東京PMC’s

青空鰹

紫音の弱点

 リュークさんが運転する車は港から出た後に、羽田空港に向かう道路の上を走り出す。


 「フ〜ン、フンフンフ〜ン・・・・・・」


 しかもリュークさんは機嫌を直したのか鼻歌交じりで運転をしているので、どうして機嫌が良いんだろう? と思ってしまう。


 「・・・・・・お前、なんか良い事でもあったのか?」


 「うん! さっき欲しい素材が手に入ったから欲しかった装備がやっと作れるっ!!」


 素材が手に入った? 装備がやっと作れる? リュークさんは何の事を言ってるんだろう?


 「またゲームをやってたのか・・・・・・」


 「そうだよ。キミが煙草を吸ってストレス解消する様に、僕もゲームをやってストレスを解消させてるんだよ」


 そういえば僕達が車から出る時にゲームをやってたね。すっかり忘れていたよ。


 「そうか、俺の方は煙草が吸えないからストレス溜まりっぱなしなんだがな」


 天野さんはそう言うと、不貞腐れた顔をしながら横を向いてしまった。本当に煙草を吸えないせいで、ストレスが溜まっているんだと思う。


 「もうすぐ空港に着くから、それまで我慢して」


 「リトア、俺はお子様じゃないんだ。我慢の一つや二つ出来るって」


 「そう、じゃあ何で煙草の箱を持ってるのかしらねぇ〜?」


 えっ!? もしかして煙草の箱を手にしていたの? 助手席の後ろの席に座っていたから気がつかなかった。


 そんな事を思っていたら、天野さんの方から チッ!? と言う様な小さな舌打ちが聞こえた。この様子だと、こっそりと煙草に火を点けようとしていたのかもしれない。


 「・・・・・・ん〜、まぁあれだ。着いたらすぐに降りて煙草を吸いに行こうと思っていたから、その為の準備にこうやって持っていたんだよ」


 「嘘おっしゃい! ズボンのポケットからライターを取り出そうしていたのが見えていたわよっ!!」


 「それもまぁ〜・・・・・・その時の準備だから、お前達が気にする必要はないぞ」


 うん、天野さんは絶対に煙草を吸おうとしていたよね。


 「どうだか、アンタはよく嘘を吐くし、指摘されたら あぁ〜・・・・・・そうだったけ? とか言ってシラを切るし・・・・・・ちょっと聞いてるの?」


 「あぁ〜・・・・・・前の事はさっぱり忘れてるからなぁ〜、覚えてねぇ」


 天野さんはそう言いつつ、少しこっち側に座席シートを倒して来たので思わずビックリしてしまった。


 「またそう言う。そんなんだから・・・・・・」


 天野さんってもしかして、平気で嘘を吐くひとなのかなぁ? 何だかこのチームでやっていけるのか不安になって来た。


 「ほら二人共。羽田空港が見えて来たからもうすぐ着くよ。
 だから言い争いは終わりにして、降りる準備をしてくれないかなぁ?」


 リュークさんがそう言うと、2人は言い争いを止めてちゃんと座る。少し倒していた座席シート倒していた天野さんだけど、元の位置に戻してくれた。


 「とりあえずまぁ、まずは煙草を吸った後に本部に向かうぞ。その後ショップの方に行って弾薬を買いに行くか」


 「そうね。そうしましょうか」


 リトアさんはどこか納得が出来ない様な顔をしながら横を向いて窓の外を眺めているけど、僕の尻尾を片手で掴んでいた。


 「あのぉ〜・・・・・・リトアさん」


 「ん、何かしら?」


 「その、尻尾を掴んでいる手を離して頂けませんか?」


 「え、イヤよ。離さないわ」


 「え、ちょっとそれは・・・・・・」


 「だってモフモフしてて触り心地良いからぁ〜! でも、もうちょっと気を使った方が良いんじゃないかしら? ここら辺とか毛が絡まってそうだし〜」


 リトアさんはそう言いながらポケットからくしを取り出すと、尻尾の毛を解かしていく。


 「ほら、たった2回でもうこんなに毛が取れた。ちゃんと手入れをしての?」


 「ちゃんと手入れはしていますよ。でも、あんまりやり過ぎると毛が抜け過ぎて地肌が見えちゃう様になっちゃうんで、ほどほどにしていますよ」


 それにちゃんと獣人用のシャンプーを使ってるから、そんなに毛が絡まっていない筈・・・・・・多分。


 「そう? 私的から見れば、もう少しやっておいた方が良いと思うんだけどなぁ〜?」


 そう言いながら、手馴れた手つきで尻尾を解かしては櫛に着いた抜け毛を取ってを繰り返していく内に、段々と気持ち良くなって来たので何だか眠たくなって来た。


 「おいシオン! もう着くんだから寝ようとするなっ!?」


 「ファッ!?」


 い、いけないっ!? 尻尾のお手入れが気持ちよ過ぎて、寝ちゃうところだった!! 自分でやってる時はこんな風にならなかったのに・・・・・・何で?


 「フフッ! 魔物のお世話もした事があるから、これぐらいの事は出来るわよ」


 「へぇ〜、そうなんですかぁ〜・・・・・・ってあれ?」


 僕、リトアさんに どうして、わかったの? って聞いてないのに、何で聞きたい事がわかったんだろう?


 「どうしてそんなに上手いんですか? って聞きたそうな顔をしていたから」


 「そ、そうですかぁ〜・・・・・・」


 お父さんから、 お前は嘘を吐くのは出来るけど、表情に出るからわかりやすいからなぁ〜。誰かを騙したりするのが絶対に出来ないだろうな。 って言われていたなぁ〜。


 「はい、これ」


 「え?」


 リトアさんはそう言いながら、櫛に着いた抜け毛をまとめて玉にしたのを僕の手に渡して来た。


 「ゴミ処理の方は自分でやって頂戴ね」


 「あ、はい」


 僕はそう返事をすると毛玉を持っていたビニール袋の中に入れてから口を縛り、そのままポケットの中へ入れる。
 こうやっておけばポケットの中が毛だらけにならないし、何よりもすぐにゴミ箱に捨てられるので便利。


 「ほら、着いたよ。降りて」


 そうこうやっている合間に羽田空港に着いたみたいで、前の座席に顔を向けるとリュークさんがこっちを振り向いて見ていた。
 なので車から降りてから、背伸びをして固まった関節を解した。


 「じゃあ僕はこの車を駐車場に止めに行くから、アマノくん達は先にPMC協会の方に行ってて」


 「ああ、PMC協会本部で合流だな。わかった」


 リュークさんは天野さんの返事を聞くと駐車場に向かう為に車を発進させた。


 「ン〜〜〜〜・・・・・・さて、煙草を吸いに喫煙所に行くか」


 「えっ!?」


 リュークさんとPMC協会本部で落ち合う約束をしたのに、その前に煙草を吸いに行くって、この人はぁっ!!


 「ん? どうしたシオン、不満そうな顔をして? 何か俺に言いたい事があるのか?」


 「・・・・・・PMC協会に向かわなくて良いんですか?」


 「ん? ああ」


 天野さんはそう言うと、ダルそうな顔をしながら話し出した。


 「別に少しぐらい遅れたって怒りはしないって、アイツは温厚な性格だからな」


 ・・・・・・いや、天野さん。アナタはさっきリュークさんを怒らせていましたよね? もしかして忘れているの?


 「それにたった一本を吸うだけだから、時間が掛からないから安心しろ」


 そう言うと天野さんはそう言うと、勝手に歩き出したので慌てて後を追う。


 「まったく、ホントに勝手な男何だからぁ〜・・・・・・リュークがまた怒ってたらアナタのせいだからね?」


 リトアさんは呆れた顔をしながらそう言うのに対して、天野さんは先ほど表情を変えず話し出す。


 「ああ〜、まぁ何とかなるだろう」


 「もう知らない。私達は先にPMC本部に行ってるからね」


 「ああどうぞ」


 天野さんは お勝手にどうぞ。 と言いたそうな感じで、人混みに消えて行ってしまった。


 「1人にさせて大丈夫なんですか?」


 「アマノは子供じゃないんだから、ちゃんと本部の方に来てくれるわよ。それに何度もここに来てるから通路ぐらい把握しているわ」


 「そ、そうですかぁ・・・・・・」


 「まぁ見た目があんな感じだから不安になるのもわかるけど、何だかんだしっかりしているから心配しなくても大丈夫。だから心配しなくて良いわ」


 「は、はい。わかりました」


 不安を抱えつつ、リトアさんと共にPMC協会に向かって歩き出した。

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