クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第44話
 男子二人は顔を殴られたのかアザが出来ている。更に言えば片方は鼻から血を流していて、もう片方は左側の目元を腫れさせている。
 女子の二人の方は顔には目立った傷はないものの、腕とか足に傷が出来ていて服がボロボロになっている。
 「四人共、その姿はどうしたの?」
 俺がそう聞くが全員顔を伏せてしまった。
 話すのが恥ずかしいとか言う感情ではなく、憤りとか悔しいとか言った感情なんだろうな。
 「・・・・・・まぁいいや。とにかくその状態じゃマズイから、治療をしましょう。ギルド職員さん、医療室は空いてますか?」
 「はい、案内を致しますが皆様はご自身で歩けますか?」
 「・・・・・・はい」
 「痛いですが、歩けます」
 「無理と感じたら、迷わずに我々に頼ってくださいね」
 ギルド職員の先導の元、治療室へと向かい四人の治療をする。もちろんネネちゃんや医療担当のギルド職員達と共に彼らの治療をしていくと、俺が担当している女の子からすすり泣く声が聴こえて来た。
 「痛いの?」
 「グスッ・・・・・・違います」
 「なら、なんで泣いているの?」
 「悲しくて泣いているんです」
 「悲しい? 悔しいんじゃなくて?」
 俺がそう言うと、黙り込んでしまった。
 「私はアナタ達がどうしてそうなったのか聞きたいんだけど、話してくれるかな? 嫌だったら聞かないけど」
 「・・・・・・実はさっき、クラスメイトにやられたんです」
 そうだろうと思った。と言いたいところをグッと堪えて彼女の話に耳を傾ける。
 「魔人が王都に潜伏していて見事に倒す事が出来た者には褒美を与える。と王様が話た直後、猪瀬さんのグループと岡野さんのグループがそれぞれ探しだし始めたんです」
 「グループって、彼らは共に協力し合って見つけようとしなかったの?」
 「はい。本来でしたらそうするべきなのですが、何故か競い合う様にして魔人を探し始めたんです」
 う〜ん。どうなっているんだ? 確か二人はお互いに敵対しない様にしていたはずなのに。
 「・・・・・・もしかしてその二つのグループは、王様が発言していたご褒美を貰う為に探しているのですか?」
 「はい、その通りです。現にその2グループが競い合いながら王都中を駆け回っています」
 「うわぁ〜、目の前にニンジンをぶら下げた馬みたいな感じで浅はかですねぇ〜」
 「ホント、ネネちゃんの言う通りかもね」
 しかし一つ疑問に思える事がある。いくらあの猪瀬でも競う様な事はしないだろう。むしろ協力して見つけ出そうと岡野に提案するはずだ。なにかあったとしか考えられない。
 「あの、岡野と猪瀬でしたっけ? 私が見た時は対立している感じがしなかったけど、なにかあったの?」
 「はい、実は猪瀬が岡野に対して協力して魔人を見つけ出す事を提案したのですがぁ・・・・・・」
 「岡野のヤツが聞いて呆れるぐらいの不条理な条件を出したんだ」
 「不条理な条件?」
 「はい、リーダーは自分で指示に従う事。情報提供をする事。そして王様の褒美は自分の物」
 指示と情報提供は分かるが、手柄の独り占めは反感を買うと目に見えているだろう。岡野は馬鹿なのか? いや、馬鹿だからそんな事を言えるんだよな!
 「それでそこから話し合いが行われたんだけど、どちらも一歩も譲らず平行線でお互いに勝手にやると言う結論になったんです」
 「で、自然と競争って事になったんだね」
 「はい、エルライナさんのご想像通りです」
 王様が言い出した事とは言え、こうなるとは思っても見なかったんだろう。っと、今気づいたんだが話が逸れているな。
 「結局、どうしてアナタ達は傷だらけになっているの? どっち派の子にやられたの?」
 「・・・・・・両方です」
 「「「「ハァ?」」」」
 俺とネネちゃん、それに治療していたギルド職員さん二人が 意味が分からない。と言いたそうな顔をさせた。
 「実は俺達、こういう状況でもどっちつかずの状態でやっているんですよ」
 「猪瀬派につけば彼女の命令は絶対に聞かなきゃいけなくて、出来ないとどんな嫌な事をされるか分からない。逆に岡野派につけば岡野と連んでいる連中が上から目線で命令するし、暴力さえも平気で行われる」
 「うわぁ〜・・・・・・」
 「政治よりも厄介そうだねぇ」
 俺とネネちゃんはその話に対してドン引きしてしまった。
 「はい。だから我々は我々で活動していたのですが、猪瀬さんが私達の元へ来て色々言った後に顔を叩かれたんです」
 思い通りにならないと暴力を振るう、アイツの悪い癖が出ているな。
 「その後にやって来た岡野が進展がない状態の気晴らしなのか、私達に暴力を振るって来たのです」
 「最低ですね」
 「勇者の風上にも置けない」
 下らない理由で仲間にこんな事をするなんて、ヒドいってレベルの話じゃないぞ。
 「もはやクズの集団だね。ねぇ、キミ達にとって彼らは仲間なの?」
 「・・・・・・仲間だと思っています」
 俯きながらそう言うので、その表情にちょっとイラッとした。
 「私だったらそうは思わないし、今の現状を見る限りそうとは思えない。その仲間を見捨てた方が身の為だと私は思っている」
 「でも、あの時に異世界召喚で共にやって来たクラスメイトで、一緒に世界を救おうと頑張るって言いました」
 「その考えは間違っているよ」
 「え?」
 キョトンとしている女の子に対して俺は見下ろしながら話し始めた。
 「仲間に腹いせで暴力を振るう? いいや、むしろ仲間なら故意に傷つけたりはしないし使いっ走りなんて以ての外だよ。
 さっきの一言で分かったんだけど、キミ達は彼らをクラスメイトって言ったよね? 正確には元クラスメイトじゃないの?」
 「どうして、元クラスメイトと言うんですか?」
 「この世界にキミ達が通っていた学校はあるんですか? 今も学校に通っているのですか?」
 「それはぁ・・・・・・ないです」
 「それに、キミ達はずっとこのままで良いの? 良くないでしょ? 説得しても聞いて貰えないし、暴力を振るってくるのなら見捨てるしかないでしょ?」
 「そんな事出来ないですっ!!」
 「でしょうね。だってアナタ達は仲間を見捨てられないと言う優しさではなく、仲間を見捨てたら自分達がどうなってしまうんだろう。って恐れているのだもの」
 「お、恐れている? 俺達が?」
 疑問に思っている男子の側までやってくると、目の前まで顔を近づけた。
 「そう、アナタ達は恐れている。彼らと決別したら自分達がどうなってしまうんだろう? 彼らから報復されないか? 自分達でやっていけるのか? とね」
 俺はそこまで言うと離れてイスに座った。
 「やっていけるかどうかはアナタ達自身の実力次第だから分からないけど、この先あの馬鹿二人と付き合っていたらアナタ達の立場が悪くなるどころか、本来発揮出来る実力が出ないまま終わりそうだよ」
 「本来発揮出来る力?」
 「うん、本来発揮出来る力。まぁ今のキミ達じゃ感じ取る事も出来ないだろうけどね」
 「私達、彼らと離れれば強くなれるのですか?」
 「それだけじゃ無理」
 「ええっ!? 離れた方が実力が発揮されるって言ってたじゃないですかぁ!?」
 「それは本当の事なんだけれども、あくまでも切っ掛けの一つでその後はアナタ達の意識次第ってところだからなんとも言えない」
 そう、いつだって人は意識次第で強くもなるし弱くもなる。俺はその為の切っ掛けを作っているだけなのだから。
 「まぁ私の言う事を鵜呑みにしなくても良いよ。あくまでも私の提案だからね。キミ達自身でこれからの事をどうして行くのか、魔人を探すよりもその事について良く話し合いをした方が良いよ。行こうネネちゃん」
 「は、はい。お姉様!」
 俺は戸惑いお互いの顔を見つめ合っている元同級生を尻目に、治療室から出て行くのであった。
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