第644話　おっさんが遼太郎と話している時、和佳は・・・・

一方の千亜希と和佳。

「ここがそうよ。どう？中々でしょ？」

そこはちょっと？リッチなマンション。
4年・・・・大学院って6年だっけ・・・・？あ、違うな・・・・
修士と博士それぞれ2年と3年の5年か・・・・

千亜希はここに5年住む事になる。
無論、順調にいけば・・・・

そして今、ここには母親である友里奈が待機していた。

「おかえり千亜希。」

「ただいま母さん！言われた通り精霊さん連れてきたよ！」

何と驚きの発言。
千亜希は和佳を意図的に連れてきたのだ。

「話は聞いております。貴女が和佳さんね？私は友里奈。ここ日本での小次郎の妻です。」

「は、はじめまして友里奈様。私は精霊で、白河小次郎様をマスターとし、精霊界から人のいる世界に留まっております。現在は秘書のような立ち位置におりまして、マスターは召喚時の影響で、頭の一部に決して治らないダメージを負ってしまい、友里奈様をはじめとする日本人の倫理観が通用しないようになってしまっていまして、現在は精霊達で何とか支えております。」

和佳は焦った。
まさかマスターの本妻、友里奈様にいきなり会うとは、しかもマスター無しで・・・・予想していなかった。

「和佳さんでしたね？貴女を取って食おうというつもりではないので、どうか安心して下さいね？この子と遼太郎が独り立ちするようになれば、私もあちらに移住をするつもりですから、その折はお願いしますね。」

「あ、はい、マスターからもそう聞いております。」

友里奈は和佳をじっと見る。

そして・・・・ふいに近づき、和佳がアッ！
と思ったが、なんと友里奈は和佳の子供を抱いていたのである。
「まあかわいい。こんな小さな子を抱くなんて、久しぶりだわ。」

「わあ、ちっちゃい！私も抱っこしていい？」

「どうぞ？貴女も子供が好きだもんね？遼太郎の世話をよくしてくれてたしね。」

そして和佳の子を抱く千亜希。

「きゃあ！可愛い！なんて愛らしいの？」

和佳は混乱していた。見えるはずがないのに・・・・そして、恐らくは重さも感じないはずなのに・・・・
しかしその手には、確かに和佳の子を抱いている。

「はいどうぞ？」

和佳は自身の子を受け取る。
すると、すぐに和佳の周りをフワフワ漂い始める。

「あの？おふた様には私の子が見えるのですか？」
和佳は聞かずにはいられなかった。
マスターである小次郎ですら、なんとなく存在を感じる程度だったのに、この2人は明らかに和佳の・・・・つまり精霊の子を抱いていた。

「ふふ。驚いていますね、和佳さん。」

「はい！驚いています。」

「ほんとは遼太郎にも見えるはずなんだけど・・・・おそらくあなたの美貌に見惚れちゃって、それどころではなかったのね？」

・・・・和佳は考える。
この女性、友里奈様からは敵対心や、危害をくわえようという気配がない。
それどころか、和佳に対し親しみを込めた対応だ。
一体何が狙いなのか把握しかねている。

「時に和佳さん、遼太郎に精霊をつけるのですよね？千亜希にも？」
「はい、その予定です。ご子息様は、恐らく今マスターがそうしていると思われます。」

「そう・・・・ねえ？どういうのにするか、追々話をして決めるとして、私にもつけて下さるのかしら？」

「希望されるのでしたら、何体でも。ただし制限もございます。精霊が人界に留まるには、それ相応の対価が必要でございます。あちらでは魔力がございましたので、その魔力を対価に精霊は人界に留まっております。ですので、その魔力で管理できる範囲でしか、精霊をお付けする事が出来ません事をお知らせいたします。」

「ありがとう。では何体か後でお願いね、和佳さん。」