クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第38話

 勇者達と一波乱あった翌日の朝。いつでも戦える様に愛銃の IWI ACE32 を背負い、ホルスターにはJERICHO941 PSL を入れている。


 「ネネちゃん、準備の方は出来た?」


 「はい、お姉様! バッチリですよ!」


 「それじゃあ、お出かけをしようか」


 「ハイッ!」


 ネネちゃんと共に部屋を出て、カウンターへと向かう。


 「おはようございます。マルコさん」


 「おはようございますっ!!」


 「お二人共、おはようございやす! よく眠れやしたか?」


 「はい、バッチリです!」


 まぁ外で見張っている人達が少し気になったけどね。


 「それはそうと、お二人にちょいと聞いて貰いたい話があるんすけど、ちょっと耳を貸してくださいやせ」


 「あ、はい」


 「内緒話しですねぇ〜」


 ネネちゃんと共に片耳をマルコさんに近づけると、俺達に聞こえるぐらいの大きさで話しかけてくる。


 「勇者達を見張っていた者達から来た情報なんですけど、勇者達が魔人探しを始めたそうでやんすよ」


 魔人探しを始めた。一体どういう風の吹き回しなんだ?


 「なんでも国王が勇者達に向かって、 魔人を倒せた者には最上級のお礼をする。 と言ったそうでやんす。それで、勇者達の大半がやる気になったそうでやして・・・・・・」


 みんな競い合う様な形で探し始めたって事かぁ。


 「なんか、御褒美に吊られた子供みたいですね」


 「彼らの実力じゃ〜・・・・・・まさか?」


 「エルライナ様がご想像している通りだと思いやす」


 上手く口車に乗せて、やる気にさせたんだな。しかもタチが悪いのが、勇者達の実力が分かり切っているから、魔人と勇敢に戦って亡くなったって筋書きにしたいんだろうな。
しかし、俺自身はそんなのどうだって良いと思っている。


 「まぁそう言わなくても、勇者達は探さざる得ない状況なんだけね」


 「どういう事ですか?」


 片耳を向けている状態から身体を戻して、マルコさん達に説明を始める。


 「勇者達どころか兵士を含めて魔人がいるって事が知れ渡っているから、探さなきゃダメに決まっているでしょ」


 「あ、確かに。魔人がいるのに探しに行かない勇者なんて、勇者じゃないですよね」


 ネネちゃんもそう思うか。


 「あ、それはそうと。私と共にレーベラント大陸にくる子の事なんですけど、私がいない間に来ました?」


 「ああ、来やしたよ。それで今は家の荷物を売ったりして整理をしているみたいで、こっちの宿にくるのはもう少し先みたいでやんす」


 「ああ、そうなんですか」


 「宿の部屋もあの子用に空けているので、心配いらないでやんすよ」


 ああ、それはそれで安心出来る。


 「それじゃあ、私は情報収集の為に外へ行って来ますね」


 「行ってらっしゃい。気をつけてくださいやせぇ!」


 鍵をカウンターに置いてから、宿を後にしたのであった。


 「さて、闇雲に探しても意味がないから先ずは総合ギルドの方へ行って、なにか情報を掴んでいないか聞いてみようか」


 「はい、お姉様!」


 ネネちゃんと共に総合ギルドへ向かっている途中、見覚えがある女性を見かけたのでネネちゃんのてを引っ張って物影に隠れた。


 「どうしたのですか、お姉様?」


 「ネネちゃん、あそこに勇者がいる」


 「ええっ!?」


 ネネちゃんは驚きつつ、物影から顔をヒョッコリと顔を出して確認する。


 「あ、本当ですね! しかも集まっていますね! その中心にいるのが、昨日突っかかって来た猪瀬って子ですね!」


 そう、猪瀬が自分の支持者と思わしきクラスメイトに向かって、なにか演説をしている。


 「なにを話しているのでしょうね?」


 「多分、 みんなで協力して魔人を探し出そう。 って話しているんじゃないかな?」


 しかし、妙なのは猪瀬の支持者達だ。なぜかって? 真面目に話を聞いているヤツもいれば、猪瀬の話を聞いいないのか身体をフラフラさせているヤツもいる。もっとヒドいのはお喋りを始めて真面目に聞いていないヤツもいる。


 「もしかして、渋々彼女に協力している人がいるのかな?」


 「そんな感じがしますね」


 しばらく見ていると解散するが、やはりこれも動きがまばらで走っている者もいれば、歩いている者がいるし、仲がいいグループがかたまって探しに行く者もいてホントに様々だ。


 「一部の人間が真面目に探す気がないのが、丸見えなんだけど」


 「そうですね」


 「総合ギルドに行こうか」


 「はい!」


 物影から出て来て総合ギルドへと向かった。


 「さて、総合ギルドがなにか情報を掴んでくれていれば助かるんだけど」


 「ダメだったらどうするんですかぁ?」


 「根気よく聞いて回るしかないか、もしくは誰かが情報を掴むまで待つかしかないよ」


 一刻も早く見つけたいので、後者は選択したくない。しかし聞いて回ると目立つから考えものだな。


 そう思いながら総合ギルドへと入って行くと、嫌なヤツが目に飛び込んで来た。


 「ですから、アナタ達に聞いているんです! 魔人の情報はなにかないのでしょうか?」


 「すみませんが我々は情報を掴んでいたとしても、アナタに話せません!」


 「なぜですか? 私達は勇者ですよ!」


 「総合ギルドの規則で、部外者に対して情報の提示をしてはいけない。と決まっているんです! これでもう五回目の説明ですよ! 分かってます?」


 どうやら猪瀬はしつこくギルド職員に聞いていたみたいだ。


 やれやれ、コイツにクールに受け答えをするって選択はないのかよ。


 「あのさ、ギルド職員が規則の方を優先するのは当たり前だと思うよ。なにせ総合ギルドにとってアナタは部外者なのですからね」


 「アナタはっ!?」


 「ああ、エルライナさん!」


 「昨日ぶりですね。猪瀬さん。後を取られたのがその魔人でしたら、アナタはもう死んでいますよ」


 わざと嫌みったらしく言うと、それが勘に触ったのか眉を釣り上げた。


 「アナタはなぜここに来たのですか?」


 「私は総合ギルドに登録している人間なのですから、ここにくるのは当たり前でしょう? そうしないと仕事も出来ませんしね。
 ところでアナタ自身は、どうしてここにいらっしゃるのですか?」


 まぁ話を聞いていたから知っているんだけどね。聞かないと嫌みにならないじゃん。


 「総合ギルドが魔人の情報を掴んでいないか、聞きに来たんです。しかし、私の目の前にいるトンチンカンが話してくれないのですよっ!!」


 そう言って職員を指をさして言うので、俺は呆れた顔になってしまった。


 「さっきも言ったけど、総合ギルドにとってアナタはただの部外者なので話せないのですよ。私でしたら話せますよね?」


 「はい、エルライナ様でしたら可能です。現にギルド長がアナタが来たら呼ぶ様に言われております」


 俺を呼ぶって事は、なにか情報を掴んだっぽいな。


 「ちょっとぉ! なんでこの女に話せて、私はダメなのよっ!!」


 「アナタの頭大丈夫ですかぁ? 昨日から見ていて思っていたのですが、アナタは見かけに依らず思考が子供っぽいですね」


 ネネちゃんの言葉に反応して睨らんだ。


 「そうやっていちいち怒っているところが、子供っぽいって言われる要因じゃないんですかぁ?」


 「クッ!? この女からアイツと同じ感じがして、ムカつくわ」


 彼女の言うアイツって俺の事だろうなぁ。つーか、本人なんだけどねっ!!


 「まぁ、魔人の話を聞きたいのでしたら、ここで喚くよりも総合ギルドに登録してからにしてくださいね。すみませんが私とネネちゃんをギルド長のところに連れて行って貰えますか?」


 「はい、喜んで案内いたします!」


 ギルド職員はこの場から立ち去りたいのか、恭しく俺の側に来た。


 「お待ちなさい! 私も連れて行きなさ、ッ!!?」


 俺のデコピンをオデコに喰らった猪瀬は、痛そうに頭を手で押さえていた。


 「さっき言った事を忘れているなんて、犬の方が知性がありますね」


 「ですね。こんな馬鹿丸出しの人間を初めて見ましたよ」


 「〜〜〜ッ!?」


 猪瀬はなにも言い返せないのか、声にならない声で唸っていた。その姿を後目に俺はギルド職員の先導の元、ギルド長も元へと行くのであった。

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