高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第18話 ジィー・・・・・・。

 午前中の授業はスムーズに終わった、と言うわけにはいかなかった。何故なら、そのぉ・・・・・・気まずいんだよなぁ。


 「ジィー・・・・・・」


 そう、学校でいうところの2時間目辺りからアンリネットがちょこちょこ教室に来て、ドアに付いている窓ごしにようすを見ては去って行きを繰り返していたので、アニス学園長も俺自身も授業をやりづらいと感じていた。
 いっそのこと入って来て一緒に授業を受けてくれれば、アニス学園長もやりやすいだろう。俺自身がそうだし。


 「ハァ〜・・・・・・午前中ここまで、午後からいつも通り魔法と戦闘の授業をする。くれぐれも遅れるな」


 アニス先生はそう言うと足早に教室を去って行き、入れ代わりにアンリネットが入って来た。


 「えっとぉ・・・・・・何かようかな、アンリネットさん?」


 「ようすを見に来ただけ」


 「あ、そうなんだ」


 「うん」


 短調的な会話しかしないから、話しずれぇっ! てかアニス学園長! 俺も連れて行ってくれればよかったのにっ!


 「食事」


 「ん?」


 「食事どうするの?」


 転移を使って一旦家に帰って、 ご飯を作る。 何て言えるかアホォッ!?


 「う〜んと、そうだなぁ。ええっとぉ・・・・・・」


 俺はそう言いながらリタに視線を移すと、リタは首を横に振った。


 わかります。この場で転移を使うな。 って言いたいんですね。


 次にセリアさんに目を向けると、彼女は俺の手を握って来た。


 「わ、私と街で食事をする約束をしているから!」


 「そうなの?」


 アンリネットは俺の顔を見つめて言うので、首を縦に振った。


 「そうだな。美味しいお店を紹介して貰うんだよ」


 「フゥ〜ン・・・・・・」


 ちょっ、ちょっと無理があったんじゃないか?


 「そうなの」


 アンリネットはそう言って俺達から背を向けて教室の出入口まで行くと、 じゃあね。 と言ってから出て行ってしまう。


 「何とかなったのか?」


 「うん、あの子どっかに行っちゃったみたい」


 廊下に出て行て確認していたリタの一言で、俺とセリアさんは胸を撫で下ろした。


 「セリアさん、ありがとう」


 「うん、気にしないで。でも何でアンリネット様は、コウヤさんに興味を持ったのかな? 婚約者だっているのに」


 「婚約者? って、ああそうか」


 爵位の高い家系なら、血筋や政略の為に婚約者相手絵を選ぶのが普通だよな。


 「それはそうとセリアさん。あの、お礼と言っては何だけど、向こうの世界で食事でもどう? もちろん作るのは俺だけど」


 「えっ!? それはちょっと迷惑じゃあ」


 「いや、別に迷惑じゃないから。それに、お礼もしたいし」


 そう、授業だって教えて貰っているし、魔法の面に関しても身振り手振りだけど色々とアドバイスしてくれたからな。お礼をしないと。


 「向こうの世界はスゴイの! 見た事もない物がいっぱいあるから、行ってみた方がいいと思うよ!」


 「う〜ん・・・・・・」


 セリアさんは行くかどうか迷っている。


 「無理なら行かなくても大丈夫だ。また今度行きたい時に一緒に行けばいいから」


 「・・・・・・うん、ゴメンなさい。今回はそうさせて貰うね」


 セリアさんが申し訳なさそうに言って来た。


 「そう、わかった。昨日と同じように、ここで待っててくれ」


 「うん、わかった」


 セリアさんの返事を聞いた後に、リタを肩に乗せて目を瞑った。


 「【転移】」


 転移と言った瞬間、 キャッ!? と言う声と共に正面から何かがぶつかって来たので、仰向けになるように転んでしまった。


 「アイタタタタタ・・・・・・リタ、大丈夫か?」


 「私は平気だよ。コウヤは?」


 「痛いけど平気」


 リタの無事を確認したのはいいが、何か身体に柔らかいものがのし掛かっていたので、何だろう? 触っていたら キャッ!? と言う声がした。


 「ん?」


 キャッ!? って何?


 「ちょっ、コウヤ何をしてるのっ!?」


 「何って、ええっ!?」


 目を開いて驚いた。だって、いる筈のないセリアさんが仰向けの俺にのし掛かっていて、顔を赤くさせながら涙目でこちらを見つめているではないか。
 しかもそのセリアさんのスカート越しにお尻に触れているので、セクハラで訴えられてもおかしくない状況だ。


 「いや、あの。そのぉ・・・・・・」


 身体中から嫌な汗が出っ放しである。


 「早くその手を退けてあげないと!」


 そうだった!


 「ゴメン!」


 そう言いながら手を離してそのまま上にあげて降参のポーズを取るが、彼女は未だに俺を見つめながらプルプルと震えていた。


 「・・・・・・も」


 「も?」


 「もう、お嫁に行けませぇん」


 セリアはそう言うと、俺の胸元に顔を埋めて来た。


 「あ〜あ、泣かしたぁ〜」


 「いや待て待て! 俺のせいなのか?」


 「コウヤのせいに決まってるでしょ。責任取ってセリアのお婿さんにならないとねぇ〜」


 「お婿って、セリアさんは・・・・・・ってあれ?」


 俺の胸元で顔を埋めて泣いていた筈のセリアさんが、今度は硬直していた。


 「セ、セリアさん。どうかしたの?」


 「べ、別にそこまでしなくても! 構わないです! コウヤさんは確かにカッコイイ人ですよ! でも私なんかそのぉ、ですね」


 ものすごく必死になって両手を振りながら言う姿を、リタは ああ〜・・・・・・。 と何か理解したように言う。


 「それよりも、退いてあげた方がいいんじゃないの?」


 「あうっ!?」


 セリアはそう言うと、俺の上から退いて部屋の片隅まで行き、俺に向かって何度も頭を下げてくる。


 「ゴメンなさい! ゴメンなさい!」


 「いや、別に気にしてないって。俺にも非があるし」


 「でもぉ・・・・・・」


 「それよりも、どうする? 向こうの世界へ行く? それともこっちの世界で一緒に食事する?」


 「こっちの世界?」


 セリアはそう言うと、確認をするように俺の部屋を見渡した。


 「えっ!?  ここってもしかして、コウヤさんの?」


 「そう、俺が住む世界の俺の部屋。一応言っておくけど、家の中は土足厳禁だから靴を脱いでくれるかな?」


 「あ、ゴメンなさい!」


 セリアさんはそう言いつつ、履いている靴を脱いで手に持った。


 「で、さっきの話しの続き。今から向こうに帰る?」


 「えぇ〜っとぉ。そのぉ・・・・・・」


 セリアはどうしようか迷っているのか、身体をモジモジさせていた。


 「もう来ちゃったんだから、こっちで食事したらどう? コウヤが作る料理は美味しいから、食べて行った方がいいよ!」


 「はい、そうさせて頂きます」


 うん、リタのおかげで丸く収まった。


 「じゃあリビングに案内するから、俺に付いて来てくれ。おっと、その前に玄関か」


 「・・・・・・うん」


 顔を赤くさせてボーッとしているセリアの手を引っ張って、玄関に靴を置かせた後にリビングへと連れて行く。


 「はい、そこのソファーかイスに座って待っててくれ」


 「う、うん」


 「ああそれと、何か苦手な食べ物はある?」


 「ううん。ないよ」


 「そう、ならパスタでも大丈夫だね」


 セリアはソファーに座り俺を見つめている中、俺は換気扇を回してから鍋に水を入れてコンロの上に置いた後に、コンロの火を付けた。一応塩も少々入れておいた。そして上の戸棚を開いて中を確認する。


 確かここにあった筈・・・・・・あった!


 俺は袋を開けてパスタの束を2つ取ると、真ん中に付いている紙を取って皿の上に置く。そして、パスタ用のトマトソース缶の蓋を開けた。


 あれ? これひき肉が入ってないタイプだ。仕方ない、他の食材も使おう。


 仕方ないので冷蔵庫にあったベーコンを包丁で均等に切って、玉ねぎの半分をブロック状に切った。残りの半分はラップを掛けて冷蔵庫へ入れる。ピーマンがあれば完璧だったのに!


 ここからが本番だ!


 フライパンをコンロに置き、火を付けた後に少量の油を加えた後にフライパン傾けて薄く伸ばしてから、そこにベーコンを乗せた。


 鍋の方も沸騰したか。


 沸騰したお湯の中へパスタの麺を入れてからタイマーのスタートボタンを押すと、フライパンの方に戻りベーコンをひっくり返した。
 ベーコンをひっくり返してから20秒ぐらい経った辺りで玉ねぎを投入してかき混ぜて行き、玉ねぎの色が変わり始めたところで、トマトソースをフライパンへ投入してから焦げないようにゆっくりとヘラでかき混ぜていると、タイマーが鳴ったのでフライパン側の火を弱める。


 「えっ!? こ、この音は何ですか? もしかして奇襲?」


 「ああ、安心して。パスタの麺が茹で上がったサインだから安心して」


 「あ、そうですか」


 セリアさんがホッとした姿を見た後、麺をザルに移してからシンクで湯切りする。そして、トマトソースが入っているフライパンの中へ入れてからかき混ぜる。
 最後にお皿に盛れば、ちょっと違う足りないナポリタンが完成。


「出来た。こっちのテーブルで食事をするから、こっちに来てくれ」


 「うん、わかった」


 「待ってました!」


 セリアとリタがこっちのテーブルに来て座ったが、リタはこっちに来るのと同時に何故か怒っていた。


 「ちょっと! 私のお皿に何も乗ってないじゃん!」


 「俺のところから分けるんだよ。リタが食べられる量がわからないからさ」


 じゃないと、昨日の酔っぱらった事件のように 食べきれませんでした。すみません。 になるからさ。


 「あ、そう言うことね。私はこれぐらいあれば充分よ」


 彼女はそう言いながら、麺をちょこっととベーコンの隅っこを切って自分の皿に乗せた後に、玉ねぎを取った。


 「それじゃあ、頂きます」


 彼女達は彼女達でお祈りを捧げた後に、俺の作ったナポリタン(仮)食べた。


 「これ美味しいわぁ〜!」


 「・・・・・美味しい」


 よかった。喜んで貰えて。


 俺は2人の笑顔を見つめながら、ナポリタン(仮)を食べたのだった。

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