クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第10話
 ~~~ エイミー 四歳 ~~~
 家の玄関を開けてから、 ただいま。 と言って家の中へ入ると愛しい我が子が笑顔で駆け寄って来る。
 「パパさまぁ~! おかえりぃ~!」
 「エイミー。ただいま」
 仕事から帰って来た彼は、駆け寄ってくる愛しい我が子を抱き上げてから頭を撫でると嬉しそうな顔を見せた。
 「パパさまはきょうも、へいわをまもるしごとをがんばったの?」
 「ああ、そうだよエイミー。なんだって俺は騎士団だからね」
 「パパさま、かっこいい!」
 「あははは! ありがとうエイミー」
 「おおきくなったら、パパさまみたくなるぅ~!」
 「オネショしているエイミーになれるかなぁ~?」
 「むぅ~っ!?」
 可愛い我が子は頬を膨らませた後に、こう言ってきた。
 「おとうさまみたく、ぜったいなるもん!!」
 その目には強い意志が宿っていたのを俺は今でも覚えている・・・・・・。
 ~~~  エイミー 十歳 ~~~
 「おめでとう、エイミー!」
 「よくやった、エイミー!」
 「ありがとうございます。お父様、お母様」
 お礼を言う彼女の手にはリードガルム魔法学園主催の剣術大会十歳部で優勝の証である。トロフィーが抱えられていた。
 「エイミーもここまでやるとは、頼もしいな」
 「お父様・・・・・・いいえ、お父様の稽古のおかげですっ!」
 エイミーの顔を見ると笑顔で返事をしてくる。私に誉められて嬉しいんだろう。
 「そうか・・・・・・お前の将来が楽しみだ」
 「嬉しいですが、私はまだまだです!」
 「なぜだ? 魔法学園内の同い年でお前に敵う者はいないだろう?」
 「いいえ、お父様。今回は優勝出来ましたが次はどうなるか分かりません。それに私はお父様のように強くなるのが目標なので、ここで満身しては行けませんっ!!」
 「そうか、そうかぁ・・・・・・」
 こんなにも自分を目指す高み、そして誇りに思ってくれる我が子がいるなんて・・・・・・俺はなんて幸せ者なのだろう!
 跳び跳ねるような嬉しさを感じた事を今でも覚えている。
 ~~~ エイミー 十五歳 ~~~
 「エイミー、学園卒業おめでとう」
 「ありがとうございます。お父様!」
 成長した我が子は目元にうっすら涙を浮かべながら嬉しそうに私に答える。
 「そして第二騎士団への入団おめでとう。お前の実力がこの国に認められた証拠だ」
 「はい。お父様! 嬉しいのですが・・・・・・」
 「ん、どうしたんだ?」
 さっきまでとは違い暗い顔をしながら私を見てくる。
 「お父様は騎士団長を引退するんですね?」
 「ああ、そうだ。私がいつまでも団長をしているわけにはいかないからな。俺が騎士団長に適任だと思えたグエルを就任させた」
 「お父様・・・・・・私はお父様と共に戦いたかったです」
 「俺もエイミーの実力を見てみたかったが引退時期と重なってしまったのだ。仕方ないことさ」
 顔下げてままでいるエイミーの両肩に手を置き声を掛ける。
 「・・・・・・」
 無言のままで何も答えないエイミーを気にかけつつも話し続ける。
 「いいか、エイミー? 俺は騎士団を辞めたが戦う事を辞めたわけではない」
 「えっ!?」
 「総合ギルドへ行って冒険科に登録をして旅をする事にした」
 「旅・・・・・・ですか?」
 顔を上げた彼女がそう聞いてくるので俺は優しく語りかけるように話す。
 「そうだ。この世界には俺の知らない事がある。俺より強い人が沢山いる。だからそれを知りに各地を見て回ろうと思っている」
 「そうですか・・・・・・」
 「お前は自分自身の夢を追うんだ。俺のような騎士になる夢をな」
 「はい・・・・・・はい!」
 エイミーの顔に明るさが戻ってくる。
 「お父様! 私は立派な騎士になって見せます! だからお父様も頑張って下さい!」
 「ああ、期待してるぞエイミー」
 「はい、お父様」
 後日、俺は冒険科に登録して家族に見守られながら旅に出た。
 ~~~ 現在 ~~~
 「なんでなのよぉぉぉおおおおおおっっっ!!! うぇぇぇええええええええええええんっっっ!!!?」
 喫茶店の中にピーチさんの泣き声が響き渡る。
 あの後、ベイガーさんに頼まれてこの人を追いかける事になった。本当は嫌だったけど、あんなにしつこくお願いされたら断れなかったので、 はい。 と言って追いかける事にした。
 そしてピーチさんを探しに行ったら、なぜか道の真ん中で女の子座りをして泣いていたので起き上がらせて近くの喫茶店に連れていった。しかも連れてってる最中周囲の視線が痛かった。
 「エイミーちゅぁんは・・・・・・グスッ!? アタシを誇りだと言ってたのにぃ~〜〜っ!!」
 ・・・・・・そりゃあ、今の姿にエイミーさんの感じていた誇りはないよ。だって魔法少女コスしてる筋肉質なおっさんだよ? 地球じゃそんな格好で街中を歩いていたら警察に通報されてもおかしくないよ。
 「どうしてぇ・・・・・・どうしてエイミーちゃんはアタシの事を避けるようになったのよぉぉぉおおおおおおっっっ!!!?」
 泣きながら俺が用意したティッシュを手に取り、鼻をかむと近くにあるゴミ箱に入れる。
 そりゃあ自分の親がこんな風になってたら誰だってショックを受けてあんな風になるだろう。
 てかエイミーさんがファザコンだったのは意外だった。あ! もうティッシュがなくなってるじゃん。
 テーブルに置いたカラのティッシュ箱を手に取り、アイテムボックスから二つ目のティッシュ箱をテーブルに置く。
 「ライナちゅぁん・・・・・・グスッ!? ありがとぉ~・・・・・・」
 「あのぉ~、ピーチさん?」
 「なにかしらぁ~?」
 ここは思いきって言ってみよう。
 「と、とりあえずエイミーさんの前では今の着ている服じゃなく、普通の服を着て前の口調に戻せば会ってくれるんじゃないかなぁ?」
 「・・・・・・グスッ!? そうなのかしらぁ~?」
 「そ、そうだと思いますよ」
 エイミーさんとピーチさんの関係回復の為にも頑張ってみようっ!!
 「だから、すぐ近くの洋服店に行って買って着ましょう!」
 俺自身、側で歩いていて恥ずかしかったし、なによりもヒソヒソ話がヘッドセットを通じて聞こえて精神的にダメージを追ってた。ある意味疲れるよこれは。
 「そうすればエイミーさんは前のように接してくれると思いますよ!」
 「・・・・・・そうねぇ~、う~ん・・・・・・」
 だ、ダメなのか?
 「確かに、 キューティクルピーチ を着ていると周りの視線が冷たいわねぇ~。今朝も門番さんが剣に手をかけてたわぁ~、 乙女王国 ではあり得ない事なのにねぇ~」
 なにその乙女王国って!? そんな国マジであるの?
 と言う言葉を出しかけたがなんとかここはこらえて、ピーチさんの話の続きを聞く。
 「増してや兵士に捕まったり他の冒険科と一緒クエストへ行った時も避けられたわぁ~。昔の友人や同僚も久々に会ったらアタシの事を避けたしぃ~・・・・・・」
 ピーチさんの顔を下げて淡々と話す姿を見た俺は、 ここがチャンスだ! と感じたので一気に畳みかける!
 「い、一応今回だけでも格好を変えてエイミーさんに会いましょうか、ピーチさん?」
 俺の言葉を聞いたピーチさんは思い詰めた表情をしながら見つめてくる。
 「・・・・・・そうすれば、エイミーちゃんは会ってくれるのかしらぁ~?」
 おおっ! 良い感じだ!
 「ええ」
 「妻もアタシに会ってくれるのかしらぁ~?」
 「え、ええ・・・・・・」
 妻にも避けられてるのかよっ!?
 「アタシのお家に入る事が出来るのかしらぁ~?」
 「・・・・・・ええ」
 出禁まで喰らってんかよっ!?
 「だ、だから準備しに行きましょう・・・・・・ね?」
 「・・・・・・」
 あれ・・・・・・大丈夫かなこの人?
 うつ向いたまま力なく項垂れて返事をしないピーチさんが心配になったので、顔を近づけて、 大丈夫ですか? と声をかけて確かめようとしたその瞬間。
 「だが断る」
 「にょわぁぁぁああああああああああああっっっ!!!?」
 至近距離でいきなりピーチさんが顔を上げてドヤ顔をしてくるものだから、椅子を突飛ばしながら仰向けに倒れてしまった。
 「痛たたた・・・・・」
 倒れた拍子に頭打っちゃったよ。うぅ~・・・・・・本当に痛い。
 「ごめんなさいねぇ~、ライナちゅぁんの提案には乗れないわぁ~。
 アタシはねぇ~、ピーチでいたいのぉ。それに今組んでるチームからアタシが抜けちゃったら四人に申しわけないものぉ~!」
 「え? ・・・・・・四人ですか?」
 「ええそうよぉ~、 フルーツプリティーズ って言うメンバーのみんなよぉ! 美しく、そして強い"乙女"で構成されたチームよぉ~!」
 「はぁ・・・・・・そうですかぁ」
 四人もピーチさんみたいな人がいるの? ・・・・・・ダメだ、全く想像がつかないっ! てか想像したくもないっ!!?
 「だからライナちゅぁん、アタシはピーチのままでいるわよぉ~!」
 「そ、そうですかぁ~・・・・・・」
 ゴメンなさいエイミーさん、俺にはどうする事も出来ないみたいだ・・・・・・。
 「おおー、二人ともここに居ったんかい! 探したでぇっ!!」
 「またお前は面倒事に巻きこれてたみたいだな。コイツが運が良いのか、それともエルライナに運が悪いのかどっちかだな」
 「あ、キオリさん! それにエイドさんも! ってどうしてここが分かったんですか?」
 店内を歩いて近づいてくる二人に質問すると笑顔で答えてくれる。
 「色んなヤツに聞いたんや。そしたらこの店に入って行ったちゅうから、ここに来たんや!」
 「まぁ、特徴的だったから探すのは楽だったぞ」
 ああ~、この世界でたった一人の白髪と魔法少女コスだもんね。確かに探そうと思えば楽かもしれないねぇ。
 「それはともかく、お前らに話をしに来たんだ」
 「あらぁ~、さっきのウルブ商会の事かしらぁ~?」
 「そ、そうです。第一騎士団並びにウルブ商会の会長とその護衛の部下達を逮捕したのは見てましたよね。捕まえた者達は取り調べを受けております」
 一応ピーチさんには敬語なんだ。
 「それとエルライナ」
 「はい」
 「依頼品を納品しているんなら納品確認書類を受け取るぞ。牙鬼組の書類はさっき貰った」
 「そうや! さっきお嬢ちゃんに渡し忘れとったから、エルお嬢ちゃんの代わりに総合ギルドへ持ってって渡しに行こう思うたら、総合ギルドのコイツに話しかけられたんや」
 「そして話しの流れで一緒にお前達を探しに行く事なったんだ」
 へぇー、そんな事があったんだ。
 そう思いながらメニューを出してからアイテムボックスを選択して、納品書類を出す。
 「はい、エイドさん」
 「おお、もう終わってたのか」
 エイドさんはそう言うと、俺の手から書類を受け取ると目を通して確認をし始める。
 「・・・・・・よし、報告と報酬は翌日にする。お前は宿に帰って休め」
 え、報告は今日の方が良いんじゃないですか? と言おうとした時にキオリさんが割って入ってくる。
 「そうや! エルお嬢ちゃんは休んだ方がええでぇ! 今日の昇格試験は来週持ち越しになるわ、第一騎士団に絡まれるわの災難続きやしな」
 「まぁ、言われてみればそうですねぇ~」
 本当に今日は厄日かもしれない。二人に言われた通りにしよう。
 「あらぁ、それは災難ねぇ~・・・・・・そうだわぁ~っ!!」
 ん、この人はなにを思い付いたんだ?
 「明日のアタシが一緒にダンジョンに潜ってあげるわぁ~!」
 「え! えぇっ!?」
 「アタシじゃあ~、なにか不満があるのかしらぁ~?」
 「ち、違いますよ! 私はまだEランクなので、ダンジョンに潜る事は出来ませんよ!!」
 だからそんな怖い顔をしないで欲しい!
 「色々規則があるがBランクの引率者が二人、もしくはAランクが一人いれば亜人の迷宮に行けるぞ。一応、これはBランクから教えられる事だから知らなくて当然だが」
 「アタシはAランクだから充分資格があるわよぉ~!」
 この人やたら強いと思ってたらAランクだったんだっ!!
 「まぁエルライナ。ダンジョンへの下見は違反じゃないから行って見て来た方がいいぞ」
 「はぁ・・・・・・エイドさんがそう言うのであれば行きますよ」
 ピーチさんは悪い人じゃないから。お世話になっても大丈夫だよね? ・・・・・・多分。
 「お願いします。ピーチさん」
 「それじゃあライナちゅぁん、明日の八時に北門に集合ねぇ~! 準備はしっかりしておくのよぉ~! アタシはこれからハニーに会いにお家に来るわぁ! はい、お金は置いておくわねぇ~! じゃあねぇ〜〜〜!!」
 そう言った後にスキップしながら店を出て行ってしまった。
 「あれ? 確かあの人・・・・・・出禁くらってたんじゃなかったっけ?」
 「エドリックさんは前はあんな風な人じゃなかったんだがな」
 うん、昔ばなしを聞いていてそうだろうと思った。
 「ほんま、人間どこでどうなるか分からんもんやなぁ~・・・・・・」
 「・・・・・・本当にそうですね」
 「そうだな」
 キオリさんの言葉に俺とエイドさんは深いため息を突いたのだった。
 家の玄関を開けてから、 ただいま。 と言って家の中へ入ると愛しい我が子が笑顔で駆け寄って来る。
 「パパさまぁ~! おかえりぃ~!」
 「エイミー。ただいま」
 仕事から帰って来た彼は、駆け寄ってくる愛しい我が子を抱き上げてから頭を撫でると嬉しそうな顔を見せた。
 「パパさまはきょうも、へいわをまもるしごとをがんばったの?」
 「ああ、そうだよエイミー。なんだって俺は騎士団だからね」
 「パパさま、かっこいい!」
 「あははは! ありがとうエイミー」
 「おおきくなったら、パパさまみたくなるぅ~!」
 「オネショしているエイミーになれるかなぁ~?」
 「むぅ~っ!?」
 可愛い我が子は頬を膨らませた後に、こう言ってきた。
 「おとうさまみたく、ぜったいなるもん!!」
 その目には強い意志が宿っていたのを俺は今でも覚えている・・・・・・。
 ~~~  エイミー 十歳 ~~~
 「おめでとう、エイミー!」
 「よくやった、エイミー!」
 「ありがとうございます。お父様、お母様」
 お礼を言う彼女の手にはリードガルム魔法学園主催の剣術大会十歳部で優勝の証である。トロフィーが抱えられていた。
 「エイミーもここまでやるとは、頼もしいな」
 「お父様・・・・・・いいえ、お父様の稽古のおかげですっ!」
 エイミーの顔を見ると笑顔で返事をしてくる。私に誉められて嬉しいんだろう。
 「そうか・・・・・・お前の将来が楽しみだ」
 「嬉しいですが、私はまだまだです!」
 「なぜだ? 魔法学園内の同い年でお前に敵う者はいないだろう?」
 「いいえ、お父様。今回は優勝出来ましたが次はどうなるか分かりません。それに私はお父様のように強くなるのが目標なので、ここで満身しては行けませんっ!!」
 「そうか、そうかぁ・・・・・・」
 こんなにも自分を目指す高み、そして誇りに思ってくれる我が子がいるなんて・・・・・・俺はなんて幸せ者なのだろう!
 跳び跳ねるような嬉しさを感じた事を今でも覚えている。
 ~~~ エイミー 十五歳 ~~~
 「エイミー、学園卒業おめでとう」
 「ありがとうございます。お父様!」
 成長した我が子は目元にうっすら涙を浮かべながら嬉しそうに私に答える。
 「そして第二騎士団への入団おめでとう。お前の実力がこの国に認められた証拠だ」
 「はい。お父様! 嬉しいのですが・・・・・・」
 「ん、どうしたんだ?」
 さっきまでとは違い暗い顔をしながら私を見てくる。
 「お父様は騎士団長を引退するんですね?」
 「ああ、そうだ。私がいつまでも団長をしているわけにはいかないからな。俺が騎士団長に適任だと思えたグエルを就任させた」
 「お父様・・・・・・私はお父様と共に戦いたかったです」
 「俺もエイミーの実力を見てみたかったが引退時期と重なってしまったのだ。仕方ないことさ」
 顔下げてままでいるエイミーの両肩に手を置き声を掛ける。
 「・・・・・・」
 無言のままで何も答えないエイミーを気にかけつつも話し続ける。
 「いいか、エイミー? 俺は騎士団を辞めたが戦う事を辞めたわけではない」
 「えっ!?」
 「総合ギルドへ行って冒険科に登録をして旅をする事にした」
 「旅・・・・・・ですか?」
 顔を上げた彼女がそう聞いてくるので俺は優しく語りかけるように話す。
 「そうだ。この世界には俺の知らない事がある。俺より強い人が沢山いる。だからそれを知りに各地を見て回ろうと思っている」
 「そうですか・・・・・・」
 「お前は自分自身の夢を追うんだ。俺のような騎士になる夢をな」
 「はい・・・・・・はい!」
 エイミーの顔に明るさが戻ってくる。
 「お父様! 私は立派な騎士になって見せます! だからお父様も頑張って下さい!」
 「ああ、期待してるぞエイミー」
 「はい、お父様」
 後日、俺は冒険科に登録して家族に見守られながら旅に出た。
 ~~~ 現在 ~~~
 「なんでなのよぉぉぉおおおおおおっっっ!!! うぇぇぇええええええええええええんっっっ!!!?」
 喫茶店の中にピーチさんの泣き声が響き渡る。
 あの後、ベイガーさんに頼まれてこの人を追いかける事になった。本当は嫌だったけど、あんなにしつこくお願いされたら断れなかったので、 はい。 と言って追いかける事にした。
 そしてピーチさんを探しに行ったら、なぜか道の真ん中で女の子座りをして泣いていたので起き上がらせて近くの喫茶店に連れていった。しかも連れてってる最中周囲の視線が痛かった。
 「エイミーちゅぁんは・・・・・・グスッ!? アタシを誇りだと言ってたのにぃ~〜〜っ!!」
 ・・・・・・そりゃあ、今の姿にエイミーさんの感じていた誇りはないよ。だって魔法少女コスしてる筋肉質なおっさんだよ? 地球じゃそんな格好で街中を歩いていたら警察に通報されてもおかしくないよ。
 「どうしてぇ・・・・・・どうしてエイミーちゃんはアタシの事を避けるようになったのよぉぉぉおおおおおおっっっ!!!?」
 泣きながら俺が用意したティッシュを手に取り、鼻をかむと近くにあるゴミ箱に入れる。
 そりゃあ自分の親がこんな風になってたら誰だってショックを受けてあんな風になるだろう。
 てかエイミーさんがファザコンだったのは意外だった。あ! もうティッシュがなくなってるじゃん。
 テーブルに置いたカラのティッシュ箱を手に取り、アイテムボックスから二つ目のティッシュ箱をテーブルに置く。
 「ライナちゅぁん・・・・・・グスッ!? ありがとぉ~・・・・・・」
 「あのぉ~、ピーチさん?」
 「なにかしらぁ~?」
 ここは思いきって言ってみよう。
 「と、とりあえずエイミーさんの前では今の着ている服じゃなく、普通の服を着て前の口調に戻せば会ってくれるんじゃないかなぁ?」
 「・・・・・・グスッ!? そうなのかしらぁ~?」
 「そ、そうだと思いますよ」
 エイミーさんとピーチさんの関係回復の為にも頑張ってみようっ!!
 「だから、すぐ近くの洋服店に行って買って着ましょう!」
 俺自身、側で歩いていて恥ずかしかったし、なによりもヒソヒソ話がヘッドセットを通じて聞こえて精神的にダメージを追ってた。ある意味疲れるよこれは。
 「そうすればエイミーさんは前のように接してくれると思いますよ!」
 「・・・・・・そうねぇ~、う~ん・・・・・・」
 だ、ダメなのか?
 「確かに、 キューティクルピーチ を着ていると周りの視線が冷たいわねぇ~。今朝も門番さんが剣に手をかけてたわぁ~、 乙女王国 ではあり得ない事なのにねぇ~」
 なにその乙女王国って!? そんな国マジであるの?
 と言う言葉を出しかけたがなんとかここはこらえて、ピーチさんの話の続きを聞く。
 「増してや兵士に捕まったり他の冒険科と一緒クエストへ行った時も避けられたわぁ~。昔の友人や同僚も久々に会ったらアタシの事を避けたしぃ~・・・・・・」
 ピーチさんの顔を下げて淡々と話す姿を見た俺は、 ここがチャンスだ! と感じたので一気に畳みかける!
 「い、一応今回だけでも格好を変えてエイミーさんに会いましょうか、ピーチさん?」
 俺の言葉を聞いたピーチさんは思い詰めた表情をしながら見つめてくる。
 「・・・・・・そうすれば、エイミーちゃんは会ってくれるのかしらぁ~?」
 おおっ! 良い感じだ!
 「ええ」
 「妻もアタシに会ってくれるのかしらぁ~?」
 「え、ええ・・・・・・」
 妻にも避けられてるのかよっ!?
 「アタシのお家に入る事が出来るのかしらぁ~?」
 「・・・・・・ええ」
 出禁まで喰らってんかよっ!?
 「だ、だから準備しに行きましょう・・・・・・ね?」
 「・・・・・・」
 あれ・・・・・・大丈夫かなこの人?
 うつ向いたまま力なく項垂れて返事をしないピーチさんが心配になったので、顔を近づけて、 大丈夫ですか? と声をかけて確かめようとしたその瞬間。
 「だが断る」
 「にょわぁぁぁああああああああああああっっっ!!!?」
 至近距離でいきなりピーチさんが顔を上げてドヤ顔をしてくるものだから、椅子を突飛ばしながら仰向けに倒れてしまった。
 「痛たたた・・・・・」
 倒れた拍子に頭打っちゃったよ。うぅ~・・・・・・本当に痛い。
 「ごめんなさいねぇ~、ライナちゅぁんの提案には乗れないわぁ~。
 アタシはねぇ~、ピーチでいたいのぉ。それに今組んでるチームからアタシが抜けちゃったら四人に申しわけないものぉ~!」
 「え? ・・・・・・四人ですか?」
 「ええそうよぉ~、 フルーツプリティーズ って言うメンバーのみんなよぉ! 美しく、そして強い"乙女"で構成されたチームよぉ~!」
 「はぁ・・・・・・そうですかぁ」
 四人もピーチさんみたいな人がいるの? ・・・・・・ダメだ、全く想像がつかないっ! てか想像したくもないっ!!?
 「だからライナちゅぁん、アタシはピーチのままでいるわよぉ~!」
 「そ、そうですかぁ~・・・・・・」
 ゴメンなさいエイミーさん、俺にはどうする事も出来ないみたいだ・・・・・・。
 「おおー、二人ともここに居ったんかい! 探したでぇっ!!」
 「またお前は面倒事に巻きこれてたみたいだな。コイツが運が良いのか、それともエルライナに運が悪いのかどっちかだな」
 「あ、キオリさん! それにエイドさんも! ってどうしてここが分かったんですか?」
 店内を歩いて近づいてくる二人に質問すると笑顔で答えてくれる。
 「色んなヤツに聞いたんや。そしたらこの店に入って行ったちゅうから、ここに来たんや!」
 「まぁ、特徴的だったから探すのは楽だったぞ」
 ああ~、この世界でたった一人の白髪と魔法少女コスだもんね。確かに探そうと思えば楽かもしれないねぇ。
 「それはともかく、お前らに話をしに来たんだ」
 「あらぁ~、さっきのウルブ商会の事かしらぁ~?」
 「そ、そうです。第一騎士団並びにウルブ商会の会長とその護衛の部下達を逮捕したのは見てましたよね。捕まえた者達は取り調べを受けております」
 一応ピーチさんには敬語なんだ。
 「それとエルライナ」
 「はい」
 「依頼品を納品しているんなら納品確認書類を受け取るぞ。牙鬼組の書類はさっき貰った」
 「そうや! さっきお嬢ちゃんに渡し忘れとったから、エルお嬢ちゃんの代わりに総合ギルドへ持ってって渡しに行こう思うたら、総合ギルドのコイツに話しかけられたんや」
 「そして話しの流れで一緒にお前達を探しに行く事なったんだ」
 へぇー、そんな事があったんだ。
 そう思いながらメニューを出してからアイテムボックスを選択して、納品書類を出す。
 「はい、エイドさん」
 「おお、もう終わってたのか」
 エイドさんはそう言うと、俺の手から書類を受け取ると目を通して確認をし始める。
 「・・・・・・よし、報告と報酬は翌日にする。お前は宿に帰って休め」
 え、報告は今日の方が良いんじゃないですか? と言おうとした時にキオリさんが割って入ってくる。
 「そうや! エルお嬢ちゃんは休んだ方がええでぇ! 今日の昇格試験は来週持ち越しになるわ、第一騎士団に絡まれるわの災難続きやしな」
 「まぁ、言われてみればそうですねぇ~」
 本当に今日は厄日かもしれない。二人に言われた通りにしよう。
 「あらぁ、それは災難ねぇ~・・・・・・そうだわぁ~っ!!」
 ん、この人はなにを思い付いたんだ?
 「明日のアタシが一緒にダンジョンに潜ってあげるわぁ~!」
 「え! えぇっ!?」
 「アタシじゃあ~、なにか不満があるのかしらぁ~?」
 「ち、違いますよ! 私はまだEランクなので、ダンジョンに潜る事は出来ませんよ!!」
 だからそんな怖い顔をしないで欲しい!
 「色々規則があるがBランクの引率者が二人、もしくはAランクが一人いれば亜人の迷宮に行けるぞ。一応、これはBランクから教えられる事だから知らなくて当然だが」
 「アタシはAランクだから充分資格があるわよぉ~!」
 この人やたら強いと思ってたらAランクだったんだっ!!
 「まぁエルライナ。ダンジョンへの下見は違反じゃないから行って見て来た方がいいぞ」
 「はぁ・・・・・・エイドさんがそう言うのであれば行きますよ」
 ピーチさんは悪い人じゃないから。お世話になっても大丈夫だよね? ・・・・・・多分。
 「お願いします。ピーチさん」
 「それじゃあライナちゅぁん、明日の八時に北門に集合ねぇ~! 準備はしっかりしておくのよぉ~! アタシはこれからハニーに会いにお家に来るわぁ! はい、お金は置いておくわねぇ~! じゃあねぇ〜〜〜!!」
 そう言った後にスキップしながら店を出て行ってしまった。
 「あれ? 確かあの人・・・・・・出禁くらってたんじゃなかったっけ?」
 「エドリックさんは前はあんな風な人じゃなかったんだがな」
 うん、昔ばなしを聞いていてそうだろうと思った。
 「ほんま、人間どこでどうなるか分からんもんやなぁ~・・・・・・」
 「・・・・・・本当にそうですね」
 「そうだな」
 キオリさんの言葉に俺とエイドさんは深いため息を突いたのだった。
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