クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第14話
 「ハァ〜・・・・・・」
 夕食を済ませたのだが、なにか物足りない気がしてならない。それもそのはず、川魚の干物と薄味のスープに量が少ないサラダ。それに元日本人に対して硬いブレットではお腹を満たせるが心まで満たせるわけがない。
 「せめてメインの川魚の燻製が、もう少し味が良ければなぁ〜・・・・・・」
 そう、魚の種類が分からないがその干物の味が塩辛くて最悪だったのだ。多分日本だったらちょうどいい塩加減で干物にした魚をトラックの中で冷やしながら持って来れるのだろうが、こっちではそういった技術が発展してない。
 なので北海道のお土産でも有名な荒巻ジャケの様に、身にガッツリ塩を染み込ませて干したやつだ。ちなみにちゃんとした塩を抜く方法があるらしいんだけれども、俺はその方法を知らないのでこの世界の干物系は買わない事にしよう。
 「・・・・・・お菓子でも食べようかな?」
 やはり満足感がないので、ストアで買って置いた一口サイズのチョコレートをストレージから一つ取り出す。
 「歯磨きをまだしてないし、これぐらいだったら良いよね」
 覆っているビニールを取ってからチョコレート頬張ると、ニンマリと幸せそうな顔になる。
 あの夕食を食べた後なのかなぁ? このチョコレートがものすごく美味しく感じるぅ〜〜〜。
 「もう一個・・・・・・・やっぱ止めておこう」
 身体を鍛えている為、間食はなるべくしないようにしている。余計な脂肪は敵だ! 精神である。
 トントンッ!?
 「ん? はい、どちら様?」
 「アタシャだよ。入っても良いかい?」
 お婆さんか、珍しいなぁ。お婆さんが俺の部屋くる時はリマちゃんがここにいる時だけだった。
 「入ってどうぞ」
 俺がそう言うと部屋が開き、お婆さんが部屋の中に入ってくる。
 「どうしたんですか? リマちゃんなら見ての通りこちらには来てませんよ」
 「分かっとるわい。アンタにお礼を言いに来たんだよ」
 「お礼、ですか?」
 お婆さんがお礼を言ってくるなんてヤバイぞ・・・・・・もしかしたら明日ドラゴンが街を襲ってくるかもしれない。
 「アンタもしかして、失礼な事を考えてないかい?」
 「そんな事これっぽっちも考えておりませんよ。ましてや 明日ドラゴンが街に襲ってくるんじゃないか? なんて事を・・・・・・」
 「アイーニャと言い、アンタも失礼だねぇ!」
 お婆さんが鬼の形相で顔を近づけてくるが、お婆さんも言えた事じゃないでしょう。 と俺は心の中で思っている。
 「・・・・・・まぁ良いさ」
 普段の顔に戻ってそう言うと、俺から離れてイスに座った。
 「リマを気遣ってくれてありがと。助かったよ」
 「そりゃ、あまぁ・・・・・・私もリマちゃんが気掛かりだったので、そのぉ〜・・・・・・」
 「そうかい。再来週にはアタシの息子達が帰ってくるから、そこら辺の事は心配せんでええ」
 「あ、そうなんですか。それは良かったぁ〜」
 年寄りのお婆さん一人で元気な子供を育てるのは大変だもんね。リマちゃんのご両親が帰ってくれば役割り分担が出来るから、少し楽になるだろう。
 でも、なんでご両親が出稼ぎに行ってるんだろう? 気になるな。
 「あの。つかぬ事お伺いしますが、リマちゃんのご両親はどうして出稼ぎへ行ったのでしょうか? 話し辛かったら、話さなくても構いませんが」
 「えっ? かんたんな話しじゃよ。この宿のリフォームに予想以上にお金が掛かったから、出稼ぎせざるを得ない状態になったんだよ」
 なにを今更聞いているんだ? と言いたそうな顔をしているけど、こっちはアナタ方家族の事情を知らないから、聞いてるんじゃないか! と心の中で言った。
 「リフォームする前に見積もりを確認したんですか?」
 「もちろんこっちも商売人なんだから、見積もりを確認したさ。でも、いざリフォームに取り掛かったら老朽化した箇所が出て来たんでね。
 そこの修理代でお金が掛かっちゃってねぇ〜・・・・・・」
 「それで見積もりよりも高くなってしまって、払えない分は借金になってしまったんですね」
 「そうさ、修理の方は前々から思い当たるところが沢山あったからねぇ〜。今まで費用が掛かるからって言って、修理しようとしなかったのが悪かったのかもしれないねぇ〜。
 そんで払いきれない分のお金は分割払いで払うって契約して、早く借金を返す為にアタシャが宿経営をして、息子達が別の街で働くって事になったのさ」
 まぁ聞いている限りでは、修理という名目で料金の水増しって感じではなさそうだね。
 「返済するの大変でしたでしょう?」
 「まぁ大変って言えば大変だったさ、でもアタシャも息子達も稼いでるからねぇ〜。予定日より早く返済出来たのよ」
 リマちゃんの両親がお金を稼いでる。って、どんな仕事をしてるんだろうか? いや、俺には関係ないから気にしなくても良いか。
 「まぁ、リマちゃんにとって大好きなご両親が側にいた方が良いと思いますよ」
 「アンタもそう思うのかい」
 「ええ、そう思ってます」
 そう、両親が側にいなくて寂しいと思っている子供なら尚更の事だと俺は考えている。
 「ところでアンタ聞きたい事があるんだけど・・・・・・」
 「ん? なんですか?」
 「リマを見つめている時、アンタは時々羨ましそうな顔をしていたよ」
 「ッ!?」
 そんな顔をしていた筈は・・・・・・いや、考えてみれば思い当たるところがあるな。
 「まぁ・・・・・・私の場合は両親とはちょっとね」
 そういいながら目を泳がせて頬を人差し指でかく姿は、誰がどう見ても動揺すしているのが丸分かりである。
 「ふぅ〜ん、まぁ人それぞれ言いたくない事はあるからね。アタシャは追求しないよ」
 あれ? お婆さんの事だから追及してくると思ってたんだけど、予想外になかったな。
 「やっぱり本当に明日魔人がくるんじゃないんだろうか?」
 「失礼だねぇ! アタシャは要は済んだから、もう行くよ!」
 お婆さんはそう言い残すと部屋を出て行ってしまった。
 「律儀にお礼を言うとは、義理堅い人だねぇ〜」
 本当にどっかの誰かさん達に、あの姿を見せてやりたいよ。てか、勇者をやらせないでここで働かせた方が良いんじゃねぇ? 世界の平和の為の戦い以前に、あのお婆さんの元で社会常識を学んだ方が良いと思う。
 「・・・・・・まぁ、こんなところでこんな事を言ったって仕方がないか」
 ストレージから歯ブラシとコップと歯磨き粉を取り出して洗面台に行くと、さっさと歯磨き済ませる。そしたら寝巻きに着替えて睡る準備をする。
 「ファ〜・・・・・・」
 今日は色々あったから、もう眠くなって来たから寝るか。トイレは部屋に入る前に済ませたから良いか。
 こうしてベットに入り、瞼を閉じて睡るのだったのだが・・・・・・。
 「・・・・・・ん?」
 微睡みの中、ゴソゴソと誰かがベットの中に入って来て俺の身体を抱きしめるのを感じたので、目を開いて確認するとそこにリマちゃんがいた。
 「あっ!?」
 リマちゃんは 起こしちゃった。 と言いたそうな顔で見つめて来た。
 「別に気にしてないよ。ドアのカギはちゃんと掛けているよね?」
 「うん」
 「ならOK。一緒に寝ようか」
 「うん」
 短いやり取りをした後に再び目を閉じる。しかしリマちゃんの方はなぜかギューっと抱きしめてくるのだ。
 やっぱり、親しい俺がいなくなると寂しいんだなこの子は。
 「〜〜〜♪」
 そう思いつつアニソンを歌いながらリマちゃんの頭を優しく撫でてあげる。すると、すぐにリマちゃんの寝息が聞こえて来た。
 ・・・・・・俺の時も、こうして貰いたかったな。
 頭撫でてアニソンを歌うのを止めると、よっぽど疲れていたのかすぐに眠りについてしまった。
 ・・・・・・歩道橋の柱の下でおじさんが希望もない目で座っていた。いわゆる生活放浪者だが、そこへ近づく一人の少年と老人がいた。
 自分でも分かる。これは夢だ。でも・・・・・・なんで?
 そのおじさんの目の前立った瞬間だった。おじさんは少年達に自分の側に来たのに気がついたので、顔を上げた。
  『ッ!?』
 そのおじさんは少年の顔を見た瞬間、先程とは違い驚愕していた。
 『秋斗!』
 『秋斗? なにを言ってんだアンタは? 自分の息子を間違えるなんてな。まぁアンタら夫婦にとって俺はどうでも良いヤツだったからな』
 『秋斗じゃない? お、お前はまさか・・・・・・春人・・・・・・・・・・・・なのか?』
 『ああそうだ、春人だ。五年ぶりだな。二度と会いたくなかったけど』
 ああそうだ。九歳の時にコイツが失踪したあの日から五年後に、じいちゃんに無理矢理連れてこられて再会したんだ。
 まぁその時の俺自身も、 いつかコイツとはケジメをつけないといけないな。 と思っていたから、ちょうど良かったのかもしれない。
 ・・・・・・いや、今思えば間違いだったかもしれない。
 『エリート街道と歩んでいたのに、今じゃ生活放浪者か・・・・・・落ちるところまで落ちたな』
 『そ・・・・・・それはその。会社が俺を・・・・・・』
 『会社が自分を解雇したから。って言うのは確かに理由としては合ってる。でも現実を受け入れずに逃げていたのはアンタだろう? 違うか?』
 『ッ!?』
 『こうなる前に頑張って就職していれば良かったんだよ。違うか?』
 『・・・・・・・・・・・・』
 おじさん・・・・・・いや、元父親と言うべきか。その人は俺の指摘に黙り込んでしまった。
 『まぁ良い。俺はケジメをつけに来ただけだからな』
 『け、ケジメ?』
 『そうさケジメさ。アンタとは親子の縁を切らして貰うっ!! これはちゃんとじいちゃんに認められて手続きも済ませた!
 だから二度とそのツラを見せるなっ! じゃあなっ!!』
 俺はそう言うと、振り返り立ち去ろうとしたが。
 『ま、待ってくれっ!!』
 元父親は肩を掴んで静止させてくる。必死なのか肩を掴むその手に力が込もっている。
 『昔の事は悪かった! 本当に悪かったっ! だから昔の事は水に流して、家族四人で一緒に仲良く暮らそう』
 『・・・・・・ハァ?』
 家族四人でだって? ふざけてるのか、このクソ野郎はよぉっ!!
 一瞬で怒りが頂点に達してしまった俺は、掴んでいる手を振りほどいて顔面に拳を叩きつけた。
 『ブブッ!?』
 元父親は地面に寝そべるようして倒れこむ。頬を抑えて痛がっている父親を余所に、俺は話し出す。
 『アンタは今までなにも知らずに生きて来たのか?』 
 『な、なにを?』
 『その様子じゃあ知らないみたいだな! だっーー教えてやるよ! アンターーーーーーーーーーんだよっ!!』
 懐かしい夢はここで途切れてしまった。
 夕食を済ませたのだが、なにか物足りない気がしてならない。それもそのはず、川魚の干物と薄味のスープに量が少ないサラダ。それに元日本人に対して硬いブレットではお腹を満たせるが心まで満たせるわけがない。
 「せめてメインの川魚の燻製が、もう少し味が良ければなぁ〜・・・・・・」
 そう、魚の種類が分からないがその干物の味が塩辛くて最悪だったのだ。多分日本だったらちょうどいい塩加減で干物にした魚をトラックの中で冷やしながら持って来れるのだろうが、こっちではそういった技術が発展してない。
 なので北海道のお土産でも有名な荒巻ジャケの様に、身にガッツリ塩を染み込ませて干したやつだ。ちなみにちゃんとした塩を抜く方法があるらしいんだけれども、俺はその方法を知らないのでこの世界の干物系は買わない事にしよう。
 「・・・・・・お菓子でも食べようかな?」
 やはり満足感がないので、ストアで買って置いた一口サイズのチョコレートをストレージから一つ取り出す。
 「歯磨きをまだしてないし、これぐらいだったら良いよね」
 覆っているビニールを取ってからチョコレート頬張ると、ニンマリと幸せそうな顔になる。
 あの夕食を食べた後なのかなぁ? このチョコレートがものすごく美味しく感じるぅ〜〜〜。
 「もう一個・・・・・・・やっぱ止めておこう」
 身体を鍛えている為、間食はなるべくしないようにしている。余計な脂肪は敵だ! 精神である。
 トントンッ!?
 「ん? はい、どちら様?」
 「アタシャだよ。入っても良いかい?」
 お婆さんか、珍しいなぁ。お婆さんが俺の部屋くる時はリマちゃんがここにいる時だけだった。
 「入ってどうぞ」
 俺がそう言うと部屋が開き、お婆さんが部屋の中に入ってくる。
 「どうしたんですか? リマちゃんなら見ての通りこちらには来てませんよ」
 「分かっとるわい。アンタにお礼を言いに来たんだよ」
 「お礼、ですか?」
 お婆さんがお礼を言ってくるなんてヤバイぞ・・・・・・もしかしたら明日ドラゴンが街を襲ってくるかもしれない。
 「アンタもしかして、失礼な事を考えてないかい?」
 「そんな事これっぽっちも考えておりませんよ。ましてや 明日ドラゴンが街に襲ってくるんじゃないか? なんて事を・・・・・・」
 「アイーニャと言い、アンタも失礼だねぇ!」
 お婆さんが鬼の形相で顔を近づけてくるが、お婆さんも言えた事じゃないでしょう。 と俺は心の中で思っている。
 「・・・・・・まぁ良いさ」
 普段の顔に戻ってそう言うと、俺から離れてイスに座った。
 「リマを気遣ってくれてありがと。助かったよ」
 「そりゃ、あまぁ・・・・・・私もリマちゃんが気掛かりだったので、そのぉ〜・・・・・・」
 「そうかい。再来週にはアタシの息子達が帰ってくるから、そこら辺の事は心配せんでええ」
 「あ、そうなんですか。それは良かったぁ〜」
 年寄りのお婆さん一人で元気な子供を育てるのは大変だもんね。リマちゃんのご両親が帰ってくれば役割り分担が出来るから、少し楽になるだろう。
 でも、なんでご両親が出稼ぎに行ってるんだろう? 気になるな。
 「あの。つかぬ事お伺いしますが、リマちゃんのご両親はどうして出稼ぎへ行ったのでしょうか? 話し辛かったら、話さなくても構いませんが」
 「えっ? かんたんな話しじゃよ。この宿のリフォームに予想以上にお金が掛かったから、出稼ぎせざるを得ない状態になったんだよ」
 なにを今更聞いているんだ? と言いたそうな顔をしているけど、こっちはアナタ方家族の事情を知らないから、聞いてるんじゃないか! と心の中で言った。
 「リフォームする前に見積もりを確認したんですか?」
 「もちろんこっちも商売人なんだから、見積もりを確認したさ。でも、いざリフォームに取り掛かったら老朽化した箇所が出て来たんでね。
 そこの修理代でお金が掛かっちゃってねぇ〜・・・・・・」
 「それで見積もりよりも高くなってしまって、払えない分は借金になってしまったんですね」
 「そうさ、修理の方は前々から思い当たるところが沢山あったからねぇ〜。今まで費用が掛かるからって言って、修理しようとしなかったのが悪かったのかもしれないねぇ〜。
 そんで払いきれない分のお金は分割払いで払うって契約して、早く借金を返す為にアタシャが宿経営をして、息子達が別の街で働くって事になったのさ」
 まぁ聞いている限りでは、修理という名目で料金の水増しって感じではなさそうだね。
 「返済するの大変でしたでしょう?」
 「まぁ大変って言えば大変だったさ、でもアタシャも息子達も稼いでるからねぇ〜。予定日より早く返済出来たのよ」
 リマちゃんの両親がお金を稼いでる。って、どんな仕事をしてるんだろうか? いや、俺には関係ないから気にしなくても良いか。
 「まぁ、リマちゃんにとって大好きなご両親が側にいた方が良いと思いますよ」
 「アンタもそう思うのかい」
 「ええ、そう思ってます」
 そう、両親が側にいなくて寂しいと思っている子供なら尚更の事だと俺は考えている。
 「ところでアンタ聞きたい事があるんだけど・・・・・・」
 「ん? なんですか?」
 「リマを見つめている時、アンタは時々羨ましそうな顔をしていたよ」
 「ッ!?」
 そんな顔をしていた筈は・・・・・・いや、考えてみれば思い当たるところがあるな。
 「まぁ・・・・・・私の場合は両親とはちょっとね」
 そういいながら目を泳がせて頬を人差し指でかく姿は、誰がどう見ても動揺すしているのが丸分かりである。
 「ふぅ〜ん、まぁ人それぞれ言いたくない事はあるからね。アタシャは追求しないよ」
 あれ? お婆さんの事だから追及してくると思ってたんだけど、予想外になかったな。
 「やっぱり本当に明日魔人がくるんじゃないんだろうか?」
 「失礼だねぇ! アタシャは要は済んだから、もう行くよ!」
 お婆さんはそう言い残すと部屋を出て行ってしまった。
 「律儀にお礼を言うとは、義理堅い人だねぇ〜」
 本当にどっかの誰かさん達に、あの姿を見せてやりたいよ。てか、勇者をやらせないでここで働かせた方が良いんじゃねぇ? 世界の平和の為の戦い以前に、あのお婆さんの元で社会常識を学んだ方が良いと思う。
 「・・・・・・まぁ、こんなところでこんな事を言ったって仕方がないか」
 ストレージから歯ブラシとコップと歯磨き粉を取り出して洗面台に行くと、さっさと歯磨き済ませる。そしたら寝巻きに着替えて睡る準備をする。
 「ファ〜・・・・・・」
 今日は色々あったから、もう眠くなって来たから寝るか。トイレは部屋に入る前に済ませたから良いか。
 こうしてベットに入り、瞼を閉じて睡るのだったのだが・・・・・・。
 「・・・・・・ん?」
 微睡みの中、ゴソゴソと誰かがベットの中に入って来て俺の身体を抱きしめるのを感じたので、目を開いて確認するとそこにリマちゃんがいた。
 「あっ!?」
 リマちゃんは 起こしちゃった。 と言いたそうな顔で見つめて来た。
 「別に気にしてないよ。ドアのカギはちゃんと掛けているよね?」
 「うん」
 「ならOK。一緒に寝ようか」
 「うん」
 短いやり取りをした後に再び目を閉じる。しかしリマちゃんの方はなぜかギューっと抱きしめてくるのだ。
 やっぱり、親しい俺がいなくなると寂しいんだなこの子は。
 「〜〜〜♪」
 そう思いつつアニソンを歌いながらリマちゃんの頭を優しく撫でてあげる。すると、すぐにリマちゃんの寝息が聞こえて来た。
 ・・・・・・俺の時も、こうして貰いたかったな。
 頭撫でてアニソンを歌うのを止めると、よっぽど疲れていたのかすぐに眠りについてしまった。
 ・・・・・・歩道橋の柱の下でおじさんが希望もない目で座っていた。いわゆる生活放浪者だが、そこへ近づく一人の少年と老人がいた。
 自分でも分かる。これは夢だ。でも・・・・・・なんで?
 そのおじさんの目の前立った瞬間だった。おじさんは少年達に自分の側に来たのに気がついたので、顔を上げた。
  『ッ!?』
 そのおじさんは少年の顔を見た瞬間、先程とは違い驚愕していた。
 『秋斗!』
 『秋斗? なにを言ってんだアンタは? 自分の息子を間違えるなんてな。まぁアンタら夫婦にとって俺はどうでも良いヤツだったからな』
 『秋斗じゃない? お、お前はまさか・・・・・・春人・・・・・・・・・・・・なのか?』
 『ああそうだ、春人だ。五年ぶりだな。二度と会いたくなかったけど』
 ああそうだ。九歳の時にコイツが失踪したあの日から五年後に、じいちゃんに無理矢理連れてこられて再会したんだ。
 まぁその時の俺自身も、 いつかコイツとはケジメをつけないといけないな。 と思っていたから、ちょうど良かったのかもしれない。
 ・・・・・・いや、今思えば間違いだったかもしれない。
 『エリート街道と歩んでいたのに、今じゃ生活放浪者か・・・・・・落ちるところまで落ちたな』
 『そ・・・・・・それはその。会社が俺を・・・・・・』
 『会社が自分を解雇したから。って言うのは確かに理由としては合ってる。でも現実を受け入れずに逃げていたのはアンタだろう? 違うか?』
 『ッ!?』
 『こうなる前に頑張って就職していれば良かったんだよ。違うか?』
 『・・・・・・・・・・・・』
 おじさん・・・・・・いや、元父親と言うべきか。その人は俺の指摘に黙り込んでしまった。
 『まぁ良い。俺はケジメをつけに来ただけだからな』
 『け、ケジメ?』
 『そうさケジメさ。アンタとは親子の縁を切らして貰うっ!! これはちゃんとじいちゃんに認められて手続きも済ませた!
 だから二度とそのツラを見せるなっ! じゃあなっ!!』
 俺はそう言うと、振り返り立ち去ろうとしたが。
 『ま、待ってくれっ!!』
 元父親は肩を掴んで静止させてくる。必死なのか肩を掴むその手に力が込もっている。
 『昔の事は悪かった! 本当に悪かったっ! だから昔の事は水に流して、家族四人で一緒に仲良く暮らそう』
 『・・・・・・ハァ?』
 家族四人でだって? ふざけてるのか、このクソ野郎はよぉっ!!
 一瞬で怒りが頂点に達してしまった俺は、掴んでいる手を振りほどいて顔面に拳を叩きつけた。
 『ブブッ!?』
 元父親は地面に寝そべるようして倒れこむ。頬を抑えて痛がっている父親を余所に、俺は話し出す。
 『アンタは今までなにも知らずに生きて来たのか?』 
 『な、なにを?』
 『その様子じゃあ知らないみたいだな! だっーー教えてやるよ! アンターーーーーーーーーーんだよっ!!』
 懐かしい夢はここで途切れてしまった。
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