クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第35話

 岡野に余裕で勝った俺はネネちゃんと共に正門へ向かって歩いている。


 「大した事なかったね」


 「そうですね。私でも勝てそうな感じがしました」


 ネネちゃんの言う通りかもしれない。なにせ相手は訓練をほっぽり出しているから、実力もそれなりになっているんだろう。
 それと、俺はもうアイツらの事を見捨てた。だからどうなろうが知ったこっちゃない。


 「あ、あのっ!?」


 「ん?」


 後ろから声をかけられたので振り向いて見てみると、生徒会の二人と学級委員の二人が追いかけて来たのか荒い息をしている。


 「どうしたの?」


 「エルライナさん。先ほど言った意味はどう言う事ですか?」


 「先ほど? 勇者になる資格がないって意味を聞きたいの?」


 「いえ、そっちではありません! メルティナス様が私達を対処する。と言う話です!」


 ああ、そっちの話ね。


 「そのままの意味ですよ。メルティナス様はアナタ達の行動にヒドく落胆をしております。なのでアナタ達を処分しようか。と考えているのです」


 「しょ、処分?」


 「ええ、アナタ達に与えた能力を返して貰うだけで済むのか、それとも使者を送り込んで抹殺をするのか・・・・・・女神様のお気持ち次第ですよ」


 「「「「ッ!?」」」」


 驚いている四人対して、俺は話を続ける。


 「今は考えている段階なので、挽回の余地はあると思いますよ。それと、私からアナタ達に対して質問をしたいですが、聞いても大丈夫でしょうか?」


 「え、ええ、構いません」


 「アナタ達と岡野さん達は仲間なのですか?」


 「え、ええ。クラスの仲間です」


 クラスの仲間ね。綺麗事を言うのが大好きだね。


 「私の見立てが間違ってなければ、アナタ達と大野さん達が仲間に見えないのですが」


 「えっ!?」


 「どういう事ですか?」


 そう聞いてくる生徒会の女の子に対して、俺はハッキリとした声で答える。


 「これは友達と言う言葉にも当てはまる話なんですけど、迷惑ばかりかけている相手と仲良しこよしをしたいと思いますか? そんな人といつまでも付き合ってられるんですか?」


 「それは・・・・・・」


 「大切なクラスメイトで・・・・・・」


 「アナタ達は、何かに恐れて離れようにも離れないって感じがしますね」


 四人は図星だったのか、下を向くなり目を逸らすなりした。


 「倉本さんがここにいたら、どういう判断を取っていたのかは知らないのですが、私でしたら彼らに見切りをつけて旅に出ていますよ。ちょうど別大陸にいる勇者達の様に」


 「なら、私達はどうしたら良いんですかっ!?」


 「私に聞かず、自分達で答えを出しなさい。アナタ達はもう元の世界の様な学生ではなく、一人の大人で勇者ですからね」


 俺はそう言い切ると振り返り、ネネちゃんを引き連れて歩き出したのであった。


 「さてと、帰ったらマルコさんに話をしないとね」


今王都にいる魔人をなんとしても見つけ出さないといけないが、マルコさんがどこまで足取りを追えるかだよなぁ・・・・・・。


 「お姉様」


 「ん? どうしたのネネちゃん?」


 「勇者様達にあの様な事を仰って良かったのですか?」


 「ん〜・・・・・・彼らの今後を考えると、誰かがハッキリと言わないといけないと思ってね」


 そう、学校なら先生の言う事を聞けば良いが、社会に出たら自分の力でなんとかしないといけなくなる。ましてや、戦いに身を投じる場合は自分で考えてなんとかするなんてザラだ。


 「・・・・・・あ!?」


 「どうしたのですか、お姉様」


 「王様がいる」


 「え? あっ!?」


 そう、王様が馬車の前に立っていて、俺を見るや否や近づいて来たのだ。


 「待っておったぞ。エルライナ殿」


 「王様、どうしてこの様な場所におられるのですか?」


 「お主の帰りを見送ろうと思ってな。それとオカノと決闘をしてくれて有り難く思う」


 「いえいえ、大した事ではありませんよ」


 ぶっちゃけ話にならないぐらいアイツ弱かったし。


 「これで懲りてくれれば良いのだがなぁ〜」


 「懲りる懲りないと言う話は別として、このままでは彼らが死にますよ。ましてや今この王都に魔人がいます。その魔人と今の状態の彼らと戦ったら、結果が目に見えています」


 「そう・・・・・・ですな。彼らだけではなく、我々自身も考えを改めないとな。オルト」


 「ハッ!」


 オルトさんはそう返事をすると王様に近づく。


 「城に戻ったら、勇者達の今後について話し合うぞ」


 「ハハッ!」


 「それと、魔人の件もな。分かったら、行け」


 「承知しました」


 オルトさんはそう言って頭を下げると、城に向かって歩き出した。


 「魔人の情報が分かり次第、お主に話そう」


 「私もなにか情報を掴んだら、総合ギルド通達でお話ししますね。それでは」


 「うむ、またの」


 ネネちゃんと共に馬車に乗って宿へと戻って来た。


 「ただ今戻りましたぁ!」


 「ただ今です!」


 「お帰りでやんす。城はどうでいやしたか?」


 「それは、後で話ますよ」


 そう言って外をチラチラ見ると、なにかを察したのかそっとカギを渡してくるが一緒に紙を渡して来た。


 「ありがとう、お部屋に方でゆっくりしていますね。あ、そうだ! 身体を拭きたいのでお湯を持って来てくれますか?」


 そう言ってからお湯代の銅貨二枚を差し出した。


 「あいよ。後で従業員が部屋に持って行くんで、待っててくださいやせ!」


 「分かりました」


 俺はそう返事をしてから、自分の部屋へと入って行く。


 「ネネちゃん。この国の隠密部隊の人が何人隠れているか分かる?」


 宿に入る時に一人いるのは分かった。恐らく他にも三〜四人は隠れていると見立てている。


 その後も窓越しに探してみたら、三人も見つけた。


 「恐らく十人はいると思いますよ」


 「えっ!? 多くない? もしかして影の人とごっちゃ混ぜにしていない?」


 「ちゃんと分けていますよ。それにしても隠れるのが下手ですね」


 「ああ〜・・・・・・そうだね」


 だって外を見てみたらローブを着た人がジッとこっちを向いて来ているんだもん。しかもその人は仲間にアイコンタクトを送っていて、その視線を追っていけば見つけられるという連鎖的な状態になってしまっている。


 「あ、本当に十人ぐらいいそうだね。ネネちゃん優秀」


 「えっへん!」


 「しかしこうも見つけやすいと、なんかねぇ〜」


 本当にお前ら隠密部隊なのか? って側に行って言いたくなる。


「我々の国以外の隠密部隊って、普通にあんなもんですよ」


 「その言葉、本気で言っているの?」


 「はい」


 ネネちゃんが言う事が本当なら、この国の隠密部隊のレベルがかなり低いって事になるぞ。


 「う〜ん・・・・・・向こうからなにかをする気はなさそうだから、放って置いて良いんじゃないかな? それにこっちが警戒していたら、向こうに警戒されちゃうからね」


 「それもそうですね。窓から離れましょうか」


 この理解力、やはり影のお姉さんが推薦するだけあって優秀な子だと実感をする。


 「っとそうだ! マルコさんから貰った紙を読まないと」


 そう言った後に折り畳まれた紙を開いて内容を確認する。


 「えっとぉ〜・・・・・・この国の反乱軍の居場所が判明した。彼らは貧困層にある教会跡地を拠点にしている。か」


 「貧困層ですか?」


 「そうみたい。教会ってそんなに大きいところだったっけ? まぁここら辺の事は確認しようか」


 そう言った後に紙を細かく破った後にゴミ箱の中に捨てた。


 「証拠隠滅の方法。本当は燃やした方が良いんだけどね。煙草を吸わない私が火を点けたら怪しまれるからね」


 「でもその反乱軍が気になりますよね」


 「そうだね。貴族も関わっている様な事を言っていたから、なんか嫌な予感しかしないね」


 そう言ったら、ドアをコンコンッと叩く音がした。


 さっき頼んだお湯を届けて来てくれたのかな?


 「はい?」


 「エルライナ様、お湯を届けに参りました」


 「どうぞ、入って来てください!」


 「失礼いたします」


 その声と共に魔族の女性がお湯の入った桶を持って、部屋へと入って来たのだ。

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