クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第2話

 総合ギルドに着き中に入ると、メニューを開き時間を確認する。


 「7時26分かぁ。受け付けしたら少しゆっくり出来そうだ」
 



 メニューを閉じて冒険科のカウンターに並んだけれどもぉ・・・・・・。


 「あのぉー、エルライナ様でお間違いないでしょうか?」


 何故か総合ギルドの職員が俺の隣まで来て名前を呼ぶのだ。


 もしかしてぇ・・・・・・試験の事を応接室で話したいのかな?


 「はいそうです。もしかしてDランク昇格試験の事でなにか話しがあるのですか?」


 総合ギルドの職員さんは安堵した顔をした後に話しはじめる。


 「はいそうです」


 予想は当たっていた。


 「応接室にエイドさんがいるので、彼から詳しい話しを聞いてください」


 「そうですか。分かりました」


 「それでは私が応接室まで案内するのでついて来てください」


 「はい」


 俺は何も考えず返事をして、女性職員さんの後ろについて行く。そして職員さんが応接室の前に立つと、ドアを コンコンッ! とノックをする。


 「エルライナさんを連れて来ました」


 「わかった通してくれ!」


 ドアの向こうから聞こえるエイド教官の言葉を聞くと、職員さんはドアを開けて俺と一緒に応接室の中に入る。


 「おはようございます。エイド教官」


 「ああ、おはよう。立ち話もさせるのもなんだ。ソファーに座ってくれ」


 「あ、はい」


 そう返事をした後にソファーに座るのだけれども、試験の説明がこんな形で良いのか? と思ってしまう。


 「さっそくで悪いんだがぁ・・・・・・今日行う予定だったお前のDランク昇格試験は中止だ」


 「えっ!? 中止ですか?」


 試験が中止なるなんて・・・・・・なんでなの?


 「そうだ、一昨日のゾンビの大群発生の対応で俺も駆り出されていて試験をやる余裕がないんだ。
 しかも調査に人手が欲しいそうだから、周囲の街からも職員が来ているほど調査に力を入れているんだ」


 そこまで大事になってたんだ。ん? これってバレたらかなりマズくない?


 「だからお前のDランク昇格試験は中止、日時は決まり次第こちらからお前に報告する」


 「・・・・・・分かりました。エイド教官」


 そんなぁ〜〜〜、頑張って受かろうと思って意気込んでいたのに中止だなんてぇ・・・・・・。


 しょげている俺をエイド教官は苦笑いしながら見つめていた。


 「まぁ、残念な気持ちは分かるが、お前は試験の日時が伸びてチャンスだとは思わないのか?」


 「う~ん・・・・・・」


 「計画をもっとよく練れるとは思わないのか?」


 物は考えよう。と言うけれども、さすがに今回下準備して来た事が全部次に持ち越しになってしまい、 残念だなぁ~。 と言う気持ちを感じる方が上回ってしまう・・・・・・でも気持ちを切り替えてみたら、そう落ち込む事もないかもしれない。


 「・・・・・・エイド教官の言う通りですね。今まで以上にしっかりと準備する期間があると考えた方が正しいかもしれませんね」


 「だろ? だからそんなに気を落とすな」


 「はい、エイド教官ありがとうございます」


 うん、エイド教官には感謝だね。


 「分かってくれたか・・・・・・よし! 俺の要件は終わったから入って来て良いぞっ!!」


 えっ!? エイド教官は誰に言っているんだ?


 そんな事を思っているとドアがノックもなしに開かれて、知っている人が部屋の中に入ってくる。


 「おはようエルちゃん」


 「リズリナさん!? どうしてここにいるの?」


 「それはな、お前に話しがあるからここに来たんだ」


 グエルさんもいるっ!?


 「エルライナ一昨日はありがとうね。アナタのおかげで私はオークに犯されなかったのだから」


 「にゃうっ!?」


 ミュリーナさんもいるなんで?


 「本当に彼女は可愛らしい反応をしますね」


 「ひにゅぅぅぅうううぅぅぅっっっ!!?」


 「こらこらキースくん、エルライナをからかわないでやってくれ」


 キースさん! それにバルデック公爵様までいるよっ!?


 「み、みにゃしゃん・・・・・・ど、どおしゅて・・・・・・こ、ここひ?」


 呂律ろれつが回らないけど、みんながここにいる理由を聞かないと。


 グエルさんはそんな俺を見つめながら話し始める。


 「それはな、エルライナに聞きたい事があるから総合ギルドに来たんだ」


 「わら・・・・・・わ、私に聞きたい事?」


 俺がそう聞くとグエルさんが頷いた。


 「そうだ。一昨日のゾンビが草原で大量倒されていた件について、お前に聞きたいんだ」


 「え! あ、はい分かりました。なにが聞きたいんですか?」


 まさかとは思うが・・・・・・バレてるだなんてそんな事はないよね? 本当にないよね? 大丈夫だよねっ!?


 「一昨日のゾンビの大群を倒したのはお前なのか?」


 「違いますよ」


 一瞬顔が強ばりそうになったが、俺は平然を装いながらグエルさん達に答える。


 「・・・・・・そうか。違うのかぁ」


 「・・・・・・はい」


 バレているわけではないようだ。多分この人達は俺が倒したんじゃないか? って憶測で聞いてるって感じなんだろうなぁ。


 しかし、今度はバルデック公爵様が俺に話かけてくる。


 「実はなエルライナ、キミの当時の行動を調べたんだ」


 なんとっ!? バルデック公爵様達は俺の知らないところでそんな事をしていただとっ!! これは本気でヤバいぞっ!!


 「そ、そうなんですか?」


 「一昨日キミはグエル達と食事を楽しんだ後に午後四時に宿を出たね? なにをしに出かけたんだい?」


 マズいっ! いまさらながら嵌められた事に気が付いたっ!? 
 総合ギルドの応接室まで俺を呼んで入れた後に尋問する。現に扉の前にキースさんが窓の目の前に立っている上にミュリーナさんがドアの前に立っていて、常にこっちを見ていて逃げられない。てか逃げたら間違いなく怪しまれる状況だっ!!


 そうか、そう言う事か! バルデック公爵様達が昨日、俺が泊まっている宿に来て真相を聞こうとして来なかったのは変に声を掛けて真相を聞いたり、 総合ギルド経由で聞きたい事があるからここに来るように。 とか言ったら俺がどこかに逃げてしまうと考えたから、俺のDランク昇格試験の日に応接室に連れ込んでこんなふうに包囲する作戦を実行したんだっ!!


 「えっとぉ・・・・・・夜の草原に訓練をしに行きました」


 「そうか訓練か。そう言えば宿の店長が、 夜の草原に行くにしては、おかしな感じがあった。それに帰って来た時もかなり疲れた顔をしていたのぉ。 と証言していたが?」


 なぁっ!? 俺の知らない間にあのお婆さんに聞いたのかよっ!!


 「いつもの装備で出かけて訓練しましたよ」


 「そして、ゾンビの大群が倒れていたのは西ってのはキミも知っているよな?」


 「それは私も知っていますよ」


 「じゃあ、なんできみは西門から草原に出たんだ?」


 「そ、それは偶然ですよ。訓練したらすぐに帰りましたからね」


 落ち着け俺、ここで動揺もしくは怒ったりなんてしたら逆に怪しまれるぞ! 冷静になるんだ。


 「・・・・・・そうか、分かった」


 凌げた! ・・・・・・のか?


 「エイド、真理の水晶をここに持って来てくれ」


 「了解しました。バルデック会長」


 エイド教官はソファーから立ち上がり応接室から出ていくのを見た俺は、 本格的にどうにかしないとマズいぞっっっ!!? と思い始めて、その場しのぎする方法を考え始める。


 「・・・・・・あのぉ~、バルデック公爵様」


 「ん? どうしたんだエルライナ?」


 「私は正直に言ったので、そこまでしなくても良いと思うんですがぁ・・・・・・」


 「ほぉ〜、そうかい? それでは一番始めに調査したグエルの話しを聞いてもそう言えるか?」


 グエルさんの話?


 俺がなにを言っているの? と言いたそうな顔しているのに対して、グエルさんは無視して話し始める。


 「一昨日の夜に西の方がなにか騒がしいから誰か調査をしてくれ。と王宮に連絡が来たから、俺達第二騎士団が調査団を急遽きょうきょ編成して西の方角へ向かった」


 じゃあ、あの時UAVに写っていたのはぁ・・・・・・グエルさん達なの?


 「現場に行ってみるとゾンビの大群が転がっていた。その光景を目にした時、俺は本当に驚いた」


 「そうなんですか」


 「ああ、そして現場を調査したところ三つの事が分かった」


 「一つめは、ゾンビのほとんどが身体の一部か、もしくは全身を吹き飛ばされたような傷だったが、一部のゾンビだけは違った」


 「違った。とはなんですか?」


 「それは穴のような傷があった。俺はその傷に見覚えがあったんだ」


 「その穴みたいな傷って矢じゃないんですか?」


 「違うな。矢で射抜かれたような跡ではなかった。話しを続けるぞ」


 チッ!? 話を反らせなかったぁっ!!


 「二つめは、誰かの足跡があった事。その足跡は靴の跡だったが不思議な模様が付いていた。普通の足跡なら何も模様が付かないのだけれども、エルライナお前の靴は違うよな?」


 「あっ!?」


 思わず自分のコンバットブーツを見てしまった。そしてそのようすを見ていたグエルさん達は確信した顔になった。


 「三つめは、ゾンビの群生の中に微かにお前の臭いが残っていた。それで俺はお前がゾンビの群生を倒したんじゃないか? と考え始めたんだ。だからエルライナ・・・・・・正直に答えてくれないか?」


 ヤ、ヤバいよ・・・・・・完全にバレてるよっ!?


 「う、うぅぅぅ〜〜〜〜〜~・・・・・・」


 ど、どうする・・・・・・どうすればこの場から逃げられるんだぁぁぁああああああああああああっっっ!!?


 俺が頭を抱えながら下を向いているとリズリナさんが隣に座ってくる。


 「ねぇエルちゃん。私達友達だよねぇ~〜〜?」


 「えっ!? う、うん」


 いつから友達になったんだっけ? 思わず反射的に頷いちゃったけどさ。


 「私はエルちゃんの事を信じているからね」


 リズリナさんは笑顔のまま俺の手を取り握ってくる。


 止めてリズリナさん! 信じているからね。と言った後の100パーセント笑顔で俺の顔を見つめて来ないでっ!! さっき言った言葉に罪悪感を感じちゃうからぁっっっ!!?


 そんな事を感じていると扉をノックする音がした後にエイドさんが入ってくる。


 「失礼します。バルデック会長、真理の水晶を持って来ました」


 「そうか、ここに置いてくれ」


 「分かりました」


 エイドさんは返信をした後に真理の水晶をテーブルに置くと、なぜか俺に向かって嫌な感じの笑顔を向けてくる。


 「さぁエルライナ。こ・こ・に・手を置くんだ。その後は俺達の質問に正直に答えれば良いだけだ」


 エイドさんは笑顔のまま真理の水晶に指をさしながら言うので、憎いっ! と思ってしまう。だって勝ち誇った顔を向けてくるんだもんっ!! 誰がどう考えたって、  ウザい!! と絶対感じるってこの顔はっっっ!!


 フッ! 甘いなエイドさん。アナタは完全に勝ったと言う顔を向けてくるが、俺にはまだ最後の切り札あるんだよっ!!


 「・・・・・・私には黙秘権があります」


 決まった! これで取り調べは出来ないっ!!


 「「「「「「黙秘権はないからさっさと手を置きなさいっっっ!!」」」」」」


 「えええぇぇぇええええええっっっ!!?」


 こんなのってアリなのぉぉぉおおおおおおっっっ!!?


 この後、根掘り葉掘り正直に答えるハメになった。

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