東京PMC’s

青空鰹

裏切り者のアジト探しを始める紫音

 ゴブリンの巣を壊してから線路沿いに歩き続けて行き、京急蒲田駅手前で225さんは足を止めた。


 「ここいらにあやつの隠れアジトがある筈なんですよぉ! 紫音さんの出番ですぅ〜!」


 225さんは真空パックに入っている布の切れ端をそのまま差し出して来た。


 「一応先に言いますが、臭いの痕跡がなかったら追えませんよ」


 「大丈夫、あっし達もダメ元で頼んでいるんですから、そこら辺の事は気にしないで下さいよぉ!」


 真空パックを受け取ってから封を開き、布の臭いを嗅いで覚えた。


 「臭いを覚えました」


 「うんうん。じゃあ探しに行きましょうかぁ! 先ず第1候補の建物に案内しますねぇ!」


 「第1候補?」


 どういう事何だろう?


 「実はアジトに出来そうな場所を事前にピックアップしていたんですよぉ!」


 「ならそのその情報を元に自分達で探し出せばよかったんじゃないのですか?」


 「本当なら紫音さんが仰った通りにしたかったんですけどぉ、そうしてしまいますと一軒づつ調べて見て回らないと行けないので時間が掛かっちゃいます! その探している間に裏切り者に悟られてしまう可能性があるのですよぉ〜!」


 あ、確かにそうだよね。一軒一軒シラミ潰しのように時間を掛けていたら、向こうに勘付かれる可能性が出て来るよね。


 「でも、紫音さんの嗅覚があれば家の中を隅々まで調べなくて済むのですよぉ!」


 「あ、なるほど。僕の嗅覚を使えば入り口とかをちょっと調べるだけで済むから、時間短縮になりますね」


 「そういう事です! 時間が勿体ないので、行きましょぉ〜」


 225さんはそう言うと僕の手を取って道路を沿うようにして歩き始めた。


「一軒目はこの近く、と言うよりもあの民家なんですよぉ」


 「えっ!?」


 225さんが指をさす方向を見てみると、駐車場付きの古ぼけた民家があった。


 「あそこですか? どう見てもいない感じがしますが」


 「何を言っているんですかぁ! いない感じを醸し出してないと、隠れ家って言えないじゃないですかぁ! 紫音さんだって隠れ家を作ろうとしたら、ここにいるとわかるような作りにしないでしょぉ?」


 「う〜ん・・・・・・言われてみれば確かにそうですねぇ」


 反省しているのか、耳と尻尾がシュンとしてしまった。


 「そんな事よりも、早く確認しに行きますよぉ! 紫音さん、先に行って下さい!」


 「あ、はい!」


 225さんに言われた通り、周りに注意しつつ慎重に建物近いてから、臭いを確認しつつ入り口や家の周りを調べる。


 「う〜ん。本人どころか他の人の臭いも形跡がないから、ここはハズレみたいです」


 「そうですかぁ。いないとわかれば用はありません! 2軒目に行きましょうかぁ!」


 「あ、はい」


 2軒目は3階建の新築だったっぽい家だけど東京らしい狭さの一戸建てだったので、すぐにここではないとわかった。だけど。


 「こんなところにヘソクリがあったとは」


 そう、外に設置してあった物置の中からお札の匂いがしたので、調べてみたら10万円の入った封筒が出て来たのだ。


 「ラッキー! でもここもハズレですかぁ〜」


 「ですね。ところでそのお金戻さないのですか?」


 「あっし達の方で有効活用させて頂きますぅ。 次に行きましょうかぁ!」


 「あれ、それって泥棒じゃないですか? 懐に入れたらダメですよ! ちょっとぉ!」


 そんなこんなで3軒目やって来たが、そこで問題が起きた。


 「225さん、ストップ!」


 「ん? どうしたんですかぁ、紫音さん」


 「あの、もしかして3軒目ってあのお家ですか?」


 そう言いながら、ちょっと古めの飲食店を指をさした。


 「そうですけどぉ、どうしたのですかぁ?」


 「あの場所からゴブリンの臭いが漂って来ます。多分巣になってるんじゃないでしょうか?」


 「え、そうですかぁ? 偽装工作の為に家にぃ〜・・・・・・」


 225さんが話している途中にその巣から3匹のゴブリンが出て来て、割れた窓から他にゴブリンがヒョコヒョコ顔を出していた。


 「紫音さんの仰る通り、巣ですねぇ〜。とりあえずここはマークしておくので、次に行きましょうかぁ〜」


 「そうですね」


 その家を大きく迂回するようにして、4軒目へと向かった。


 「ここが4軒目ですよぉ!」


 4軒目は資産家のお家だったのか、ちょっと大きめな家だった。


 「むむむ? この中から火薬とガンオイルの臭いがします。それと血の臭いも。後、裏切り者の臭いはしないので、ここにはいないと思いますよ」


 「ほほう。何かお宝の匂いがしますねぇ! 軽く調べてみましょうかぁ!」


 「225さんがそう仰るのでしたら、付いて行きますよ」


 「それじゃあ、レッツゴー!」


 そう言って FN FNC を構えながら意気揚々と家に入って行く225さんの後を、追うようにして家に入って行く。


 「あっ!?」


 「どうしたんですかぁ、紫音さん?」


 「225さん、裏切り者がここにいるかもしれません」


 「ええっ!? 本当ですかぁ〜?」


 「はい、血とガンオイルの臭いのせいか理由がわかりませんが、家の中に入ってようやく嗅ぎ分けられました」


 でも、他にも3人ほど・・・・・・ん?


 「そんなに耳を動かしてどうしたんですかぁ、紫音さん?」


 「今、微かに物音がした気がするんですが」


 「物音ぉ?」


 225さんはそう言って耳を澄まして辺りを見渡すが首を傾げてしまう。


 「何も聞こえないですよぉ」


 「それにこの臭い・・・・・・あっ!?」


 忘れもしない。この臭いは。


 「そんな真剣な顔をさせて、どうしたんですかぁ、紫音さん?」


 「225さん、僕が先行するのでその後を注意深く追って来て下さい」


 「わ、わかりましたがぁ、どうしてですかぁ〜?」


 「多分ここに一昨日の犯人がいるかもしれないので」


 225さんが ええっ!? と言って驚いた顔をさせながら、僕を見つめた。


 「嘘じゃないですよねぇ〜?」


 「嘘じゃないです! 血に混じって臭って来てますからぁ!」


 225さんはゴクリッと生唾を飲み込むと、 FN FNC を構えた。


 「わかりましたぁ。あっしも覚悟が出来たんで。紫音さん、どうぞ進んで下さいよぉ〜」


 「では、ゆっくり行きますね」


 225さんにそう言うと廊下に上がり、不意打ちに注意しつつゆっくりと進んで行き、途中にあるトイレのドアを壁に隠れながら開けた。


 「トイレクリア」


 そう言った後に壁に身を隠しながら隣の部屋のドアを開けた瞬間、バァンッ!? と銃声が聴こえたので、しゃがんだ姿勢で壁越しに手速く部屋の隅から隅まで見る。


 「ショットガン? それに紐?」


  椅子に固定された モスバーグ M500 があった。どうやらドアの正面に立って開けたら、ショットガンの餌食になるようなトラップを仕込んでいたらしい。


 「ああっ! あれはあっし達の商品っ!!」


 モスバーグ M500の裏には、銃と弾薬が山積みになっていた。


 「とりあえず確認は後回しでいいですか?」


 「わかってますよぉ! このお家の安全を確保しましょうかぁ〜!」


 225さんの返事を聞いた後、リビングと思わしき部屋へと注意深く入って行く。


 「・・・・・・クリア」


 「誰もいないですね。でも、このポテトチップスの量はスゴイですねぇ」


 そう、225さんの言う通り、台所の上は空になったポテトチップスの袋が山積みになっていた。


 「とりあえず、先に進みましょう」


 「そうですね」


 その後、1階を隈なく見て回ったが何処にも犯人がいなかった。


 「それじゃあ、2階を確認しに行きますか」


 「そうですね、紫音さん。お願いしますぅ」


 2階へ登ると左側から ギシギシッ!? という音が聴こえてので、そちらに身体を向ける。


 「向こうの部屋から荒い息遣いがします。もしかしたら、犯人がいるかもしれません」


 それにそこ以外から臭いや音がしないから、確実にそこにいると思う。


 「そ、その可能性がありそうですねぇ〜」


 「それじゃあ」


 「え、ええ」


 その部屋のドアに近づくと、取り回しのいい スタームルガー レッドホーク に持ち替えてドアノブを握った状態で、後ろを向いて225さんを見つめた。
 225さんが頷いたところで前に向き直りドアノブを捻って一気にドアを開いたのと同時に部屋へ突入しながらクリアリングをした。


 「クリア!」


 「クリアですぅ〜!」


 「ルームクリア!」


 そう言うと、使う必要のなくなったスタームルガー レッドホークからH&K UMP45に持ち替えた。部屋のようすはというと隅っこにスピーカーが置いてあり、中央には目と口を塞がれて椅子に縛り付けられた男性がいた。


 「この人はもしかして、誘拐された冨上さん?」


 僕がそう言うと、縛り付けられた男性が 助けてくれっ!? と言わんばかりにバタバタと暴れ出した。


 「どうやら間違いなさそうですねぇ」


 225さんはそう言いながら、目と口を縛っている布を取ってあげた。


 「助けてくれっ!? アイツが来る前に、ここから出してくれっ!!」


 「あの、その前に1つ確認しますが、アナタは 冨上 隆佐 さんで間違いないですね?」


 「ああそうだ。そ、その通りだ!」


 真理亜さんがくれた写真の男性、冨上 隆佐さんの拘束を解き、その身柄の保護をした。

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