高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第20話 アニス学園長と模擬戦!

 「いち、にぃ〜、さん、しぃ〜、ごぉ〜ろく、しち、はち!」


 そう言いながら状態伸ばしをしている俺に、セリアは不思議そうな顔をさせながら近づいて話し掛けて来た。


 「コウヤくん、何をしているの?」


 「ん、ああこれ? 準備体操をしているんだ」


 「準備体操?」


 あれ? もしかしてこっちでは、準備体操みたいなのがないのか?


 「もしかして、コウヤくんの世界で行われているストレッチをやっているの?」


 「その通り! まぁこんな風に掛け声を出してストレッチをしているのは、俺の国ぐらいしかないけどさ」


 そう言いつつ体操を終えると、ダンボールの中から武器を1つ取り出す。


 「アニス学園長。こっちは準備が出来ましたよ」


 「ん、そうか。こっちはいつでも・・・・・・」


 言葉の途中で黙り込んでしまった。


 ん? アニス学園長はどうしたんだ。


 「どうも、コウヤさぁ〜ん」


 「うわぁっ!?」


 ティアラ様が後ろから話し掛けて来たから、思わずビックリしてしまった。


 「脅かさないで下さいよ、ティアラ様!」


 ティアラ様はニコニコしながら すみませぇ〜ん。 と言って来るが、悪びれているのかどうかわからない。


 「すみませんがぁ〜、リタさんをお借りしてもよろしいでしょうかぁ〜?」


 「リタをですか?」


 「はい〜、彼女に新しい魔法を習得して貰おうと思いましてぇ〜」


 何っ!? 新しい魔法だと!


 リタ自身もティアラ様の話しに驚いていて、俺とティアラ様を交互に見つめて来る。多分、どうすればいいのか自分では判断出来ないのかもしれない。


 「リタ、ティアラ様の元で新しい魔法を覚えて来たら?」


 「いいの?」


 「ああ、新しい魔法覚えた方が得じゃないか。それにティアラ様のことだから、リタにとって便利な魔法を教えてくれるかもしれないしな」


 俺がそう言うと、リタはティアラ様のところへ行く。


 「ご教授をお願いします。ティアラ様」


 「では、私と一緒に神界へ行きましょぉ〜。あ、そうそぉ〜。セリアさんの背中を押した恋愛神を叱っておきましたからねぇ〜」


 「「えっ!?」」


 恋愛神? あのときに他の神様がセリアの背中を押したってことなのか?


 「ちょっ、ちょっと待って!」


 俺は訳を聞こうとしたが、ティアラ様はリタを連れて消えてしまった。


 「コウヤくん。セリアの背中を押したってどういうことなんだい?」


 「ああ〜、実はですね」


 俺は転移しようとしたときに、セリアさんがぶつかって来たことを話した。もちろん俺がセリアさんのお尻に触れてしまったことを伏せている。


 「で、セリアさんがお前にぶつかった原因は、恋愛神に背中を押されたからなのか?」


 「はい、ティアラ様の言うことには、そう言うことらしいです」


 「他に何かなかったのか? その、ぶつかった拍子にまたセリアのパンツを見たとか」


 「ないです! 全然ないですっ!!」


 洸夜は首を横に振りながらアニス学園長に言い、セリアに至っては顔を真っ赤にさせながら、顔を覆っていたので何かあったのは一目瞭然であった。


 「・・・・・・そうか、それならいいんだ。訓練を始めるぞ」


 「あ、はい」


 ホッとしながら、2本のトンファーを構える。


 「先手どうぞ」


 「お言葉に甘えて行きます!」


 俺は正拳突きの用量でトンファーでアニス学園長の鳩尾を突こうとしたが剣で防がれ跳ね除けられてしまったが、これは想定内。一気に懐まで距離を詰めると反対側の腕で肘打ちするようにど突こうとするが、これも躱されてしまった。


 「ほう、やるね」


 今度はアニス学園長が横なぎに剣を振って来るのを防いだ後に、半円をえ描くようにして剣を振り払い、トンファーで横なぎに攻撃するが、これも躱されて距離を取られてしまった。


 「もう少し、実力を出してみようか」


 彼女はそう言うと一気に距離を詰めて来て、真上から剣を振り下ろした。彼女自身、この行動が裏目に出るとは、このときばかり思っていなかった。


 バキッ!?


 「「「あっ!?」」」


 クロスさせた状態でアニス学園長の剣を受け止めたら、2本共バッキリと折られてしまった。


 「お、折れたぁぁぁああああああっ!?」


 まさか赤樫の木で作られたトンファーを、木の剣で折られるとは思いもしなかった。つーか、あの攻撃が俺に当たっていたら、ヤバくなかったか?


 「武器を壊してしまって、すまないコウヤくん」


 「うわぁ〜〜〜・・・・・・アルバイトしてようやく買ったものがぁ〜・・・・・・・・・・・・」


 また親に頼んで買って欲しいと、言わなきゃいけなさそうだな。


 「いや、そのぉ〜・・・・・・私の方で手配しようか?」


 壊した張本人は、申しわけなさそうに話し掛けて来る。


 「この世界にトンファーがあるんですか?」


 「その武器自体は存在しないが、木を加工する職人がいるから作れるぞ」


 「いいんですか?」


 「ああ、私が壊してしまったからな。弁償させてくれ」


 それなら、任せてみようか?


 「お願い致します。アニス学園長」


 「ああ、任せてくれ」


 折れてしまったトンファーをアニス学園長に渡すと、今度は一本のヌンチャクをダンボールから取り出す。


 「じゃあ今度はこれで、模擬戦をしてみましょうか」


 「ほう、それは?」


 「ヌンチャクです。久々に使うから、ちょっと練習をさせて貰います」


 俺はそう言うとアニス学園長達から距離を取り、持ち出したヌンチャクを振り回し始めた。


 「ん〜、動きは悪くはないな」


 「スゴイ」


 アニス学園長とセリアは、俺のヌンチャク捌きにそれぞれ感想を言った。最後に持っていない方の手を前に出して片方の棒部分を脇に締める。


 「・・・・・・こんな感じだな。感覚は掴めたので、そろそろ始めましょうか」


 「わかった」


 彼女はそう言うと剣を構えるが、すぐに構えてを解いてしまう。


 「どうしたんですか、アニス学園長?」


 「後ろ」


 「後ろ?」


 何だ? と思いながら振り返って見てみると、アンリネットが少し離れた位置で見ているではないか。


 何で彼女がここにいるんだ? さっきまでいなかったのに。


 俺がそう思っていると、アンリネットの方から近づいて来て、手を差し出した。


 「えっとぉ、何か用かい?」


 「それ、貸して」


 あ、この子もしかして、さっきヌンチャクを振り回していたのを見ていたのか? そして自分もやってみたくなったのかもな。


 「ダメ。これからアニス学園長と模擬戦をやるから、離れていて」


 「ムゥ〜・・・・・・貸して」


 アンリネットはそう言いながら、今度は強調するように手を動かす。そのようすを見ていたセリアはオロオロしていた。


 「一応このヌンチャクは扱いの難しい武器だから、渡せません」


 「私なら出来る」


 そうなのか?


 「いや、キミは扱う武器が違うだろ」


 どうやらアンリネットは見栄を張ったらしいが、本人は頬を膨らませながら奪い取ろうとして来たのでサッと上にあげた。


 「持ち主の許可なく取ろうとするのは、関心出来ない」


 「許可しない方が悪い」


 彼女はそう言った後、何とかヌンチャクを取ろうとピョンピョン跳ねる。その姿にちょっと可愛いと思ってしまった。


 「お嬢様。いい加減になさって下さい」


 その声を受けたアンリネットは、ピタリと止まった。


 「カーシャ」


 アンリネットがそう言って振り向くので、俺もつられてその方向に顔を向けると、メイド服を着たエルフがこちらに向かって歩いて来ていた。


 「先程から見てましたよ。お嬢様。人の物を取ろうとするのは1人の令嬢。いえ、1人の人間としてやってはいけないことですよ」


 「だって・・・・・・」


 「それに彼は訓練をしている最中ですよ。邪魔をしてはなりませんよ」


 「でも・・・・・・」


 「でもじゃありません! 帰ったらお説教です!」


 彼女がそう言い放つと、アンリネットはシュンとしてしまった。どうやらアンリネットはこの人には逆らえないらしい。


 「アンリネットお嬢様が大変失礼なことをしました」


 「あ、いえ! こちらこそ、アンリネット様にご無礼なことをしてしまって、すみませんでした」


 俺はメイドさんに頭を下げて謝る。


 「えっと、自己紹介まだでしたね。俺の名前は 海山 洸夜 です。新学期から高等部の方に入学します」


 「ご丁寧にありがとうございます。私はグランドル侯爵家に仕えております、 カーシャ・フーガライト と申します。以後お見知り置きを」


 メイドらしくスカートの裾を軽く持ち上げながら、会釈をした。


 「把握していると思いますが、アンリネットさんが・・・・・・ってあれっ!?」


 さっきまで側にいたアンリネットがいない!


 「どうかなされまし、なぁっ!? お嬢様ぁっ!!」


 フーガライトさんはそう言いながら俺の後ろへと走って行ったので、後を追うように振り向くと、何とダンボールの側でアンリネットさんが、予備のヌンチャクを振り回しているではないか!


 「危ないから止めるんだっ!」


 止めさせようとしたが、時既に遅し。何と勢い余ってヌンチャクを顔にぶつけてしまった。


 「ッ〜〜〜!?」


 顔を覆ってうずくまる姿を見て、俺は あ〜あ、言わんこっちゃない。 と思うのであった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品