クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第38話 エピローグ

 〜〜〜 リヴァイス side 〜〜〜


 暗い通路を渡り、突き当たりにある扉を開くとヤハンがこっちを向いて来た。


 「お帰り、モルモッド大野がいないって事はあれを使ったんだね」


 「ええ、使ったわ」


 「ねぇ、どうだった? ちゃんと言う事を聞いた?」


 私が思うのもなんだけど、この子のマッドサイエンス的なところが好きになれないのよね。


 「ああ、ちゃんと言う事を聞いたぞ。しかも、剣撃を耐えたわよ」


 「ふむふむ、耐久性のアップも成功っと。でもまだ課題があるなぁ〜」


 「そうか。用がないのなら、俺は行くぞ」


 一刻も早くここから出たい。なんせキラヤの後ろ側にある机の上には、グロテスクな死体が置いてあるのだから。


 「そう、じゃあね!」


 俺は足早に部屋を出た後、廊下でオオノとの出会いっを思い出していた。あれは数日前の事だった・・・・・・。


 「ここで間違いなさそうね」


 約25名の勇者が実習を行う森に来ていた。隠密系の魔法を使える私は、彼の方から偵察をしてくるように言い渡された。あわよくば勇者達を亡き者にしようとも考えている。


 「【インビジブル】【ナイトウォーク】」


 姿を消す魔法【インビジブル】と足音を消す魔法【ナイトウォーク】を自分にエンチャントしてから森へと入り、勇者達を罠やモンスターに気を付けながら探していると微かに人の声が聞こえて来た。


 なんだ? もしかして勇者達か?


 周囲を警戒しつつ声のする方向へ向かうと、なんとそこには男が木に向かって罵声を浴びせながら、剣を叩きつけているではないか。


 「クソッ!? クソッ!? アイツら歳下のガキのクセして偉そうに言いやがって! 俺が勇者っつう立場じゃなきゃ殺してやったのによぉ!! こんなふうによぉっ!!?」


 などと言い、剣で木を切ると言う感じではなく。剣を木に叩きつけているような振り方なので、リヴァイス自身も こんなヤツが勇者なの。ただのガキじゃないか。 と敵とはいえ呆れてしまった。


 「もうこの世界がどうなっても知るか! こんな肩身の狭い思いをするんだったら、俺はもう勇者を辞めてやる!
 アイツらが死のうが敵に殺されたようが、もう知らねぇ! クソがっ!!?」


 刃がボロボロになった剣を仕舞うと、何処かへと歩き出した。彼の様子からして仲間の元へ行ったのではないとリヴァイスは悟った。


 その剣で魔物どころか人間すら切れるわけがないだろう。ほっといても・・・・・・いや待って。彼、使えるかもしれない。


 リヴァイスはそう思うと、ニヤリと頬を吊り上げながら静かに大野の後ろから近づいた。


 「あらぁ〜、勇者を辞めちゃうなんて勿体ないんじゃないかしら?」


 「誰だ!?」


 大野が振り向いた後、怒りあらわにさせながら目の前まで近づいて来た。


 「お前まさか、王国の兵士だな。俺を連れ戻すつもりか、あぁ?」


 兵士がこんな格好をするわけないだろう。それに警戒心なさ過ぎだろう。馬鹿かコイツ。


 「残念ながら違うぞ」


 「なに、じゃあお前はなんだよ?」


 「魔人よ」


 「ま、魔人ッ!?」


 大野はそう言うと、さっきとは裏原に顔を真っ青にさせる。


 「俺はお前の敵だ」


 「うわああああああっっっ!!?」


 大野は叫びながら逃げ出したが、その判断が遅い過ぎたのに気づいていなかった。


 逃すわけがないだろう。


 「【ロックウォール】」


 逃げ出す大野の四方を壁が包み込み逃げられないようにするが、大野はそれでも諦めずに逃げようとしていて、壁に向かって飛び跳ねていた。


 「死にたくない! こんなところで死にたくなんてないぃいいいいいいっ!?」


 泣き叫び、濡れている股を気にもせずに逃げようとする大野に、リヴァイスは一歩づつゆっくりと近づいた。


 「アナタには二つの選択肢があるわ」


 「ひっ、ひいいいいいいぃぃぃ・・・・・・」


 彼は近づいてくるリヴァイスに恐怖を感じたのか、飛び跳ねるのを止めてその場に座り込んでしまった。


 「俺と勇敢に戦うか。それとも私と一緒に来るのか。よ」


 「た、たたかえましゅぇん」


 勇者とは思えないほど情けない声で答えるオオノを見て、リヴァイスは満足そうな顔をする。


 「そうか、なら黙って俺についてくるんだな?」


 「ひゃい・・・・・・命だけは、ゆるしてくだしゃい」


 こうして、モトヒサをアジトへと連れて帰って来たのだ。


 「それにしても私達の事を仲間って言って信じていた姿は、おもしろかったわねぇ〜」


 なぜ面白いのか? 彼は私達にとって、ただの使い捨ての駒だったのに気づいていないまま、色々とやっていたからだ。しかもあの腕輪をつけて強くなったと錯覚した姿を思い出しただけで・・・・・・。


「フフフ、アーッハッハッハッハッハッ!?」


 リヴァイスの笑い声が、廊下に響き渡るのであった。

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