復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第十一話】ティアル・サーライト 19

「カカッ!!捕まえたぞ!!」


ティアルは嬉しそうに叫ぶ。

だが、

この程度の痛み、先ほどまでと比べたら全然大したことはない。

スパイルは痛みを堪えてティアルの腕を掴むと、力任せに無理矢理引き抜いた。

そして、

そこから間髪入れずに城壁の上まで跳ぶ。


「なぁァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


ティアルの驚愕に満ちた声が響いた。

愕然として、言葉が上手く紡ぎ出せない。

なんせ、槍状の腕はしっかり貫通するくらいまで深く突き刺さっていたのだ。

さっきと同じく、容易には引き剥がせないよう固定もした。

なのに、

それを力任せに引き抜かれるとは予想外だ。

所謂、火事場の馬鹿力という奴だったのだろう。

しかし、

ここで諦めることなど出来ない。

どう考えても、諦められるはずがない。


「逃がさんぞォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


ティアルはもう片方の腕を操作し、また伸ばしてきた。

殺意がふんだんに込められた執念の追撃ーー。

プライドをかけた怒りの鉄槌ーー。

しかし、

スパイルも必死だ。

ここで捕まるわけにはいかない。

捕まれば死ぬ。

だから、

体中のなけなしの力を精一杯かき集めて、再び口を大きく開いた。


「何だとッ!?」


ティアルも驚く。

スパイルは最後のブレスを吐き出すと、ティアルの伸ばした手を弾き返した。

再び爆発が起き、辺りは騒然となる。

スパイルは城壁の上で瞬時に力を溜めると、そこから一目散に跳んだ。

もう後ろなんて振り返っている場合じゃない。

ティアルの体力やバイタリティを考えれば、すぐにでも追いかけてくるだろう。

だから、

スパイルはただただ一心不乱に、走り続けた。


「逃がすなァァアアアア!!全員、追え!!絶対に逃亡なんて許すんじゃねぇぞォォオオオオオ!!」


そうして、

ティアルを筆頭に、そこにいた人間はスパイルを追い続けた。

スパイルは森の中を全力で駆け回り、約1ヶ月かけて、ティアルから逃げおおせたのだ。

この事件はディオラスでも特に大きな事件と位置付けられ、スパイルは指名手配されるに至った。

ティアルはそれからも森中を彷徨い、スパイルを探し続けている。

スパイルがここで巻き添えにした住民は、およそ300人を超えた。


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