高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第19話 洸夜のオリジナル魔法

 食事を終えたので使った食器をシンクの中へ入れて水に浸した。時間もないので帰って来てから洗い物をするつもりだ。
 いざ向こうの世界へ行こうと靴を持ってリタとセリアと一緒に2階へ上がろうとしたところで、何と両親帰って来てしまった。目が合った母さんは、 その子誰なの? と聞いたが、 授業に遅刻しそうだから後ででいい? と言っといて、逃げるように俺の部屋へ向かって【転移】を唱えた。


 「お、来たかコウヤ」


 「あれ? 何でアニス学園長がここに?」


 「ああ、アンリネットがここに来ないように見張っていたんだ」


 ああ、なるほど。あの時のセリアのようにならない為の対策か。


「校庭に着き次第授業をやろうと思っているが、2人共トイレ大丈夫か?」


 「俺は大丈夫です」


 「私も大丈夫です。コウヤくんのお家で済ませましたから」


 そう、彼女は俺の家で お花摘みに行きたいから、転移魔法を使って。 と言ったから、 最初は お花摘み? 思ったが、すぐに トイレに行きたいんだ。  とわかったので家のトイレに案内して使い方を教えてあげた。
 そしてトイレから出て来たときは、もの凄く喜んだ顔になっていたのは何故?


 「そうか。なら校庭へ行こうか」


 「「はい」」


 先生の後ろをついて行くようにして校庭へ向かう。


 「で、どうだった向こうの世界は?」


 「はい、不思議でいっぱいでした。コウヤくんが料理している間、リタさんがテレビというのを観せてくれて、何を言っているのかわかりませんでしたが、とても面白かったです!」


 「あの鉄の馬車みたいなの、乗ってみたいよね!」


 ああ、車のことか。


 「車は家にあるぞ」


 「ホントッ!?」


 リタがキラキラした目で俺の目の前までやって来た。


 「ああ、でも運転、というよりも動かすのは資格がいるから、資格を持っている父さんか母さんにお願いするしかないんだ」


 「そうなんだぁ〜」


 リタはガックリと項垂れた。


 「それと色んな料理だ出ていたよね! 美味しそうだったよね。ピザとかソースが掛かったお肉を焼いたの、えぇ〜〜〜っとぉ・・・・・・」


 「もしかしてハンバーグ?」


 「あれ、ハンバーグって言うの?」


 ん? こっちにはハンバーグがないのか?


 「なぁもしかして、ひき肉をコネて肉の塊を焼く料理はないのか?」


 コネる前に生卵とか色々と調味料を入れないといけないのだけれども、基本的にはひき肉をコネて形を形成するのがハンバーグの作り方だ。それとミートボールも。


 「そもそもひき肉自体が存在していないな。ひき肉って一体何なんだ?」


 「嘘で・・・・・・・あ、言い方が悪かったのか? ミンチ肉って言えばわかります? 」


 「ミンチ肉ならあるが、正直言ってこの世界では余りいい印象はない食材だぞ」


 いい印象がない食材?


 「えっとね。肉屋さんが余った部分の肉を混ぜて細かく切った肉の事を言うの。値段も余り物で作った肉だからとても安く売られているの。
 そのせいで貧乏人が買う肉と言うイメージが付いているの」


 「でもあのハンバーグは美味しそうだったよねぇ〜。て言うよりも、あんな形になんてしないし」


 つまり、そのまま焼くのが主流なのか。


 「異文化コミュニケーションだな。ちゃんとした物を食べれば、イメージが変わるかもしれない」


 「そうだな。さて、校庭に着いたから、早速始めるか」


 「はい!」


 アニス学園長の元で魔法の授業を行っていたら、スゴく驚いた顔をしていた。


 「コウヤくん、キミはこの数日間で、魔法がかなり上達しているな。家でも何かやっていたのか?」


 「リタの教えて貰っていたんですよ」


 「コウヤは物覚えがいいから、すぐに覚えるの!」


 まぁイメージに合った魔力を込めるのが大切。だからその形に合った魔力の量を探ることをやっていた。例えば、手元にあるスマートフォンの形を作るには、どれぐらいの魔力が必要か。サイコロの形を作るには、どれぐらいの魔力を込める必要があるのか。とか作って試していたら、自然と調整出来るようになっていた。


 「最近はこんなことが出来るようになりました」


 そう言って結晶化で片手剣を作って見せたら、 おおっ!? と感心していた。


 「ならその剣を試してみるか」


 「試す?」


 「ああ、向こうの壁の側に藁で作った人形があるだろう。あれを切り付けてみろ」


 アニス学園長が指をさす方向に鎧を着た人形が5体並んでいて、どの人形もところどころ傷が付いた。


 多分あれに魔法をぶつけたり、武器で斬り付けたりしてたんだろうな。


 「わかりました。俺自身もどれぐらい切れるか知りたかったから、いいかもしれませんね」


 俺はそう言うと藁人形の側まで行き、袈裟斬けさぎりの構えを取ってから、一気に藁人形の肩部分に目掛けて片手剣を振り下ろした。


 「あれ? 思ったほど斬れ味がよくないな」


 片手剣の刃が鎧の肩に食い込んだところで止まっていた。


 このまま引いたり押し込んだりを繰り返しても切断出来そうにないから、片手剣をそのまま引き抜き刃こぼれしてないか確認する。


 「あちゃ〜、少し刃こぼれしているな」


 俺の作った片手剣をよく見ると、真ん中よりちょっと先が欠けていた。リタが飛んで来て、その部分を確かめた。


 「あ、本当だ。でも切れたからいいんじゃないの?」


 「いや、斬り合いになったらと考えると、これに耐久力が欲しいな」


 剣同士で攻防戦を繰り広げていて、刃がボロボロになってしまって切れない状態どころか、ポッキリと折れてしまったら最悪だから。


 「なら、刃こぼれした個所を再生させればいいんじゃない?」


 「それも一つの手だな。でも、なるべく魔力の消費を抑えたいから、出来れば刃こぼれしない片手剣を作りたいな」


 刃こぼれする点を、どうにか改善しないとなぁ。


 「なるほど、ところでその片手剣の名前ないの?」


 「えっ!? これに名前必要か?」


 魔力の剣を結晶化させただけの剣だから、名前の必要性がないと俺は思っている。だけどリタはそう思ってないのか、顔をムスッとさせて俺の目の前まで来た。


 「魔力の剣は素の魔力だけで形成されていて、コウヤが作ったのは魔力の剣を結晶化させたオリジナルの剣。だから別物でしょ」


 「まぁ確かに。オリジナルと言えばオリジナルだな」


 「でしょ。だからその剣に名前を付けておいた方が、ややこしくなくていいんじゃないの?」


 「そうだな。リタの言う通りかもしれない」


 魔力の剣を作って応戦して! と言われたら、 結晶の方? それとも普通の方? どっち? なるな。しかし名前となるとなぁ〜・・・・・・。


 「ストレートに結晶剣。って名前にするのは気が引ける」


 「うん、ちょっとダサイ気がする。オリジナルソード。も何かしっくり来ないし、違う気もする」


 リタもリタで真剣に考えてくれている。


 「コウヤくん式魔力の剣とかは?」


 「それはちょっとぉ・・・・・・ねぇ?」


 「名称が長いから、ちょっとね」


 てかネーミングセンスに問題がある気がする。


 その後も3人で う〜ん・・・・・・。 と考えたがいい名前が思い付かない。


 「だったらクリスタルブレードはどうかな?」


 「「クリスタルブレード?」」


 俺達はそう言いながら、アニス学園長の顔を見つめた。


 「そうだ。コウヤくんはその結晶化のユニークスキルで、好きな形に結晶化させられるんだろう?」


 「ええ、でも一回結晶化させると、形を変えることが出来ません」


 「でも好きな形に形成出来るんだろう? 剣のみならず、槍とかナイフとかを」


 「はい、可能です」


 とくにナイフは魔力を込める量が少ないから、容易に量産出来る。


 「なら、結晶で出来た刃。クリスタルブレードでいいんじゃないか?」


 う〜ん・・・・・・。 と唸りながらリタを見つめたら、 それでいいんじゃないの。 言われた。


 「じゃあアニス学園長のクリスタルブレードと言う名前にしましょうか」


 俺もリタも他にいい名前が思い付かないし、何よりも悪くないネーミングセンスだから。


 「じゃあそのクリスタルブレードを私に貸してくれないかい?」


 「あ、はい。どうぞ。」


 アニス学園長は俺からクリスタルブレードを受け取ると鎧を着た人形をスパッと切っので、思わず拍手をしてアニス学園長を称えたが、セリアの方は驚いた顔をしていた。


 「流石アニス学園長! 腕がいいですね!」


 「・・・・・・これぐらいは朝飯前だからな。さぁ、次は戦闘の訓練をしようか」


 そう言って、俺のクリスタルブレードを返してくれた。

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