復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第十話】母親 ②
「ティアルか……。あの野郎、部下をよこすとか言っておきながら、わざわざ家にまで脅しに来やがったってのか……。ホント、いい趣味してるな……。親の顔を見てみたいよ」
スパイルはさらに大きなため息をもう一度吐き出すと、母親に向けて鋭い視線をぶつけた。
色々な感情が渦巻き、何も整理出来ていない中、スパイルは続けて口を開く。
「言っておくが、アイツに一体何を吹き込まれたかは知らねぇし、別に聞くつもりもねぇが、今さら"部外者"のアンタが何を言おうと、俺には関係ないぜ?」
冷たい声だった。
声音から感情を削ぎ落としたような、無機質で機械的な言葉だった。
まるで、無理矢理そうしているようにすら見える。
母親は驚いているのか動揺しているのか、少し上擦った声で返した。
「ち、ちょっと……。ぶ、部外者って……そんな……」
「部外者だろうさ。アンタは今に至るまで一度も、俺と正面から向き合おうとしなかった。どれだけ俺が成果を上げて猛アピールしても、アンタは一度たりとも心を開いて話そうとはしなかった。なのに、それが今になってこうだ。さしづめ、ティアルには命の保証に俺が逃げねぇよう説得するようにでも言われたんだろう?"俺がそうしたように"!!ティアルもアンタのことを利用するはずだからなぁ!!」
「ち、違うよ!!私はそんなつもりじゃ……!!」
ダンッ!!
スパイルは大きな袋を取り出すと、勢いよくテーブルの上に叩きつけた。
袋の口から、大量の金貨が零れ落ちる。
「どうやら既に本人自ら一度来ているようだが、アイツは今日、部下をここにやって試合の日取りを伝えてくる予定だ。アンタはその前に逃げろ。アイツにどう言われたのかは知らねぇし、アンタが何を返したかも分からねぇが、アイツは俺とやり合った後、必ずアンタを殺しにくるはずだ。理屈も情けも常識も約束だって、アイツには一切通じねぇからな……。絶対に殺しにきやがる。だから、その前に……」
「違うッ!!そんなのじゃないよ!!私はただ……ッ!!アナタに話したいことがあって……ッ!!」
「聞きたくねぇんだよ、そんな言い訳ッ!!」
スパイルは大きな声で怒鳴り散らした。
目は爛々と光り、息は荒い。
興奮して、冷静ではなくなっていた。
「アイツはこのディオラスが生んだ化け物だ!!辺りに不幸を撒き散らす最悪の災厄だ!!父親と違って、アイツには尊敬する所は何もない……!!ただただ、暴力でしか物を話せない獣なんだ!!俺ですらアイツと戦うのは怖いッ!!いつもは戦いとなれば血が熱く滾るのに、アイツを相手にすると思うと冷えて仕方ないんだ……ッ!!アンタもディオラス民なら分かるだろう!?アレは本当に常軌を逸してる!!交渉や同情なんてクソの役にも立ちやしねぇ!!アイツの言ったことなんて忘れろ!!アイツが守る約束なんて一つもねぇんだ!!」
「スパイル……」
スパイルはそこでハッとなった。
熱くなりすぎたことを自覚し、冷静さを取り戻す。
スパイルはさらに大きなため息をもう一度吐き出すと、母親に向けて鋭い視線をぶつけた。
色々な感情が渦巻き、何も整理出来ていない中、スパイルは続けて口を開く。
「言っておくが、アイツに一体何を吹き込まれたかは知らねぇし、別に聞くつもりもねぇが、今さら"部外者"のアンタが何を言おうと、俺には関係ないぜ?」
冷たい声だった。
声音から感情を削ぎ落としたような、無機質で機械的な言葉だった。
まるで、無理矢理そうしているようにすら見える。
母親は驚いているのか動揺しているのか、少し上擦った声で返した。
「ち、ちょっと……。ぶ、部外者って……そんな……」
「部外者だろうさ。アンタは今に至るまで一度も、俺と正面から向き合おうとしなかった。どれだけ俺が成果を上げて猛アピールしても、アンタは一度たりとも心を開いて話そうとはしなかった。なのに、それが今になってこうだ。さしづめ、ティアルには命の保証に俺が逃げねぇよう説得するようにでも言われたんだろう?"俺がそうしたように"!!ティアルもアンタのことを利用するはずだからなぁ!!」
「ち、違うよ!!私はそんなつもりじゃ……!!」
ダンッ!!
スパイルは大きな袋を取り出すと、勢いよくテーブルの上に叩きつけた。
袋の口から、大量の金貨が零れ落ちる。
「どうやら既に本人自ら一度来ているようだが、アイツは今日、部下をここにやって試合の日取りを伝えてくる予定だ。アンタはその前に逃げろ。アイツにどう言われたのかは知らねぇし、アンタが何を返したかも分からねぇが、アイツは俺とやり合った後、必ずアンタを殺しにくるはずだ。理屈も情けも常識も約束だって、アイツには一切通じねぇからな……。絶対に殺しにきやがる。だから、その前に……」
「違うッ!!そんなのじゃないよ!!私はただ……ッ!!アナタに話したいことがあって……ッ!!」
「聞きたくねぇんだよ、そんな言い訳ッ!!」
スパイルは大きな声で怒鳴り散らした。
目は爛々と光り、息は荒い。
興奮して、冷静ではなくなっていた。
「アイツはこのディオラスが生んだ化け物だ!!辺りに不幸を撒き散らす最悪の災厄だ!!父親と違って、アイツには尊敬する所は何もない……!!ただただ、暴力でしか物を話せない獣なんだ!!俺ですらアイツと戦うのは怖いッ!!いつもは戦いとなれば血が熱く滾るのに、アイツを相手にすると思うと冷えて仕方ないんだ……ッ!!アンタもディオラス民なら分かるだろう!?アレは本当に常軌を逸してる!!交渉や同情なんてクソの役にも立ちやしねぇ!!アイツの言ったことなんて忘れろ!!アイツが守る約束なんて一つもねぇんだ!!」
「スパイル……」
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