第172話　職人さんを休ませる

「もっとペースを上げなさい！布の生産が間に合ってないのに、こんなゆっくり織ってちゃダメでしょ！」
「でも、もう大分休んでないんです。集中もできないし、少しは休ませてください・・・・」
「何を甘い事言ってるの！辺境伯のノルマが全くこなせてないのよ！あなた責任とれるの？」
「そ、それは・・・・」
見ると責任者の女性？は、どうやらおっさんがお願いした布の量を確保しようと必死になってるらしい。
で、今機織り機にいる若い女性は・・・・もう体調不良って一目でわかる顔しててね。あれじゃあ駄目だよ、休ませないと。
は！いかん！このままではおっさんの工房は・・・・・もう工場か・・・・ブラック認定されちゃう！
おっさん３人に断りを入れて、工場から一度退いて、３人には各々の娘の所に行ってもらったよ。
そして、すぐさま問題の場所におっさん向かってね。

「君、ちょっといいかな？」
「なにあなた・・・・ってシラカワ辺境伯！どうしてこちらに？」
「ちょっとゆうじ・・・知人を案内してたらこの状況を見ちゃってね、ちょっと全員一度機械を止めてこっちに集めてくれない？」
「し、しかしそれでは、布の生産が間に合いません！」
「ああ、いいんだよ、それは。それより、機織り機を使用している娘さん、あんなになるまで休ませないで仕事させてちゃダメだよ。君も休んでないんだろう？」
「私はいいんですよ！好きでやってますから。ただ、今のままでは納期に間に合いません・・・・」
「その話は後でね。今は全員集めて。」
おっさんはその主任？まとめ役の女性に作業を中断させ、集まってもらったよ。
いかん、全員女性、しかも大半が３０いってない１０代もいるよね・・・若い娘さんでね。
ちょっと緊張しちゃうよ。

「すまない！」
おっさん全力で謝ったよ。全員驚いてたね。雇い主の辺境伯が・・・貴族がいきなり自分達に謝るから。
「な、何を仰ってるんですか、しかも私共に謝られるなんて、どうか頭をお上げください！」
おっさん、頭をあげて、全員の目を合わせてね、そしてみんなの前で言ったよ。
「本日の作業は終了！明日は全員休みなさい！もちろん、明日の分の賃金はちゃんと出すよ。今からはね・・・・温泉につかって、店に行きなさい。下着をプレゼントしよう！そして、自分達が行ってきた仕事がどうなってるか、自らの目で確認してきなさい！」
もうキャーって悲鳴みたいのがあたり一面に聞こえたよ。
「それと、まだ設備が少なすぎて君達には迷惑かけてるけど、もうすぐ新たな機械と人材が来るからね。特に新しい人は、丁寧にやさしく教えてあげてほしい。それと、納期が間に合わないと言って体調が悪いのに無理に働くことはないよ。たまには休んで、身も心もリフレッシュして、また仕事に励んでほしい！」
どうやら有給とかの概念は存在しないみたいで、皆一様に驚いてたな。
この辺りは流石に家業を手伝っていたオリアーナも気が付かなかったみたいでね。
おっさんも今の今まで気が付かなかったよ。
ちょっと職人さん任せで放置しすぎちゃったよ。
福利厚生をしっかりしないとね。
住環境は整えたんだけど、失念しちゃってたよ。
これからもまだまだ決め事はあるだろうけど、よりよい環境で作業してもらえるようにおっさんも、もっと努力をしよう。

そして、店には客と同等の扱いしてもらって、食事も提供。
風呂はいつも寝泊まりしてもらってる寮って感じかな？の建物に用意してある風呂・・・もちろん温泉なんだけどね・・・・今日はおっさんの館の風呂に入ってもらってね。
この館には初めて入ったからおっかなびっくりでね。
まあ、このぐらいのサプライズはなくっちゃね。

あー服関連の部門だけでこれだから、他の職人さんの環境も確認しないとね。

おっさん、暫くは工房・・・・工場・・・・の待遇改善に忙しい日々をを過ごしたよ。