クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第34話

 来た道を走りながら客間へと向かっている最中に、ハッ!? 気づいた。


 もしかして正門にいた魔物達は、城内にすんなり入って行動出来る為の陽動だったのか? そうだとしたら、狙うのはお偉いさん達の首しかない。


 「クソッ、相手にしてやられた!」


 そう毒づきながらも走るペースを落とさない。


 注意、12時方向に危険反応が二つ。敵の可能性有り。


 12時方向って、あっ!?


 一人の兵士が二体のゴブリンとそれぞれ戦っていて、苦戦を強いられたいた。


 ゴブリンはEランクの冒険科でも余裕で倒せる魔物なのに、なんで苦戦しているんだ? まぁいいや。とにかく助けないと。


 9mm機関拳銃を手に取り、コッキングレバーを引いてから構えてゴブリンに照準を合わせる。


 「巻き添えを喰らいたくなかったら、ゴブリンから離れて下さい!」


 彼ら俺の顔を見ると、ハッ!? なにかに気づき、ゴブリンから離れる。その瞬間を離れた瞬間を見逃さずに、フルオートで叩き込む。


 バ〜〜〜ッ!? バ〜〜〜〜〜〜〜ッ!?


 悲鳴も上げずに倒れていくゴブリンを見つめた後に、自分が持っている銃を見つめた。


 連射早っ!? さすがは毎分千百発の連射速度だな。念の為にマガジン変えておこう。


 「お怪我はございませんか?」


 「ああ、大丈夫じゃ。お主はエルライナ殿で合っておるか?」


 「はい、そうです。先を急いでいるので失礼します!」


 「ま、待ってくれ!」


 先を急いでいるのに肩を掴まれてしまった。


 「あの、早くオウカさん達のところへ向かわないといけないので、離して頂けませんか?」


 「拙者達もオウカ様のところへ行くつもりじゃったから、連れて行ってくれぬか?」


 マジか、なら連れて行ってあげようか。


 「私の後ろについて来てください。遅れたら置いて行きますからね」


 「うむ、心得た」


 その返事を聞くと、すぐに走り出した。


 「チッ!? また魔物か」


 真正面からゴブリンが剣を振りかぶりながら、こっちに向かって走って来ていたので、そのまま 9mm機関拳銃を撃って倒した。


 「おお〜っ!?」


 この人も先程の兵士と同様に感心をしていたが、気にもせずに走り続けると客間が見えて来た。


 「あそこにオウカさん達がいるので、ッ!?」


 障子を突き破りながら、なんとユウゼンがフードを被った何者かと剣を交えながら出て来て、庭へと転がり込んだ。


 「フゥ〜ン、やるじゃない。気を抜いたら殺されそうだな」


 「それはどうも」


 互いに距離を取りながら、ユウゼンさんは刀を構えフード被っている人は剣を構える。


 なんだコイツ? 口調が途中で・・・・・・ってまさか!


 「リヴァイス?」


 俺がそう言った瞬間、こっちを見つめる。


 「アナタがエルライナね。ダンジョンの時は、仲間が世話になったなぁ」


 ダンジョンにいた時? もしかして、煙幕を使ってかく乱をしたのはコイツなのか? それはそうと。


 「アナタがリヴァイスで合ってるみたいだね。どうせ名前の方は偽名でしょ」


 「合っているわ。おっと!」


 ユウゼンさんがなにも言わずにリヴァイスに刀を振るうが、飛んで躱した後に塀の上に降り立つ。


 「油断していた。でもここなら話していても大丈夫そうね」


 近接戦闘のユウゼンさんだと近づかなきゃいけないが、俺なら当てられる。


 「おっと、お前が持っている“ジュウ”は効かないぞ。私もちゃんと対策をしているからねぇ」


 なんでコイツ銃を知っているんだ? でもまぁ良い。


 「身を守る為のハッタリだったら、止めといた方が身の為だと思うけど?」


 「ハッタリだと思うのなら、試してみれば良いだろう?」


 コイツ、フードで見えないけど笑っているな。そう言うのなら、試してみるか。


 9mm機関拳銃のトリガーを引き、リヴァイスの身体に容赦なく撃ち込むと着弾と共に身体を左右に振るわした後に膝を着いた。


 なんだ、ハッタリじゃないか。このままじゃ生き地獄だから、トドメを刺してやるか。


 「・・・・・・・・・・・・フフッ」


 リロードをしていたら、リヴァイスの口から笑い声が聞こえたので、眉を潜めながらそっちに顔を向ける。


 「ア〜〜〜ッハッハッハッハッ!? だから効かないと言っただろう」


 そう言った後にまるで何事もなかったかのように立ち上がり、服をはたく姿をエルライナは信じられない顔で見つめていた。


 「そんなバカなっ!? ん?」


 リヴァイスの足元になにかがバラバラと落ちて行くのが見えた。


 「・・・・・・なるほど、服の下に鎧をつけてますね」


 「正解よ。服の下に大型の竜の鱗を加工した鎧を着ているわ。だからキサマの攻撃は通用せぬのだ!」


 マズいなぁ、マジで対策されていた。しかし頭の方はノーガードっぽいから通じるかもしれない。


 「エルライナさん、ここは私に任せて大輝くんの助けに行ってください」


 「良いんですかユウゼンさん?」


 相手は強い上に頭が良い感じがあるから、カンタンに倒せそうにないが。


 「ええ、私一人でなんとかしてみます」


 「・・・・・・分かりました」


 そう言っから土足で部屋の中へと入って行くと、中では仮面で顔を隠している魔人と大輝が剣を交えて戦っていた。


 「このっ!?」


 大輝くんが横なぎに剣を振るうが相手は後ろ飛んで躱してしまった為、虚しく空を切った。そこに美羽さんが槍を突き立てながら向かって行く。


 「なっ!? クソッ!」


 男の声? コイツ男なのか?


 そう思っていると、また飛んで躱そうとしたところを氷の矢が右肩に突き刺さった。


 「ツゥッ!」


 「ん・・・・・・不意打ち成功」


 伊織ちゃんは謎の男に向かってドヤ顔をするのを見て、俺はその男の動きに不信感を感じた。


 この魔人、戦い慣れてないのか剣捌きが素人っぽいし、なによりも常に敵全員を見渡せる位置にいない。それになんで多数戦闘の立ち回りをしていないんだ? まるで初心者丸出しじゃないか。
 本当に大輝くん達が相手しているのは魔人なのか?
 

 「大輝くん、加勢するよ!」


 そう言うと、9mm機関拳銃を敵に向けて連射すると最初の二発だけが身体に当たり、後は全て避けられてしまった。


 「クゥッ、アア・・・・・・クソッ!?」


 二発共右股に当たり、男は相当痛いのか抱えている。


 これはチャンスだっ!


 カランビットナイフを取り出して距離を詰めようとするが、俺の動きに気づいた男は右手をかざして来たので、反射的に右へ横っ飛びすると何かが襖に突き刺さった。


 コイツ、毒矢を仕込んでいたな。でも距離を詰めちまえば、もうこっちのもんだ!


 拘束をしようとした瞬間、なんと銃で撃たれた右足で俺の腹を蹴って飛ばして来たのだ。


 「グゥッ!?」


 ウソだろう? 右足を撃たれているんだぞ。蹴れたとしてもこんな威力はないだろう。


 だが、ヤツは立ってこちらを見ていたのだ。


 「エルライナ、大丈夫?」


 「大丈夫。美羽さん、もしかしたら相手は」


 「分かってる。自然治癒力を高めているかもしれないんですよね」


 これはこれで厄介だ。だって攻撃をしたって放っておけば傷が治るんだからな。


 「さっさと倒すしかないか、それとも即死させるしかなさそうだね」


 いくら自然治癒力を高めても、頭とか心臓を狙って撃てば絶対に倒せる。だって自然治癒が出来ない箇所が・・・・・・ん、自然治癒?


 「美羽さん、ちょっと試したい事があるんだけど。私に任せてくれるかな?」


 「え、考えですか? それは一体?」


 「耳を貸して」


 大輝くんと伊織ちゃんが応戦している中、ゴニョゴニョと俺の考えを美羽さんに伝える。


 「なるほど。でも、成功するんですか?」


 「何事もやってみないと分からないですよ。物は試し。って言葉があるんだからさ」


 「そうですか。お願いします」


 美羽さんの了承を得ると、俺はスタングレネードを取り出してピンを抜く。


 「三人共、目と耳を塞いで!」


 俺はそう言ってから、スタングレネードを男の足元目掛けて投げた後に両眼両耳を手で塞ぐ。


 「これは!」


 パァンッ!? と言う音がした後に、男と大輝くんの悲鳴が聞こえて来た。


 ちょっと待て、大輝くんも喰らったの!? それよりも!


 俺は蹲っている男の元へ駆け寄ると、右足を持ち上げてから足首の腱と膝の腱をカランビットナイフで手早く切っていく。


 「ウギャァァァアアアアアアッ!!?」


 足元で喚きながらジタバタ暴れている男の仮面をついでに取り除いた瞬間、彼女は驚愕する。


 「お、お前はっ!?」


 そう、彼女。いや、彼の担任の先生、 “大野 元久” がそこのいたのだ。

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