第145話　穀倉地帯

「リュシエンヌを信用するよ。で、どのようにして販路を拡大したいの？」

「ロートレック公爵領は穀倉地帯なのですが、人口はそれほどございませんの。収穫した大部分は帝都プレジール及び商業都市アフェールへと運ばれるのですが、あくまで保存の効くものばかり。それに運搬にかなり費用が取られ、それほどの収入が農民たちにはございません。もう少し領民を豊かにしてあげたいと、そう思った次第ですの。」

・・・・難しい問題だな・・・・ゲートと収納カバンがあればいとも簡単に解決できるんだよね・・・・それに、無償でやっちゃうと色々面倒事が起こりそう。

「リュシエンヌ、それを実行するだけの物は確かに提供する事は出来るけど、君は何を代償、対価、まあ、何でもいいんだけど、おっさんに提供できるんだい？」

「申し訳ございません、今はシラカワさまの希望に添えるような対価を用意できるかどうか、わかりません・・・・。」

「・・・・３人の身体で払います！とかは言わないんだね。」

「はい・・・・シラカワさまは既に何人もの美貌の女性を娶られているとお聞きしております。今更、こんな大女や、貧相な妹など娶るまでもないのでは、と思ったからですわ。それに、常日頃シラカワさまがそうおっしゃっているとお聞きしておりますの。」

・・・・何かおっさんが思ってるのと違う話だよ？

リュシエンヌ姉妹に未練があるわけじゃないよ？

だけどね・・・・ちょっと引っかかるんだよね。

「ねえ、リュシエンヌ、本音は？」

おっさん、リュシエンヌの目を真っすぐに見たよ。

リュシエンヌも見つめ返してきたね。

「本音を申しますと、舞踏会でのシラカワさまがとても親しみやすく、率直に申しますと、ほんのわずかな時間でしたが、この方となら、と思いましたのは本当ですの。ただ、この話をしてしまった以上は、よほどシラカワさまがわたくしたちにご執心でもない限り、諦めざるしかありませんわ。利害で娶ってもらいたくはありませんの。」

あーなんか重い話になっちゃったよ。しかも、あれ本気だね、おっさんに。涙ぐんでるし。

「お姉ちゃん！そんなのでいいの？あれほどシラカワさまを好きになってしまったって言ってたのに！」

突然妹のジョスリーヌがリュシエンヌに叫ぶように言い放ったよ。

「そうですよ、リュシエンヌさま！あんなリュシエンヌさまは初めてお目にかかりましたよ！」

メイドさんもか！

「ちょっと落ち着こうか？」

おっさん、感傷的になりつつある３人をなだめたよ。

なんかシラカワさまーって感じの目線を感じるよ。

ちょっと考えよう・・・・。

「あのさ、おっさん本当にここの事を知らないんだよね、先ずは色々教えてくれないかな？それに、農作物の話はおっさんも色々思う所はあるんだよね。ちょっと一緒に色々考えようよ。」

「シラカワさま、ありがとうございます！」

あーあ、折角の美人が台無しだよ。あーだめだね、おっさん、美女の涙に弱いよ。

「あー、それとね、いったんこの話は止めていい？君達、後でおっさんの店に来てよ！ちょっと気分転換しよう！話ははそれからで！」

「流石はお姉ちゃんが見込んだ男だね！かっこいい！」

ジョスリーヌ、ちょっとずれた発言・・・・かっこいいって言っても何も出ませんよ？

あーこりゃ、きっと３人ともおっさん娶る事になるんだろうな・・・そんな事を漠然と考えちゃったよ。

あーでも、その前に聞いときたい事もあるなあ。