東京PMC’s

青空鰹

紫音と入浜警察予備高校の校長

 演目が全て終わった彼らは一列に並んでいたが、舞ちゃんを含めた何人かが僕の事が気になるのか見つめていた。


 「以上で入浜警察予備校校の実演を終わります! 一同、礼!」


 『ありがとうございましたぁ!』


 お辞儀をする彼らに盛大な拍手を送る。


 『本校の生徒の皆さんは、先生の指示に従って教室に戻るようにして下さい。先ずは3年生から移動をお願いします』


 先生の指示の元、次々に教室へと戻って行くその中でコニーさんはプンスカ怒っていた。


 「何がユウシュウな生徒達ですかぁ!? 全然ダメダメじゃないですか! あんな事を実戦でやっていたら、普通に死にますよ!」


 「まぁまぁコニーさん、落ち着いて下さい。彼らもまだ訓練を始めて間もないのですから」


 コニーさんが暴れ出しそうになったので、急遽僕と真奈美さんが隣に来て宥める事になった。


 「そうですよ。紫音さんの仰る通りですよ」


 「でも許せません。今のカレらでは救出任務どころか危険区域にさえ行けないです! ここはあのセンセイに代わって指導をするしかありませんっ!!」




 「彼らが実戦に投入されるのはまだ先なんだから、そんなに怒る事はないよ」


 「じゃあシオン。彼らがジッセンに出るのはいつなのか、アナタにはわかりますか?」


 「う〜ん・・・・・・少なくとも2年より先だと思っているよ」


 少なくとも高校に在学している間は、戦いに参加させないだろうと思っている。


 「いいえ、私は今からでも実戦に投入出来ると考えておりますよ」


 「え?」


 この紫色のパーマ髪をしたオバさんは、一体何者なのだろうか? 真奈美さんは驚いた表情をさせているが、コニーさんに至っては髪の色が気になっているのかじっと見つめていた。


 「 阿佐間あさま理事長! こんなところで何をしているんですか!?」


 阿佐間理事長? って事はこの人が入浜警察予備高校の理事長って事ぉ!?


 「この子がPMCの大園くんね。阿佐間 美代子みよこよ。よろしくねぇ〜」


 「どうも」


 何だろう。この人から嫌な人と感じるのは、僕の気のせいだろうか?


 「う〜ん・・・・・・アナタ見た感じだと、わたくしの生徒よりも劣ってそうですね?」


 この人、何を言ってるの?


 「アナタはシオンに対してケンカを売ってるの?」


 「ケンカだなんてそんな事ぉ〜・・・・・・わたくしは事実を述べているだけですよぉ〜」


 何かこの身体をクネクネさせてバカにしてくる姿に、だんだん腹が立って来た。


 「確かアナタもPMCでしたっけぇ〜?」


 「そうですよ。それが何か?」


 「アナタも大した事なさそうですねぇ〜。わたくしの生徒達の方が優っているのが見てわかりますねぇ〜」


  「ッ!?」


 コニーさんは今の発言対して頭に来たのか掴み掛かろうとしたので、僕が素早く止める。


 「コニーさん、この人に突っ掛かっても意味はないよ」


 「バカにされてるのを黙ってられるほど、ワタシは出来た人間じゃないです!」


 「まぁまぁ、すぐに暴力に出るなんて恐ろしい〜。ホント、PMCの人達は血の気が多い方が多い事」


 「まぁ変わり者は多いですよPMCは」


 少なくとも僕の周りではの話だけど。


 「でもね。一つだけ言える事があるんですよ」


 「何ですの?」


 「アナタみたいな無能人はPMCには存在して居ないですよ」


 「無能? このわたくしが無能? 何処が無能なのですか?」


 「今の演習で、反省点はあったと思いますか?」


 「わたくしの優秀な生徒達に、反省点なんてありませんよ!」


 「・・・・・・フッ」


 わざと鼻で笑ったら、阿佐間理事長は眉を吊り上げて迫って来た。


 「何がおかしいと言うのっ!?」


 「私にタクティカルトレーニングを教えてくれた人は言ってくれました。スポーツマンでも言える事だけど、自分の気付かない悪い癖を指摘して改善するのが我々トレーナーの仕事だと。
 だけどアナタの場合は違う。生徒をちゃんと見ていないし、把握もしていない」


 「そんな事はありませんわ!」


 「僕やコニーさんから見て、ダメなところがいくつもありましたよ。今ここでお教えしましょうか? 多分ですけど、下谷さんも同じ事を彼らに指摘すると思いますが」


 紫音の言葉を聞いた阿佐間は信じるような顔で下谷を見つめる。


 「彼の言う通り、反省点はありました」


 「えっ!?」


 「なので、この後に彼らに話すつもりです」


 下谷さんはこれ以上付き合ってられないのか、生徒達の方へ向かって行く。


 「私としては大の大人が少年少女にちょっかいを掛けるのは、どうかと思いますよ」


 「ちょっかいは掛けておりませんよ。ちょっと世間話をしているだけですよ」


 阿佐間さんの言葉を聞いた真奈美は、クスッと笑った。


 「世間話ですかぁ・・・・・・そう言えば、横浜のアナタに似た人が歩いているって言う噂を聞いたのですが、人違いですかね?」


 「横浜には偶に行きますよ。それが何か?」


 「偶にですかぁ〜。じゃあその人がいくつかのブランド店に入っているのは?」


 「偶に行く程度なので・・・・・・」


 「偶に? よくブランド店に出入りして、“よく買っている”と聞いていますが?」


 そう言った瞬間、驚いた表情を見せた。


 「わ、わたくしと似た方じゃないかしら?」


 「そうですか? その方はよくカードで決算しているので、調べてみればわかると思いますよ? この間ディナークルーズで楽しんでいたみたいですが、どうでした? 楽しめましたか?」


 「ッ!?」


 真奈美さんのその一言で、顔を青ざめさせたのだ。


 「ね、ねぇシオン。マナミが恐くカンじるのは、私の気のせいでしょうかぁ〜?」


 「ぼ、僕も恐ろしいと感じているよ」


 紫音は気付いていないが尻尾を丸めている。


 「お暇でしたら、もう少し私とお話をしましょうか?」


 「い、いえっ! わたくしは忙しいので、これで失礼致します!」


 阿佐間さんはそう言うと逃げるようにして僕達の前から去って行き、その姿を見送った真奈美さんは、とてもいい笑顔で僕達を見つめるのであった。


 「さぁ、私達も教室へと戻りましょうか!」


 「「は、はい」」


 彼らは真奈美とケンカしないようにしようと心に誓いながら、教室へと向かったのであった。


 「みんな原稿用紙に今日の実演の感想を書いてね。目標半分以上ね」


 嫌な顔をさせたり無言で書き始めたり、それぞれの表情をさせる中、紫音は手を止めたまま原稿用紙を見つめていた。


 「ん? どうしたのですか、紫音さん?」


 「あ! うん・・・・・・ちょっと考え事をしちゃって」


 「紫音さん。アナタが思っている事をそのまま書いていいと思いますよ」


 「え?」


 「紫音さんは紫音さんで、あの実演に感じるものがあったんですよね?」


 「う、うん」


 「ならその思った事をそのまま書けばいいと思います」


 「そう、かな?」


 それを書いたところで意味があるのだろうか?


 「大園くん。この感想文は向こうの高校にも送られるから、書いた方がいいと思うわ」


 「筒城先生?」


 「これは私の憶測なのだけれども、アナタが書いた作文を絶対に読むと思うの。だから正直に思った事を書いてちょうだい。PMCとしてどう思ったのかを」


 「・・・・・・わかりました」


 そう返事をした後にシャーペンを握り、感想文を書き始めた。


 「センセイ、用紙が足りません! もう3枚追加して下さい!!」


 「コニーさん。たくさん書いてくれるのはありがたいのだけれども、内容が酷いようだったら書き直しさせるわよ」


 「汚いコトバは書いていないので大丈夫です!」


 「そ、そう・・・・・・ならアナタを信じて渡すわね。足りなかったら言ってね」


 「ありがとうございます!」


 筒城先生はそう言うと、コニーさんに原稿用紙を3枚渡した。その後、書き終えた感想文を筒城先生に渡したのであった。

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