東京PMC’s

青空鰹

紫音とラボの中

 サラさんは僕の耳や尻尾をモフモフにモフモフされ、さらに追い討ちを掛けるようにしてモフモフして来たので、もう心身共にヘロヘロな状態で床に座ってしまっている。


 「サラ、何て恐ろしい女なの。シオンくんを骨抜きになるまでモフモフしまくるなんて・・・・・・」


 「オネエちゃんのケモミミ愛、オソろしいですねぇ〜」


 「ところでアナタは誰?」


 「Oh! 申し遅れました! サラ オネエちゃんのシンセキの、 コニー と申しまぁ〜す! よろしくね!」


 「私の名前はリトアよ。こっちはもう知っていると思うけどシオンくんよ」


 もうヘロヘロな状態だから、挨拶をしようにも出来ないよぉ〜!


 「オネエちゃんから話を聞いてます! よろしくねぇ〜!」


 「よろ、し、キュゥ〜・・・・・・」


 そう言って床に倒れそうになったところをコニーさんが受け止めてくれた。


 「もぉ〜オネエちゃん! もう少しテカゲンしてあげないとダメですよ!」


 「え、でも今触らないと、いつモフモフ出来るかどうかわからないじゃない」


 週4回ぐらい会ってるじゃないですかぁ!


 「シオンにキラわれたら、一生モフモフ出来なくなっちゃいますよぉ!」


 「それは困るわ!」


 「なら、シオンにアヤマって下さ〜い」


 コニーさんがそう言うと、サラさんは申し訳なさそうな顔で僕に近づいて来た。


 「あの、紫音くん。ちょっとやり過ぎたわ。ゴメンなさい」


 「わ、わかってくれればいいです」


 そう言ってから立ち上がった。


 「もう終わったかぁ?」


 そう言ってガンショップに入って来たのは何と天野さん達だった。


 「天野さん、もしかして見ていたのですか?」


 「まぁ途中からな」


 「酷い! サラさんの暴走を止めてくれたっていいじゃないですかぁ!」


 「いいじゃねぇかそれぐらい、耳を尻尾をもがれる訳じゃねぇんだから」


 そう言って欠伸をする姿に、怒りを感じるのは僕だけだろうか?


 「それよりもだ。早くそのサイボーグのところに行くぞ」


 「あ、待って下さいよ! 天野さぁん!」


 僕は天野さんの後を追い掛けて行くと、ここより関係者以外立ち入り禁止と書かれた看板が、置かれた部屋の前にやって来た。


 「ここだな」


 「何か厳重に管理されてる感じがするのは、ボクの気にせいかな?」


 リュークさんの言う通りだと思う。だってここに来るまでにガードマンらしき人が等間隔で立っていたし、監視カメラも尋常じゃないぐらいに数があった。


 「ああ、アメリカが作ったサイボーグは機密情報の塊だからな。こんなに厳重になるのも無理はない」


 『そうよ。他国に知られたくない部分が多いから、こんなに厳重になっちゃうのよ』


 出入口の前に設置されているスピーカーから女性の声が聞こえて来た。


 「エルザ・・・・・・お前何処から話を聞いていたな?」


 『扉の前なら会話を拾えるわよ。今開けるから待ってて』


 そう言った後に扉が開き、中から白衣を着た黒人女性が出て来た。


 「予定より遅かったわね」


 「ああ、サラのせいでな」


 「へぇ〜、真面目なサラがねぇ〜」


 「・・・・・・申し訳ありません」


 サラさんはそう謝罪をしながら、恥ずかしそうに頭を下げた。これに懲りたら手加減して欲しい。


 「まぁいいわ。自己紹介は部屋の中でするから、入って頂戴」


 エルザという名前の女性の後を追うようにして部屋の中へ入ると、部屋の奥にSF映画で出て来るようなカプセルが鎮座していた。


 「自己紹介するわね。私の名前は エルザ・マルティネス あのカプセルに入っているのが、アナタ達の言っていたサイボーグの クアッド よ」


 「ご丁寧にどうも、俺の名前は 天野 雄二 。隣にいるのがリュークにリトア。後は・・・・・・」


 「シオンくんね」


 「ふぇっ!?」


 何でこの人、僕の名前を知っているの?


 「サラから見せて貰ったわよぉ。アナタの可愛い幼少期の写真をね」


 この人に見せたんですか、サラさぁん!


 僕がサラさんを睨むと、サラさんはサッと目を逸らした。


 「・・・・・・オネエちゃん?」


 「紫音くんが余りに可愛かったから、つい言ってしまっただけなの」


 「それよりも、俺達は何をすればいいんだ?」


 僕がサラさんを睨んでいる間に、天野さんはエルザさんにそう聞いた。


 「依頼は簡単事よ。このクアッドを危険区域連れて行くから、戦闘データ収集のサポートをして貰いたいの」


 「サポートぉ? 具体的にどんな事をするんだ?」


 「ん〜・・・・・・クアッドが壊れたり危険な状態に陥ったら回収してくれればいいだけだから、基本的には何もしなくていい感じね」


 つまり、クアッドと呼ばれているサイボーグの戦闘を見守るだけの仕事になるけど、自分達は何もしない可能性の方が可能性が大きいって事かな。


 「そうか、わかった。俺達の他にも雇っているんだろう?」


 「ええ、アナタ達を含めて3チーム雇っているわ。その2チームには既に話を通してあるから安心しなさい」


 多分、僕がサラさんにモフモフされている間に説明したんだろうなぁ。


 「せっかくだし、クアッドを見て行かない?」


 「え、いいの?」


 興味津々だったリトアさんがそう言うと、エルザさんは笑顔で首を縦に振った。


 「もちろん見るだけなら構わないわよ。さぁこっちに来て」


 「やったぁ! 行こう、シオンくん!」


 「え、わっ!?」


 僕が答える暇もなく、腕を掴めれて引っ張られてしまった。天野さん達はその様子を ヤレヤレ。 と言いたそうな顔をさせた後にカプセルに近づいて行く。


 「彼がクアッドよ。今はスリープモードだから動く事はないわ」


 「これが・・・・・・」


 「サイボーグ」


 「カッコイイ!」


 全身は黒く、顔には不気味と言えるような仮面を付けていて、全身謎の線が点滴のチューブように四肢に射し込まれていた。


 「今はシステムチェックの途中で、予定では20分後に終わるわ」


「隣にある真っ直ぐな刀はなんだい?」


 「あれは彼の武器よ。電気熱で相手を焼き切る刀だから、普通の人間には熱くて扱えないわよ」


 「へぇ〜、そうなんだぁ〜」


 リュークさんは感心した顔をしている。


 「ん? 紫音、お前どうしたんだ?」


 「え、あ、はい・・・・・・何か、あのサイボーグが恐いと思ったので」


 「恐い?」


 天野さんはそう言ってから僕とクアッドを交互に見た後に、ジッと見つめて来た。


 「アイツの何が恐いんだ?」


 「あのサイボーグから、微かに怒りというよりか憎悪にも似た感情が無理矢理押し込められているような、そんな気がしてぇ〜・・・・・・」


 「意味がわかんねぇよ」


 そう言って両頬を引っ張って来た。


「ファ〜ッ!?」


 「憎悪に似た感情が無理矢理押し込まれているだ」


 「いらい! いらいれふよぉ〜!!」


 そんなに強く引っ張る事ないじゃないですかぁ!?


 「まぁまぁアマノくん、落ち着いて」


 「そうよぉ。シオンくんが可愛そうじゃない!」


 「うるせぇ、意味わからん事言うコイツが悪いんだ」


 思いっきり引っ張ってから離したので、両頬が凄く痛い。


 「シオンくん、ダイジョウブですか?」


 「大丈夫です」


 自分の両頬を撫でながらコニーさんにそう答えたが、何故か彼女は僕の耳を触っていた。


 「・・・・・・あの、コニーさん? どさくさに紛れて何をやっているんですか?」


 「エヘヘへへ、ちょっと気になったので触っちゃいました」


 「全く、何奴もコイツもふざけやがって、外に出て待つぞ」


 ご乱心の天野さんは足早にラボから出て行ってしまった。


 「天野さん、怒っちゃった」


 「ああ、ニコチンが切れているだけだから、気にしなくてもいいよ」


 「そうよ。煙草を吸えばすぐに機嫌が戻るから」


 「そうですかぁ。それよりもコニーさん、何時まで触っているつもりですか。後エルザさんも興味深そうに尻尾を触るの止めて下さい」


 エルザさんとコニーさんは、満足した様子でモフモフするのを止めてくれた。


 「ライカンスロープは個体が少ないから、手に付いた毛は他の研究者に渡してもいいわよね?」


 「・・・・・・好きにして下さい」


 エルザさんにそう言った後にラボの外へと出たのだった。

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