高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第32話 身の潔白を証明出来た瞬間

 「ん、んん〜・・・・・・」


 スマホのアラームがうるさいので、止めようと手を伸ばしたところでアラームが鳴り止んだ。


 え、スマホバグった?


 慌てて上体を起こして確認すると、何とリタがスマホの画面に手を置いていたのだ。


 「おはようコウヤ」


 「おはようリタ。使い方覚えたんだ」


 「うん、コウヤが使っているときに覗いて見ていたからね」


 なるほど、ここを押せばアラームが止まるってわかっていたのか。それよりもだ。


 「また夢を見た」


 「夢? もしかして、あのハゲ校長の夢を」


 「う〜ん、ちょっと違うな。何て言うかそのぉ・・・・・・」


 「ちょっと洸夜、起きてるっ!?」


 説明の途中に姉さんが慌てたようすで部屋に入って来た。


 「ああ、起きてる! どうしたんだ、そんなに慌てて?」


 「テレビ、テレビを観て! 早くぅっ!!」


 姉さんが俺の手を引っ張ってリビングへと連れ込まれると、父さんと母さんがテレビを真剣に見つめていた。


 「2人してそんなにテレビを真剣に見て、どうしたんだよ?」


 「洸夜、とんでもないニュースがやってるのよぉ!」


 父さんは母さんの言葉に同意するように首を縦に振る。


 「ニュース?」


 もしかして、もうインタビューがテレビに流れているのか?


 そう思ってテレビを見つめると、驚くようなニュースが流れていた。


 『昨日の夕方頃に、脱税に関わっていた 金刈 有志 を逮捕されました。金刈氏は容疑おおむね認めていて、駄爆氏から受け取ったお金は、全て借金に宛てた。と供述しています。
 “失踪した”駄爆容疑者がねつ造した答案用紙にも関わっている可能性があるので、そちらについても取り調べを受けている模様です。
 皆さんはこのことについて、どう思いますか?』


 『いやぁ〜、酷いですねこれは』


 『確か昨日、その子が襲われたんでしょ?』


 『それにその襲って来た人達を返り討ちにしたんでしょ。あのバッタバッタと倒していく姿、スゴかったねぇ!』


 『ええ、我々番組スタッフはその現場に居合わせていたので映像があります。御覧下さい』


 アナウンサーがそう言ったら映像が切り替わり、車がセキュリティドアに突っ込むと、 うわぁ!? と言う声が聞こえて、俺が4人グループと戦うシーンになると おおっ!? と歓声が上がった。


 『いやいや、何時観ても驚かされるねぇ』


 『これ、やらせじゃないんだよね?』


 『はい、決して番組やMさん本人が用意したやらせではありません』


 アナウンサーがそう言うと、解説者達は う〜ん・・・・・・。 と唸った。


 『実はその日に我々がMさん達に独占インタビューを行なったに後に、このような出来事が起きたのです』


 『じゃあ、インタビューの映像があるのかい?』


 『はい、それがこちらのです』


 今度はインタビューの映像が流れた。


 「何で顔が見えないの?」


 「個人情報、つまり家に迷惑が掛からないように顔を隠してくれているの」


 「そうなの。洸夜悪いことをしてないのに・・・・・・」


 まぁそうだけど、顔を出したら家凸されるのが目に見えているからな。


 『映像を観てて僕が思ったのは、本当に彼は濡れ衣を着せられて退学にされたのかい?』


 『はい。先程も話ましたが、Mさんのテストのすり替えは、駄爆がねつ造した情報で間違いないです。警察の方もそう公表しているので』


 『教師。いや、校長という責任ある立場がこんなことをするとは・・・・・・酷い人達ですねぇ』


 『教員の風上にも置けないですね』


 そのまま議論している解説者達だが、俺は疑問を懐いたので両親に顔を向ける。


 「これ、どういうこと?」


 「どうもこうもないの、駄爆校長が捕まるのを恐れて逃げたの! それでそれで! 洸夜に着せられていた疑いが冤罪だって証明されたの!」


 「え、じゃあ本当に俺がテストのすり替えをしてない。のが正式に証明されたってこと?」


 「そういうことぉ!!」


 やっぱり、あの夢は昨日起きた出来事だったのか。


 「どうしたの、コウヤ?」


 「ああいや、昨日の夜に見た夢が、そういうことだったんだって思ってさ」


 「夢? まさか・・・・・・」


 「うん、実は・・・・・・」


 夢の中で警察2人が家宅捜索したこと、そのときにハゲ校長がいなかったこと、それに加えてその自宅から納錦と答案用紙が出て来たこと朝食を取りながら話した。


 『なるほど、そういうことかぁ』


 「どういうことなの、お父さん?」


 『昨日警察官の話。 駄爆が何とかしてくれるから、俺達は大丈夫だ。 って言う青年達の話。彼らは駄爆校長に騙されていたんだ』


 「「「「騙されていた?」」」」


 父さんは頷いた後に説明を始めた。


 『駄爆校長は彼らに洸夜を襲わせている間に、何処かに逃げたんだと思う。国内の何処かか、あるいは海外に』


 「で、でも父さん。海外に逃げるにしても、時間が掛かるんじゃないか? それにお金をどう工面するんだ?」


 『今はカードで払える時代だからその心配はないと言いたいところなんだけど、差し押さえされていたら困るよね』


 全く持ってその通りだ。


 「ねぇねぇ、銀行カードって何?」


 「自分が持っているお金を引き出したり出来るカードのこと。残りは後で詳しく教えてあげるから」


 「わかった」


 リタもどんな物なのかは、理解したようだ。


 「はい! お母さんは海外に行ったらお金を下ろすことを考え付きました!」


 『残念だけど、その方法は無理かもしれないよ』


 「どうして?」


 『ATMの場合だと振り込みはいくらでも出来るけれども、引き出しの場合は20万円までしか出来ないんだ』


 そんな制限があるんだ。ATM利用したことがないから、わからなかった。


 「じゃあ、その20万円の引き出しを続ければいいと思う!」


 『リタちゃん、残念だけどね。引き出しは1日3回までしか出来ないという上限があるんだ』


 「そうなの?」


 『うん、だから単純計算で60万円しかお金を下ろせないようになっているんだ』


 オレオレ詐欺とか犯罪に使われない為の対策の一環だろうな。


 『おっと、洸夜くん達はそろそろ学校に向かった方がいいんじゃないかな?』


 「え?」


 壁に飾られている時計を見てみると、8時20分になっていた。


 「ああ、そうだな。リタ、行こうか」


 「そうね! 行って来ます!」


 『2人共行ってらっしゃい』


 玄関で靴を取ってから自室へ行き、リタと一緒に学園に転移をした。


 「おはよう、コウヤくん」


 「コウヤくん、おはよう」


 「2人共おはよぉ〜」


 「おはようございます、アニス学園長、セリアさんってあれ?」


 アンリネットさんとカーシャさんがいない。


 「まぁ、これはこれでちょうどいいか」


 「ん? 何がちょうどいいんだい?」


 「あ、はい。実は・・・・・・」


 俺はセリアとアニス学園長の2人に昨日の出来事と今日のニュースのことを正直に話したら、とても驚いていた。


 「本当に大丈夫だったの? コウヤくん、怪我してない?」


 「ああうん、怪我してないから安心して欲しい」


 それにセリアさんがスゴく近いからドキドキする。


 「ゴホンッ!? とにかくキミが無事でよかった」


 アニス学園長は離れるんだ。と言いた気な顔で見つめて来るので、セリアからサッと離れた。


 「恐らく今後は学校からの謝罪や裁判などをすると思います。逃げたハゲ校長の方は警さ、俺の国の警さ・・・・・・兵士達が探していくと思います」


 「そっか、これでひと段落ってところかな。で、キミはどうするんだい?」


 「何がですか?」


 「今のキミなら、冤罪を掛けた学校に好条件で戻れるんじゃないのかい?」


 確かに、上手く行けば3年間の学費を向こう側が負担してくれるかもしれない。


 「いいえ、俺はこの学園で学業を学ぼうと思います」


 「本当にそれでいいのかい?」


 「アニス学園長やセリアさんが俺の立場だったら、どうするんですか?」


 俺がそう聞くと2人は考え込む。


 「私は、その学校に通いたくないと思います」


 「私もだな。何だかんだ学校側の対応が悪いという結論に至るからな。通いたくないと思うな」


「私もそう思うよ! コウヤと同じ立場だったら、みんなギッタンギッタンにしてるかもしれないし!」


 リタ、それをやっちゃったら犯罪者になるから止めておいて欲しい。


 「というわけで、お世話になりますアニス学園長」


 「こちらこそ、お世話になるよ」


 「ああ、期待しているよ。コウヤくん」


 こうして俺はアニス学園長達と親睦を深めたのだった。

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