高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第14話 久しぶりに両親が帰って来たが、どう説明しよう・・・・・・。

 理事長室へ入るとアニス学園長は、中央に設置されている自分の机に行き、椅子に座った。


 「今日はありがとうございました」


 「こちらこそ、私自身も面白いものが見れたからなぁ・・・・・・」


 うわぁ、さっきのこと根に持ってるよ。


 「そ、それにセリアさんもありがとう」


 「え、いえ。私は何もしてあげてないし」


 「またまたぁ〜、コウヤに勉強を教えてたじゃない。ひょっとしてぇ〜・・・・・・」


 リタがセリアの耳元でゴニョゴニョ話したら、彼女は顔をちょっと赤くさせた。


 「あの、そのぉ。そんな事は、そのぉ・・・・・・」


 「え、マジですか?」


 リタが信じられない。と言いたそうな顔をしていた。


 「リタ、からかうのはその辺にしておきな」


 「そうねぇ〜」


 何でニヤニヤしているんだろう?


 「それとセリア。明日も来て私の手伝いをしてくれるか?」


 「は、はい! 構いません!」


 何か言葉が少し変になっているけど、大丈夫か? アニス学園長も引いているし。


 「じゃあ、今日のところは解散。明日また会おう」


 「はい、お疲れ様でした」


 「また明日ねぇ〜」


 「お、お疲れ様」


 ん? セリアが何処となく寂しそうな雰囲気を出しているけど、気のせいか?


 そう思ったが、まぁいっか。と気にせずに目を瞑り、【転移】と唱えてリタと一緒に自宅へと帰る。


 「ただいま! って言っても家に誰もいないか」


 「お帰りぃ〜、洸夜ぁ〜!」


 「えっ!?」


 幻聴か? 今母親の声が聞こえた気がするんだけど。


 「あれ? 今の声、誰かいるの?」


 リタが聞こえているってことは、確実にいるってことだよな。


 「母さんが帰って来たのか?」


 「えっ!? それマズくない? 両親に私のことを説明してないよね?」


 「う、うん。その通りだ」


 しかも、異世界へ留学することも魔法も使えることも話してないから、どうすればいいのかわからないし、俺の話を信じて貰えるかも怪しい。


 「どうしようリタ。両親に何も・・・・・・」


 「お帰り、コウヤ。異世界へ留学する話、聞いたわよ!」


 「「えっ!?」」


 今この人、何て言った?


 「はぁ〜い、コウヤさんが向こうの世界へ留学することを、私達が説明しましたぁ〜」


 「お主と違って、すんなり理解してくれたぞぉ〜!」


 「は、はぁ〜・・・・・・そうですか」


 多分午前中見掛けなかったから、午後に帰って来たんだろうなぁ。


 俺がそう思っている横でリタは ポカーン。として神様達を見つめている。


 「・・・・・・」


 「あ、父さん。お帰り」


 「・・・・・・」


 「俺のことは心配いらないよ」


 「・・・・・・」


 コクリッ。と頷くとリビングの方へ行ってしまった。相変わらず無表情で無口な父親だ。


「ねぇ、コウヤ。さっきの人、コウヤの父親よね?」


 「ああ、うん。俺の父親だよ」


 「何も言わずに出て行ったけど、もしかして怒っていたの?」


 怒られると思っているのか、リタは不安そうな顔で俺を見つめて来る。


 「ああ、違う。父さんは怒ってないから、そんなに心配しなくてもいい」


 「えっ、だって何も言わずに出て行っちゃったじゃない」


 「違う。父さんは声が小さいから、愛用のメガホンを取りに行っただけ」


 「メガ、ホン? 何それ?」


 向こうの世界にメガホンないんだ。


 『メガホンはこれのことだよ』


 説明しようとしたら、父さんがメガホンを口に添えてやって来た。


 「わぁ!? ビックリしたぁ!」


 『僕の名前は 海山  英治えいじ 隣にいるのが妻の 佐江さえ です。よろしく』


 「は、初めまして。妖精族のリタです。以後お見知り置きを」


 リタは戸惑いつつ両親に向かって、頭を下げて挨拶する。


 「お父さんの説明した方がいい?」


 「大丈夫、何となくわかったから」


 「一応言っておくけど、父さんに声が小さい事を指摘しないで欲しい。気にしていることだからさ」


 リタに向かってヒソヒソ話をすると、頷いてくれた。


 「それで、神様達の話に聞いたんだけどさ、洸夜は魔法を使えるんでしょ? どんなことが出来るの?」


 「こんなことが出来るぞ」


 両親の前で魔力の塊を出したり、結晶に変えて差し出した。


 「へぇ〜、意外と地味ねぇ」


 酷ッ!?


 「あの、コウヤのママさん。洸夜が使う魔法はユニーク魔法って言って、結晶化させる能力は彼しか使えない魔法なの。
 私達からすればスゴイと思うほどの能力を持ってるから誇っていいと思う」


 リタァ・・・・・・。


 リタの言葉にジーンと来た。


 「でも地味なのは否定出来ないんだよねぇ。だってコウヤ自身がユニーク魔法を使いこなせてないし」


 「ぬぉぉぉおおおおおおっっっ!!?」


 今の言葉はダイレクトに響いたぞっ! ハッ!? わかったぞ。上げてから落とすタイプだな、お前は!


 『洸夜くんの頑張り次第で、どうにかなる問題だと思うよ』


 お父さんがメガホン越しに話す。


 「そうね。頑張って洸夜」


 俺が作った結晶をポイっと投げて来たので、キャッチしてから消した。


 「さぁ、ご飯を作りましょうか。リタちゃん、今日はお家で食べて行きなさい」


 「いいの、私が一緒にいても?」


 「いいのよ、ウチの洸夜がお世話になっているんだから、それぐらいはね」


 「ありがとう、コウヤのママさん!」


 お母さんはそう言うと、リタに手を振りながらリビングへ行く。


 『僕も手伝うよ』


 父さんも母さんの後を追うようにして、リビングへと行ってしまった。


 「さてワシらもぉ・・・・・・」


 「あ、ちょっと待って下さい!」


 そうだそうだ。聞きたいことあったんだ。


 「ん? どうしたんじゃ?」


 「ゼウス様に相談があるのですが、お時間大丈夫ですか?」


 「ああもちろん、大丈夫じゃよ」


 よかった。ヒm、じゃなくて時間に余裕のある神様で。


 「ここで話すのも何ですからぁ〜、リビングで話しましょうかぁ〜」


 「そうですね」


 俺は両親が和気あいあいとキッチンで料理をしている向かい側のリビングで、ゼウス様とティアラ様に昨日の夜に見た夢について話した。


 「なるほど、本当にお主を嵌めた校長と、その息子が言い争いをする姿を夢で見たのかのぉ?」


 「はい、夢にしてはリアルだなぁ。と思ったので相談しました」


 「う〜〜〜む・・・・・・まさかのう。ちょっと頭に触れるぞ」


 「あ、はい」


 ゼウス様が俺の頭に手を置いてから少し経ったら、驚くような顔になる。


 「こりゃぁ驚いた!」


 「何があったんですかぁ〜?」


 「ワシの力の一部がコウヤくんの身体に宿っておる」


 「「「えっ!?」」」


 ゼウス様の力が俺の身体に宿っているだって!


 「それはスゴイことじゃないですかぁ〜!」


 「確かにスゴイことなんじゃがのぉ・・・・・・」


 ん? どうしたんだ。何か問題があるのか?


 「ゼウス様、コウヤが神様の力を宿ったのはマズかったのでしょうか?」


 「いや、そういう問題じゃないのぅ」


 「なら、どういう問題なのですか?」


 うん、それ気になる。まさかだけど、危険だから今から消えてくれ。何て言われないよな?


 「能力がショボ過ぎて問題なのじゃ」


 「どういう意味ですか?」


 意味がわからないんですけど。


 「お主が宿した能力は、全てを見通せる力なのじゃが。余りにもショボ過ぎて、コントロール出来てないんじゃ。
 普通の能力が松明で燃えている状態で例えると、お主が宿した力はぁ・・・・・・マッチの燃えカスに赤く火が残るじゃろう? あれぐらい力が弱いんじゃ」


 わかりやすいようで、わかりずらい例えだなぁ。


 「要するに、力が弱過ぎて自分じゃコントロール出来ない。増してや戦闘に使うなんて持っての他。って覚えていればいいんですね?」


 「そうじゃ。そしてお主が見た夢は、恐らく現実で起きた出来事の一部始終じゃろう」


 現実で起きた出来事の一部始終。か。


 「それじゃあ、あの校長が身体を震わせて煙草を吸っていたのも?」


 「そやつが現実にやっていたことじゃ」


 そうなのか、だったら。


 「ヅラがズレているのに気付いてないのも?」


 「それも現実に起きたことじゃ。一応言っておくが、あのヅラにお金を掛けているらしいのぉ〜」


 お金を掛けているのに、バレてたらヅラの意味がないんじゃない?


 「まぁ、お主のその能力に付いては、そんなに気にせんでもええじゃろう。その力が悪さをする訳ではないからのぉ」


 「はぁ、そうですか」


 「それじゃあ、ワシらはおいともするかのぉ。じゃあのぉ〜」


 「お邪魔しましたぁ〜」


 ゼウス様達はそう言うと、フッと消えて行ってしまった。


 「気にしなくていいかぁ〜」


 ゼウス様がそう言うのなら、気にしないでおこう。 と思う洸夜だった。

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