45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしい

第686話 勇者ヨーリスと転生者ライナス その10

ヒルベルト・リーネルト、それが元勇者の名。
そしてそのお供であり悪友イディオ。彼は侯爵の嫡男。本来勇者を支え、道を誤まれば諫める立場なのだが、勇者とは幼馴染なうえに、勇者と共に悪童と言われ続け、そしてその通りの振る舞いしかできなかった・・・・

そしてその結果が今この娼館での・・・・

今元勇者ヒルベルトとイディオは次から次へとやって来る冒険者相手に戦っていたが、何せ本来の力が出せず、しかも冒険者の数は増える一方。

冒険者の攻撃を防ぎきれず、何度も攻撃を受け・・・・
先にイディオが倒れた。
「うぐ・・・・もう・・・・駄目・・・・だ・・・・」
左手を肘付近から失い、右の顔も切られ、右目が見えない状態になってしまい追い込まれていたが、死角になった右からの突きをかわせず、深々と剣が身体に刺さり、遂に力尽く。

「イディオ!くそったれがあ!」
ヒルベルトも自身の身体に何が起こったか理解できないままどんどん切られていき、イディオが倒れたため一人に攻撃が集中、四方からの剣をかわす事ができず、剣が身体の複数の個所に刺さり、倒れてしまう。

「くそ・・・・何でお前ら如きの攻撃が俺様に効くんだ・・・・おかしいだろう?女神の加護はどうなってるんだ!」

ヒルベルトはそう吠えたが・・・・ふと顔を上げるとそこには見慣れた顔が・・・・アルフォンシーナが現れたので、助けを求めた。
「おい!早く回復をしろ!」

そんなヒルベルトをじっと見つめるアルフォンシーナ。
「これが勇者の・・・・道を誤まった勇者の辿りついた結果です。2人はこうならぬよう、願いますね。」

「は・・・・はい!」
ヨーリスは思わず力いっぱい返事をする。
「もし道を誤まれば・・・・僕が正します!」
そんな事にはならないと思いながらも、ライナスは返事をする。
「ええ、そう願います。そうせず、勇者と共に愚行を繰り返したお供の末路もこのような・・・・残念です。」
もうイディオは虫の息。
口からは血が出ており、喋る事ができない。。

「アルフォンシーナ様!もういいですか?」
「そうですね・・・・何が起こるか最後まで分かりませんから、首を落としておいてくださいまし。」

「わかりました!おい、屑の首を落としたいやつ!」

すると複数の冒険者が希望を。
そしてあろう事か誰にするかじゃんけんで決める始末・・・・
「ふん!屑が!お前らのせいで一生を棒に振った人々が、こんな事で救われはしねえが、多少は皆の留飲が下がるだろう・・・・」

「糞!くそクソ糞!俺は勇者なんだぞ!」

「では・・・・できればもっと痛めつけてえが、何せ時間がねえからな・・・・」

そう言って剣を振り下ろすじゃんけんの勝者。

そしてこの後2人の首は娼館前に晒され、噂を聞き付けた被害者及びその家族、知人が次々にやってきてはその首を見て泣いていたという。
但し、2人の死を悲しむ者は一人もいなかったと言う・・・・

          

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