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クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第22話

 「ヒドいね。まるで夜逃げみたい」


 「別にここまでしなくても良いと思うのですが・・・・・・」


 「そう言う訳にはいかなかったんですよぉ〜」


 「「えっ?」」


 振り返って見てみると、とても悲しそうな顔をした人族の女性が立っていた。


 「えっとぉ〜、アナタは?」


 「私はここ、アルプケット商会で服の仕立ての仕事をしていました。 ケイティ と申します」


 「そう、ケイティさんね。私の名前はエルライナ。こっちは付き添い人のネネちゃん」


 「よろしくです!」


 俺が挨拶をすると、ちょっと驚いた顔をさせた。


 「それで、ここの商会・・・・・・いや、ここで立ち話しをするのもなんだから、向かいの宿屋の中で話しましょうか」


 「あ、はい。分かりました」


 ケイティさんを引き連れて、向かいの宿へと入る。


 「いらっしゃいませぇ〜。って、おや?」


 「どうも、おじさん」


 「ケイティちゃんじゃないか、もう歩いても平気なのかい」


 「はい、ご心配をお掛けしました。マルコさん」


 ケイティさんはそう言いながら、店員さんに向かってペコリと頭を下げた。


 「お二人共知り合いなのですか?」


 「はい、私があのアルプケット商会で働いていた時に、よくお世話になりました」


 「よく他の従業員と一緒に、昼食を食べに来ていたもんね」


 まぁ、この世界では宿屋兼料理屋なんてザラだからな。


 「ああ、そこに座ってええよ。立って話すのもなんだからね」


 「あ、失礼します」


 「はぁ〜い!」


 宿屋の店主、マルコさんが指をさす四人テーブルに座った。


 「それで先ほどの話の続きなんですけれども、勇者様達が召喚されて一ヶ月ほど過ぎた頃からアルプケット商会をご利用をしてくださっていたのですよ」


 「その頃から迷惑をかけていたのですか?」


 「その頃は迷惑をかけていませんでした。普通のお客様と同じ様に商品を楽しそうに見て、そして買って帰ってました」


 意外だなぁ〜。最初っからそうなのだと思っていた。


 「その頃は商会にとっても有り難い時期でした。勇者が通っている店として良い宣伝になりましたから。ですが、ある日を境に状況が一変しました」


 「ある日を境に?」


 「はい、エルライナ様が迷宮内で魔人を撃退したと言う頃からです」


 大野のヤツも言っていたな。俺が魔人を撃退出来るからどうのこうの。って。


 「どんな振る舞いをしていたのですか? お姉様と私に教えてくれませんか?」


 「はい・・・・・・最初はツケ払いから始まって、新作を早く出して欲しいと言う要望。それに加えて店のレジに通さずに店を出て行ってしまうなど、色んな事がありました」


 「中でも、リーダー格を担っていたイノセって子が、一番厄介だったんだよね?」


 猪瀬・・・・・・お前、またやらかしたのか。


 頭痛がしたので頭を抱えてしまった。


 「あの、大丈夫ですか?」


 「ああ、うん。平気だから続けて」


 「彼女は新作のデザインに文句を言うどころか、店の経営や店構えにも口出しする様になったんです。
 あろう事か、帳簿まで見せて欲しいと言って来たんです」


 おい。客なんだから帳簿を見る必要はねぇだろうよ。なにを考えているんだ、あの脳なし女は!


 「それに耐えかねた責任者が、もうここではやっていけないと判断してお店を手放したの?」


 「いいえ、その前に勇者達の出禁を言い渡したんです。そしたら、前と違ってお店に嫌がらせをする様になって・・・・・・」


 「最終的に商会長は逃げるしか選択がなかったんだね」


 「仰る通りです」


 しかしまぁ、アイツらも最低な事をするもんだなぁ。


 「あのお店がなくなってしまって、困っている人達がたくさんいるんだよ」


 「貴族とかですか?」


 「いいや、ワイ達平民。アルプケット商会は古着を安く売ったり、していたからねぇ」


 「はい、商会長は このまま捨てるのは勿体ないし、服が可哀想だから。 っていう理由から古着や売れ残った服を安く売っていたんですよ」


 お金に余裕がない人達は、その安い服を狙って買い物に来ていたのか。だとしたら勇者がやっていた事は・・・・・・。


 「ここの勇者は最低ですね」


 「返すお言葉もありません」


 ムッとしたネネちゃんに対して、ケイティさんは悲しそうに答える。


 「ん? 商会がここでの営業を辞めたって事は、ケイティさんはどう過ごされているのですか?」


 「無職です。お仕事を探していました」


 ストレートに言われてしまった。


 「あ、そうなんだぁ〜。お仕事に目星は?」


 「ゴメンなさい。目星がついていないんです」


 そう言って涙をポロリ、ポロリ。と流し始める。


 「あ、その、ゴメンね。このハンカチ使って」


 「ありがとうございます」


 そうお礼を述べた後にハンカチを手に取り、涙を拭き取った。


 このままだとこの人が可哀想だなぁ〜・・・・・・そうだ!


 「あの、良かったら仕立てのお仕事を紹介しましょうか?」


 「へ、仕立てのお仕事っ!?」


 彼女はそう言うとガバッと立ち上がり、顔を俺の目の前まで近づけた。


 「やります! いえ、やらせてください!」


 「どうどう、落ち着いて。いくつか話さなきゃいけない事があるから、聞いてちょうだい」


 「あ、すみません。取り乱してしまって」


 彼女はそう言うと、席に座り直す。


 「実はそのお仕事の場所は別大陸、つまり私の住んでいるレーベラント大陸になっちゃうの」


 「レーベラント大陸ですか?」


 「うん。で、そのレーベラント大陸のキオリ商会って言うところで働く形になるけど、構わないかな? もちろんそこまで送るのは私がするよ」


 「行きます! 行かせてください!」


 あれ? 躊躇ってないよこの子。


 「ちょっ、ちょっと待って!」


 「なんでしょうか?」


 「ご家族に相談してからぁ〜。 とか、 ここに住んでいる友人達と離れるのはぁ〜。 とか躊躇いはないの?」


 「それでしたら心配に及びません。友人達はアルプケット商会が撤退した時に、それぞれの実家に帰りましたから」


 ああ〜、そうなんだ。


 「両親は?」


 「絶縁しました」


 「ぜ、絶縁?」


 つまり親と縁を切ったって事を意味する。


 「だって私が仕立て屋になりたいって言ったら、 ダメだ! 家の家業の為に結婚をしなさい! って言って来たんです! しかも私の知らないところで結婚式の予約までしていたんですよ! お相手と顔合わせだってしてないのにぃ!」


 「つまり両親は結婚させちゃえばこっちのもんだ。って考えで、キミに黙って婚約の話を進めていたのかな?」


 「そうなんですよぉ! だから もうこんな家、出てってやるぅ!! って言って家を飛び出して来たのです!」


 あちゃぁ〜、ブチ切れて家を飛び出して来ちゃったって感じなのねぇ。ん? そうすると、結婚式の話を勝手に進めていたご両親の立場が危うくないか?
 あくまでも俺の予想の話だから、なんとも言えないかも。


 「まぁケイティちゃんなら大丈夫や。この子は根がしっかりしていて器用で良い子だから、雇って貰えると思うで」


 「う〜ん。でもこの子の実家が、どう対応するのかが問題に感じています」


 このまま連れて行ったら、そのご両親から誘拐犯扱いされる可能性があるかもしれない。


 「それなら心配ないと思うよ」


 「どうしてですか?」


 「オイラが風の噂で聞いた話なんだが、ケイティちゃんの実家らしきところは婚約者が行方不明になった事で、責められて肩身が狭い思いをしているらしいんやって。今さらケイティちゃんが帰って来たところでなんの意味もない。って感じや」


 まぁ勝手に結婚の話を進めていたのだから、そうあるわな。ってなんでマルコさんケイティの実家の事をしっているんだ? もしかしてマルコさんも影の者だからか?


 「あ、そう言えばマルコさんにバレていたんですね」


 「アルプケット商会に入りたての頃は自分でうっかりファミリーネーム名乗っていたからね。周りも気を使っていたんやけど」


 家出したのにファミリーネームを名乗っちゃダメじゃん。


 「でもまぁ、それでしたら大丈夫そうですね。私がキオリ商会まで送って行きます。それとこの宿に数日間滞在するつもりなので、荷物などをまとめておいてくださいね。必要でしたら私のアイテムボックスの中へ入れますよ。
 で、私がいない時はマルコさんに伝言をしてね」


 大容量だから家具とか全部入ると思う。なんて言わないでいよう。


 「分かりました! 部屋の解約などを済ませて来ます!」


 とても嬉しそうな表情をさせて宿の外へと出て行ったのだった。

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