復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

ノベルバユーザー520245

【第九話】スパイルの過去 ⑨

「ディオラスでは自分が"強者"であることが何よりも大事だが、相手の強さを理解することも重要だぜ?イキって勝てねぇ相手にまで挑んじまったら死を意味する。よぅく考えて行動することだ」


スパイルは伸ばした長爪で首の皮膚をなぞった。

血が静かに流れ落ちる中、男は再び憎しみの目を見開く。


「お前がそれを言うのかッ!!我が主人の家族を人質にとり、脅して4位になったお前が!!」

「ハハハッ!!別に戦闘に関しちゃ脅しちゃいないさ!!ただ、俺は真摯な気持ちでお願いしただけだよ!!『ご家族の命を大事に思うのであれば、この私めと戦ってください』ってな!!」

「それが脅し以外の何だというのだ!!本当はあの日は主人には休息を取ってもらうための日だったんだ!!何日も前から、娘さんの誕生日祝いをするために、コツコツとスケジュールを調整されて……ッ!!それをお前が卑劣な手段でブチ壊し!!あまつさえ主人の動揺を利用して収めた勝利だろう!!」

「それの何が悪い!!」


スパイルは一括した。

雰囲気が変わり、声に怒りが混じる。


「俺はその日のために何ヶ月も前から計画を練り、娘の誕生日や家のセキュリティ、No.4のスケジュールに至るまで、その全てを調べ上げたんだ!!それがどれだけ大変か分かるか!?俺はそれだけの努力を積み重ねた上で、命懸けで勝利を収めた!!動揺を利用してだと!?そもそもその程度のことで動揺する奴が悪いのさ!!この国は『弱肉強食』!!例えそれが表沙汰になったとしても許される国だ!!俺はそのルールに則って行動を起こしたに過ぎねぇ!!」

「き、きさ……!!貴様……ッ!!」

「大体、娘の誕生日ごときに警戒を解くなんて信じられねぇ愚かさだ!!こんなのはこの国じゃ当たり前の日常茶飯事だろう!!子どもだって知ってる話だ!!日和ってそれすら忘れちまったようなボンクラが……ッ!!今日ここに至るまでずっとNo.4にいたなんて吐き気がする!!二度と口にするな!!」

「お、おのれええええええええ!!よくもそこまでの侮辱を……ッ!!ブチ殺……!!」


ズシャアアアアアアアア!!!!


スパイルの横で、血飛沫が弾け飛んだ。

スパイルは伸ばした長爪の先を素早く動かし、男の首を斬り飛ばしたのだ。

首から上が無くなった男の体はそのままドサリと床に倒れ込み、首の切り口からさらに血が溢れ出る。

スパイルはそれを、何の感情もなく見ていた。


「また新しい奴探さないとな……」


そうして、

スパイルは他の人間を呼び、死体を片付けさせた。

元No.4の他の部下だった人間を呼び、同じことを繰り返す。

なまじ彼らも上からの命令には逆らえないため、このやり取りは何日も渡って続いた。


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