復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー
【第九話】スパイルの過去 ⑦
「ただいま~」
家に着くと、入って早々、酒の臭いがした。
スパイルの家は街中の一等地で、普通よりもだいぶ大きい。
元々65位だったから屋敷とまではいかないが、一般人には十分すぎるほどに広い家だった。
そんな家で、玄関口に酒の臭いが漂っているのだ。
スパイルは毎度のことに深いため息をつくと、リビングに向かって歩いていった。
「酒はほどほどにしろって何度も言ってんだろ?今日は息子の晴れ舞台だったってのに……。何してんだよ、お袋」
リビングのドアを開けると、酔っ払って床に突っ伏した母親の姿があった。
手には酒瓶を持って、うつ伏せで寝息を立てている。
スパイルは再びため息をこぼしながら母親に近づくと、その体をヒョイと持ち上げて、母親の寝室に運んだ。
何故か酒瓶だけは離さなかったから、そのままの姿でベッドに寝かす。
格好はパジャマ姿だし、昨日からずっとこの調子だったのだろう。
スパイルは頭を抱える思いだった。
「元4位の家に行くこともできるらしいが、やめとこうかね……。これ以上広くなっても仕方ねぇし、お袋を説得するのが面倒臭ぇ……」
スパイルは母親と2人暮らしだった。
元は町外れの小汚い小屋で生活していたのだが、スパイルが出世してこっちに引っ越してきたのだ。
それまではこの母親がずっと養ってきてくれた。
水商売で体を売って、まだ力のなかった自分をここまで育ててくれたのだ。
心から感謝しているし、今の自分があるのはこの人のおかげだと思っている。
しかし……
「何で、こんな風になっちまったんだろうな……。昔の面影はどこに行っちまったんだか。息子のくせに、イマイチよく分かんねぇな……」
母親は元々マジメな性格だった。
水商売をやってきて、今のこの醜態を晒している所からはまるで想像もつかないが、本当はドが付くほどの優等生気質だ。
スパイルのことも本当に良く育ててくれたし、水商売に手を出していたのも、このディオラスでは他に稼ぐ手段がなかったからだ。
何故なら……母親には、スパイルと違って"力"が無かったから。
教養もあるし、他の国だったならばこうはならなかっただろう。
本当は優しくてマジメで、スパイルのことを心から愛してくれる素敵な母親だったのだ。
「俺が稼げるようになってからか?アンタがこんな風になっちまったのは……。戦闘中の敵と違って、アンタの考えはホントに分からねぇよ。アンタは酒で、一体何から逃げてんだ?」
スパイルはベッドの上で寝息を立てる母親に語りかける。
事はスパイルが7歳の時のことだった。
ある日、スパイルが初めてランキング戦で勝利したその日。
スパイルが大人を相手に勝利して帰ってきたその時に、母親は変わってしまった。
スパイルが手に持った賞金袋を見て、
息子の才能に喜ぶでもない。
賞金に目が眩んだわけでもない。
母親がその時見せた表情は、『絶望』だったのだ。
そして、
スパイルがそこから見る見ると順位を上げていき、金を持ち帰るたびに、母親はこんな調子になっていった。
聞いても答えない。
飲むのを止めろと言っても聞かない。
もう娼館に行くことはなくなったから、母親はずっと家にいるようになった。
最初はまだ料理くらいは作っていたのだが、今はもうそれすら出来る気力がないらしい。
本当に、訳が分からなかった。
「いつか話してくれることを祈っているよ。こんなのでも息子だからな。アンタが何に悩んでるのかは知らねえが、生活のことなら俺に任せとけ。しっかり長生きさせてやるからな」
スパイルはそう言って、寝室から出て行った。
リビングに戻り、スパイルも一杯飲む。
No.4として認められたこの日。
スパイルは、たった一人で祝杯を上げた。
家に着くと、入って早々、酒の臭いがした。
スパイルの家は街中の一等地で、普通よりもだいぶ大きい。
元々65位だったから屋敷とまではいかないが、一般人には十分すぎるほどに広い家だった。
そんな家で、玄関口に酒の臭いが漂っているのだ。
スパイルは毎度のことに深いため息をつくと、リビングに向かって歩いていった。
「酒はほどほどにしろって何度も言ってんだろ?今日は息子の晴れ舞台だったってのに……。何してんだよ、お袋」
リビングのドアを開けると、酔っ払って床に突っ伏した母親の姿があった。
手には酒瓶を持って、うつ伏せで寝息を立てている。
スパイルは再びため息をこぼしながら母親に近づくと、その体をヒョイと持ち上げて、母親の寝室に運んだ。
何故か酒瓶だけは離さなかったから、そのままの姿でベッドに寝かす。
格好はパジャマ姿だし、昨日からずっとこの調子だったのだろう。
スパイルは頭を抱える思いだった。
「元4位の家に行くこともできるらしいが、やめとこうかね……。これ以上広くなっても仕方ねぇし、お袋を説得するのが面倒臭ぇ……」
スパイルは母親と2人暮らしだった。
元は町外れの小汚い小屋で生活していたのだが、スパイルが出世してこっちに引っ越してきたのだ。
それまではこの母親がずっと養ってきてくれた。
水商売で体を売って、まだ力のなかった自分をここまで育ててくれたのだ。
心から感謝しているし、今の自分があるのはこの人のおかげだと思っている。
しかし……
「何で、こんな風になっちまったんだろうな……。昔の面影はどこに行っちまったんだか。息子のくせに、イマイチよく分かんねぇな……」
母親は元々マジメな性格だった。
水商売をやってきて、今のこの醜態を晒している所からはまるで想像もつかないが、本当はドが付くほどの優等生気質だ。
スパイルのことも本当に良く育ててくれたし、水商売に手を出していたのも、このディオラスでは他に稼ぐ手段がなかったからだ。
何故なら……母親には、スパイルと違って"力"が無かったから。
教養もあるし、他の国だったならばこうはならなかっただろう。
本当は優しくてマジメで、スパイルのことを心から愛してくれる素敵な母親だったのだ。
「俺が稼げるようになってからか?アンタがこんな風になっちまったのは……。戦闘中の敵と違って、アンタの考えはホントに分からねぇよ。アンタは酒で、一体何から逃げてんだ?」
スパイルはベッドの上で寝息を立てる母親に語りかける。
事はスパイルが7歳の時のことだった。
ある日、スパイルが初めてランキング戦で勝利したその日。
スパイルが大人を相手に勝利して帰ってきたその時に、母親は変わってしまった。
スパイルが手に持った賞金袋を見て、
息子の才能に喜ぶでもない。
賞金に目が眩んだわけでもない。
母親がその時見せた表情は、『絶望』だったのだ。
そして、
スパイルがそこから見る見ると順位を上げていき、金を持ち帰るたびに、母親はこんな調子になっていった。
聞いても答えない。
飲むのを止めろと言っても聞かない。
もう娼館に行くことはなくなったから、母親はずっと家にいるようになった。
最初はまだ料理くらいは作っていたのだが、今はもうそれすら出来る気力がないらしい。
本当に、訳が分からなかった。
「いつか話してくれることを祈っているよ。こんなのでも息子だからな。アンタが何に悩んでるのかは知らねえが、生活のことなら俺に任せとけ。しっかり長生きさせてやるからな」
スパイルはそう言って、寝室から出て行った。
リビングに戻り、スパイルも一杯飲む。
No.4として認められたこの日。
スパイルは、たった一人で祝杯を上げた。
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