東京PMC’s
お仕事へ行く紫音
 「天野さん、行ってきます」
 「行ってらっしゃい」
 「気をつけてね」
 「頑張って行ってらっしゃい」
 昨日のピリピリした感じが、嘘のように思えるぐらい二人は普通に接してくれる。
 それにしても天野さん達は、どうしてあんなにピリピリしていたんだろう? そう思いながら玄関で靴を履いて、立ち上がる。
 まぁ今日は昨日みたいに怖くないから、帰って来たら理由を聞いてみよう。
 そして玄関のドアを開き、孤児院へと向かうのであった。
 「アイツ、行ったな」
 天野さんは、窓ごしに紫音が孤児院へ向かっているのを確認する。
 「ねぇ、本当によかったの?」
 「何が?」
 「これの事よ」
 リトアは昨日車のボディーに張り付いていた物をテーブルの上へと置く。
 「いや、話さない方がいいだろう。TNT爆薬が貼り付けられていたと知ったら、アイツは恐がるだろう」
 そう、シオンが見つけたのはTNT爆薬だ。昨日、焼き肉の帰ろうとした時に紫音が気づいたという事は、俺達が焼き肉を楽しんでいる最中に誰かが仕掛けた可能性がある。
 何故紫音にその場で言わなかったのか? その理由は単純で、紫音がビビって動けなくなってしまうのを避ける為にあえて黙っていた。
 「でも!」
 「一応工藤に話を通して護衛を付けて貰ってるから、大丈夫だろう」
 この事は工藤に電話していて、工藤の話では俺達が例の3人組の標的になっている可能性があるらしい。だから、紫音の命を守る為に護衛を付けて貰ったのだ。名目上での話では。
 「だからって、あの子を囮にするのはよくないわ!」
 そう、リトアの言う通り、名目上では紫音を護衛する事になっているが、実際には紫音を囮にしてターゲットをおびき寄せる作戦が主な理由で、昨日工藤と相談して立てた作戦だ。
 「大丈夫だ。戦闘になったら紫音の安全確保を優先的にするから、大丈夫だろう」
 「そういう問題じゃないっ!!」
 机を叩き、イスを蹴飛ばしながら立ち上がった。
 「何も知らされずに囮やらされるなんて、私だったら怒るわよ!!」
 リトアの言う事も一理ある。何も知らされずに利用されるのは気分がいいものじゃない。しかし、紫音に 囮になってくれ。 と言っても断ってくるのが目に見えているから仕方なくこうしている。
 「まぁまぁリトアくん、落ち着いて」
 リュークがリトアの肩に手を置き、なだめようとしたが振り振り払われてしまった。
 「落ち着いていられないわよ! 私も準備するから」
 「リトア、お前自身もターゲットなんだぞ。そこを忘れてないよな?」
 俺の言葉を聞いた瞬間にピタリと動きを止めた。
 「もしお前が紫音のところへ行ったら、迷わずそっちの方を襲うと思うが違うか?」
 もしも俺が狙う側だったら、ベテラン2人を相手するよりもPMCに入って間もないヤツと行動している方を先に殺す。勝算があるからな。
 「それに紫音を秘密裏に護衛しているのは、ボク達が知っているベテランだから大丈夫だよ」
 「・・・・・・そうね。取り乱したりしてゴメンなさい」
 そう言うと自分が蹴飛ばしたイスを立て直して座った。
 「さてと、俺達は俺達で身を守るぞ」
 カーテンを閉めて倉庫から銃を取り出す。いつ襲われても対処出来るようにする為に。
 「ここが白凪孤児院」
  ぱっと見れば幼稚園とか保育園に見える。その門の向こう側で小さな子供達と一緒にラジオ体操している女の人が、僕に気づいて近づいて来る。
 「あの、こちら何か御用ですか?」
 「あ、そのぉ・・・・・・PMCの依頼でこちらに来ま、じゃなくて。参りました。大園 紫音です」
 ライセンスカードを見せながら説明すると、女の人は無表情から明るい笑顔になった。
 「お待ちしておりました! どうぞ中へ!」
 「あ、はい」
 建物の中へ通されると、大きなテーブルにたくさんのイスが置かれている場所に案内された。
 「私はここの孤児院を経営しております。園長の田端と申します。今回依頼をお受けしてくださって、本当にありがとうございます」
 「いえ、お気になさらないでください。それで僕は一体何をすればよろしいんでしょうか?」
 PMCの依頼内容には孤児院での仕事としか書かれてないので、正直言ってどうすればいいのかわからない。
 「子供達と遊んだり、園から出ていかないように注意して見て頂くだけで構いませんよ」
 「えっ!? 子供達と遊ぶのと、園から出ないように見るだけですか?」
 「はい、それだけの仕事です」
 それだけのお仕事だったら、楽でいいかもしれないけど。
 「あの、掃除とか子供達が着ている服の洗濯とかは、どうされるんですか?」
 園内に入ってから、この人以外誰とも会っていない。つまり現状ではこの人しか働いていないのがわかる。それに、さすがに1人でやるのは負担が大きすぎると思う。
 「孤児院内の掃除や洗濯などは、私を含めた子供達がやっているので大丈夫です」
 「そうなんですか?」
 「はい、子供達の自立出来るように指導をするのも、私達の役目ですから」
 確かに、両親がいる家庭では掃除、洗濯とかの家事は学校よりも親から教わる事がある。でも、ここのような孤児院の場合は、両親がいないから先生達が代わりに教えなきゃいけない。
 「それにほら、窓の外を見て下さい」
 田端さんの言われた通り窓の外を見てみると、10歳ぐらいの2人の男女が洗濯機の中へ洗濯物を入れていて、3人の子供が園内の掃除をしていた。
 そして、少し離れた場所で5〜6歳ぐらいの小さな子供達3人と4歳ぐらいの子供3人が一緒に遊んでいた。
 その光景を見ているとある事に気づいた。
 「・・・・・・もしかしてあの子達は、役割分担をしているんですか?」
 「ええその通り、あの子達は自分達で役割分担をしているんですよ」
 体力がある子供は洗濯物を担当と掃除して、6歳ぐらいの子は小さな子供のお世話をしているんだ。
 「あれ? ここまで子供達がしっかりしていれば、僕はいる必要がない気がします」
 「それがそうもいきませんよ。学校に行っている子供は、お勉強の復習と宿題をやらないといけませんから」
 田端さんの言う通り、将来性を考えるとお勉強は大切だと思う。
 「私が子供達とお勉強をしている間、4〜5歳の子供達のお世話をして頂けるだけで大丈夫です」
 「それなら任せて下さい」
 遊んであげるだけなら、僕でも出来そうだから。
 「もしかしてこれか、わっ!?」
 「し、紫音さん、どうされました!?」
 「だ、誰かが僕の尻尾を、ッ!?」
 後ろを振り向いた瞬間、驚きの余り言葉を失ってしまった。何故なら自分と同じライカンスロープの子供が、気持ちよさそうに尻尾に抱きついていたのだから。
 「おにぃちゃんのシッポ、きもちいい〜」
 髪の毛が白色、って事は黒狼族の僕とは違って白狼族との間に生まれた子っぽい。
 「こらシロ! 先生はこの人とお話をしているから、邪魔しちゃいけませんよ!」
 「ウゥ〜〜〜、はい」
 シロと呼ばれた子供は返事をすると、嫌々ながら離れてくれる。
 「僕と同じ、ライカンスロープですね」
 その子をよく見る為に膝をつくと、いきなりシロちゃんが抱き付きて来た。
 「おにぃちゃん、ボクとおなじぃ〜!」
 僕に会えた事が嬉しいのか、尻尾をブンブン振って喜んでいる。
 そういえば、ボクとおなじって。
 「もしかしてキミは、同じ種族の人と会うの初めてなのかい?」
 「うん! おにぃちゃんが、はじめてあう」
 やっぱりそうなんだ。僕自身も他種族とのハーフに余り会った事がないからなぁ。
 「あの、その子はちょっと困ったところがあるんです」
 「ちょっと困ったところ?」
 いい子そうに見えるんだけどなぁ〜。
「はい、引っ込み思案で人見知りなんです。里親の方と面談の時にだって、いつも私達の後ろに隠れてしまうんです。
 酷い時には逃げちゃうんです」
 「そうなの?」
 「うぅ〜・・・・・・ムゥ」
 シロちゃんはそう唸ると、僕の胸に顔を埋める。
 せっかく親になってくれそうな人が見つかりそうなのに、拒絶するのはよくないと思う。
 そう言いたいのだけれども、僕はこの施設の人じゃないから言える立場じゃない。それはともかくとして。
 「この後、勉強会をするのですか?」
 「え、ええ。そうです」
 「なら、この子を連れて外でお遊びますね」
 「そ、そうして下さると助かります」
 「行こう、シロちゃん」
 「うん!」
 シロちゃんと手を繋ぎ、部屋の外へ出て行く。田端園長はその後ろ姿を信じられないような顔で見つめていたのは、紫音は気づいていなかった。
 「行ってらっしゃい」
 「気をつけてね」
 「頑張って行ってらっしゃい」
 昨日のピリピリした感じが、嘘のように思えるぐらい二人は普通に接してくれる。
 それにしても天野さん達は、どうしてあんなにピリピリしていたんだろう? そう思いながら玄関で靴を履いて、立ち上がる。
 まぁ今日は昨日みたいに怖くないから、帰って来たら理由を聞いてみよう。
 そして玄関のドアを開き、孤児院へと向かうのであった。
 「アイツ、行ったな」
 天野さんは、窓ごしに紫音が孤児院へ向かっているのを確認する。
 「ねぇ、本当によかったの?」
 「何が?」
 「これの事よ」
 リトアは昨日車のボディーに張り付いていた物をテーブルの上へと置く。
 「いや、話さない方がいいだろう。TNT爆薬が貼り付けられていたと知ったら、アイツは恐がるだろう」
 そう、シオンが見つけたのはTNT爆薬だ。昨日、焼き肉の帰ろうとした時に紫音が気づいたという事は、俺達が焼き肉を楽しんでいる最中に誰かが仕掛けた可能性がある。
 何故紫音にその場で言わなかったのか? その理由は単純で、紫音がビビって動けなくなってしまうのを避ける為にあえて黙っていた。
 「でも!」
 「一応工藤に話を通して護衛を付けて貰ってるから、大丈夫だろう」
 この事は工藤に電話していて、工藤の話では俺達が例の3人組の標的になっている可能性があるらしい。だから、紫音の命を守る為に護衛を付けて貰ったのだ。名目上での話では。
 「だからって、あの子を囮にするのはよくないわ!」
 そう、リトアの言う通り、名目上では紫音を護衛する事になっているが、実際には紫音を囮にしてターゲットをおびき寄せる作戦が主な理由で、昨日工藤と相談して立てた作戦だ。
 「大丈夫だ。戦闘になったら紫音の安全確保を優先的にするから、大丈夫だろう」
 「そういう問題じゃないっ!!」
 机を叩き、イスを蹴飛ばしながら立ち上がった。
 「何も知らされずに囮やらされるなんて、私だったら怒るわよ!!」
 リトアの言う事も一理ある。何も知らされずに利用されるのは気分がいいものじゃない。しかし、紫音に 囮になってくれ。 と言っても断ってくるのが目に見えているから仕方なくこうしている。
 「まぁまぁリトアくん、落ち着いて」
 リュークがリトアの肩に手を置き、なだめようとしたが振り振り払われてしまった。
 「落ち着いていられないわよ! 私も準備するから」
 「リトア、お前自身もターゲットなんだぞ。そこを忘れてないよな?」
 俺の言葉を聞いた瞬間にピタリと動きを止めた。
 「もしお前が紫音のところへ行ったら、迷わずそっちの方を襲うと思うが違うか?」
 もしも俺が狙う側だったら、ベテラン2人を相手するよりもPMCに入って間もないヤツと行動している方を先に殺す。勝算があるからな。
 「それに紫音を秘密裏に護衛しているのは、ボク達が知っているベテランだから大丈夫だよ」
 「・・・・・・そうね。取り乱したりしてゴメンなさい」
 そう言うと自分が蹴飛ばしたイスを立て直して座った。
 「さてと、俺達は俺達で身を守るぞ」
 カーテンを閉めて倉庫から銃を取り出す。いつ襲われても対処出来るようにする為に。
 「ここが白凪孤児院」
  ぱっと見れば幼稚園とか保育園に見える。その門の向こう側で小さな子供達と一緒にラジオ体操している女の人が、僕に気づいて近づいて来る。
 「あの、こちら何か御用ですか?」
 「あ、そのぉ・・・・・・PMCの依頼でこちらに来ま、じゃなくて。参りました。大園 紫音です」
 ライセンスカードを見せながら説明すると、女の人は無表情から明るい笑顔になった。
 「お待ちしておりました! どうぞ中へ!」
 「あ、はい」
 建物の中へ通されると、大きなテーブルにたくさんのイスが置かれている場所に案内された。
 「私はここの孤児院を経営しております。園長の田端と申します。今回依頼をお受けしてくださって、本当にありがとうございます」
 「いえ、お気になさらないでください。それで僕は一体何をすればよろしいんでしょうか?」
 PMCの依頼内容には孤児院での仕事としか書かれてないので、正直言ってどうすればいいのかわからない。
 「子供達と遊んだり、園から出ていかないように注意して見て頂くだけで構いませんよ」
 「えっ!? 子供達と遊ぶのと、園から出ないように見るだけですか?」
 「はい、それだけの仕事です」
 それだけのお仕事だったら、楽でいいかもしれないけど。
 「あの、掃除とか子供達が着ている服の洗濯とかは、どうされるんですか?」
 園内に入ってから、この人以外誰とも会っていない。つまり現状ではこの人しか働いていないのがわかる。それに、さすがに1人でやるのは負担が大きすぎると思う。
 「孤児院内の掃除や洗濯などは、私を含めた子供達がやっているので大丈夫です」
 「そうなんですか?」
 「はい、子供達の自立出来るように指導をするのも、私達の役目ですから」
 確かに、両親がいる家庭では掃除、洗濯とかの家事は学校よりも親から教わる事がある。でも、ここのような孤児院の場合は、両親がいないから先生達が代わりに教えなきゃいけない。
 「それにほら、窓の外を見て下さい」
 田端さんの言われた通り窓の外を見てみると、10歳ぐらいの2人の男女が洗濯機の中へ洗濯物を入れていて、3人の子供が園内の掃除をしていた。
 そして、少し離れた場所で5〜6歳ぐらいの小さな子供達3人と4歳ぐらいの子供3人が一緒に遊んでいた。
 その光景を見ているとある事に気づいた。
 「・・・・・・もしかしてあの子達は、役割分担をしているんですか?」
 「ええその通り、あの子達は自分達で役割分担をしているんですよ」
 体力がある子供は洗濯物を担当と掃除して、6歳ぐらいの子は小さな子供のお世話をしているんだ。
 「あれ? ここまで子供達がしっかりしていれば、僕はいる必要がない気がします」
 「それがそうもいきませんよ。学校に行っている子供は、お勉強の復習と宿題をやらないといけませんから」
 田端さんの言う通り、将来性を考えるとお勉強は大切だと思う。
 「私が子供達とお勉強をしている間、4〜5歳の子供達のお世話をして頂けるだけで大丈夫です」
 「それなら任せて下さい」
 遊んであげるだけなら、僕でも出来そうだから。
 「もしかしてこれか、わっ!?」
 「し、紫音さん、どうされました!?」
 「だ、誰かが僕の尻尾を、ッ!?」
 後ろを振り向いた瞬間、驚きの余り言葉を失ってしまった。何故なら自分と同じライカンスロープの子供が、気持ちよさそうに尻尾に抱きついていたのだから。
 「おにぃちゃんのシッポ、きもちいい〜」
 髪の毛が白色、って事は黒狼族の僕とは違って白狼族との間に生まれた子っぽい。
 「こらシロ! 先生はこの人とお話をしているから、邪魔しちゃいけませんよ!」
 「ウゥ〜〜〜、はい」
 シロと呼ばれた子供は返事をすると、嫌々ながら離れてくれる。
 「僕と同じ、ライカンスロープですね」
 その子をよく見る為に膝をつくと、いきなりシロちゃんが抱き付きて来た。
 「おにぃちゃん、ボクとおなじぃ〜!」
 僕に会えた事が嬉しいのか、尻尾をブンブン振って喜んでいる。
 そういえば、ボクとおなじって。
 「もしかしてキミは、同じ種族の人と会うの初めてなのかい?」
 「うん! おにぃちゃんが、はじめてあう」
 やっぱりそうなんだ。僕自身も他種族とのハーフに余り会った事がないからなぁ。
 「あの、その子はちょっと困ったところがあるんです」
 「ちょっと困ったところ?」
 いい子そうに見えるんだけどなぁ〜。
「はい、引っ込み思案で人見知りなんです。里親の方と面談の時にだって、いつも私達の後ろに隠れてしまうんです。
 酷い時には逃げちゃうんです」
 「そうなの?」
 「うぅ〜・・・・・・ムゥ」
 シロちゃんはそう唸ると、僕の胸に顔を埋める。
 せっかく親になってくれそうな人が見つかりそうなのに、拒絶するのはよくないと思う。
 そう言いたいのだけれども、僕はこの施設の人じゃないから言える立場じゃない。それはともかくとして。
 「この後、勉強会をするのですか?」
 「え、ええ。そうです」
 「なら、この子を連れて外でお遊びますね」
 「そ、そうして下さると助かります」
 「行こう、シロちゃん」
 「うん!」
 シロちゃんと手を繋ぎ、部屋の外へ出て行く。田端園長はその後ろ姿を信じられないような顔で見つめていたのは、紫音は気づいていなかった。
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