クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第14話
 ダレンさんについて行くようにして小屋に入って行くと、二人の兵士さんがこっちを向かって歩いてくる。
 「副団長、そちらが例の怪我をされた方ですか?」
 「ええ、彼の怪我を見てやって欲しいです」
 「分かりました」
 「それと、彼にも話しを聞いて貰いたいからここで治療をして欲しいんだが出来るかい?」
 「う〜ん・・・・・・」
 兵士の一人がドーラさんの身体を触りながら隅々まで見るとこっちを向く。
 「この傷なら大丈夫です」
 「そうですか」
 「傷の治療と他に異常がないか検査だけさせて頂きます」
 「分かりました。アナタに任せます」
 「すみませんが治療するので、こちらに座って上着を脱がしますよ。良いですか?」
 「あ、ああ」
 兵士さんは慣れているのかテキパキとドーラさんの服を脱がせると、なくなった方の腕を診察しだす。
 「他のみな様もこちらのイスに座ってください」
 「あ、はい」
 「うむ」
 俺とグエル教官はテーブルを挟んでダレンさんに向かい合うように座る。
 「グエル教官から謎の魔物、もとい化け物のお話しは聞いているのでそちらの方は省きますが・・・・・・よろしいですか?」
 「ああ、構わない」
 「とりあえず把握していらっしゃるのであれば私も構いません」
 ぶっちゃけ言えば俺も時間惜しい。
 「では話しましょう。アグス隊長がなんであんなことをするのかを」
 真剣な表情に変わった! なんだろう? ・・・・・・顔を見ていると怒りとか悲しみとかなんとも言えない感情が伝わってくる。
 「アグス隊長は貴族の子爵出身で同じ階級の他の方に比べて裕福な家庭で育ちました」
 「・・・・・・」
 うん、よくあるテンプレに聞こえるね。長ったらしい話しだったら短くして貰うように言おう。
 「彼は軍人である父親を憧れて切磋琢磨と己の腕を磨いて騎士団を目指していたのですがぁ・・・・・・学生時代のときに問題が起きてしまったんですよ」
 「問題? 一体その問題とはなんですか?」
 「リードガルム魔法学園で剣術の授業をしている最中にとある貴族から決闘の申し込まれたので、その決闘を受けて見事に勝利したのですが、決闘のようすを見ていた生徒から不正で告発が出たんです。
 そこからアグス隊長のようすがおかしくなり始めたんです」
 あらまぁ、決闘の不正ねぇ〜。考えられる不正と言えば・・・・・・粗悪な武器を渡したり、審判を買収したりする事ぐらいかなぁ?
 「デノール? 不正・・・・・・もしかして バレオ・デノール 子爵の息子、アグス・デノール の決闘不正疑惑のことか?」
 「はい、その通りです」
 「エイド教官、あの隊長のこと知ってるんですか?」
 「俺が騎士団に勤めていたころに噂程度になら話しを聞いたんだ。
 えっとぉあれは確かぁ・・・・・・不正があったかもしれないし、なかったかもしれない。って話しのままで後のことはサッパリ分からないんだ」
 不正があったかもしれないし、しかもその真意はサッパリ分からないままって・・・・・・ん? んんん?
 「なんか、不正があったかどうか分からないまま。ってところがなんか引っかかりますね」
 「ええ、実際後から分かったことなのですがあの人は他の貴族に嵌められたんです」
 「嵌められた? 今の話しを詳しく教えてください!」
 「はい、さっきの話しを詳しく言いますと同学年のバンザース伯爵家の者に、 お前の方が格下だと分からせてやる。決闘をしろ!! と申し込まれて・・・・・・どうされました?」
 ザンバース? ザンバース・・・・・・ザンバースゥ〜って、ええっとぉ〜・・・・・・・。
 「いえ、そのザンバースって名前をどっかで聞いたことあるようなぁ〜、ないような気がぁ〜・・・・・・う〜ん、どっかで・・・・・・あったっけ?」
 「エルライナ・・・・・・お前、覚えてないのか?」
 覚えてない? ってことは俺はその人と会ったことあるのか?
 「う〜〜〜ん・・・・・・思い出せないです」
 「お前が牙鬼商会を守ったときに居ただろ? 捕まったのにギャアギャアうるさく喚いていた。って俺はお前から聞いてるが?」
 「ギャアギャア? あっ!? 思い出したっ!! 手を撃ち抜いたアイツッ!!」
 確か オッド・バンザース って名前だったぁ〜・・・・・・よね?
 「ようやく思い出したか」
 その後の魔人との戦いが印象的だったから忘れてたよ。
 「えっ!? アンタ、そのザンバースって貴族にあったことあるの?」
 「うん、かなりヒドい人だったよ。
 部下と一緒にお酒をどれぐらい飲んだのか知らないけど酔った状態で牙鬼商会に来たと思ったら連んでる商人と一緒に、 土地を明け渡せっ!! って言うし、断ったら剣を抜いて切りかかってくるしぃ・・・・・・ホント、すっちゃかめっちゃかな人だったよ」
 「うわぁ・・・・・・最低ね」
 うん、ミハルちゃん。キミもそこそこヒドいよ。
 「ひょっとして、第一騎士団のことか?」
 「はい、その通りです」
 「俺も王都いるときにヒドい噂ばかり聞いてたからなぁ。
 しかしお前とピンク色の鎧を着たゴリラが第一騎士団どもを蹴散らしたって話を俺が聞いていたんだがぁ・・・・・・お前のことだったのか?」
 「まぁ、合ってなくはないんですけどぉ・・・・・・その、ピンク色の鎧を着たゴリラってところは本人に言わない方がいいですよ。絶対恐ろしい目に会いますからねぇ。ドーラさん」
 「お、おう・・・・・・そうか」
 「あの人はどうしてあんな風に、ってぇ! お前らそんなこと話しをしている場合じゃないぞっ!!
 「「あっ!?」」
 そうだった。いまはそんな話しをしている場合じゃない!
 「すまない、話しが逸れた。続けてくれ」
 「あ、はい。先ほど申し上げた通りアグス隊長はその決闘に勝ったのですが、その五日後に決闘を見ていたと言う生徒から先生へ不正があったと申し出があったのです」
 「ん?」
 なんか・・・・・・違和感を感じがするな。
 「・・・・・・その不正の内容を詳しく話してくれますか?」
 「はい、薬を盛られたから調子が出なかった。と」
 はぁ? 薬を・・・・・・盛る?
 「決闘前に何者かに襲われて傷を負ってたから調子が出なかった。
 アグス隊長が襲わせたんじゃないか? って話ですね」
 「内容が突拍子すぎる。そんなのでっち上げってすぐに分かりますよね?」
 ホント、ウソを吐くにもほどがある。
 「それがぁ〜、そのぉ〜・・・・・・ですね」
 ん? なんか歯切れが悪いぞ。
 「アグス隊長が下宿していた部屋から盛った薬が出てきたのと、怪我を負わせるように言われたと実行犯を連れてきたんですよ」
 「えぇ〜・・・・・・真理の水晶の検査は?」
 「それが、 ここまで証拠が揃っているんだから不要だろう? と言うことで第一騎士団が退学処分を当時の学長に言い渡したのですが、不自然なところが多いから容認出来ないって話をしたんですよ。って皆さんどうしたんですか?」
 俺とエイド教官とドーラさんは呆れた顔をしながら肩を落としてしまう。
 そんな姿を見たミハルちゃんとダレンさんは戸惑った顔をしながら俺達を見てくる。
 「ちょ、アンタたち! なにうな垂れてるのよっ!?」
 「エイド教官、もうこれって・・・・・・」
 「ああ、完全なでっち上げだな。この問題が国王のところにまで耳に届いてこなかったのはソイツら調査を差止めしていたんだろう。
 国王様はこの前まであのヒドさを把握してなかったらしいしな」
 「五日後ってことは、その間に準備をしてたんですね」
 「えっ? 準備?なに言ってるのよ?」
 「ミハルちゃん考えてみて、不正があったって言うならもっと早く報告していると思うよ。襲われたのなら決闘当日とか次の日にね」
 「あっ!」
 ミハルちゃんは、 言われてみれば確かにそうだ。 って顔をしている。
 「それにな、学生寮なら寮に入っているヤツなら出入り自由だからな。
 本人がいないときカギを開けて部屋に入って薬を隠し置いておくことぐらい簡単だろう」
 「ああ!」
 また正直な反応を見せるねぇ、この子は。
 「実行犯なんて適当な人を金で雇って言わせればいいんだよ。用が済んだら逃すなり、そのまま実行犯として罪を被せてブタ箱にぶち込むなり殺して口封じするなりするさ。
 多分合ってるのは口封じだと思うぞ。協力した馬鹿の顔を見てみたいぜ」
 ドーラさん、協力者も被害者になってる可能性があるから流石にそこまで言うのはちょっとぉ〜・・・・・・ねぇ?
 「えっ!? 協力してもらったのに独房どころか殺しちゃうの? ヒドくない?」
 「死人に口なし。実行犯が消えればさ、 実は自分は無実なんです! 実はザンバース家に雇われて犯人役をやったんです!! なんて言えないでしょう?」
 「そ、そうね・・・・・・・」
 「まぁ仮に独房生活を強いられたとしても、 自分がやった。 と認めているから、後からどうのこうの言われても“自分がやってないと言う証拠が出てくるか真犯人が見つからない限り”再捜査はしないと思うよ」
 ぶっちゃけ、再調査が始まっても99.9パーセント不利から始まりそう・・・・・・あ、でもこの世界には俺がいた世界とは違って真理の水晶があるからどうだろう?
 「で、でも・・・・・・このままじゃ、あの団長が可哀想じゃない?」
 「ミハル、世の中って言うのは理不尽なことばかりなんだよ。俺達が今 この人は無実だ!! って声を上げたところで犯人に肩を持ってると疑われるだけだらな。止めておけよ」
 「う、うぅ〜・・・・・・」
 あ〜あ、今度は恥ずかしいのか縮こまっちゃったよ・・・・・・仕方ない。
 「それはそうと、この後どうします? ここにいる人達を置いて去るなんてことはしませんよね?」
 「そうだなぁ〜、う〜ん・・・・・・」
 エイドさんは貧乏ゆすりをしながら顔を上を向けて唸り出した。悩むほど考えてるね。
 「エルライナ、まだ戦えるか?」
 「もちろん戦えますよ!」
 「そうか」
 「ただ、今持ってる装備があの化け物に効いてないみたいなので今から装備を変えてもいいですか?」
 「いいぞ。なるべく早く装備を整えてくれ」
 「了解です!」
 そう言った後に邪魔な装備を取り除いていく。
 「ミハル、お前はシドニールを呼んでこい」
 「な、師匠・・・・・・ミハルの話しを聞いてくれるかな?」
 「俺が緊急の用があるから早く来てくれ! って言われた。とか一言言えば飛んで来ると思うぞ」
 たしかに、グダグダ話をするよりもこっちに連れて来て話した方が手っ取り早そうだね。
 「シドニールの居場所分かるか?」
 「師匠なら大抵酒場で酒を飲んでいるか。依頼をこなしているかのどっちかだからぁ・・・・・・そこら辺の酒場に行けば会えると思う」
 「じゃあ急いで探しに行って来い! 見つけ出せなかったら厳罰だからな、いいな?」
 「は、はいっ!!」
 エイド教官の厳罰と言う言葉効いたのかミハルちゃんは小屋を飛び出して行ってしまった。
 「ドーラ、すまないがお前は避難をしてくれ。出来れば住人と一緒にな」
 「しかし、俺は・・・・・・仲間の・・・・・・」
 「今の状態じゃ戦えない。自分自身分かっているだろう?」
 「・・・・・・」
 エイド教官の言葉を聞いたドーラさんは俯いてしまった。
 「いいな?」
 「・・・・・・はい」
 よほど仲間の仇を取りたかったんだろうか、残った手を堅く握りしめて悔しそうに言ってる。
 「俺はギルド長への緊急要請の手紙を書いて来るから、シドニールたちが先に来ていたら事の説明を頼むぞ」
 「分かりました。あ、エイド教官!」
 「ん?」
 「住民の避難の方は準備を整えてから考える。って思っていていいんですか?」
 「ああ、そう認知していてくれ。他に質問があるか?」
 「ないです」
 「よし、そんじゃあな!」
 「行ってらっしゃい!」
 俺は小屋から出て行くエイド教官を見送ると脱ぎ捨てた装備を手に取り見つめる。
 さぁ、化け物退治に有効そうな武器を考えないとな!!
 「副団長、そちらが例の怪我をされた方ですか?」
 「ええ、彼の怪我を見てやって欲しいです」
 「分かりました」
 「それと、彼にも話しを聞いて貰いたいからここで治療をして欲しいんだが出来るかい?」
 「う〜ん・・・・・・」
 兵士の一人がドーラさんの身体を触りながら隅々まで見るとこっちを向く。
 「この傷なら大丈夫です」
 「そうですか」
 「傷の治療と他に異常がないか検査だけさせて頂きます」
 「分かりました。アナタに任せます」
 「すみませんが治療するので、こちらに座って上着を脱がしますよ。良いですか?」
 「あ、ああ」
 兵士さんは慣れているのかテキパキとドーラさんの服を脱がせると、なくなった方の腕を診察しだす。
 「他のみな様もこちらのイスに座ってください」
 「あ、はい」
 「うむ」
 俺とグエル教官はテーブルを挟んでダレンさんに向かい合うように座る。
 「グエル教官から謎の魔物、もとい化け物のお話しは聞いているのでそちらの方は省きますが・・・・・・よろしいですか?」
 「ああ、構わない」
 「とりあえず把握していらっしゃるのであれば私も構いません」
 ぶっちゃけ言えば俺も時間惜しい。
 「では話しましょう。アグス隊長がなんであんなことをするのかを」
 真剣な表情に変わった! なんだろう? ・・・・・・顔を見ていると怒りとか悲しみとかなんとも言えない感情が伝わってくる。
 「アグス隊長は貴族の子爵出身で同じ階級の他の方に比べて裕福な家庭で育ちました」
 「・・・・・・」
 うん、よくあるテンプレに聞こえるね。長ったらしい話しだったら短くして貰うように言おう。
 「彼は軍人である父親を憧れて切磋琢磨と己の腕を磨いて騎士団を目指していたのですがぁ・・・・・・学生時代のときに問題が起きてしまったんですよ」
 「問題? 一体その問題とはなんですか?」
 「リードガルム魔法学園で剣術の授業をしている最中にとある貴族から決闘の申し込まれたので、その決闘を受けて見事に勝利したのですが、決闘のようすを見ていた生徒から不正で告発が出たんです。
 そこからアグス隊長のようすがおかしくなり始めたんです」
 あらまぁ、決闘の不正ねぇ〜。考えられる不正と言えば・・・・・・粗悪な武器を渡したり、審判を買収したりする事ぐらいかなぁ?
 「デノール? 不正・・・・・・もしかして バレオ・デノール 子爵の息子、アグス・デノール の決闘不正疑惑のことか?」
 「はい、その通りです」
 「エイド教官、あの隊長のこと知ってるんですか?」
 「俺が騎士団に勤めていたころに噂程度になら話しを聞いたんだ。
 えっとぉあれは確かぁ・・・・・・不正があったかもしれないし、なかったかもしれない。って話しのままで後のことはサッパリ分からないんだ」
 不正があったかもしれないし、しかもその真意はサッパリ分からないままって・・・・・・ん? んんん?
 「なんか、不正があったかどうか分からないまま。ってところがなんか引っかかりますね」
 「ええ、実際後から分かったことなのですがあの人は他の貴族に嵌められたんです」
 「嵌められた? 今の話しを詳しく教えてください!」
 「はい、さっきの話しを詳しく言いますと同学年のバンザース伯爵家の者に、 お前の方が格下だと分からせてやる。決闘をしろ!! と申し込まれて・・・・・・どうされました?」
 ザンバース? ザンバース・・・・・・ザンバースゥ〜って、ええっとぉ〜・・・・・・・。
 「いえ、そのザンバースって名前をどっかで聞いたことあるようなぁ〜、ないような気がぁ〜・・・・・・う〜ん、どっかで・・・・・・あったっけ?」
 「エルライナ・・・・・・お前、覚えてないのか?」
 覚えてない? ってことは俺はその人と会ったことあるのか?
 「う〜〜〜ん・・・・・・思い出せないです」
 「お前が牙鬼商会を守ったときに居ただろ? 捕まったのにギャアギャアうるさく喚いていた。って俺はお前から聞いてるが?」
 「ギャアギャア? あっ!? 思い出したっ!! 手を撃ち抜いたアイツッ!!」
 確か オッド・バンザース って名前だったぁ〜・・・・・・よね?
 「ようやく思い出したか」
 その後の魔人との戦いが印象的だったから忘れてたよ。
 「えっ!? アンタ、そのザンバースって貴族にあったことあるの?」
 「うん、かなりヒドい人だったよ。
 部下と一緒にお酒をどれぐらい飲んだのか知らないけど酔った状態で牙鬼商会に来たと思ったら連んでる商人と一緒に、 土地を明け渡せっ!! って言うし、断ったら剣を抜いて切りかかってくるしぃ・・・・・・ホント、すっちゃかめっちゃかな人だったよ」
 「うわぁ・・・・・・最低ね」
 うん、ミハルちゃん。キミもそこそこヒドいよ。
 「ひょっとして、第一騎士団のことか?」
 「はい、その通りです」
 「俺も王都いるときにヒドい噂ばかり聞いてたからなぁ。
 しかしお前とピンク色の鎧を着たゴリラが第一騎士団どもを蹴散らしたって話を俺が聞いていたんだがぁ・・・・・・お前のことだったのか?」
 「まぁ、合ってなくはないんですけどぉ・・・・・・その、ピンク色の鎧を着たゴリラってところは本人に言わない方がいいですよ。絶対恐ろしい目に会いますからねぇ。ドーラさん」
 「お、おう・・・・・・そうか」
 「あの人はどうしてあんな風に、ってぇ! お前らそんなこと話しをしている場合じゃないぞっ!!
 「「あっ!?」」
 そうだった。いまはそんな話しをしている場合じゃない!
 「すまない、話しが逸れた。続けてくれ」
 「あ、はい。先ほど申し上げた通りアグス隊長はその決闘に勝ったのですが、その五日後に決闘を見ていたと言う生徒から先生へ不正があったと申し出があったのです」
 「ん?」
 なんか・・・・・・違和感を感じがするな。
 「・・・・・・その不正の内容を詳しく話してくれますか?」
 「はい、薬を盛られたから調子が出なかった。と」
 はぁ? 薬を・・・・・・盛る?
 「決闘前に何者かに襲われて傷を負ってたから調子が出なかった。
 アグス隊長が襲わせたんじゃないか? って話ですね」
 「内容が突拍子すぎる。そんなのでっち上げってすぐに分かりますよね?」
 ホント、ウソを吐くにもほどがある。
 「それがぁ〜、そのぉ〜・・・・・・ですね」
 ん? なんか歯切れが悪いぞ。
 「アグス隊長が下宿していた部屋から盛った薬が出てきたのと、怪我を負わせるように言われたと実行犯を連れてきたんですよ」
 「えぇ〜・・・・・・真理の水晶の検査は?」
 「それが、 ここまで証拠が揃っているんだから不要だろう? と言うことで第一騎士団が退学処分を当時の学長に言い渡したのですが、不自然なところが多いから容認出来ないって話をしたんですよ。って皆さんどうしたんですか?」
 俺とエイド教官とドーラさんは呆れた顔をしながら肩を落としてしまう。
 そんな姿を見たミハルちゃんとダレンさんは戸惑った顔をしながら俺達を見てくる。
 「ちょ、アンタたち! なにうな垂れてるのよっ!?」
 「エイド教官、もうこれって・・・・・・」
 「ああ、完全なでっち上げだな。この問題が国王のところにまで耳に届いてこなかったのはソイツら調査を差止めしていたんだろう。
 国王様はこの前まであのヒドさを把握してなかったらしいしな」
 「五日後ってことは、その間に準備をしてたんですね」
 「えっ? 準備?なに言ってるのよ?」
 「ミハルちゃん考えてみて、不正があったって言うならもっと早く報告していると思うよ。襲われたのなら決闘当日とか次の日にね」
 「あっ!」
 ミハルちゃんは、 言われてみれば確かにそうだ。 って顔をしている。
 「それにな、学生寮なら寮に入っているヤツなら出入り自由だからな。
 本人がいないときカギを開けて部屋に入って薬を隠し置いておくことぐらい簡単だろう」
 「ああ!」
 また正直な反応を見せるねぇ、この子は。
 「実行犯なんて適当な人を金で雇って言わせればいいんだよ。用が済んだら逃すなり、そのまま実行犯として罪を被せてブタ箱にぶち込むなり殺して口封じするなりするさ。
 多分合ってるのは口封じだと思うぞ。協力した馬鹿の顔を見てみたいぜ」
 ドーラさん、協力者も被害者になってる可能性があるから流石にそこまで言うのはちょっとぉ〜・・・・・・ねぇ?
 「えっ!? 協力してもらったのに独房どころか殺しちゃうの? ヒドくない?」
 「死人に口なし。実行犯が消えればさ、 実は自分は無実なんです! 実はザンバース家に雇われて犯人役をやったんです!! なんて言えないでしょう?」
 「そ、そうね・・・・・・・」
 「まぁ仮に独房生活を強いられたとしても、 自分がやった。 と認めているから、後からどうのこうの言われても“自分がやってないと言う証拠が出てくるか真犯人が見つからない限り”再捜査はしないと思うよ」
 ぶっちゃけ、再調査が始まっても99.9パーセント不利から始まりそう・・・・・・あ、でもこの世界には俺がいた世界とは違って真理の水晶があるからどうだろう?
 「で、でも・・・・・・このままじゃ、あの団長が可哀想じゃない?」
 「ミハル、世の中って言うのは理不尽なことばかりなんだよ。俺達が今 この人は無実だ!! って声を上げたところで犯人に肩を持ってると疑われるだけだらな。止めておけよ」
 「う、うぅ〜・・・・・・」
 あ〜あ、今度は恥ずかしいのか縮こまっちゃったよ・・・・・・仕方ない。
 「それはそうと、この後どうします? ここにいる人達を置いて去るなんてことはしませんよね?」
 「そうだなぁ〜、う〜ん・・・・・・」
 エイドさんは貧乏ゆすりをしながら顔を上を向けて唸り出した。悩むほど考えてるね。
 「エルライナ、まだ戦えるか?」
 「もちろん戦えますよ!」
 「そうか」
 「ただ、今持ってる装備があの化け物に効いてないみたいなので今から装備を変えてもいいですか?」
 「いいぞ。なるべく早く装備を整えてくれ」
 「了解です!」
 そう言った後に邪魔な装備を取り除いていく。
 「ミハル、お前はシドニールを呼んでこい」
 「な、師匠・・・・・・ミハルの話しを聞いてくれるかな?」
 「俺が緊急の用があるから早く来てくれ! って言われた。とか一言言えば飛んで来ると思うぞ」
 たしかに、グダグダ話をするよりもこっちに連れて来て話した方が手っ取り早そうだね。
 「シドニールの居場所分かるか?」
 「師匠なら大抵酒場で酒を飲んでいるか。依頼をこなしているかのどっちかだからぁ・・・・・・そこら辺の酒場に行けば会えると思う」
 「じゃあ急いで探しに行って来い! 見つけ出せなかったら厳罰だからな、いいな?」
 「は、はいっ!!」
 エイド教官の厳罰と言う言葉効いたのかミハルちゃんは小屋を飛び出して行ってしまった。
 「ドーラ、すまないがお前は避難をしてくれ。出来れば住人と一緒にな」
 「しかし、俺は・・・・・・仲間の・・・・・・」
 「今の状態じゃ戦えない。自分自身分かっているだろう?」
 「・・・・・・」
 エイド教官の言葉を聞いたドーラさんは俯いてしまった。
 「いいな?」
 「・・・・・・はい」
 よほど仲間の仇を取りたかったんだろうか、残った手を堅く握りしめて悔しそうに言ってる。
 「俺はギルド長への緊急要請の手紙を書いて来るから、シドニールたちが先に来ていたら事の説明を頼むぞ」
 「分かりました。あ、エイド教官!」
 「ん?」
 「住民の避難の方は準備を整えてから考える。って思っていていいんですか?」
 「ああ、そう認知していてくれ。他に質問があるか?」
 「ないです」
 「よし、そんじゃあな!」
 「行ってらっしゃい!」
 俺は小屋から出て行くエイド教官を見送ると脱ぎ捨てた装備を手に取り見つめる。
 さぁ、化け物退治に有効そうな武器を考えないとな!!
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