クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第24話
 『クソッ!? クソッ!? どうしてだっ? どうしてこんなに上手くいかないんだっ!?』
 ボスがそう言うと、ガシャァアアアアアアンッ!!? となにかが壊れる様な音がする。恐らくティーカップかなにかを投げつけて壊したんだと思う。
 「これは一体どういう事なんだ?」
 「どういう事もなにも、私が闇ギルドの本部に乗り込んで盗聴器を仕掛けて来たんですよ」
 「「「「「「仕掛けて来たぁ!?」」」」」」
 「あ、因みに隠しカメラも仕掛けようとしたんですが、隠せる場所がなかったので外回りしか仕掛けてません。中の方にも仕掛けたかったんですが、良い場所がなかったんですよねぇ〜」
 俺がそう言うと、美羽さんと伊織ちゃんに肩を掴まれてしまった。
 「いつから盗聴をやっていたの?」
 「え? えぇ〜っとぉ・・・・・・支部を襲撃した時に、逃した支部のマスターを追跡していたんです。そしたら、予想通り本拠地に行ったのでその次の深夜に忍び込んで仕掛けて来たんです」
 手こずるだろうなぁ。っと思っていたけど、案外そうでもなかった。何故なら外の警備はしっかりしていたが、屋敷の中に入った途端に警備の人が全くいなかった。
 「・・・・・・それで、私達に教えなかった理由は?」
 「話すタイミングがなかっただけだったから、そんな目くじらを立てないで欲しいです」
 後、なんで胸を揉んでいるのかなぁ? 大輝くんがガン見しているから止めて欲しいんだけど。
 「ま、まぁとにかく! エルライナさんは相手の行動を、これを使って把握していたって事でいいんだよね?」
 「その通りですよ。ユウゼンさん。それと伊織ちゃん、そろそろ止めて」
 「ん・・・・・・分かった」
 伊織ちゃんはそう言うと、胸から手を離してくれた。
 「しかし、どうしてエルライナ殿はその時に本拠地を攻めなかったのだ?」
 「っと、言いますと?」
 「せっかく敵の本拠地に乗り込んだのに、トウチョウキ? という物を仕掛けただけで帰ってしまって良いのか? ワシだったら、壊滅させているぞ」
 「トウガさん、考えが甘いですよ」
 ドーナツの上に更にホイップクリームを乗せるぐらい考えが甘い。
 「どういう事じゃ?」
 「恐らく向こうには、闇ギルドの責任者の裏になにか大物が就ています。なのでその大物を表舞台に引き出す為に、ねちっこいやり方をしているんです」
 「大物? もしかしてその大物が闇ギルドに対して、エルライナを殺す様に仕向けているって言いたいの?」
 「その通りですよオウカさん。現にその人と責任者・・・・・・周りからボスと呼ばれていますね。その二人がこの間接触をして話し合っていましたよ」
 俺の言葉を受けたみんなは、驚愕の顔をしていた。
 「それは本当ですかぁ?」
 「うん、本当だよ大輝くん。少し話し合った後に帰って行ったみたい」
 だから離れてちょうだい。嫉妬の目を向けている子達がいるからさ。
 「でも、帰っちゃったって事は、もうそこにはいないのよね?」
 「ええ、話の内容を聞く限りでは、その人は研究をしているみたいで何処かに研究所を持っているみたいです」
 無論、仕事に失敗した人を役立たず呼ばわりして、研究所へ持ち帰ったのは話せないがな。
 「とにかくその人がまたボスに接触する可能性があるので、その時を狙おうと考えています」
 「具体的にはなにをする気なの?」
 「取り押さえて話を聞く」
 それがベストの選択だと俺は考えている。
 「そうですかぁ・・・・・・でも、その人を捕まえたら一体なにを聞く気なんですか?」
 「「「「「「ああ〜・・・・・・」」」」」」
 大輝くんの言葉に、俺達は呆れてしまう。
 「大輝・・・・・・なんでこんな事をするのか気にならないの?」
 「それは気になるさ」
 「その人を取り押さえれば、他の犯罪者集団に辿り着く可能性があるじゃない。もしくはその人が黒幕かもしれないけど」
 「それはそうかもしれないけどぉ〜」
 やはり美羽さん達に敵わないのか、身体を縮こまらせてしまった。
 「少なくとも、私達はその人が魔人と関わっているんじゃないか。って考えているわ」
 「えっ!? 本当ですか?」
 「本当もなにも、エルライナの命を狙う人達と考えたら、魔人しか考えられないじゃないっ!!」
 「ホント・・・・・・大輝はバカ」
 伊織ちゃんの言葉が胸を突き刺したのか、大輝くんはその場にへえたり込んでしまった。
 「まぁとにかく。今後なにか情報が来たら、みんなに・・・・・・ん?」
 スピーカーから流れる話し声に、気になる内容が耳に届いたので途中で黙った。
 『こうなったら腕利きの暗殺者を雇うしかないな。ヤツに頼めるか?』
 『は、はい。連絡をすればすぐに駆けつけてくれるはずです!』
 『よ、良し! 今日の夜に屋敷にくる様に言っておくんだ。いいか、有り金全て叩いてでも雇うぞ! そうじゃなきゃこのギルドは終わりだぁ!』
 『『はい!』』
 そこからはドタドタと慌ただしい足音がスピーカーから聴こえて来た。
 「向こうの人達も慌てているみたいだね」
 「それよりもどうするの? 暗殺者を送ってくる気満々なんだよ!」
 「それなら迎え撃てば良い話じゃないの?」
 「迎え撃つってどうやるつもりなのよ?」
 イヤイヤイヤイヤ、ボス達の話を聞いておいてそれはないよね?
 「簡単な話ですよ。やり方は・・・・・・」
 オウカさん達に一通り話した後、行動に移した。そして夜、ボスと暗殺者が屋敷の中、向かい合って話し合う。
 「・・・・・・と言うわけだ。始末してくれるか?」
 「その女を始末するのは、少し高くつくぜ」
 「それを承知でお前に来て貰ったんだ」
 「ほう、なるほど。お前がそう言うって事は、ここの闇ギルドが潰れかかっているって噂も強ち間違いじゃなさそうだな」
 ボスはその言葉が癇に障ったのかギリッと歯軋りをしたが、ここで問題を起こしてはいけないと思っているのか、話を進める。
 「それで、お前にいくら払えば良いんだ?」
 「金貨五百枚」
 「きっ、金貨五百枚!!? そんなに払えるかぁ!?」
 ボスの言葉に暗殺者はおかしいと思ったのか。首を捻った。
 「おかしいなぁ。以前のお前なら、それぐらいの金をポンと出していただろう」
 「今は事情が違う! 金貨二百八十枚なら手を打てる!」
 「・・・・・・金貨四百枚」
 「無理だ! とても払える金額じゃないっ!!」
 「・・・・・・・・・・・・そうか。他のヤツに頼むんだな」
 そう言って立ち去ろうとしたところを、ボスは慌てて前に出て止める。
 「分かった分かった! 金貨三百四十枚で手を打とう! これ以上は出せない!!」
 「・・・・・・良し分かった。金はいつもの様に先払いだから、さっさと渡してくれ」
 「分かった」
 ボスはそう言うと、あらかじめ用意したと思われる金貨を懐から取り出して暗殺者に渡していくが、その顔は悔しそうである。
 「・・・・・・ちゃんと金貨三百四十枚あるな。契約通りエルライナを始末してくる」
 「ああ、必ずあの女を始末してくれ」
 その言葉を聞いた後、暗殺者は屋敷を出て街中を歩いて行く。しかし、ここで想定外の事態が起こってしまう。
 「やぁ。待ってたよ」
 「ッ!?」
 なんと十字路の陰からターゲットが現れたのだ。これは絶好のチャンスと普通は思うが、暗殺者は違っていた。どうしてここにいるんだ? と。
 「私を暗殺する依頼を受けたみたいだね。どうする? 私と殺り合う? それとも諦める?」
 「ッ!? ッ!?」
 二重の意味で驚いた。なんと彼女は自分が暗殺を請け負った事を知っているし、なによりも自分がここを通る事を知っていたかの様な口調ないのだから。
 しかし、このまま引き下がるのは暗殺者の恥。腰に隠した暗器を手に取ろうとしたところを、パァンッ!? と言った音が聴こえたと同時に膝が地面に着いた。
 「・・・・・・えっ?」
 暗殺者が自分の右膝を見ると、なんと血が流れていたのだ!
 「なぁっ!?」
 暗殺者は苦悶の表情を浮かべ、自分の右膝を押さえていると、ターゲットであるエルライナが近づいて来た。
 「まだ続けるかい?」
 その言葉に暗殺者は今更ながら悟った。この女には金貨五百枚積んでも、割りに合わない仕事だったと。
 「・・・・・・もう、無理だ」
 「そう、だったらそのまま寝そべって、両手を頭の後で組んでちょうだい」
 暗殺者は観念したのか、エルライナの言う通りにしたのであった。
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