クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第4章 プロローグ

 とある日の朝、のどかな草原が広がる道を馬車がゆっくり進んでいる・・・・・・が。その馬車の中は張り詰めた空気が漂っていた。


 「ウウウゥゥゥウウウゥゥゥゥゥゥ~~~・・・・・・!!」


 そう言いながら悔しそうに地団駄じたんだを踏んで馬車を揺らしている魔族の少女を黒狼族の男性が手綱を握り締めたまま、呆れた顔で振り返って声をかける。


 「落ち着け ミハル 。馬が暴走するだろ」


 「だって・・・・・・だって師匠ぉ~! 総合ギルドの連中がぁ~!!」


 「あれはお前が悪い」


 「師匠までハルにそう言うのぉ~っ!?」


 目に涙浮かべながら言うが彼はそんなのお構いなしに話しを続ける。


 「そりゃあなぁ、お前が五回も連続してクエストを失敗するからだろ? しかもその理由はウルフの討伐依頼を成功させるまでは良いが、協力したヤツらとケンカをして怪我ケガをさせた。 だぞ」


 「だ、だってハルの事を馬鹿に・・・・・・」


 「それに俺がお前に受けさせた依頼にも問題あったぞ」


 「ちゃんとこなしたもんっ!!」


 「お前はそうウソを吐くんだ?」


 「ウソなんか言ってないもんっ!!」


 その言葉を聞いた黒狼族の男性は下を向き両肩をガックリ落としてしまう。


 「はぁ~・・・・・・俺の方にも話が来てるからな」


 「えっ!? ・・・・・・マジ?」


 ミハルは自分の師匠に対して恐る恐る聞くと本人は眉間にシワを作り、鋭い眼光で睨み付けながら話し始める。


 「マジだ。受託期限を過ぎてから報告する」


 「だ、だってぇ〜・・・・・・討伐したモンスターの数が多ければ多いほどお金が貰えるからぁ・・・・・・だからたくさんゴブリンを討伐しただけだもん」


 「期限を考えないで倒し続ける馬鹿はお前しかいねぇよっ!! あの時は本当にお前の事を心配したんだぞっ!!」


 「ウッ!? ウウウゥゥゥゥゥゥ~・・・・・・」


 身体を縮込ませながら上目遣うわめづかいをするが気にせず話しを続ける。


 「お前次受けたクエストを失敗したらランクを格下げされるんだから、クエストを成功させないと後がないのは分かっているだろうなぁ?」


 「そ、それはそうだけど・・・・・・ミハルは、ちゃんと頑張ってクエストをこなしているもん!」


 「報告の時点で失敗と言う結果なら頑張ってる意味がない」


 「ウゥ~・・・・・・」


 唸り声と共に両肩をガックリ落としてしまう。


 「もうすぐリードガルム王国の王都に着くぞ。ギルドカードと積み荷の資料の準備しておけ」


 「はぁ~い・・・・・・師匠」


 彼女はそう言い渋々しぶしぶと準備をする中、彼は遠くにある王都を懐かしそうな顔で見つめているのであった。








 ~~~ エルライナ side ~~~


 「ん~・・・・・・こんな感じかな?」


 壁と床を見回してホコリや汚れがないか確認した後に背伸びをすると彼女はこう言った。


 「よし、お掃除終わり! 疲れたぁ~っ!!」


 そして背伸びするのを終えると近くに置いておいた掃除道具を片付け始める。


 ドーゼムと闘った日から六日経った。
 それまでの経緯を簡単に説明すると、勇者達は俺に助けた出された翌日に国王と謁見したその後日に、彼らはとんぼ返りのように帝国に帰って行ったのだが去り際に俺にこう言った。


 『最初はエルライナさんの隣で戦えるぐらいに強くなろうと思いました。けれども夜にみんなで話し合った時に、 それじゃあダメだ。 って結論に至りました』


 俺が、 どうして? と言う理由を訪ねると今度は美海さんがこう答えた。


 『ドーゼムが私達にこう言ったんです。 私達が帝国で相手にした魔人の強さは一番下。 って・・・・・私達は下っ端相手を追い返して喜んでいたんですよ。アナタに、 浮かれている。 って言われても否定できません。
 実際に私達は浮かれていたのですから・・・・・・』


 今度は伊織さんが続くように話し始める。


 『だからドーゼム自身が、魔人の中でどれぐらい強いのか分からないから、ドーゼムを楽に倒せるぐらい、強くならないといけないと思ったの』


 なるほどぉ・・・・ドーゼムはそう言ってたのか。つまりドーゼムより強いヤツがいる可能性がある。と考えたのか・・・・・・いや、合ってるな。本人がそう言ってたのなら本当の事だろう。
 優勢な状況でそんなウソを吐くメリットなんて全くって言っていいほどないのだから。


 『だから今度は、あんな風にならないように・・・・・・力を合わせて強くなろうって! 今度は魔人に勝とうって誓ったんですっ!!』


 大輝さんが目に涙を浮かべながら言う中、美海さんと伊織さんが寄り添い手を握るが彼女達の目にも涙が浮かんでる。三人共、生きてて良かったと思う気持ちよりも悔しい。って気持ちの方が大きいんだろうな・・・・・・。


 『だからアナタには助けられた上に色々と教えられました。本当にありがとうございましたっ!!』


 大輝さんが頭を下げてお礼を言うと、美海さんと伊織さんも続くように頭を下げてきた。


 『私達を助けてくれて、ありがとうございますっ!!』


 『・・・・ありがとう、強くなる』


 その後の事は・・・・・・なぜだか覚えていない。しかも外に居たはずが総合ギルドのソファーの上で寝ていた。なんでソファーに寝ていたのか不明のままなのだ。
 そして一番気になるのは、職員全員に理由を尋ねても教えてくれないのだっ!! ・・・・・・なんで?


 あっ! そうそう、勇者達と別れたその次の日にピーチさんともお別れをした。


 ピーチさんは別れる前にぃ・・・・・・涙と鼻水を流しながらこう言ってきた。


 『グスッ!? エルライナちゅぁん、アナタと別れるのはぁ〜・・・・・・本当に寂しいわぁ~っ!!』


 私も寂しいです。と若干引きながら答えると、ピーチさんは俺の両手を握りながらこう言い始めた。


 『グスッ!? いつかアタシの第ニの故郷の魔国にある 乙女王国 の方にも来てちょうだぁ〜いっ!! アタシがしっかり案内してあげるわぁ〜!』


 あ・・・・・・はい。と返事をしながら心の中でこう思った。 だから"乙女王国"ってなに!? 絶対行きたくないっ!!? てか魔国の中にあるって・・・・・・どう言う事なの? と。


 そして今度は俺と一緒に見送りに来ていたグエルさん達第ニ騎士団に向かってこう言い始めた。


 『グエルちゅぁん達も頑張ってねっ! 特にエイミーちゅぁんはアタシの自慢の子なんだから頑張ってほし、ブッ!?』


 ピーチさんが話して最中なのに、なぜかは知らないがエイミーさんが塩をき・・・・・・いや、塩をピーチさんに向かって投げつけ始める。


 『エイミーちゅぁ、ワップ!? なんでアタシにワッ!!? 塩を投げブッ!!!?』


 『うるさい! うるさい!! うぅ〜るぅ〜さぁ〜いいいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜っっっ!!!? アンタなんかぁ〜・・・・・・アンタなんか、さっさとどっかに行きなさいっっっ!!! シッ! シッ!』


 『そんな、ワプッ!? ・・・・・・ひヒドいわエイミーちゅぁ〜んっ!! 昔はアタシに、おとブヘッ!?』


 『ガァァァアアアアアア〜〜〜ッッッ!!!』


 そう雄叫びを上げながら高速で塩を投げ続けるエイミーさんに対して、ピーチさんは逃げるように馬にまたがると振り向いてこう言った。


 『エイミーちゅぁんっ!! アタシはぁ・・・・・・アタシは諦めないわぁ〜っっっ!!! いつか昔みたくアタシの事をしたってくれると信じてるわよぉ〜! うぇぇぇええええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜んっっっ!!!?』


 そう叫び、涙と体についた塩を周りにりばめながら帰って行く姿を俺とグエルさん達が見つめるが、誰も名残惜しい雰囲気を出してなかったのは言うまでもない。


 そして現在掃除用具の片付けが終わったので休憩をしようと椅子に座ったのだがぁ・・・・・・・。


「おねーちゃん、おそうじおわったのぉ?」


 いつの間にか小さな女の子が後ろにいて声をかけ来たのだ。


 「う、うん終わったよ」


 俺がそう言うとその子は目を輝かせながら右手に抱きついて来た。


「じゃあじゃあおねーちゃんっ! ネイとあそぼうあそぼうっ!!」


 ええ〜、それはちょっと困るんですけどぉ〜っ!?


 「ああ〜っ!? ネイずるいぞ! ボクだっておねえちゃんとあそびたいよぉ〜〜〜っ!!」


 男の子がそう言いながら俺の左腕に抱きつくとネイちゃんと睨み合う。


 「ヤァ〜ッ! ネイがさきなのぉ〜ッ!!」


 「ボクのほうがさきぃ〜ッ!!」


 「ムゥ〜ッ!」


 「ブゥ〜ッ!」


 二人はほほふくらませると俺の両手を使って綱引きを始めだす。
 なぜこうなっているかと言うと、事の発端ほったんは総合ギルドに依頼を探しに行った時の事。
 どの依頼を受けようか探しているところに後ろからラミュールさんに声をかけられて、こう言ってきたのだ。


 『すまないがエルライナ、お前にしか頼めない依頼があるのだが・・・・・・受けてくれるか?』


 『私しか頼めない依頼ですか? ・・・・・・うぅ〜〜〜ん』


 ラミュールさんが俺個人に頼む依頼となると・・・・・・強力なモンスター退治か、それともまた魔人関係なのかな?


 『・・・・・・気乗りしない気持ちなのは分かる。しかしこの依頼をお前が受けないと言われてしまうと、どうするか悩み物なってしまうな』


 依頼書を見つめながら悩んだ顔するラミュールさんをするのを見てため息をく。


 ラミュールさんが困ってる・・・・・・なら仕方ない!


 『私が依頼を受けましょうか?』


 『なに? 本当かっ!!』


 『はい、一応確認するんですがぁ・・・・・・その依頼どれぐらい危険な依頼なんですか?』


 『命の危険はないから安心しろ』


 命の危険はない?


 『まさかぁ・・・・・・この前の配達みたいな依頼ですか?』


 『・・・・・・そうだ』


 それなら危険はないから受けようかな? まぁこの前みたいな事件はないよねぇ〜? ・・・・・・多分。


 『念の為に確認するが、本当に依頼を受けてくれるんだな?』


 『え、ええ・・・・・・受けますよ』


 顔を近づけて俺に言ってくるので少し仰け反りながらそう答えてしまう。


 『そうか、それは良かった。でだ、この書類にサインして欲しい』


 『えっとなになに・・・・・・えっ!?』


 ラミュールさんは手に持っている書類を見せてくるので内容を読んだ俺は声を出して驚いてしまう。


 『どうした、なにか問題でもあるのか?』


 『問題もなにも孤児院の清掃って・・・・・・誰でも出来ますよね?』


 しかも報酬が銅貨五枚・・・・・・安すぎるっ!!


 『その孤児院で働いている人の一人が腰を痛めてしまった為、手が回らない状況らしいんだ。掃除だけでもやってくれる人がいれば助かるらしい』


 『へぇ〜、そうなんですかぁ』


 一人抜けると仕事が大変になると言う事は働いている人の人数が少ないんだろうなぁ。しかも報酬が少ないとなると給料も安いところなのかな?


 『そんな事より早く書類に名前を書け。私はお前のように暇じゃないんだ』


 『えっ! 書け。 って・・・・・・この依頼を私がやるんですかっ!?』


 俺が驚いていると、ラミュールさんはまゆをつり上げて顔を近づけてきた。


 『エルライナ・・・・・・お前さっきの発言はウソだったのか?』


 『え! う、ウソ・・・・・・ですか?』


 『お前はこの依頼を受けると言っただろ』


 『あっ!?』


 確かに言った! だけどもぉ・・・・・・。


 『ま、待ってくださいラミュールさんっ!! 私はそう言う依頼だと思わなかったので、その依頼は他の人に・・・・・・』


 『つべこべ言わず受けろ』


 そう言いながら差し出している書類を強調してくる。


 『いや・・・・・・でもその依頼はちょっとぉ・・・・・・』


 『良・い・か・ら・やれっ!!』


 う、うわぁ〜!? ラミュールさんがものスゴく怖い。


 『・・・・・・はい、受けます』


 そして今にいたる・・・・・・てか子供増えてない?


 「おねぇーちゃん! なにしてあそぶ?」


 「ダメ! ネイがさきなのぉ〜!!」


 あぁ〜ヤバい、ネイちゃん泣きそうになってる。


 「おねぇーちゃん、かみキレイ! いいなぁ〜!」


 そう言いながら髪を触って遊び始める女の子が一人。


 「おねぇちゃん、なんでかみのけ白いの? しらが?」


 失礼な男の子に対して大人である俺は丁寧に答える。


「昔から白かったから、白髪しらがじゃないよ」


 「ふ〜ん、そうなんだ。それよりも、おれたちとあそぼうぜ!!」


 おい、聞いてきてそれかよっ!!


 「こらアナタ達! 彼女を困らせてはいけませんよ! 離れてなさいっ!!」


 『はぁ〜いっ!!』


 修道院の服を着た男性がそう言うと子供達は元気な返事をしながら俺から離れてくれる。


 「すみません。子供達が迷惑をおかけしました」


 「いえ気にしてませんよ。院長の言う事を素直に聞ける良い子達ですね」


 ホント、どっかの誰かさん達に見せて見習わせたいぐらいにね・・・・・・。


 「そのようすでしたら、お掃除が済んでいらっしゃるみたいですね。どうぞ、ゆっくりして行ってください。お茶の方も用意いたしますので」


 おお〜、お茶まで頂けるのか! 親切ですねぇ〜。あっ!? でも今孤児院は大変な状況だから悪い気がするなぁ・・・・・・止めておこう。


 「いえ、お気持ちだけ受け取ります。それよりも一つお訪ねしたい事があるのですがぁ・・・・・・聞いても大丈夫ですか?」


 「ええ、構いませんよ」


 「腰を痛めてしまった方の容態は大丈夫なんですか?」


 院長は笑顔を俺に見せるとこう言ってきた。


 「ええ、大丈夫ですよ。今日休めば明日復帰が出来るみたいです」


 「明日復帰出来る・・・・・・あれ?  腰痛ようつうってそんなに早く治る病気でしたっけ?」


 そう言いながら首を傾げていると院長が俺を見つめながら笑い始めた。


 「ハッハッハッ! 腰痛なら医者に見て貰うよりも、教会の方で回復魔法を受けたので治りが早いんですよ」


 「あ! なるほど、そう言う事でしたか。それなら安心しました」


 怪我とかの場合は薬とかを使うよりも、魔法で治療した方が治りが早いみたいだね。なら医者の方は風邪とかの病気の治療がメインになるのかな?


 「それじゃあ私はようが済んだので、総合ギルドの方に行きますね」


 「もう行ってしまわれるんですか?」


 「ええ、お忙しいところに私が長いするのは、返って迷惑ですからね」


 椅子から立ち上がり総合ギルドに行こうとしたのだが子供達が俺のズボンを掴んでくる。


 「おねぇーちゃん、もういっちゃうのぉ?」


 「さびしいよぉ~!」


 「いっちゃヤダァ~ッ!?」


 「ネイとあそんで、あそんでよぉ~っ!?」


 止めて、そのつぶらな瞳で俺を見ないで・・・・・・ここを立ち去るのに罪悪感を感じちゃうからさっ!!


 「今度孤児院に来たら遊んであげるよ」


 「ホント?」


 「ホント」


 「ウソつかない?」


 「ウソつかないよ」


 「やくそくだよ」


 「約束するよ」


 結構しつこいな。


 そう思いながら院長に顔を向けると、にこやかそうな顔で俺を見つめていた。


 「それではどうも、依頼ありがとうございました!」


 「いえいえ、また機会があれば受けて下さい。この子達もアナタの事を気に入っているので」


 「ハハハッ・・・・・・善処ぜんしょします」


 そう言った後に院長と子供達に向かって手を振りながら孤児を出て総合ギルドに向かうが、その道中でこんな事を思っていた。


 今度からは頼まれた依頼を確認してから依頼を受けるか受けないか決めよう!

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