クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第11話
 宿の外へ絶対に行かせない! と言わんばかりにスカートを引っ張ってくるリマちゃん。それに対して俺は、顔を赤く染めながらパンツが捲れてしまわない様にスカートを抑える。
 「ちょっ、待って! スカート捲れちゃうから離して!」
 「ウワァァァアアアアアアアアアアアアンッッッ!!?」
 だ、ダメだ! この子は全く聞く耳を持ってないよ!
 そんな攻防戦をしていたら、宿に泊まっていた人達が なんだぁ? とか なんかあったんか? とか言って部屋から出て、こっちに来た。
 今の俺に取っては非常にマズイ状況であるので、早くリマちゃんを止めなければならない!
 「分かった! 分かったからぁ! スカートを引っ張るの止めてちょうだい!!」
 「・・・・・・グスッ!?」
 リマちゃんが潤んだ瞳で見つめてくるので、思わずキュンと来てしまう。しかし、このまま流されてしまうとリマちゃんの教育上よろしくない。
 なので、俺は膝を着いてリマちゃんと同じ目線なって話し合う。
 「どうして私と離れるのがイヤなの?」
 「・・・・・・」
 ダンマリしながら目線を泳がせるリマちゃんを見た俺は、 正直に言おうとしても、気まずくて切り出せないんだなぁ〜。 と理解したので、自分から言うのを待つ事にした。
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 まだ切り出せないのか。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さびしかったから」
 「寂しかった?」
 「・・・・・・うん、リマね。おねえちゃんがね・・・・・・おとうさんやおかあさんみたいにね。おもえたの」
 お父さんやお母さんって、俺は保護者のポジションなのか?
 「お父さんやお母さんって事は、エルエルが家族みたいに感じたのか?」
 アイーニャ様がそう言うと、リマちゃんはコクリと頷いた。
 それとエルエルと言うのを、いい加減止めてくれ。アンタが貴族じゃなかったら、ブチ切れてたぞ。
 「リマ・・・・・・おとうさんとおかあさんに、 帰ってくる。って約束したのにまだ会えない・・・・・・おねえちゃんも会えなくなっちゃうの・・・・・・寂しいよぉ」
 「ッ!?」
 カ、カワイイッ!! 見つめ続けていたら、母性本能が暴走してしまうじゃないかぁぁぁああああああっっっっ!!!?
 俺は反射的に口を押さえて目をそらしてしまう。
 「アンタの気持ちは分かるけど、今は冷静になるのさ。大人としての対応をしなきゃダメなのさ」
 「うっ!!?」
 う、うっさいな! 言われなくても分かっているよっ!!
 「ねぇ奥方、この子お持ち帰りしてもよろしいでしょうか? 私もこの子に おねえちゃん。 って呼ばれたいです。あと添い寝したいです」
 駄メイドがなんか言ってるけど無視しよう。その方が平和な気がするからさ。
 「スゥ〜・・・・・・ハァ〜・・・・・・あのねリマちゃん。
 お姉ちゃんは冒険科。だから色んなところに行って、冒険をするのが冒険科の役目なのは分かるよね?」
 「・・・・・・うん」
 「このまま泣いたリマちゃんとバイバイするのはイヤだから、笑顔で言って欲しいなぁ〜」
 「・・・・・・うううぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜」
 リマちゃんはそう言いながら顔を胸に擦りつけてくるので俺は優しく抱きしめてあげるが、内心呆れてしまう。
 これじゃあ埒があかないなぁ〜。
 「・・・・・・仕方ない。お婆さん」
 「なんでしょうか?」
 クッ、人がいるから営業モードになってやがる。まぁ良いや、くだらない事だし。
 「やっぱり、今日だけはここに泊まります」
 「えっとぉ〜・・・・・・それはつまり、今日の分だけはキャンセルなしって事ですか?」
 「はい、そうです」
 「・・・・・・・・・・・・分かりました。では、残りの予約分はお返しいたしますね」
 そう言って俺の側までくると、銅貨十二枚を手渡してくれた。
 あれ? このお婆さんの事だから、今日のキャンセル分のなんたらぁ〜。って言って銅貨八枚ぐらいにされると思ってた。
 「私の子に優しいんですね。アナタは」
 頭に手を置いて呆れた顔をしながら言う。その姿を見た俺は、 娘を甘やかさないでおくれ。 って言いたいんだろうなぁ〜。と言いたいのを理解する。
 「私は子供には優しいですよぉ〜。悪い人には容赦しないですけどね」
 敵に憂いを見せたら隙が出来てしまう。なので抵抗出来ないぐらいに叩きのめしてから、尋問なり逃げるなりすれば良い。
 これ、師匠からの受けおりの言葉です。
 「てか婆さん、猫かぶる様になってたんだねぇ〜。いやぁ〜、あの口の悪いクソババァの店って言葉は、もう聞けそうにないのさぁ〜」
 「お客様。む・か・し・か・ら! 安くて良い宿と言われております」
 アイーニャ様に向かって笑顔で見つめるが、怒っているのがまる分かりである。
 「アイーニャ様の言葉に偽りはなさそう」
 「ん? なにか言いました?」
 「いいえ、なにも言ってません!」
 聞こえない様にボソッと言ったの筈なのに、なぜか耳に届いていたらしい。ババァの耳は地獄耳! 俺の中で今、無駄な知識が増えたのである。
 「おぉ〜恐い恐い。ババァに殺される前に退散しますかぁ。行くよ、アリーファ」
 「はい、奥方様」
 二人は オホホホホホホッ!! と高らかに笑い、逃げる様にして宿から出て行く。お婆さんがその後ろ姿を見つめながら、なにかボソボソと言っている。
 関わっちゃマズイと感じたので、そのまま放置しておこう。
 「ねぇ、リマちゃん。今日だけだよ」
 「え? ほんとう?」
 「うん、ホント。今日だけ一緒に寝てあげるよ」
 「わぁ〜〜〜いっ! おねえちゃん大好きぃ〜〜〜!!?」
 リマちゃんはそう言って再度抱きついて来たので、抱きしめてから頭を撫でてあげる。
 「・・・・・・羨ましい」
 フハハハハハハッ!? これは俺だけの特権だ! 羨ましいだろう、ん?
 「俺も子供になって、たゆんたゆんなお胸に顔を埋めてみたい」
 そっちかよ!! それに小さな子供がいるんだぞ! えっちぃ気味な発言は禁止だ!!
 「メイドさんと結婚して、この子の様な子供授かる夢が今出来たんだぁ〜。
 チャ、チャンスあるかなぁ〜?」
 ほう? おもしろい事を言うヤツだなぁ〜。こいよ、ベ◯ット! 着飾った言葉なんか捨ててかかってこいっ!!
 お前の恋心を玉砕してやるからっ!!
 「ハイハイ、皆様お部屋の方へお戻りください。出掛ける人は外へどうぞ」
 お婆さんの言葉を聞いたギャラリーは各々行動して解散する。お婆さんはその様子を見つめて周りに誰もいなくなった事を確認すると、こっちを向く。しかし怒っているのか顔がものすごく恐かった。
 「・・・・・・全くアンタは、とんでもないヤツを連れて来たわね」
 「そうですか? て言うか、お婆さんはアイーニャ様と知り合いだったんですか?」
 「ああ、アイーニャの小娘が新人の冒険科の頃に、よくこの宿を利用していたよ。ところでその格好はなんだい?」
 「え? ・・・・・・あ!」
 あ、そうだよ。この宿を出て行く時は私服だったもんな。
 「あ〜、いや。仕事でこの格好になっただけです」
 「フ〜ン・・・・・・」
 お婆さんはそう言いながら俺の姿をまじまじと見つめる。
 「どうせアンタの事だから、厄介事にでも巻き込まれていたんだろう?」
 「うっ!?」
 こ、このお婆さん鋭いぞ!
 「まぁ良いさ。帰って来たって事は仕事を終えたんだろう?」
 「・・・・・・あ!」
 いけない! 依頼完了した事を総合ギルドへの報告するのを忘れていた!!
 「まぁ期限が来週までだから、報告するのは明日でも構わないかなぁ?」
 「ハァ〜・・・・・・依頼の報告を忘れるなんて、どんな厄介事に巻き込まれたんだい?」
 このお婆さんにメイド喫茶でアルバイトしていた事を知られてしまったら、絶対にからかわれる!!
 「き、着替えたいので部屋に戻ります! カギをください!!」
 「・・・・・・ホラ」
 お婆さんは怪訝そうな顔をしながらカギを渡して来たのを気にせずに、俺はカギを手早く受け取ると、そそくさと自分の部屋へ戻る。
 「・・・・・・どうせ噂話で分かるから、聞かなくてもいいか」
 お婆さんはそう言うと、何事もなかったかの様にカウンター立つのだった。
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