高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第26話 ヤツが再び来た!

 とりあえず、魔法実習の内容が俺のクリスタルブレードをどうすればよく出来るのか。変更となったが、それはそれで充実した授業を受けられたと思う。
 だって、アニス学園長やカーシャさんが ここをこうした方がいい。 とか ここをこうすれば。 とか教えてくれたので、先ほど作ったクリスタルブレードよりも魔力の消費コストが2割ほど減った上に強度も増したので有り難い。


 「プロの教えを貰えると、こうも違いが出るとは」


 「私だってそれ開発するの手伝ったじゃん!」


 「まぁ、それはそれで有り難いと思っているよ」


 このクリスタルブレード改といえばいいのかな? それを作れたのはリタのお陰だし。


 「カーシャさんスゴイですね。コウヤくんのクリスタルブレードの改良点を見ただけでわかるなんて」


 「ええ、こう見えて故郷では1位2位を争うほど魔法に長けていましたから」


 流石エルフの里の長老の娘ってところか。


 「次からは派生型を作ってみようと思う」


 「て言うと?」


 「ロングソードとかレイピアとか、様々な形のクリスタルブレードを作るつもりだ」


 先ほどクリスタルブレードを様々な形で形成してみて、どんな形でもあの刃は出来ることはわかった。だから思いつく限りの武器を作って試してみようかな? と考えている。


 「そうなるとそれに合わせた名前を、考えないといけないんじゃない?」


 「そんときはそんときで名前を考えることにしようか」


 使えない物に名前を付けたって意味がないし。


 「そろそろ武術の方も始めたいのだが、準備の方は済んでいるか?」


 おっと、そうだった。


 「始めても構いませんが、俺の武器は何処にあるんですか?」


 「ああ、ほらこれ」


 そう言って手渡して来たのは、俺が持っていた棒術用の長い棒だ。


 「すまないが、昨日渡してくれた武器はまだ出来てないんだ」


 「昨日今日で作れる物ではないと思ってますから、謝らなくてもいいですよ」


 1日2日で出来る武器なんて、矢ぐらいしか思い付かないぞ。


 「そう言って貰えると有り難な」


 アニス学園長はそう言うと校庭の中央に行き、手招きしてくる。多分その場所で模擬戦をやろうっていうことだろう。


 素振りなしにいきなりやらせるのかよ。


 「リタ離れていてくれ」


 「了解!」


 リタはそう返事をするとセリア達のところへ飛んで行き、俺はアニス学園長のいる場所へと向かう。


 「魔法で戦うの?」


 「違うよ。あれは武器だから相手を叩いて攻撃するの」


 「叩く?」


 アンリネットさんは言っている意味がわからなのか、首を傾げていた。


 「見ていればわかるよ」


 「お手並を拝見させて頂きます」


 そんなやり取りをしている中、アニス学園長に一礼してから構える。


 「持って来た武器の中で一番得意なのが棒術です」


 「ほう、それはいいことを聞いたな。期待させて貰うよ」


 お互いに距離を取り左右に動きながら、相手がどう動くかを見る。


 こっちから攻めるか。


 一気に距離を詰め、アニス学園長の胴に向かって鋭い突きをくり出したが、アニス学園長は俺から右側面に躱して横なぎに木の剣を振るって来た。だがそれは想定内。棒を顔の前でグルンと素早く回してから棒の先端部分を右脇から出してアニス学園長の攻撃を防ぐ。


 「なっ!?」


 アニス学園長は想定外だったのか、驚いた顔をさせていた。その間に木の剣を振り払い、またアニス学園長に突きを繰り出したのだが、今度は大きく後ろに飛び避けられてしまった。


 「あんな防ぎ方があるんですねぇ」


 「ロッドでも出来そうな気がします」


 「・・・・・・ムゥ」


 セリア達が会話している中、俺は構え方を身体を正面に向けて棒を水平に持つスタイルに変えた。


「む?」


 そのようすを見ていたアニス学園長は攻撃方法を変えたのを悟ったのか、更に距離を取った。


 ヤベェ、警戒心が強い。


 「・・・・・・キミの武術がここまで厄介だとは思いもしなかった」


 「先人達が長い年月を掛けて完成させた武術ですから、そう簡単にやられませんよ」


 それに速攻でやられていたら、教えてくれた師範の前に両親が怒りそうで恐い。


 「そうか、ならこれはどうだ!」


 アニス学園長はそう言うと、木の剣を振り下ろして来たのでそれを棒の真ん中で受け止めて力の押し合い状態にする。


 ・・・・・・ここだ!


 木の剣を振り払おうとした瞬間だった。


 「おやおや、アニス学園長。このようなところにいらしたのですか」


 ん? この人は一昨日のウザい男。略してウザ男じゃないか。


 「んん? アンリネット・スペード・グランドル様!」


 ウザ男はそう言うとアンリネットに近づき、跪いて頭を下げた。


 「これはこれはアンリネット様、今日もお美しい限りです」


 おいおい、態度変わりすぎじゃねぇの?


 「・・・・・・ウザ、消えて」


 「お褒めして下さってありがとうございます」


 いや、お前のことを褒めてんじゃなくて貶しているんだぞ。


 「うわぁ〜・・・・・・この人貶されているのわかってないんだね、引くわぁ〜」


 「リタちゃん。そんなこと言っちゃダメだよ」


 あ、ウザ男が反応した。もしかして貶されている自覚があったのか?


 「すみませんが前にも仰いましたよね? 必要外にクランドル家に近づくな。と」


 カーシャさんがそう言うと、ウザ男は睨みを効かせながら頭を上げた。


 「はて、何のことでしょうか?」


 「とぼけないで頂けませんか? それともご自身がしでかしたことを、もうお忘れになったのですか?」


 ご自身がしたこと?


 「カーシャさん、そのウザ男何か悪いことをやったんですか?」


 「はいやりましたよ。ゴブリンでも理解出来るようなバカなことを」


 俺のことを睨むウザ男とは対象的に、カーシャさんは笑顔で話し掛けて来る。


 「へぇ〜、どんなことですか?」


 「あれはもう2年前のことでした。お嬢様10歳の誕生日のときでした。お披露目会に出ようと廊下を歩いている最中に、その虫ケラがお嬢様のことを貶したのですよ」


 そう言いながら、害虫を見るような目でウザ男を見つめた瞬間に怯えた表情をした。


 「貶した? もしかして酷い感じですか?」


 「それはもう目も当てられないぐらい酷いものでしたよ。お嬢様のお披露目会だというのに、子供が出る場所じゃないだの。披露宴の邪魔をするな。だの言ったのですよ。
 ご自身が何の為にお呼ばれされたのか理解していらっしゃらないごようすでしたので、この男は馬鹿なのかと旦那様はお怒りなって仰ってましたよ」


 まぁ確かに。誕生日会ってのは晴れ舞台の一つだから、怒らない方がおかしいよな。


 「そのときに責任を取って貰ったんですか?」


 「はい、多額の慰謝料とゴミの、失礼。この方の所有する筈だった土地を頂きました。アナタはまだ借金返済の途中ではなかったのでは?」


 ウザ男に向かってそう言うと、ウザ男はたじろいだ。


 「や、やっと3分の1まで返せました」


 「そうですか。ですがグランドル家の者に近づけると思わないで下さい。ウザ男さん」


 清々しいほどの笑顔でそう言った瞬間、ウザ男は クッ!? と言って俺を睨んで来た。


 「キサマが余計なことを言わなければ・・・・・・」


 「いや、俺のせいじゃないと思うけど」


 てかマジで睨むなよ。自分がしでかしちゃった結果なんだからさ。


 「話には聞いてたんだけど、本当だったんだね」


 「あれ? セリアさんのところはお呼ばれされなかったのか?」


 「あ、いや。私の家は名ばかりの子爵家だから、呼ばれなかったの」


 セリアさんがそう言ったら、何とカーシャさんがセリアに向かって頭を下げた。


 「すみませんセリア様。オルコス家の方々も呼ぼうとしたのですが、人数の関係でお呼び出来ませんでした」


 「あ、いえ! 私達家族は気にしていませんから、頭を上げて下さい!」


 セリアさん慌てたようすを見せながら、そう話した。


 「今度の誕生日、ウザ男じゃなくコウヤ呼んで」


 「かしこまりました」


 いや、かしこまりましたじゃないよ!


 「いや、俺はそのぉ・・・・・・そういったところは苦手なんだ。平民だし」


 リタを見つめてみたら、 絶対に行っちゃダメ! と言いたそうに俺を見つめて来る


 「あら、ミヤマ様は平民でしたか。貴族だと思ってました」


 「失礼な話ですが、身分に差があるので難しいかと」


 てかそんなところに出たら、バレる原因になるだろう。


 「我々は気に致しません。それにチャンスを逃しては・・・・・・」


 ん? 最後の方が聞き取れなかった。チャンスとか言わなかった?


 「ウガァァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!?」


 ウザ男が突然叫び出したので、全員ビックリしたようすでそちらに顔を向けた。


 「ミヤマ、キサマに決闘を申し込むっ!!」


 「・・・・・・ハァ?」


 ウザ男の顔を見つめながら この人は何を言っているんだ? と思ってしまうのであった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品