クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第14話

 ~~~ 勇者 side ~~~


 「よいしょっと!」


 「グギャッ!?」


 「よっと!」


 「ギャアッ!?」


 「これでラスト。おりゃっ!」


 「ギュギッ!?」


 大輝は掛け声と共に次々とゴブリン達を手に持っている剣で身体を真っ二つに切り裂いて行く。そしてすべてを倒し終えるとため息を吐き、後ろにいる美海達に体を向ける。


 「流石に五階じゃ手応えないなぁ〜」


 「深いところに潜りたいのは分かるけど、明日の事を考えて浅いところだけ。って言ったでしょ。約束を忘れたの?」


 眉間にシワを作り顔を近づけて話をする美海に対して大輝は後退りしながら答える。


 「ま、まぁ・・・・・・そうだけどさ」


 「大輝がこの前転移魔法を書いた魔法用紙を全部使っちゃったから悪い。高くて入手しにくいのに・・・・・・」


 「うっ!? い、伊織・・・・・・あの時はまだゲーム感覚があったからさ、ついやっちゃったんだよ。だから補充しようと買いに行ったんだよ。でもさ・・・・・・」


 「高くて手が出せなかったんでしょ?」


 「うぐっ!?」


 「・・・・・・反省してるから許すけど」


 その言葉を聞いた大輝はホッとする。


 「でも美海、私も大輝と同意件。敵に手応えを感じないからつまらない。美海もそう思ってるよね?」


 「そうね・・・・・・伊織の言う通りだわ。もう五階下に行けばボスだから、ボスに期待して見ましょう」


 「ん、分かった」


 伊織はそう言いながら頷くが。


 「久しぶりのボス戦かぁ〜、楽しみだなぁ~! お宝はなの出るんだろう?」


 浮かれている大輝を見た美海は、呆れてた顔をしながら頭に手を当ててしまう。


 「全くアンタはぁ・・・・・・自分の命がかかっているのを忘れないでよね!」


 「もちろん忘れてないから安心してくれ。もう倒したゴブリンが魔石に変わったから魔石回収しよう。全部拾ったら先に進むか」


 「そうね」


 「うん」


 美海と伊織は大輝に返事をした後に床に転がっている親指の爪ほどの大きさの無色の石を回収し終えると、下の階層へ続く階段を探す為に狭い通路を歩き出す。そしてしばらく歩いていると開けた部屋に出る。


 「なんか、ほかの部屋よりも広い部屋に出たけどぉ・・・・・・なにも起こらないわよね?」


 「美海、敵の気配がないから大丈夫だと思うよ」


 「・・・・・・伊織がそう言うのなら大丈夫よね」


 「おっ!」


 二人で話し合っていると大輝の声がしたので、そちらに顔を向ける。


 「どうしたの大輝?」


 「二人共あれを見てみろよ! 階段があるぜ!」


 大輝の指をさす方向を見てみると部屋の真ん中に階段があった。


 「どうする、もう下の階に降りるか?」


 「他に目ぼしい物が見当たらないから降りて良いと思うよ」


 「私も降りて構わないと思うわ」


 「じゃあ決定だな! 下の階に降りようぜ!」


 大輝のその言葉を聞いた二人は頷き階段に近づくが突如異変が起こる。


 「危ないっ!!」


 大輝は二人の身体を引っ張りながら階段から離れたその瞬間に、上から大量に黒い槍が降り注ぎ階段に次々と突き刺さって行く。そのようすを美海と伊織は唖然とした顔で見つめていた。


 「二人とも大丈夫か?」


 「・・・・・・平気」


 「え、ええ・・・・・・私も大丈夫よ。でもこれは一体なに?」


 「ダンジョントラップにしてはおかしい」


 まるで自分達がダンジョントラップに引っかかってしまったような感じではなく、誰かが自分達を狙って・・・・・・狙って?


 「惜しかったですね。もう少しで殺せたのに・・・・・・まぁこれぐらいの事でやられるのでは勇者とは言えませんしね」


 「誰だっ!?」


 声のする方向に顔を向けると床からスーツを着た男が黒い霧とともに浮き出てくる。


 「どうも、勇者ダイキさん。それにミウ様とイオリ様。私の名はドーゼムです。彼の方にお仕えしている者の一人です」


 大輝達に向かい礼をすると、そのまま手を組み見つめる。


 「なっ、魔人!? どうしてここに?」


 「僭越せんえつながら申し上げますと、先日わたくしの方に貴殿方がこの迷宮に入ると言う情報を聞いたので待ち伏せをしていましたのです。そしてわたくしが仕掛けた罠にかからなかったのはお見事でした」


 「あれ、お前が仕掛けた罠だったのか?」


 「ええ、そうです」


 罠に掛からなかった。普通の人なら悔しがるのだが目の前にいる魔人は平然としているのが、不気味に感じて仕方がない。


 そんな中、美海がドーゼムに向かって話始める。


 「罠にかからなかったのに、なんで平然としているのよ」


 「私は罠にかかってもかからなくても、どちらでも良かったのですよ」


 「はぁ?」


 意味が分からない。大輝達がそう思っている中でドーゼムは話を続けていく。


 「罠に掛かって倒せたのならそれはそれで良し。勇者様方はそこまでの強さだった。と言うだけの事・・・・・・たったそれだけの事です。そして、わたくしの仕掛けた罠を見破った勇者様方にとても興奮を感じておりますよ」


 ドーゼムは自身の手を懐かしそうに見つめながら語り始める。


 「わたくしが魔人になってからは少々退屈な日々の続く生活でしたが、やっと私事と見合う者が目の前に現れました。さあ勇者様方、周りをご覧下さい。まだ襲わないのでご安心下さい」


 「は、はぁ・・・・・・ッ!?」


 魔人にそう言われたので大輝達は辺りを見回すと、なんと階段と部屋の通路が土壁つちかべになっていた。


 「ど、どういう事なんだっ!?」


 「通路が塞がれてるっ!!」


 動揺して辺りをを見回し続ける大輝と美海だが伊織だけがドーゼムを見つめて話し始める。


 「・・・・・・もしかして、この為に私達と長々と話していたの?」


 「ご名答ですイオリ様。これでわたくしから逃げられる事が出来なくなりました」


 「そんなぁ・・・・・・」


 「そして、ここから出たいのであれば二つの条件があります」


 「条件?」


 「それはわたくしを倒すか。もしくは降伏して我々に従うかの二つです」


 「誰がお前らなんかに従うかっ!!」


 「そうよ、あなた達の好きにはさせないわっ!!」


 「ん、同意」


 大輝達は剣を抜きドーゼムに向かって構えるとドーゼムは笑い始める。


 「ハッハッハッ! それでこそ勇者! 戦いがいがありますねっ!!さぁ、始めましょうか! わたくしとの死闘をっ!!」


 ドーゼムは勇者達を狂喜きょうきの顔で見つめていた。








 ~~~ エルライナ side ~~~


 「おっと!」


 これで三回目の急停止、正直もう慣れたので倒れ込む事はしない。


 「亜人の迷宮に着きました。お荷物のお忘れものないように気をつけて下さい」


 「ありがとうございました!」


 俺は御者さんにお礼を言って降りた後に背伸びをする。


 「やっと着いた。なんだか疲れちゃいましたね」


 「ウフフゥ~! 馬車は揺られるから疲れを感じちゃうのよぉ~。ちょっと休憩してから潜りましょうかしらぁ~?」


 「そうですね。一応今さら確認しますけど、何階まで潜るつもりなんですか?」


 「そうねぇ~、アナタの試験の為の下見程度しか考えてないからぁ~。五階行けば良いぐらいかしらねぇ~」


 まぁピーチさんが言う通り、それぐらいが妥当かな。
 別にダンジョン攻略が目的じゃないし、浅いところを見て回る事しかピーチさんは考えてないから、ピーチさん自身が持ってきた荷物も少ない。もし俺が深いところに潜りたいと言っても即決で却下されそうな感じだとも分かる。


 「それじゃあ少しの間休憩してて良いわよぉ~、アタシ買い物したいからそこのベンチでゆっくり待っててねぇ~!」


 「はい」


 「うんうん、それじゃあ後でねぇ~!」


 「行ってらっしゃい!」


 ピーチさんを見送るとベンチに勢いよくもたれかかる。


 「フゥー・・・・・・疲れたぁ」


 今回の事で地球がどれだけ技術進歩したか身体で感じて理解したよ。馬車の揺れと振動のせいで身体中に疲れが溜まって本当にヘトヘトになってしまったよ。


 「・・・・・・ん?」


 通信? 今回は神様からじゃなくメルティナさんからだ。あの人から連絡してくるのは珍しいな。


 そう思いながらコールボタンを押すとスクリーンに慌てたようすを見せるメルティナさんが映し出される。


 「メルティナさん、どうかしましたか?」


 『急にすみませんエルライナさん!』


 「いえ、別に構いませんけど。メルティナさんから連絡してくるなんて珍しいですね。なにかあったんですか?」


 どうせまた神様が俺の所持してる銃を勝手にカスタマイズしてるって話しでしょ。ホントあの人も懲りないねぇ。


 『はい! 神様は今お忙しいので代わりに私がお伝えします! 実は今緊急事態なんです!』


 「緊急事態?」


 あら、予想が外れた。でも緊急事態って・・・・・・一体何があったんだろう?


 『実はアナタが今から入ろうとしている亜人の迷宮に勇者さん達がいるんですけどぉ・・・・・・』


 なぬっ!? 勇者が亜人の迷宮にいるだって! 一体どういう事なの?


 『危険な状況に陥っているので助けて頂きたいのです!』


 「え、ウソッ!? ・・・・・・う~ん」


 勇者と会ったらさ、めんどくさそうな感じがするなぁ。そもそもの話しが、なんでそうなってるの?


 『気が進まないのは分かります。ですが今回の件を解決して頂ければ報酬もアナタに渡します! それに勇者様達はアナタの元クラスメイトではないのでご安心して下さい!』


 「そこら辺は分かっているので大丈夫です。後、私が勇者達に対して心配してるのは一つだけです」


 『一つだけ・・・・・・それはなんですか?』


 「勧誘ですね。絶対私を仲間に入れようとしますよね」


 自分の力を過信しているわけではないが、俺は並大抵の冒険科よりは強いのは自分自身理解している。しかし知識の方は乏しいのが難点であるけどね。


 『あ、なるほど! それでしたら私の方で任せて頂けないでしょうか?』


 「なにか方法があるんですか?」


 メルティナさんなら神様より信用出来るので任せようかな。


 『ええあります。なので安心して助けに行って頂けないでしょうか?』


 「分かりました引き受けます」


 『ありがとうございます。アナタしか頼める人がいなかったので、本当に助かりますし、頼りになります』


 た、頼りになるっ!?


 「ッ~~~!? はうううっっっ!!?」


 そう言いながら頭を下げるメルティナさんに対して顔を赤くしてしまう。


 「と、とにきゃく・・・・・・めひっ、迷宮で注意しひゃい・・・・・・しないといけない事はなんですか?」


 呂律が・・・・・・でもなんとか言えたから大丈夫。


 『えっとですねぇ・・・・・・罠に気をつけて下さい。と言いたいのですがアナタなら大丈夫そうですね』


 「なんでですか?」


 『罠のほとんどがスイッチ式でその上に偽装魔法をかけて見えなくしているのですが、アナタなら偽装魔法が効かないのでハッキリと見えるはずです。
 後、マップの方はチート級ですね。ダンジョンのフロアを丸々見る事が出来て、しかも階段の位置まで表示するので最短距離が分かるようになっているみたいです』


 「ほぇ~・・・・・・」


 予想はしていたけどここまでとは思わなかった!


 『後の事はエルライナ様にお任せしますね。ご武運を』


 「ちょっと待って下さい!」


 『どうしたんですか?』


 ちょっと気がかりな事を感じてしまう。


 「メルティナさん、どうしてチートって言葉を知ってるんですか?」


 『え? あ、あぁ~! そうですね。アナタの世界の流行りを調べていて知ったんですよ! 本当ですよっ!!』


 「あ・・・・・・はい」


 う~ん、なんかやけに慌ててるな。


 『と、とにかく勇者様達を助けてあげて下さいね! エルライナ様、頼みましたよっ!!』


 そう言い終えると一方的に通信を切ってくる。


 なんか悪い事したかなぁ~?


 「・・・・・・それよりも助けに行かないとピーチさんが来たら・・・・・・なんて言おうか?」


 俺は腕を組んだ後にどう言って説得しようかうなりながら考え始めるのであった。

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