クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第4話

 「う~ん・・・・・・」


 銀色の竜亭を目指して歩きながら、この後どうするか考えていた。


 帰ったらなにしようかな? それともリマちゃんと遊ぼうかな? あ! そんな事をしたらあのお婆さんに怒られそうだからなぁ〜・・・・・・ダメそうだな。


 「本当に暇になっちゃったなぁ〜・・・・・・」


 「なら僕とデートでもするかい?」


 「ウワァッ!?」


 横を向くとキースさんがいつの間にか立っていた。


 いや、考え事しながら歩いていたから側にいた事に気づかなかったよ。


 「キースさん! なんでこんなところにいるんですか?」


 てか、なんで普段着で歩いてるんだ?


 「僕だって休日ぐらいゆっくりしてるよ」


 あ、休日でしたか・・・・・・キースさんの事だからナンパする女性を探していたんじゃないかな?


 「それよりもエルライナさん。僕とどこかに行かないかい?」


 「すみませんがお断りしますよ」


 「フフッ・・・・・・さっき暇と言ってたのにかい?」


 「エイミーさんから言われたんです。 キースさんと二人っきりになった時は注意しなさいよ。 って」


 「エイミーさんがそんな事を言ってたんですか。全く、彼女はヒドい事をエルライナさんに教えますね」


 キースさんがちょっと残念そうな顔をしてるな・・・・・・流石にエイミーさんの話を信じ過ぎたかな?


 「エルライナさんにそう言われてしまうと、お茶どころかデートにも誘えませんねぇ」


 「えぇ〜・・・・・・」


 前言撤回、エイミーさんの言う通りだったよ。


 「それはだって可愛いエルライナさんとデートが出来るのは、とても嬉しい事じゃないですか」


 「ヒャウッ!?」


 か、可愛いと言われてしまった。ア、アァ~・・・・・・顔が、顔が熱いよぉ~っ!!


 「アウウウウウウゥゥゥ〜〜〜・・・・・・」


 「照れてる姿もとても可愛いですね」


 「ヒャァァァアアアアアア〜〜〜ッ!!?」


 恥ずかしさの余り顔を手で覆ってその場にしゃがみ込んでしまう。


 「も、もふぅ・・・・・・ひゃめれぇ〜・・・・・・」


 「褒めるのを止めて欲しかったら、 僕とデートすると言って下さい。そうしないと褒め続けますよ。可愛いエルライナさんに・・・・・・ね?」


 「フニャ〜ッッッ!!? や、やら・・・・・・しにゃひ・・・・・・」


 指の隙間からキースさんの顔を覗いて見てみると、この状況が楽しいのかニコニコしている。


 卑怯だ。卑怯だよキースさんっ!!


 「エルライナさん、そんな可愛いく否定しないで下さいよ」


 「ヒニャッ!?」


 あぁ〜、意識がボーっとしてきた・・・・・・これ以上言われたら俺はどうなっちゃうんだろう?


 「エルライナさん、デートしましょう?」


 「ウゥ〜・・・・・・デーチョ、しゅる」


 デートしたくないんだけど、もう言う事を聞くしかないよね・・・・・・。


 「良かった。さぁ、僕と手を繋ぎましょう」


 キースさんの手を掴み立ち上らせて貰ったのだが、俺が立った瞬間に互いの体が当たるほどにキースさんが側に寄って来たのだ。


 「ムゥ〜ッ!!」


 赤面しながらキースさんを睨むが本人は苦笑いしてこっちを見てくる。


 「そんな顔をしないで下さいよ。せっかくのデート明るく楽しく行きましょうよ」


 頭を振ってなんとか意識を取り戻すとキースさんに向かって話し出す。


 「・・・・・・でも無理矢理でしたよね?」


「フフッ、さぁ、どうですかねぇ?」


 クゥ〜、その余裕そうな顔がムカつく! 絶対、ぜーったいにエイミーさんにチクってやるもんねっ!! 


 「さて、時間も勿体ないから行きましょうか!」


 そのまま手を引かれながら歩いていると、ある事のに気づく。


俺・・・・・・今からデートするのにオシャレなんてしてないじゃん。てかオシャレ自体した事ないから、どうすれば良いか分からねぇっ!!


 「エルライナさん、どうしたんですか?」


 「私、オシャレしてない・・・・・・どうしよう・・・・・・」


 「そのままも綺麗だよ、エルライナさん」


 「ッ〜〜〜!!?」


 倒れそうになったところをキースさんに支えられた。その上に俺の顔を覗き込んでくる。


 「ホント、キミは照れ性だね」


 「う、うりゅ・・・・・・うりゅしゃいれすっ!!」


 「本当に面白いね。僕のオススメのお店に楽しみにしていて下さいね。フフフフッ!」


 キースさんは俺の事を笑った後に俺の体を支えながら歩いていると、キースさんに連れてオススメのお店らしきところにやって来たのだが、看板に書いてある文字を見て固まってしまう。


 「あのぉ〜、キースさん」


 「ん、なんだい?」


 「オススメのお店って・・・・・・もしかして、目の前にあるお店の事ですか?」


 「そうです。僕がよく利用させて貰ってる洋服店ですよ」


「へぇ〜・・・・・・」


 そうなんだ。確かにショーウィンドウに飾られてる服は、ファッションセンスの高さを感じさせるなぁ。
 あっ! しかも着物まである! 結構品揃えがぁ・・・・・・じゃなくてっ!!


 「無理です! 私には入れませんっ!!」


 「どうしてだい?」


 「いや、だって私・・・・・・こう言うお店に入った事がないですし、しかもファッションだって考えた事もないのでファッションセンスに自信がないですよ」


 美海さん達の時は着せ替え人形状態だったから、自分の姿を見る暇がなかった。それにミリタリーファッション以外は余り考えた事がないから普段着のファッションは無頓着に等しい。


 「・・・・・・なるほど。そう言う事ですか。だからいつも同じような服を着てるんですね」


 「ッ!?」


 口元を手で隠しているけど笑ってるのが見て分かる。


 ヤバい・・・・・・この場から逃げなきゃヤバいよっ!!


 すぐさま逃げようとしたが、キースさんが手を握り締めていたので逃げられなかった。


 「逃がしませんよ、エルライナさん。デートは終わってないんですから」


 「せ、せせせせめて場所を喫茶店に変えて下さい!」


 「ダメですよ。ここに入りましょう」


 「エェ〜〜〜ッ!?」


 そのまま半ば強引に店内へ入ると、魔族の店員さんが気づいてようすをしてからこっちを向いてくる。


 「あら、いらっしゃいキースくん。また女の子を連れて来たのね。相変わらずのスケコマシねぇ〜」


 「まぁ良いじゃないですか。素敵な女性と共に過ごせるのが僕の生き甲斐ですから」


 素敵な女性って・・・・・・俺じゃなくても良いって事じゃん。


 「ところでキースくん。白い髪に紫色の宝石を瞳に入れたようなこの子は誰かしら?」


 「レンカさん。この子の名前はエルライナ、僕の命の恩人です」


 「へぇ〜、そうなんだぁ。それにしてもこの子可愛いわねぇ〜!」


 「っ~わっぷ!?」


 レンカさんと言う人は、いきなり抱きついてくると身体の至るところをで回して来た上に赤面している俺の顔を見てくる。


 「うんうん! 良いプロポーションをしてるわね。それにアナタが着ている服はぁ・・・・・・ファッションとしては色合いが悪いけど生地はしっかりしてるから良いわね。
 特にズボンはちょっとやそっとの事で破れそうになさそうね」


 「えっ!?」


 もしかしてこの人、俺の体を触ってスリーサイズと着ている服を見てたのか?


「おぉ、エルの嬢ちゃんやんけ! 久しぶりやなぁ〜!」


 聞き覚えのあるこの声はまさかっ!?


 そう思いながら店の奥を見てみると、キオリさんがこっちに向かって歩いて来ているではないかっ!?


 「キ、キオリさんっ!? なんでこんなところにいるんですか?」


 「そりゃあだって、ウチらが経営してる店の一つやから来ておるんやで」


 「ほぇ〜・・・・・・家具屋兼魔道具屋さんの他にもお店を経営してるんですね」


 「せや、牙鬼商会は色んなところに手を出しているんやで! ところでなんでエルの嬢ちゃんはどうしてここにおるん?」


 「そ、それは・・・・・・あの、そのぉ・・・・・・」


 「僕がここに彼女を連れて来たんですよ・・・・・・デートで」


 「それホンマか!? エルの嬢ちゃん、ソイツに惚れたんか?」


 「いいえ惚れてません。しかもここに無理矢理連れて来られました」


 俺は付き合ってると勘違いされるのは困るのでキッパリとキオリさんに言った。


 「エルライナさんが女性らしい服を着たことがない。と言うから洋服店に連れて来たんですよ」


 キースさんにサラッと言われてしまった。まぁファッションセンスがないのは認めるけどさ。


 「ほ~う、そりゃ面白・・・・・・いや、女の子に生まれて来て勿体ないなぁ~」


 うわぁ〜!? なんかヤバイ雰囲気を醸し出してるよ。


 「それじゃあ私がコーディネートしてあげるわ! こっちおいで!」


 レンカさんが笑顔でそう言いながら手招きしてくるが、レンカさんのその笑顔を見ていると危機感を感じてしまうのは気のせい・・・・・・ではなさそうだっ!!


 ええい、こうなったらあの手を使うしかない!


 「そう言えばキオリさん達魔族って着物を着ている人が多いんですか?」


 「おう! 多いで魔国の江戸城下。こっちで言うところの王都やと着物を着た人だらけやで!」


 「ふ〜ん、じゃあもしかして魔国って街並みも違うんですか?」


 「そうや、こっちはレンガ作りの建物たてもんが多いけど魔国じゃ木製の家が多いで! ところでエルの嬢ちゃん・・・・・・」


 「なんですか?」


 「時間稼ぎするより、さっさとここから逃げた方が良かったんとちゃうんか?」


 「へ? ・・・・・・にょわぁっ!?」


 後ろから手が伸びてきて俺の胴体をガッチリ掴んで来た。


 「フッフッフッフッ! 逃がさないわよぉ~!」


 レンカさんの声? あ、しまった!? 話しをして逃げるチャンスを探そうとしたら、キオリさんの話しに聞き入っちゃったからレンカさんに回り込まれたのに気づかなかった! これじゃ逃げられないっ!!


 「さぁ〜、私と一緒にお店の奥に行きましょうねぇ〜〜〜っ!! ウッフッフッフッフッ!」


 「イヤァァァアアアアアアッッッ!!? 離して! お願いですから離して下さいっ!!」


 「イ・ヤ・よ!」


 そう言われ後にお店の奥へと引きずられるように連れていかれてしまった。


 「あれ? 試着室は向こうですよね?」


 「そうやな。向こうは確か服を製作するところやなかったとちゃうん?」


 二人で首を傾げていると二人の声が聞こえてくる。


『離して下さい! 自分で脱ぎますから服から手を離して下さいよっ!!』


 『うわっ!? なにこれ? 上着が伸びてる! 面白いわねこれっ!! これなら服を着やすいわっ!!』


 『止めて下さいよぉ〜! そんな事したら服に癖ついちゃいますよぉ〜っ!! ってキャァァァアアアアアアッッッ!!!?』


 『ふむふむ・・・・・・この下着の生地、肌に優しい。しかもこのブラはフックで止めるタイプとは、なんて画期的なのっ!! これなら一々いちいち結ぶ必要がないじゃないっ!! 』


 『私の下着をジロジロ見ないで下さいよっ! てか返して下さいっ!!』


 『このブラとパンツ借りていくわね。後、代わりにの下着を用意しておくから安心してね!』


 『全く話を聞いてないっ!? ちょ! その手に持ってる着物はなんですか? 』


『試作品の着物よ! さぁ、お着替えしましょうねぇ〜〜〜!!』


 『ちょっと待って下さい! 先にした、アアアァァァアアアアアアーーーーーッッッ!!?』


 『ウフッ! ウフフフフッ!!』


 「一体向こうでなにが起こっとるんや?」


 「試着ですよ・・・・・・多分」


 その後も彼女は何度か悲鳴をあげると、エルライナがレンカさんの後ろに隠れながらアトリエから出て来た。


 「ウウウゥゥゥゥゥゥ・・・・・・」


 「ほら、恥ずかしがってないで姿を見せてあげなさい」


 「だってぇ〜、恥ずかしいんだもん」


 恥ずかしながらレンカさんの前に出て着物姿をキオリさんとキースさんに見せると、二人は目を丸くして見てくる。


 「「おぉ〜!!」」


 「よう似合うで、ホンマ!」


 「・・・・・・とてもよく似合ってますよ。本当に可憐だ」


 「ウウウウウウゥゥゥ〜〜〜ッ!?」


 恥ずかしい気持ちになってしまい、内股になりながら裾を両手で抑えて悶えてしまう。


 「しょ・・・・・・そろそろ着替えましょうよぉ〜! もう限界ですからぁ〜!」


 「そうね。じゃあこっち来てちょうだい」


 レンカさんの手を取ったところでキオリさんが残念な顔をする。


 「えぇ〜! せっかく似合う着物を着たのに勿体ない事をすんなぁ〜! そのまま外に出てデートして来ればええのに!」


 「無理です! 絶対無理ですっ!! てか嫌ですよぉっ!!」


 「お、おう。そうかぁ〜・・・・・・」


 俺が物凄い形相で言うのでキオリさんは驚いてしまう。


 「どうしてそんなに嫌がるんですか?」


 「そ、それは・・・・・・あの、ですね」


 「私が下着を持ってるからよ。ほらこれ!」


 レンカさんは着物の袖から俺の下着を取り出すとキオリさんとキースさんに見せつける。


 「これ本当にスゴいのよ! ブラはホックで止めるだけだから楽だし、しかもパンツは伸び縮みするから履くだけで良いのよ! この下着を本当にどこで手に入れたの?」


 「私の下着でなにしてるんですかぁっ!!」


 慌てた顔をしながら手を伸ばして下着を取り返そうとしたのだが、慣れない下駄のせいでバランスを崩してしまい、転んでしまった。


 「痛たたたたた・・・・・・」


受け身の取り方も訓練してて良かったよ、ホント。


 「エルの嬢ちゃん だいじょ・・・・・・」


 「エル・・・・・・」


 「まぁっ!」


 ん? キオリさんとキースさんは顔をそっぽに向けてどうしたんだろう? そう言えばさっきよりもお腹周りの締め付けられる感覚がなく、スースーするんだけどぉ・・・・・・。


 「私は大丈夫で、ッ!?」


 自分の着ている着物がどうなっているのか今さら自覚して顔を真っ赤にしてしまう。


 「ヒッ、ニャァァァアアアアアア〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!?」


 慌てて手で隠したけれども、もう遅かったのだった。

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