないか? 念の為に聞いておこう。


 「なぁ2人共。俺、何か悪い事をしてる?」


 「してるよ」


 「リタさんの言う通り、コウヤくん無自覚に人を傷付けているよ」


 「マジかっ!?」


 「「マジ」」


 「・・・・・・どの辺が?」


 「もう最初っからだよ!」


 そんなやり取りをしていたら、兵士の1人が気まずそうな顔させながら俺達に近付いて来た。


 「あ、そのぉ〜・・・・・・キミ」


 「協力をしてくれてありがとう。彼を捕まえるのに苦労していたんだ」


 「あ、そうなんですか?」


 結構すばしっこい感じがあったもんね。


 「それでその、名前の方を聞いてもいいかなぁ?」


 「構いませんよ。俺の名前は コウヤ・ミヤマ です」


 「セリア・オルコス 子爵です」


 「リタだよぉ!」


 今セリアの名前を聞いた瞬間、ビクッと身体を強張らせたな。


 「ミヤマくんにオルコス子爵様。それにリタですね。この事はディスペル魔法学園の方に話を通しても構いませんか?」


 「はい、アニス学園長に話を通して頂けると俺は助かります」


 「私は、お父様に報告して頂けると助かります」


 「アニス学園長とマルコシス様に報告・・・・・・わかりました。私共の方からお伝えいたします。それでは、失礼いたします」


 兵士さんはそう言うと、涙目の窃盗犯を連れて行ってしまった。


 「まぁ色々あったけど、結果的に捕まえられたからOKということにしておこう」


 「そうだね。行こう」


 「うん、行こうか」


 「え? ちょっ! おいっ!? 俺のことを置いて行くなよぉっ!!」


 先に行く2人の後を慌てて追い付いて一緒に歩くが、何故かジト目で話し掛けるので居心地が悪かった。


 「それじゃあコウヤくん、また明日ね」


 「あ、ああ・・・・・・また明日」


 ちょっと気まずい雰囲気のまま、セリアは自宅へと帰って行く。


 「俺、セリアに悪いことをしたっけ?」


 「悪いことはしてないよ」


 「なら何であんなに不機嫌なんだ?」


 「・・・・・・明日には機嫌が治っていると思うから、安心していいと思うよ」


 そうかぁ? 俺からして見ると、そんな感じがしないんだが。


 「それよりもコウヤ、早くお家に帰ろうよ!」


 「あ、ああ!」


 そう返事をするとドアの鍵を開けて家に入って行き、念の為に戸締りのチェックをする。


 「偶にここに来て換気もした方がいいかな?」


 「そうした方がいいかも。玄関の鍵閉めた?」


 「ああ、さっきチェックしている時に閉めたから大丈夫だ」


 「じゃあ帰ろう!」


 そう言って肩に乗ったので、目を瞑り転移を唱えて自分の世界へと帰る。


 「ただいまぁ!」


 「お帰り、洸夜!」


 母さんが部屋に突入して来ると、嬉しそうな顔を浮かべながら抱き付いて来た。


 「帰って来たみたいですねぇ〜」


 「あれ? ティアラ様。どうしてここにいるのですか?」


 「ワシもおるぞぉ〜」


 「ゼウス様も来ていたんですか!」


 あ、でも体調が優れないのか表情が暗いなぁ〜。


 『お帰り』


 「あ、父さん。いたんだ」


 父さんは相変わらず声が小さいので、メガホンを使って話し掛けて来る。


 『ん、今みんなで麻雀をやっているんだ』


 「あ、そうなんだ」


 神様と麻雀をするって、勇気があるなぁ! てか、ティアラ様とゼウス様は麻雀出来んのかよ!


 「洸夜もこっち来て見てみなよぉ〜」


 「わかった! わかったから袖を引っ張らないでくれ!」


 渋々といった感じで玄関に靴を置くことを忘れずにリビングまで行くと、テーブルの上に麻雀台が置かれていた。


 「へぇ〜、あれが麻雀なんだぁ〜。どうやって遊ぶの?」


 「リタちゃん、麻雀の遊び方はね。同じ柄のコマを2つから3つ集めるか・・・・・・」


 母さんがリタに遊び方を説明している中、あることに気が付いた。


 「あれ? この点数配分おかしくない?」


 「何がおかしいの?」


 「4人中3人が1000点以上あるのに、1人だけ200点で少ない」


 しかも1人だけ3000点とズバ抜けて高い。


 『1人2000点でやっていたんだけど、ゼウス様の運が悪すぎてこうなっているんだよ』


 「200点しかないのって、ゼウス様なのぉ!?」


 『そうだよ』


 だからあんな顔をしていたのか。


 「手加減するとか考えなかったの?」


 つーか全知全能の神様が負けるって、どう言うことだよ。


 『僕も途中で気付いて手加減をしていたよ。でもね、本人に運がないのか全く上がるどころかリーチすらならないんだ』


 「ええ〜・・・・・・」


 リーチにすらならないのは流石に問題あるだろう。


 「点数の高い四国無双を狙った?」


 『いやぁ・・・・・・チーとかカンをしていたときもあったから、そんなことはないと思うよ』


 「お流れしたときに、ちゃんと持ち手を見た?」


 『見たよ。点数関係なく無難に揃えようって感じの手だったよ』


 「それじゃあ、やっぱり・・・・・・」


 『うん、洸夜が思っている通りだよ』


 ゼウス様は本当に運がないんだ。


 放って置かれているゼウス様に目を向けて見ると、何と他の人の手持ちの駒を見て回っていた。


 「あっ!? ズルしてる!」


 「これぐらいええじゃないかぁ! このまま負けてしもうたら、ワシの威厳が地に落ちてしまうわい!!」


 ズルをしようとしている時点で威厳が落ちていると俺は思うが。


 「何じゃその目は! 負けっぱなして面白い遊びなんてないじゃろう!! 一回ぐらいは勝ちたいんじゃぁああああああ!!」


 「ま、まぁ気持ちはわかりますよ」


 だからご近所迷惑になるような叫び声を上げないで下さい。


 「一回仕切り直した方がいいんじゃない?」


 『う〜ん、どうしようか?』


 「仕切り直して貰えると、ワシは助かる」


 「そうですねぇ〜。このままではゼウス様が可哀想なので、仕切り直しましょうかぁ〜。サエさんもそれでいいですよねぇ〜?」


 「構いませんよ!」


 「ありがとぉ〜!」


 こうして仕切り直しとなり、始めっから麻雀をやることになったが、初めてやるリタと父さんがチェンジしたのである。


 「さて、どうなることやら」


 『今度は大丈夫だと思うよ』


 まぁ確かにな。リタ自身はさっきルールを教えられたばかりだから、リタが最下位になるかもしれないな。 ・・・・・・と最初は思っていた。


 「・・・・・・これは」


 『流石にちょっとねぇ?』


 「何故じゃぁ〜、何故逆転負けるのじゃぁ〜!」


 最初は俺達の予想通りリタが最下位になっていたが、3回目のときにツモをやって神様を追い抜いてしまった。そこから更に不運なことが続き、捨てパイでロンを言い渡されたり、お流れで最下位だったので点数を取られたりと不幸は続き、最初の持ち点の2000点から300点へと一気に下がってしまった。


 「これは、運がないとしか言いようがない」


 だって神様が捨てたコマの中には持っていればチーとか狙えたのがあれば、リーチを掛けられるものまであったのだがら。


 「本当に運がないんだなぁ〜」


 「ワ、ワシ・・・・・・麻雀嫌い」


 しょげているゼウス様の背中を優しく摩って慰めてあげる洸夜であった。

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