東京PMC’s

青空鰹

紫音と牙を剥く犯人

 今授業中なのだけれども、とても気まずい雰囲気に包まれている。何故かって? 教壇の隅っこで僕が H&K UMP45 を手に持ちながら周囲を警戒していて筒城先生が黒板に書いているのだ。


 「次の問題、解かる人いるかしら?」


 「はい!」


 「はい、山本さん」


 真奈美さんが黒板に答えを書いている間、僕は外を見つめて警戒をする。


 「はい、正解です」


 外にいるようすはない。


 「あの、大園さん」


 「はい?」


 「授業中なので外を見つめないで貰えるかしら?」


 筒城先生が睨みながらそう言って来た。


 「外を警戒していたので、気にせずに授業を続けて下さい」


 「そ、そう言われてもアナタは生徒でしょ? ちゃんと授業を受けて貰わないと困るわ」


 「そう言われましても僕の場合仕事なのでアナタの近くにいないといけませんし、狙撃される事を考慮して外も見つめないといけません。なので、ここにいるのがベストかと」


 そう、僕が立っている場所は前列の窓に近いところで警戒している。


 筒城先生に言った通り、この位置なら狙撃の警戒も出来るし、筒城先生に何かあればすぐに対処出来る。それに生徒達の授業の邪魔をしない。


 「そ、そう言いますが・・・・・・」


 「筒城先生。紫音さんはアナタの為にやっている事ですよ」


 「山本さん、アナタまで」


 「アナタに何かあれば駆け付けられる位置にいるのですよ。それとも先生は邪魔をしたいのですか? それともぉ〜・・・・・・犯人に殺されても構わないのですか?」


 真奈美がそう言うと、先生は恐怖を感じたのか身体をビクッと反応させた。


 「殺されたくないのでしたら、彼の行動に口出しをしない方が身の為ですよ」


 真奈美さんはそう言うと、自分の席へと戻るのだった。


 「あの、大園くん。引き続きお願いします」


 「わかりました」


 筒城先生は教壇に戻りそのまま授業が続いた後、何事も無くお昼休憩になった。休憩中でも筒城先生の側で菓子パンを食べていた。


 「ねぇ、大園くん」


 「何ですか、筒城先生?」


 「素朴な疑問なんだけど、アナタは何でPMCになんてなったの?」


 「・・・・・・その道しかなかったのでなりました」


 そう言うと、ムッとした顔になった。
 

 「ご両親はいないの」


 「いませんよ」


 「祖父か祖母は?」


 「いませんよ。それと親戚も会った事がありませんので、多分いないと思います」


 僕がそう言うと筒城先生は驚いた顔になる。


 「僕の事は気にせず、食事を続けて下さい」


 そう言って菓子パンの袋を畳んでゴミ箱へと入れると、H&K UMP45 を持つ。


 「・・・・・・ん?」


 オズマさんからの連絡? うん・・・・・・うん、なるほど。


 「こちら紫音、了解」


 「どうしたの、大園くん?」


 「怪しい車両が学校の近くで停まっているから、今警察官が車を調べているそう・・・・・・」


 ダダダダンッ!?


 銃声に反応して、筒城先生に近づき、無理矢理しゃがませる。


 ダダダダダダダダダダダダンッ!?


 「何? 外で何が起きているの?」


 そう聞いて来る筒城先生を無視して、通信の方に耳に傾ける。


 『紫音、ヤツだ! ヤツが現れた!』


 「どちら側に現れたんですか?」


 『学校の裏側だ! だから表門の方に筒城先生クイーンを連れて来い!』


 「了解! 今から移動します。通信アウト!」


 そう言った後に H&K UMP45 をコッキングしてから筒城先生の手を取った。


 「先生、森下がやって来ました。ここから離れますよ!」


 「え、あ・・・・・・」


 「いいから立って。早く!」


 無理矢理立たせると職員室から出た瞬間、離れた場所のガラスがけたたましい音と共に破れて廊下に落ちて行くので、しゃがんで壁に張り付く。


 「こちら紫音。職員室に出たけど攻撃凄まじくて身動きが取れない! 何とかなりませんか?」


 しかも当てずっぽうで撃っているのか、銃弾が頭上の窓を行ったり戻って来たりしているのだ。


 『了解! オズマ達の方で気逸らせるから、合図するまでその場で待っていろ! いいか、予定通りこっちに来いよ!』


「了解! 先生、しゃがんだまま僕に付いて来て下さいね。それと、絶対に叫び声を上げてはいけませんよ。位置バレする可能性があるので」


 「は、はいぃ!」


 そうして待っていると、他の銃の発砲音も聞こえて来たのと同時にこっちに向向けて撃ち込まなくなった。


 『今だ行け!』


 「了解!」


 そう返事をした後に出入口を目指して壁に沿って歩いて下駄箱までやって来た。念の為に周囲の確認もする。


 「・・・・・・クリア。校庭に出ますよ。僕の後ろに付いて来て下さい」


 「は、はい!」


 校庭に出る前に周囲を警戒する。


 「クリア、行きますよ!」


 「はい!」


 周囲を警戒しつつ、校門の前に停まっているピックアップトラックの元へ行くと、運転席からリュークさんが顔を覗かせた。


 「紫音くん、彼女を後ろに乗せて!」


 「わかりました!」


 筒城先生を後ろに乗せた後に乗ろうとしたら、助手席にいた天野さんが声を掛けて来た。


 「お前は荷台に乗れ」


 「え? でもぉ」


 「いいから荷台に行け!」


 「あ、はい」


 扉を閉めた後に荷台に乗ると、怨みを込めてルーフ(※車の屋根)を バンバンッ!? と叩く。するとリュークさんはピックアップトラックを発進させた。


 「あっ!?」


 何と進行方向の十字路の脇に森下が顔を出していた。僕の姿に気づいたのか、慌てふためきながら AK47u を構えようとしていた。


 させないよ。


 セレクターをフルオートに合わせて H&K UMP45 を構えたら、森下を狙って撃ち込んで行くと十字路の影に逃げ込んで行った。それと同時にピックアップトラックは森下のいる十字路を素早く通り過ぎる。


 「フゥ〜・・・・・・危なかったぁ」


 あのまま撃たれていたら、どうなっていた事か。


 荷台に座り込むと、バンバンッ!? 叩かれた。


「安心するのは、まだ早いわよシオンくん!」


 「え、リトアさん。どういう事ですか?」


 って言うよりも、窓から顔を出して危なくないんですか?


 「モリシタが追い掛けて来るかもしれないわよ!」


 「さっき見た時は車に乗ってませんでしたよ?」


 「さっきはでしょ? この間みたく車を奪う可能性があるわ!」


 そうかなぁ? と思っていたらオズマさん達から通信が入って来たので、天野さんは僕達に聞こえるようにトランシーバーの音量を上げる。


 『こちらリガード、モリシタが車に乗ってアマノ達を追い掛けようとしている!』


 何だって!?


 「車種と色は?」


 『車種はミニクーパーで色は青にボディーに弾痕が入っている!』


 「了解。こちらで対処する」


 『こちらも車乗って追い掛ける!』


 通信を終えた天野さんは、 チッ!? と舌打ちをした。


「軽自動車で追い掛けて来るとは、ナメられたもんだな。絶対に追いつかれるなよ」


 「わかってるよアマノくん」


 どうやら、2人はやる気になったようだ。車種でそんなに気が変わるものなの?


 「シオンくん、これ!」


 リトアさんはそう言うと、UMP45用のマガジンがたくさん入ったナップザックを渡して来た。


 「30ラウンドマガジンが15本。45ラウンドマガジンが13本入っているから、それで対応して!」


 「それはいいんですけど、いつの間に買ったんですかこれ?」


 「アマノがアナタの為に用意したのよ!」


 天野さん、僕の為に用意してくれたんだ。さっきの事を謝・・・・・・。


 「お前の稼いだ金でな」


 「「「えっ!?」」」


 今何って言った?


 「それよりも、もう追い付いて来たぞ」


 後ろを振り向いて見ると、青いボディーのクーパーが周りの車にクラクションを鳴らして散らしながら近づいて来る。


 「森下っ!?」


 怒りの形相で運転している森下と目が合った瞬間、サイドウィンドウからAK47uを取り出して撃って来たので、反射的にしゃがんでやり過ごす。


 「キャアアアアアアアアアアアアッッッ!!?」


 「横になって隠れて!」


 叫んでいる筒城先生を横にしている間に僕は反撃の態勢を取る。


 「シオンくん、フロントガラスかフロントボディーを狙って撃つんだ!」


 「可能ならタイヤを狙って撃て!」


 「了解しましたっ!!」


 そう返事をした後に H&K UMP45 斜めに構え、頭を出してミニクーパーのフロントガラスに向かってフルオートを撃ち込むと、ヒビが割れて前が見えない状態になった。
 

 「よし!」


 これなら狙おうにも狙えないだろう! と紫音は思っていたのだが、森下は予想外の行動に出た。


 「えっ!?」


 森下は何と AK47u のストックでフロントガラスをぶっ叩いて穴を開けて、その空けた穴からAK47uを差し込んで撃って来た!


 「メチャクチャな人だなぁ、もうっ!?」


 そう言いつつ H&K UMP45 のマガジンが空になったので30ラウンドマガジンに差し替える。


 「高速に乗るよ! 捕まってて」


 リュークさんに言われた通り荷台のヘリに捕まると、急ハンドルを切ったのでガクンと揺れた後に、まるで急斜面の滑り台にいるような感じで荷台の中を滑ってしまった。


 「わぁ、わわわっ!? 落ちる落ちる落ちるぅっ!?」


 「落ちねぇから心配するな!」


 紫音はシートとシートベルトの重要性を身を持って体感するのであった。

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