復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第九話】スパイルの過去 ⑩
「ようやく落ち着いてきたか……。引き継ぎっていうのは大変だな」
仕事場で一人、呟かれる言葉。
結局、スパイルが無事に引き継ぎを終えるまで、4日かかった。
前任の部下たちは既にほとんど残っていない。
せめて10人くらいは自分の部下に引き込みたいと思っていたのだが、最終的には誰もそうはならなかった。
元No.4の人間は、それだけ部下から信頼されていたということだろう。
「上が甘ちゃんなら下も甘ちゃんだな。誰一人ディオラスの価値観に染まっていないとは……。これほど甘い組織も珍しい。てっきり、組織ってのはどこでも似たようなもんだとばかり思っていたんだがな……」
スパイルが行ったようなことは、このディオラスでは頻繁に行われる。
ランキング戦はその場の公平さは保証されるが、その戦闘までの過程や外部の状況なんてのは全く考慮されないのだ。
それを守り切ることや、そういう状況に持っていく智力も"力"の一つとみなされている。
ディオラスはあくまで戦闘における強さを重んじる国で、ただの力自慢だけが上にいく訳じゃない。
だから、
ディオラスの住民は利己的で卑劣な人間が多い代わりに、極端なリアリストも多いのだ。
ティアルのような規格外を除けば、ディオラスの人間は謀略なんて呼吸するように自然と行ってくる。
領土も人口も少ないディオラスが三大国にまで上り詰めるほど戦争が強いのは、そういう所に理由があった。
「よくこんなザマでNo.4になんて上がれたもんだ……。戦闘の実力は確かにあったが、そっち方面はカラキシ……。部下もそりゃ甘くなるか」
スパイルは椅子から立ち上がると、扉を開けて廊下に出た。
前任の部下たちが使えない以上、スパイルは別の人間を部下にしなければならない。
そして、
今度はスパイルがその人間に引き継ぎをするのだ。
本当は先に部下を雇ってから直接そっちで引き継ぎさせても良かったのだが、それだとスパイル自身が内容を把握出来なくなってしまうため、敢えて避けたのだ。
自分の仕事内容を自分が知らないなど、それこそ他の人間からの謀略に使われかねない。
信頼できる部下の獲得が、今のスパイルの目標だった。
「さて、それじゃあ早速……」
「おぉぉぉっとォォォオオオ!!これはこれは!!新しくNo.4に就任なさった、スパイル・ラーチェス殿ではありませんかァァアアアア!!!!」
と、そこで、
スパイルの耳に嫌な声が聞こえてきた。
甲高くて気持ち悪い不協和音。
不快感の化身のような声だ。
スパイルはその声のした方向に目を向ける。
そこには、案の定、ディオラスの『No.2』、皇太子ティアル・サーライトが立っていた。
仕事場で一人、呟かれる言葉。
結局、スパイルが無事に引き継ぎを終えるまで、4日かかった。
前任の部下たちは既にほとんど残っていない。
せめて10人くらいは自分の部下に引き込みたいと思っていたのだが、最終的には誰もそうはならなかった。
元No.4の人間は、それだけ部下から信頼されていたということだろう。
「上が甘ちゃんなら下も甘ちゃんだな。誰一人ディオラスの価値観に染まっていないとは……。これほど甘い組織も珍しい。てっきり、組織ってのはどこでも似たようなもんだとばかり思っていたんだがな……」
スパイルが行ったようなことは、このディオラスでは頻繁に行われる。
ランキング戦はその場の公平さは保証されるが、その戦闘までの過程や外部の状況なんてのは全く考慮されないのだ。
それを守り切ることや、そういう状況に持っていく智力も"力"の一つとみなされている。
ディオラスはあくまで戦闘における強さを重んじる国で、ただの力自慢だけが上にいく訳じゃない。
だから、
ディオラスの住民は利己的で卑劣な人間が多い代わりに、極端なリアリストも多いのだ。
ティアルのような規格外を除けば、ディオラスの人間は謀略なんて呼吸するように自然と行ってくる。
領土も人口も少ないディオラスが三大国にまで上り詰めるほど戦争が強いのは、そういう所に理由があった。
「よくこんなザマでNo.4になんて上がれたもんだ……。戦闘の実力は確かにあったが、そっち方面はカラキシ……。部下もそりゃ甘くなるか」
スパイルは椅子から立ち上がると、扉を開けて廊下に出た。
前任の部下たちが使えない以上、スパイルは別の人間を部下にしなければならない。
そして、
今度はスパイルがその人間に引き継ぎをするのだ。
本当は先に部下を雇ってから直接そっちで引き継ぎさせても良かったのだが、それだとスパイル自身が内容を把握出来なくなってしまうため、敢えて避けたのだ。
自分の仕事内容を自分が知らないなど、それこそ他の人間からの謀略に使われかねない。
信頼できる部下の獲得が、今のスパイルの目標だった。
「さて、それじゃあ早速……」
「おぉぉぉっとォォォオオオ!!これはこれは!!新しくNo.4に就任なさった、スパイル・ラーチェス殿ではありませんかァァアアアア!!!!」
と、そこで、
スパイルの耳に嫌な声が聞こえてきた。
甲高くて気持ち悪い不協和音。
不快感の化身のような声だ。
スパイルはその声のした方向に目を向ける。
そこには、案の定、ディオラスの『No.2』、皇太子ティアル・サーライトが立っていた。
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